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古道具

作者: じゃこ

オリジナリティがあるかはともかくこれをオチ有りと呼べるのか。

 何となく立ち寄った古道具屋。所狭しと並んだ、欠けた茶碗や折れ曲がったゴルフクラブ等はどれも用途不明で、がらくた屋と呼ぶ方が幾らか相応しい気がした。


 なぜこんな所に立ち寄ったんだろうと、所在無さげに店内を見渡していると、「不要物買取ります」とのチラシが目に留まった。どうしようもなくくだらない事を考えていると、

「何だいアンタ、商品になりに来たのかい。」

と、そんな考えを見抜いたような声が聞こえた。成程、店を名乗ってる以上は店番も居るものかと、ひとりでに納得した頃には私は陳列されていた。


 客一人来ない店内で一日、何をする訳でもなく二日と、気が付けば日数を数えることすらやめて、ガラクタと共に埃を被っていた。どうせやる事もないのだと、売れない理由を考える。


 商品には「売り」というものが存在し、そこを足掛かりに欲しいと思わせれば売れるものの筈だ。そこで自分の商品価値を考えてみる事にした。困ったことに、積もる埃が増える以外に進展は無かった。


 ならば複数人に「私は価値ある存在だ」と言わせるのはどうか。宣伝に中身が伴おうが虚言だろうが、謳い文句に反応して手を出す輩は居る筈である。となれば声高に私の価値を上げてくれる人物が必用だ。そこまで考え、この計画が全くの無駄に終わっている事と、自らの人脈の狭さに気づかされるのに、かなりの時を費やした。


 そもそもこの、殆ど客の出入りの無い古道具屋で座して待つ事にどれだけの意味があるのだろう。店の所為にして逃げようにも、そもそも売りに出したのも自分自身である事に気が付く頃には、珍しく入った客が既に、何に使うかもわからない破れた傘を手に取り出て行った後だった。


 自分は破れた傘以下の価値なのかもしれない。そう思って店内を見渡し、ふと「この中で私よりも価値の無い商品とはどれになるのだろう。」と考える。


 「売り」も無く、宣伝を頼める人脈も無く、自ら選んだ店の所為にして自身の無価値さから目を逸らす私だ。ひょっとすると飯をよそえない茶碗よりも。球を打てないゴルフクラブよりも。雨風を凌げない傘よりも。


 そこまで考え、ふと禁じ手に近い手段を思いつき、ポケットをまさぐる。手足の動かし方は覚えていたらしい。辛うじて見つけた百円硬貨を持って店番へと向かう私は、商品ではなく買い手だった。


 埃を払いのけ、久々に日の光を浴びた背中で、

「もう二度と来るんじゃねえぞ。」

と、声を聞いた気がした。


流石に文字通り商品化願望を持つお人には出会った事がありません。

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