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ジョシュア短編集

昨日のこと

作者: ジョシュア

僕には幼なじみがいる。自慢にならないけど女の子だ。

今からもう十年以上前に別れてしまったから、幼なじみと呼んでいいのかわからないけど、僕の中の幼なじみはずっとその子だ。


僕はその子が大好きだった。幼かったけれど、それは初恋なんだと思う。


同じ幼稚園に行っていて、バスはずっと一緒だった。夏には一緒にプールで泳いで競い合った。冬には、部屋の窓から見える場所に雪だるまを作ってくれた。


バレンタインのとき、チョコレートをもらえなくて泣いてしまった。その子の誕生日会のとき、行けなくて泣かせてしまった。よく覚えている。


一番の思い出は夏休み、夜中に蝉の羽化を見に行ったことだ。


女々しいけども、よく覚えている。


僕は海外に引っ越してしまった。父親の仕事の都合だった。僕は必死に泣かないようにしていた。その子も泣いていなかったから。


車に乗ってしばらくしてから、僕は泣いた。あとから聞いた話では、その子は僕の乗っていた車が見えなくなってから泣いていたらしい。


引っ越し先から、僕らは月に一度、手紙のやり取りをした。半年くらいして、僕は一方的にやめてしまった。理由はなかった。


環境に慣れるのに必死だった、って母親は言ってたけど、それがやめて良い理由にはならない。僕はそれを後悔している。


それから僕はまた日本に引っ越しをした。海外の友達とは今度はきちんと連絡を取っている。


中学校に進学した。小学校のときとの友達とはきちんと連絡している。


中学校で転校した子がいた。その友達とも連絡している。


高校で退学になった子がいた。その友達とも連絡している。


高校の友達とは、今でもよく話す。


でもその子とはもう、連絡していなかった。





ある日、夢を見た。僕は新幹線に乗っていた。通路側の座席だ。


その通路を、誰かが歩いてくる。最近知り合ったばかりの人物だ。それから順番に、最近知り合った友達が歩いてくる。


やがて高校の知り合いが歩いてきて、中学校の友達も来た。何年経っても、その子だとわかった。


小学校の友達はほとんどみんな変わっていた。変わらない子もいたけど、みんな大人になっていた。でも、誰だかはわかった。


海外の友達が来る。もう何年も会ってないけど、年賀状で見たままだった。少し間があったけど、わかった。


引っ越す前の友達が来た。ああ、変わってしまってる。でも、わからなくはない。


そして、君が来た。

どこの誰だかは、最後に来たことでしかわからなかった。





目覚めの悪い朝。雨も降っている。


その日はどうしても外出しなければならなかった。


母親に傘を忘れないように言われ、父親には早めに帰るよう言われた。


少しのオシャレをして出る。気分が落ち込んでいたから、いつもと違う少し派手なファッションだ。


歩いていると、街路樹の切断された跡があった。伸びすぎて、道路に飛び出ていたからだ。


切られる前、近所の小さい子たちが死んでしまった蝉を埋めていたのを思い出した。


そこを見れば、見覚えのある花が咲いていた。真っ赤なそれは彼岸花だった。


どうしてかはわからないが、僕は無性に悔しかった。僕をからかうように、雨の音はうるさかった。

ノンフィクションです

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