小さい少年と呆れる少女
傘をさすかしぼませるか、判断力が問われるくらい雨量は少なくなっていた。
犬飼颱は傘をすぼませていたし、桜乃舞子は傘を広げたままだった。
「なんつーか、俺ら暇人だな。特にやることもなくふらふら、ぶらぶらしてるだけだし……」
「そうだねー、それじゃあさ、カラオケでも行く?」
「いいけど、俺は、山下達郎くらいしか歌わねーぞ」
「いいよー。全然構わない、むしろ歓迎する」
「冗談だよ、冗談。歓迎とかしないでくれ。本当は、ゆずとかGReeeeN とか、ファンモンとか湘南とか、レミオロメンとかウルフルズとか、宇多田とかチャットモンチーとか、無難な選曲しかしねーから」
颱は自信満々に、得意満面でいい放った。
「ん? なんかちがうのあったよね。無難どころか、めっちゃハードル高そうな選曲、選曲というよりは人選があったよね?」
「ハードルが高い?」
舞子の指摘を受けて、首をかしげたが、
「ああ、わかった。栄光の架け橋だ。しかし安心しろ、俺は練習しまくってるから」
グッと親指をたてて、得意そうな顔になる颱。
それをみて辟易する舞子。
【まあそりゃあ、練習しまくっただろうよ。卒業ソングとしては定番なんだし。小学校でも練習させられたよ】
「で、舞子はなにを歌うんだ?」
唐突に振られて、思わずひるんでしまったが、
「YUIとかAKBとかPerfumeとかPUFFYとかmiwaとかEXILEとかAquaTimezとか、その辺かな」
「ふーん、ようわからん」
「聞けばわかるよ」
「それはどうかな。釈迦に説法、馬の耳に念仏だったりするかもよ」
「もう、なんて突っ込めばいいかわからない。とりあえず辞書をひいて」
「我輩の辞書に、そのような言葉は存在しない」
「だったら新しい辞書を買えばいいじゃん。どころか背伸びをしなければいいじゃない」
「背伸び?残念ながら、つま先立ちをしなくても、俺のほうが背は高いぜ」
舞子の傘を押しのけて、彼女の頭に手を置き、それを水平に移動させる颱。要は背が高いことを自慢しているのだった。
【小さい男だな】
舞子はため息をこぼした。




