愛別離苦の少年少女
乱離拡散編スタート。
屋上にはすでに犬飼颱がいた。早弁をして全力で走ってきたのに、彼はそこにいた。
「よう、舞子。来たな」
肩で息をしながら、桜乃舞子は颱に近寄っていく。
「颱、話ってなに?」
「ストレートにいうぞ」
背後のフェンスにもたれかかるようにして、あえて軽薄な空気をつくりだして、犬飼颱はストレートにいった。
「大好きだ。だから別れよう」
「えっ?」
「うやむやになってたけど、俺らは昨日まで喧嘩してたわけじゃん。だからお前のこと、好きだけど嫌いになったっつーか……」
「…………」
「別れよう」
「なんで? なんでそんな簡単にいえるわけ?」
「別れたほうがいい。俺にはもともと恋愛を楽しむ資格なんてなかったんだよ。ちょっとくらいなら大丈夫かなって、気の迷いも生じたけど、出美亜丹に居場所が割れた。これ以上いっしょにいたら、きっと迷惑がかかる」
「それがなんなのよ。あきらめられないよ」
「割りきれよ」
「いやよ、絶対。出美亜丹を殺せばいいの? 殺せばいっしょにいられる?」
「そんな単純じゃない」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「フェイク……」
「えっ?」
「偽物の彼女をつくる」
「はあ?」
「そうすれば大丈夫なはずだ。――出美亜丹を殺すまでは会わないほうがいい」
「嫌だよ! それに偽物の彼女ってだれ?」
「うちのクラスで、俺と付きあいたいっていう人がいるんだ」
舞子は横っ面を殴られた気がした。なにより衝撃的だったし、裏切られたようにも感じた。
「ああそうですか、そういうことですか。真面目に聞いて損をした」
「どういうことだ」
「彼女ができたなら、そういえばいいじゃん。人のせいにしないでよ」
「俺の話、聞いてたか?」
「わかりましたわかりました」
「もういい、聞くつもりないんだろ?」
「当たり前でしょ?」
こうして犬飼颱と桜乃舞子は別れることになった。




