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もう全部勇者1人で良いんじゃないかな

 前回のあらすじ

 米も醤油も紅ショウガまで200年前から作られていた。

 ベッドの上に横たわっていたぬいぐるみの猫が垂直に飛んだ。

 空中でタメを作った後、打ち上げ花火のように手足を伸ばし大の字を作る。


「うるさくて寝れないニャーーーー!」


そう叫ぶとベッドに背中から着地してスッキリした顔で話しかけてきた。


「あんた達、ちょっとこっちへ来てここに座りなさい」


 イメージと違ったが、多分この人がタバサさんで間違いないだろう。

 どうもお昼寝の邪魔をしてしまったようだ。


「解りました、リリーさん行きましょう」


 声を掛けたがどうやら失敗で萎縮してしまっている模様。

 近づいて手を引き、移動を促した。役得である。


「……はい。勇者様」





「初めましてタバサさん、お昼寝中にお邪魔して騒いでしまい、すみませんでした」

「タバサ様、就寝中に押しかけてご迷惑をお掛けした事。心よりお詫び申し上げます」


 誰だって昼寝を邪魔されたらいい気分はしないだろう。

 ちゃんと詫びないといかんね。


「フリーパスにしたのはあたしのミスだから気にしないで。どうしてこうなったのか手短に説明して貰える?」


 どうやら寛大な(ひと)のようだ。偏屈ジジイとかでなくて良かった。

 200歳以上の偏屈老人とか相手に会話が成立する気がしない。


「私は勇者候補です。ここで能力の測定と技能の説明をして貰えるというので、ついて来ました。

 詳しい事情は存じません。リリーさん、経緯の説明をお願いします」


「はい、勇者様の召喚と同時期に、勇者王様の指令書が発見されまして、

『最初は物置部屋に通されるので、鍋を打ち鳴らし、勇者の到着を告げよ。

 勇者の魔法訓練はタバサに一任すべし』と、記されておりました。

 知らぬ事とはいえ大変失礼いたしました」


 そう言ってリリーさんは頭を下げた。実るほど頭を垂れる稲穂かな。

 彼女のたわわに実った2つの果実が垂れない事を切に願う。   

 垂れてもそれはそれでいいか。



「メイドのお嬢ちゃん。あたしは貴族様じゃないんから、そんなに頭を下げなくても良いの。

 あなたはアイツの指示通りに動いただけなんだから」

「ですが私は、知らぬ事とはいえグリンオークの恩人であるタバサ様にとんだご無礼を……」

「ストップ。あたしは、シェスタを邪魔するつもりでメッセージを残したアイツに腹を立てただけで、あなたに怒ってる訳じゃないの。気にしないで」


 人間が出来ておる喃。猫だけど。


「はい、解りました。不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」


「キュゥゥゥゥン…………ペロペロ」


 リリーさんの尻尾がションボリしておられる。今はトトに任せて

後で励まそう。トトのように舐めて応援したいね。





「んで、そこの冴えない顔したアンタが、新しい勇者って事で間違いないわね?」

「はい、勇者候補の山田太郎(やまだたろう)です。

 タバサさん、勝手に上がりこんだ上にお昼寝の邪魔をしてしまい、申し訳ありません。

 心ばかりの品ですが、お詫びの気持ちと思ってお納め下さい。」


 かつお節粉の袋と使い方を書いたメモが入った袋を取り出し手渡した。

 昼寝の邪魔をされて怒らない人間など居ない。

 ここは誠意を持って謝罪しないと、追い出されても文句は言えない。

 教えを請う立場なんだし、そういう所はキッチリしないとな。


「殊勝な心がけね。いただくわ」


 ベッドの周りを見る限り、ろくな物を食べてなさそうな雰囲気だから馬鹿舌に違いない。

 人間よりの味覚でも猫は猫だし、かつお節や煮干しを与えておけば間違いないはずだ。



「ところでタバサさんは、ケット・シーか何かの妖精さんだから長生きなんですか?」

「長生きというか、妖精には寿命がないのよ。別に今にも死にそうって意味じゃないのよ」


 それはいわないでもわかります。さすがに。


「そうなんですか。勉強になります。お時間を使わせるのも心苦しいので、本題に入らせていただきます。

 能力測定とはどのような事をするのですか?」

「ああ、あたしは見えてるけどあなたは解らないよね。これを飲みなさい」


 ポーション瓶を渡されたので、蓋を開けて飲む。なかなか美味い。


「ご馳走様でした。これはなんですか?」

「人と物を鑑定する技能が身に付くポーションよ。勇者王(あのバカ)はスカウターと呼んでたけど、とても便利な技能よ」


「そうなんですか、貴重な品をどうもです。アイテムボックスの時は3回に別けて6リットルも飲まされたんですけど、元はこんな量なんですか」

「どれもコップ1杯分よ。アイツは昔から碌でもない事しかしないのよ。使い方はアイテムボックスと一緒でイメージするだけ。まずは自分を見てみなさい」

 


【ヤマダ・タロウ】 【種族:人間】

【勇者LV:001】

【HP:016/016】

【MP:002/002】

【SP:006/006】

【力 :013】【技 :005】

【知力:008】【魔力:003】

【速さ:004】【幸運:001】

【守備:005】【魔防:001】

【無職LV:-―/――】 

【無職LV:――/――】 

【無職LV:――/――】 

【無職LV:――/――】 

【無職LV:――/――】 

【スキル1:経験×30】

【スキル2:鑑定】

【スキル3:   】

【スキル4:   】

【スキル5:   】


「なんだか勇者の割に弱くないですか?」

「最初はそんなものなのよ。勇者は成長が速くてレベルと能力に上限が無いから、あっという間に強くなるわ」



「そういうものなのですか。タバサ先生、無職レベルが気になります。それとスキルが5個というのは少し厳しい感じがします」


「今から説明するからよく聞きなさい。この世界のヒトは成人すると必ず一般職に就くの。それで一般職のレベル上限は20なのよ。レベルアップして毎回確実に上がるのはHPとMPだけで、その他の能力が上がるかは運しだい。だから20代後半の数字があれば一流なの。あとレベル20にまで育つ過程でスキルを4つ習得しているのよ。それと一般職を極めてある条件を満たすとなれる上級職というのがあって、あたしもそうなの。上限レベルは30でスキルも5個。でもスキル枠の数は増えないから取捨選択に困る」


「ふんふん。なるほどスキル枠は一般の人と一緒なんですね」


「そう、スキル枠の数は同じだけど、ここで効いてくるのが副業枠なのよ。勇者の強さは勇者レベルと副業5枠のレベルの合計で決まるの! 全ての能力が2ずつ上がるから全てが20レベルとしても20×6で120レベル相当の強さになるし、副業は自由に入れ変える事が出来るの。それと勇者レベル1のスキルのパーティー編成はパーティーメンバーのステータス上昇を大強化するの。つまり勇者はスキル枠の5個と副業5×5で最大30個のスキルを同時に使えて人材育成もお手の物の魔王よりヤバい奴なのよ!!」


「タバサ先生説明下手とか言われた事ありませんか?」


「うるさい。そんなわけだから空いてる副業スペースには何でもいいから詰めておいた方が良いわ。そこにガイド本があるからそれを参考に選びなさいな。決まるまで寝てるわ」




「選び終わったら起こしなさい。とりあえず死なない程度までレベル上げるから」


 言いたい事を言うと、猫ちゃんはベッドにダイブした。

どうやっても起きなかったので仕方なく写真を撮った。

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