轢かれる少年と惹かれる少女
ミステリーばかり書いていて、正直飽きてきて――それで書き始めました。
どのくらい話を盛り上げられるかはわかりませんが、応援よろしくお願いします。
桜吹雪がうつくしかった。
地面にはピンクのじゅうたんが広がっている。蝶のようにひらひらと舞う花弁は楽しそうに踊っていた。
舞子は首にかけているカメラの電源をいれた。そっとファインダーをのぞきこむ。――完璧だ!
まずは一枚!
フラッシュがたかれた。メモリーを再生してみてもきれいな写真だった。
【つぎは臨時運転の列車をバッグにして撮ろう】
舞子は立ち居地を変えた。
するとどうだろう。線路に見知らぬ少年が立っているではないか。あわてて声をかけてみるが返事はない。
【ローカル列車だから、本数がすくないと思って油断してるのかな】もしくは、【この地域の時刻表を記憶しているのかな】。
どっちにしても危険だ。
なんとなく地響きを感じた。
来る! 列車が来る!
ディーゼル列車が、轟音を撒き散らしてやって来る!
「ねえ!」
「…………」反応はない。
「ねえってば!」
強く呼びかけても結果は同じ。
少年は陽炎のように淡い存在感で、ゆらゆらと揺れていた。
カンカンカン、と遮断機のおりる音が聞こえた。幻聴ではない。
と、いうことは……。
あと一分二十秒後に列車が通過する。そういう計算になる。
【あの子がどうなっても私には関係ない。だけどもし轢かれちゃったら写真どころではなくなるしーー。面倒だけれどどいてもらおう】
舞子は打算的に行動した。ずいずいっと無遠慮に接近していく。
少年の容姿が視認できる距離になった。ピンクのベストに白のインナー、それにジーンズをはいている。
顔はどこか幼くみえ、舞子と同じ中学生なのかもしれなかった。
肌は色白でお化けのようにひょうひょうとしている。
【こんな子、うちの中学にいたかな?】
彼女は首をひねった。が、ちがう学年なんだということで、無理矢理納得することにした。もしかしたら他学年の転校生なのかもわからない。
【…………って、ああ。余計なこと考えてた。線路からどいてもらうんだった】
するといきなり、びゅうっと強い風が吹きつけた。
空気の塊が顔面を殴打する。舞子は目を閉じた。
タタンタタン、と軽快に列車が過ぎ去っていく。舞子はハッとなって目を開けた。桜吹雪が切り絵のように、背景と重なった。
【なんて、美しいの!】
舞子は拝むような格好で、景色にみとれていた。
【あっ、そうだ!あの男の子はどうなったの?線路にいたあの子はーー】
舞子はおそるおそる線路に近づく。やっぱりだれもいなかった。
【あれ、いない。レールに敷いてある石ころといっしょに転がっているのかな?】
肉片や血しぶきを探してみるが、どこにもない。どうやら轢かれずにすんだようだ。
【とりあえずはホッとしたよ。でも、せっかくの臨時列車&桜吹雪のツーショットの夢は破壊されちゃったよー!】
彼女は心のなかでおたけびをあげた。