試験前夜
皇宮庁の試験の前夜。
家族7人で夕食を囲むことになった。
「いよいよ明日ね」
「緊張していると思うが、試験対策もしっかりしていたし、安心して臨むと良い」
お父様とお母様が励ましてくださる。
「ありがとうございます。
実は気になる点がありまして…」
「何だ?」
「実は…、採点に当たって不正が行われないか心配です。
満点が今まで一度も出ていないこともそうですが、何かの思惑が働いて結果に影響を及ぼすのではないかという懸念があります。
筆記は誤魔化しができないので良いのですが、実技となると…。
試験官の中には採点基準を無視して自分の好き嫌いで決めようとするものがいないとも限らないので、余計に心配です。転生直前の職場がそんな感じでしたから」
「確かに、合流してきた人たちが大きい顔をしてたもんな。
課長になった奴は自分のお気に入りの人間には甘くて、俺たちはいつもとばっちりを食らってたからな。
本当に迷惑だったよ」
「マッティオ、言葉が崩れてる。
でも、私も同じことを思った」
「まあまあ。
アゼリアもマッティオも、前世の愚痴はエヴァの試験が終わってからの方が良いんじゃない?」
「そうだ。ナルツィスの言うとおりだ。
それから、不公平な判定の防止という点では心配しなくて良い。
前世の記憶を取り戻した時、皆の魔力が上がっただろう?
その時に私が『読心術』のスキルを獲得しているから、やましい輩は事前に排除できる。
また、我々全員が何らかのスキルを獲得しているから、確かめてみると良い」
あのとき得たのは高い魔力だけじゃなかったみたい。
ともあれ、公平性は担保されたわけね。
「不正や不公平を遠ざけられるなら、これほど心強いことはありません。
安心しました」
「私たちも応援するわ。
それで、お父様のスキルは分かったけれど、皆は何のスキルが有るの?」
アゼリア姉様が皆に問う。
「そうね。
ここで知っておけば公務にも活かせるし、助け合うこともできるはずよ」
確かに。
お母様の発言はごもっともだ。
「ならば私から。
『読心術』のほかにも『道具生成』のスキルを得た。
『神工鬼斧』もあるぞ」
手先が超器用なお父様らしいスキルだ。
「次は私ね。
『危険察知』と『望遠』、『短期育成』を得たわ」
お母様は危険にすぐ気づくし、目もいいもんね。
「今度は私だよ。
『統率』と『状態察知(生物)』、それに『適性判断』だ」
皇太子たるベスティアン兄様にぴったり。
「その次は僕だね。
『原状回復』と『怪力』、『七里結界』を獲得したよ」
ナルツィス兄様はもともと災害復旧に魔法を使ってたけど、スキルを得たことで魔力消費が少なくて済むようになったみたいね。
「私の番ね。
『毒性判断』と『可食判断』、『体力消耗緩和』よ」
アゼリア姉様って毒にも詳しいよね。
国民の食糧事情の向上にも一役買うんじゃないかな。
「次は俺だな。
『社交』と『内偵』、『機敏嗅覚』だよ」
マッティオ兄様は人の懐に飛び込むのがすごく上手。
嗅覚が良いっていうのは意外ね。
「エヴァはどうなんだ?」
「確かめてみますね。私は…。
『地獄耳』、『高速処理』、『魔力向上』です」
皆のスキルを見てみると、前世に関係しているものも多いね。
お父様は手先が器用で、お母様は人を育てるのがうまかった。
ベスティアン兄様は仕事では神采配だったし、ナルツィス兄様の怪力には驚かされたこともあったっけ。
アゼリア姉様は毒の知識がすごかったし、マッティオ兄様は誰とでも仲良くなってたね。
私は聴覚過敏で、電話中の騒音にいつもイラついてた。部署統合前はそんなことなかったのに。
不意に、ベスティアン兄様が何か気づいたように言う。
「父上、こうして聞いてみると、政務や公務はやはり皆で協力して当たるのが良いですね」
「そうだな。
特にエヴァは両方に活かせるスキルがあるから、その分負担をかけることになると思うが」
「それをできるだけ小さくするように、私たちも頑張らないといけないわ。
専門家の育成にも取り掛からないと。
けれど今はエヴァの試験が先ね。
だって明日だもの」
「そうでしたね。
エヴァ、緊張は相当なものだと思うけど、リラックスして臨むといいよ。
焦らずにね」
ナルツィス兄様が励ましてくださる。
「私は高等学院の授業があるから立ち会えないけど、応援してるよ」
「エヴァ、頑張れよ」
「応援してるわ」
「ありがとうございます。
頑張ります!」
皆の声援を受け、明日の心構えができた。
全力で臨もう。
お読みいただきありがとうございます。




