第四話「居場所」
何かが僕を動かし続けた。
何か、この状況を創り上げた原因物質を取り除かなければならないと本能的にそう思っている。
『先輩、僕、鬱病でした』
そう送ったメールに返信はなかった。
しかし、その日の晩僕の家に直接来てくれた。
「大丈夫……なの?」
先輩は心配そうに僕を見る。僕は勉強椅子に座ったまま虚ろな目でどこかを見ていた。
「はい……よくわかりません。もう何を考えているか。ただ、頭の中には殺すか死ぬかの二つしかないような気がします。僕は……どっちを選べば……」
「……ダメだよ、そんなの。國枝くんは國枝くんのままでいてよ。私が好きだった國枝くんのままで!」
その言葉で僕は一瞬目が覚めたような感覚になった。
先輩が僕のことを好き……?
「本当……ねえ、國枝くん……」
先輩の声がだんだん潤んでいく。震える華奢な肩を僕はただ見つめることしかできなかった。
何分経っただろうか。先輩が急に立ち上がって僕の方へ来た。
「んっ……」
そして静かに、たしかに、そこに心はあった。
僕は先輩の家にあそびにいくようになった。そういう関係になれたと言ってもいいだろう。
先輩の家が僕に取っての居場所だった。
ここにはいじめをする奴らもいない。最低な女子なんていない。先輩と僕だけの世界。
先輩が帰ってくる時間に合わせて行く。学校の奴らと合わないようにこそこそと。
心は相変わらず空っぽ。
むちゃくちゃ死にたい、殺したい、という気持ちがあるにもかかわらず、僕はそうはしなかった。
先輩がいるからだ。
先輩を愛した。
世界で一番愛しい。
先輩の通う学校にも行った。
カメラを万引きしてきて先輩をたくさん撮った。
先輩に近づく男子に嫌がらせをした。
先輩、僕は今、先輩のことしか頭にありません。
もう、おかしくなりそうです。
先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩……。




