失意の彼女と決意の彼女
人間界では『死んだように生きていた』はずの同類が、霊界にやって来てからは、『生きたように死んでいる』のだ。
このちがいはなんなのか。全くわからなかった。
だが――それはすぐに判明した。
戦ってみてわかった。
犬飼颱は、生きていようが、死んでいようが、そんなことはおかまいなく、 とにかく全力で生きているのだ。
生き生きと死んでいて、死ぬ気で生きている。
だから――
『死んだように死んでいる』自分とは根本からちがったのだ。
それがまた、妬み嫉み恨み羨みの原因となり、人間界に来てから、彼の生きる活力となった桜乃舞子を消したくなったのであるが、それはともかく。
「これでわかったよね、私がその子を殺そうとしてた理由……」
「ああ、気にくわねーけどな」
颱に納得してもらったところで、今度は反対に質問をしてみる。同系列の質問である。
「なんで私を救けたの?」
「あっ?」
「放っといてくれれば、私は死んだはずなのに……」
「そういうこたあ、ここにいるアホに訊いてくれ」
「アホってなによ!」
舞子は激しく怒鳴ってから――出美亜丹に視線を移し、優しく微笑んだ。
「あーたん。私は正直いって、あなたのことなんて、死んでも生きてもどっちでもいいって思ってたんだよ。身も蓋もない話だけど怒らないでね。――それでも助けたいって願ったのはね、生きたくても生きられなかった人がいるのに、助けたくても助けられなかった人がいるのに、なのに、手を伸ばせば助かる命を、手放したくはなかったからなんだよ。すごく利己的ではあるけど、それが素直な気持ち……」
「…………。そう、ありがとね。名もなき少女」
深く深く反省するように、出美亜丹はうなずいていた。
「ねえ、あーたん。私は桜乃舞子だよ。これからは気軽に舞子って呼んでね」
「うん、ありがとう。芸妓さん」
「いっとくけど、舞妓はんじゃないからね?」
日もとっぷり暮れてきた頃、バトルの一部始終を目撃し、黙認していた人物は、そのまま姿を消したのであった。




