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〖certainly〗ルーと。

【まえがき】

 始まりました、リズ編です。

 まだサブエピ扱いですが、とてもハリのある面白いキャラクターなので、ゆくゆくはメインを任せていきます。



 本編です。





 

 


 最近、色々とおかしい気がする。

 でも多分、一番おかしいのは私なんだと思う。



     *****



 第一に、ルー。

 小さい頃からおかしい所はたくさんあったけれど、最近またおかしい。

 いつ頃からかな。誕生日のあたりからだったかな。

 変に思い悩んだり、一人になりたがったり、急に泣き出したり、etc...、色々と変になった。青春してるってことなのかな。

 アカデミーに入ってからは、少し落ち着いた気がするけど……ああ、そうだった。最近おかしいってのは、本当に最近の話なんだった。

 なんでも、部活を決めなくちゃいけないらしい。それも、あと三日で。

 まさか有り得ないよね? みたいないつも通りのくだりありき、せっかくのチャンスだから悩んでほしいというのもありきで、私は複雑だ。

 ルーがそのどちらだったかと言えば、

「僕、お風呂入ってくるよ」

 まさかまさかの後者だった。

 ソファから立ち上がって浴場へ向かう顔つきは、焦りと不安でいっぱいに見えた。焦りは私のせいだけど。ああ、残りの不安も、もしかしたら私のせいか。

 ……って全部わたしのせいじゃないか。

 別に、いいけどね。



     *****



 第二に、ルー。

 またか。

 うん。まただ。

 ルーの抱えた悩みの種がなんなのか、私はだいたい知っている。その種を蒔いてしまったのは、他でもない私だから。あの時は小さかった……じゃなくて、“あの時”はまだ子供だったから、贖罪することもできない。今その話を持ち上げると、ルー、逃げちゃうし。

 さっきだってそう。

 ルーは、誰も傷つけないように、自分を犠牲にする。一人で解決しようとするということは、諦めて逃げることを意味するのだと知っているはずなのに。逃げたくないと、涙を流したことだってあったのに。

 私の蒔いた種に、ルーは水をやっているのかもしれない。それは私のものだから、何か大事な花を咲かすんじゃないか、なんて思って。

 今だってそうかもしれない。

 いつもは湯船にお湯を溜めてそこに浸かるのに、今日はしとしととシャワーを浴びているようだ。

 悩みの種を回収しに洗面所まで来たつもりなのに、水をやっていてはできない。水やりをしている人の目の前で、花をむしるわけにもいかないし。

「ねぇ、ルー」

 風呂場のドアをノックすると、シャワーの音が止む。

「部活、入らないの……?」

 すぐに返事はない。いつも通りの当たり前。

 私がルーを悩ませているのに、「悩みの種はなに?」と無神経に尋ねるような真似をしているんだから。

 責任感でもなんでもなく、私はルーを構う。

 ルーは、私のことが好きだから。ルーをお風呂場へと追いやった、あの胸元チラ見せサービスも、それを知ってのこと。からかっているわけじゃない。いや、からかってるな。

 ルーの色々なことを知っているのに、種を回収するにはどうすればいいかわからないから、ああやってルーの喜びそうなことをしているだけ。なんてそれらしい言い訳ができるけど、私は特に弁明しない。

 こうして毎日毎日、風呂場へと語りかけるのもそう。構っているということ。

 罪悪感は、謝罪することで解消されるわけじゃない。罪を償えばそれで終わりということでもない。そう悟ったから、私は構う。別に、好きとかそういうのじゃない。

「…………」

 ルートから返事はない。感触はよくない。退散せざるを得ない。

 洗面所を出る間際、洗面台の鏡に映った自分を見て、ふと思う。



 ――私が脱いで、風呂場に突入したらどうなるかな。



 イマイチパッとしないルーの日常に、少しだけ肌色成分を演出できるだろうか。深紅に染まっちゃうかな。それもいいかも。



 ――一回やってみようかな。



 そう思って振り返る。ルーの驚く顔が目に浮かぶ。

 そうと決まれば。どうせ繰り返すのだから体裁も無問題だ。

「あれ……?」

 目先の笑顔への期待は、確かに頭に浮かんでいる。それをする利点も、その場のノリではあるけれど、理解できている。ルーの反応が楽しみだ。

 でも、おかしい。

 そうだった。私は最近、おかしかった。

「あははは……。恥ずかしいな……」

 私の右手が、白シャツの上から三番目のボタンを掴んだまま、動いてくれない。すぐそこにある楽しみですら、右手を動かすことはできないというのか。

 それほどまでに、恥ずいのか。

「リズ……?」


「わっ。びっくりした! やめてよもう」


 浴場のドアに人影が揺らめいていたから、反響の効いた声がお化けの叫び声に聞こえた。まあ、お化けの叫び声、聞いたことないけど。

 驚かすつもりが、見事に驚かされてしまった。しかも無意識に。

 これこそ恥ずかしいので、さっさとここから脱出しよう。

 ボタンを締める動作はやけにスムーズだった。やっぱりおかしいな。



     ***



 寝る前の日課になっている牛乳を飲んで、それから自分の部屋に来た。

 宿題は出てなかったし、別段することもないので、布団に入る。私の部屋は昼に日が差し込まないから、布団が少しひんやりしていた。

 暖房を入れる程ではないにしろ、一人ぼっちを体現したようなこのひんやり感は、あまりに空しい。人恋しいとも言うかもしれない。

 ルーと生活していた部屋は、今はルーが一人で使っているから、私の部屋にはあの頃の名残のようなものは何もない。もともと父の書斎予定地だったおかげで、古くて大きな本棚が壁に埋め込まれているけど、それは古紙臭いだけで名残も何もない。

 電気を消して真っ暗にすると、嗅覚が鋭敏になる。

 そうすると、また寂しくなった。

 今度、添い寝でもしてみようかな。

 どうせ、【一週間を繰り返す】だけなのだから。



     *****



 第三に、ルー。

 三度登場、だ。

 私たちは、決められた一週間の中を生き、年を取る。そうして朽ちていき……って何を言ってるんだろう。まぁ、いいか。

 とにもかくにも、私たちの暮らすこの世界は、同じ一週間を永久に繰り返している。私が生まれた時から、多分もっと前からそうだったのだと思う。学校でもそう習ったし、きっとそうなのだ。

 繰り返すという認識は個人固有のものであるから、一週間経つと私の周囲の人間は、その一週間のうちの出来事をすべて忘れてしまう。他の人からすれば、私も記憶喪失しているということ。

 人々は、『繰り返す』ということを『知識』として知っているのである。

 だからこそ、人々は日常に彩を求めて、様々なアクションを起こす。

 一週間世界一周旅行を決行してみたり、一週間引き籠ってみたり、一週間恋人とべったりだったりetc……。

 それが普通であり、楽を求める人間のありのままの姿だろうと、私は適当なことを抜かしたりもする。誰か、的を射てるよーと言ってください。核心ついてるよーでもいいです。

 まぁ、それはいいとして。

 最近の身の回りのおかしさに話を戻すと、ルーの話になる。

 ルーは、何回繰り返されても同じことをしているように見えた。とても不思議(ふしぎ)だ。というか、謎だ。変だ。

『繰り返す』と知っているのなら、余程のマゾヒストさんでないかぎりは同じ道を通ったりしないはずだ。同じ道を辿れば、行きつく先は必ず同じになるのだから。『繰り返す』というのは、風向きや天気もすべてなのだ。『運』という言葉が必要ないくらい正確無比なこの世界で、同じ道を通ることは、死んでいることと一緒かもしれないのだ。

 そう。

 子供の頃は、幾分かマシだった。アリスお姉ちゃんとか、隣のサクラちゃんとかと、毎週毎週危険なコトをして遊んでいたものだ。

 危ないことをしないのはいいことだけど、死ぬほど安定を望まれても心配になる。だから構うのだけど、最近は一向に反応してくれない。私の魅力がなくなったみたいで、なんだか悔しい。

 ここはやっぱり添い寝を……って、ダメだ。やっぱり恥ずかしいな。

 布団、夜、二人、というワードは、刺激が強すぎる気がする。でも、前はそうしてたんだよね。(へん)なの。

 でも、いつから刺激的だと感じるようになったんだろう。あの(あった)かい場所が、私の中で危険な場所になったのはなんでだったろう。

 やっぱりこれって、大人になったってことなのかな。

 だったら、もう少し胸も大きくなって欲しいなぁ。……なんちゃって。

 眠いなぁ……。

 学校めんどくさい。ルーもアリスおねえちゃんもいないし。

 サボっちゃおうかな……。



     *****



 一週間(ループ)の一日目。

 やっぱりおかしいのは、私なのかもしれない。

 とどのつまり、そういう話だったりする。

【あとがき】

 というわけで、リズも巻き込まれておりました【一不思議】です。

 リズは、『永遠の一週間』という王道ではありますが、誰もが記憶保持できるという突出した普遍設定があります。

 ですが、【一不思議】の犯人がそろそろバレてくる頃なので、そう長くは続かないでしょう。

 設定だけとって、スピンオフというのはアリですけどね。



 というわけで、次回は『二章を締めくくるルート編』、いってみたいと思います。

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