最終対決(H)
サブタイトルで、誤解しないで欲しいのですが、(H)はべつにエロい要素が入っていますよという意味ではなくて、『水素』という意味です。
元素記号が一番目なので、わかりやすくいえば①って感じです。
そして――七日目の朝をむかえた。
良くも悪くもこの日が分岐点となり、ある意味でというより普通の意味で、犬飼颱VS悪魔界トップセブンが雌雄を決することになるのだけど、そして物語が終結することになるのだけど、それはさておき。
「おはようございます、昨日はよく眠れましたか?」
小学生と表現してもなんら遜色ないほどの童顔、低身長の、畄嗣覇阿こと最上級の才色兼備は、しかし知らぬ人からみたら不遜で身の程知らずと思われるほどに態度が大きかった。口調こそ敬語を交えているが、実際は腕を組んで射抜くような貫くような鋭利な視線で男子中学生を睨みつけているのだ。まさしく竜驤虎視といった様であるが、それをいうならば対する男子中学生、自縛霊の犬飼颱も負けてはいなかった。負けてはいなかったというか、目力だけでいえば負けも負け、大敗を喫している状態なのだが、勝負にならなかったというのがこの場合正しいだろう。
勝負にならないというのは、実力差がありすぎて勝負事が成立しないという意味ではなく、文字通り勝負にならなかったのだ。というのも犬飼颱はまるで、畄嗣覇阿など最初から眼中にないといわんばかりによそ見をしていたのだ。つらとつらを合わせなければにらめっこは始められない。
「…………」
「無視をするというのも立派なコミュニケーションのひとつですよね、犬飼颱くん。犬飼颱くんは私の存在を認識しないという奇矯な手段を用いて、私と接しているのですよね。わかります。わかります」
「…………」
「ではここで疑問が生じることになりますね。昨日はコンビニエンスストアであれほど仲むつまじく師匠との思い出を語り合ったのに、今日はなぜこれほどまでにすげなく釣れない態度なのか。いまいち解せません」
「…………」
すこしずつ日は昇りつつあり、近くの川面に陽光が反射して輝いている。彼らは出美亜丹と犬飼颱が決闘をしたあの河川敷にいた。
ギャラリーには参謀役の欲張り詐欺師『萬捫』と、実戦役の食いしん坊『部僂是武舞』と、補佐役の不器用な恋愛感情『婀崇姆出嫗朱』と、応援役の女子中学生『桜乃舞子』が来ている。
「俺は畄嗣覇阿の野郎がむかつくから肩入れをしてやっているのだが……」
萬捫は、「お前らはなんで来ているんだ?」
「俺はただの暇つぶしだ。うまい話だろう?」
「僕はかわいいかわいい女の子の味方だからさ。参戦せずにはいられなかったんだよ」
なるほどな、と萬捫はため息をつきながら昨夕のことを想起する――。
そもそも彼にはLINEなどという高機能なアプリケーションがなくても、畄嗣覇阿とはちがう意味で、その高機能は不要であるのだが――自己の能力を秘匿するために、彼は意図的に電子機器を好んで使っているのだ。




