命の営み
光子と優子は家に帰ると、すぐにスマホを取り出して、山口にいる温也と郷子夫妻にビデオ通話をつないだ。
「お久しぶり〜!元気にしよる?」と光子。
「うん、みんな元気よ〜」郷子は画面越しににっこり笑った。
優子が興奮気味に言う。
「聞いてよ!美香お姉ちゃんが、来年の春にお母さんになるとよ〜。しかも双子ちゃん!」
画面の向こう、温也は目を丸くして大声を上げた。
「えっ、マジで!?それはめっちゃおもろいニュースやんけ!」
郷子も手をパチンと叩きながら笑う。
「双子ちゃん!?まぁ、ほんとに賑やかになりそうじゃね〜!」
光子はにこにこしながら手を振る。
「うちたちもお姉ちゃんたちのギャグ、いっぱい伝えて、赤ちゃんも笑い上手になってもらわんとね!」
優子も笑顔で続ける。
「そやけん、双子ちゃん、うちたちのギャグ胎教やけん、うにゃだらぱ〜、うにゃ〜あじゃぱー、モレモレマン、しっかり覚えとくとよ〜!」
温也も思わず笑いながら、少し大阪弁でツッコミ。
「ほんま、めっちゃ笑わせる気満々やな、あの双子姉妹!」
郷子は柔らかい山口弁で微笑む。
「うちも楽しみやねぇ。春が待ち遠しいわ〜」
光子と優子は画面越しに笑顔を見せながら、次回のビデオ通話の約束をして、和やかな時間を終えた。
ビデオ通話の画面が揺れると、温也と郷子夫妻の腕の中に、ちっちゃな赤ちゃんが現れた。
「おお、出てきたやん、真幸くん!」温也は大阪弁で目を細める。
「うちの真幸やけん、可愛かろ〜?」郷子は優しく山口弁で微笑む。
光子と優子は画面にくぎ付けになり、思わず声をそろえて叫ぶ。
「わぁ〜、かわいか〜!」
「ほんとにちっちゃくて、ぴょこぴょこ動いよる〜!」光子が目を輝かせる。
「抱っこしたい〜!」優子も手を伸ばしながら言った。
温也は赤ちゃんを画面に近づけ、笑いながら大阪弁で説明。
「ほら、ちゃんとカメラ見とるやろ?うちの真幸、もう人見知りなしやで!」
郷子も優しく、赤ちゃんに話しかける。
「ほれ、真幸、光子ちゃんと優子ちゃんにご挨拶せんとね〜」
赤ちゃんは小さな手をにぎにぎと動かして、光子と優子に笑いかけるようだった。二人は目を輝かせ、自然に笑顔がこぼれる。
「きゃ〜、ほんとにかわいか〜!」光子と優子は歓声をあげ、二人そろって手を振る。
「うちたちも早く赤ちゃんに会いたか〜!」
画面越しに、あたたかくてほのぼのした空気が流れ、ビデオ通話はさらに楽しい時間になった。
光子はにこにこと画面を見つめながら、手をひらひらさせて言った。
「ほらほら、真幸くん、うにゃだらぱ〜って言ってみようか〜」
優子も続けて、元気よく声をかける。
「真幸くん、モレモレマンだよ〜、もーれって発音してね〜」
画面の向こうで、真幸は小さな口をもごもごと動かし、うにゃ〜、もーれ、と、なんともかわいらしく発音した。
「きゃ〜、真幸くん、言えた〜!」光子は手を叩いて大喜び。
「うにゃ〜、もーれって…かわいか〜!」優子も思わず笑顔が弾ける。
郷子は優しく笑いながら赤ちゃんを抱っこして言う。
「ほれほれ、真幸も楽しそうやね〜」
温也も大阪弁でにやりと笑い、
「おお、もう将来有望やな。うにゃだらぱーもモレモレマンもバッチリ覚えとるやん!」
光子と優子は顔を見合わせ、満足そうに頷く。
「これで、真幸くんも、うちらと一緒にギャグの道を歩めるね〜」
赤ちゃんの笑顔と小さな発声が、画面越しでも皆の心をふんわり温める。未来の小さなギャグ弟子の誕生を、誰もがほほえましく見守っていた。
うん、クリスマス生まれって、それだけで祝福ムードが全開やね〜。光子と優子も思わずニコニコして、画面越しに手を振りながら言う。
「真幸くん、メリークリスマスやけんね〜!うにゃだらぱ〜!」
「モレモレマンもよろしくやけん、もーれ!」
郷子は赤ちゃんを抱っこしながら、にこにこ笑い、
「名前からして、ほんとに幸せを分けてくれそうな子じゃね〜」
温也も大阪弁で、
「せやなぁ。クリスマス生まれやったら、もう家族もみんなハッピーやわ!」
真幸も画面越しに小さく笑って、光子と優子に応えるように、うにゃ〜、もーれ、と声を出す。
光子は目を輝かせて、
「ほら、真幸くんも幸せパワー全開やん!」
優子も頷きながら、
「来年の春には、うちらのギャグの弟子にもなるし、ますます楽しみやね〜」
画面越しの小さな赤ちゃんが、クリスマスの奇跡のように、周りの大人たちの心までほわっと温めてくれる瞬間だった。
光子が画面越しに、ちょっと心配そうに尋ねる。
⸻
「温也さん、郷子さん、今は音の宅急便は、どないしよると?」
温也は大阪弁で笑いながら答える。
「せやなぁ、今はちょっと赤ちゃんおるけん、あちこち回るんは控えとるんや。でも、家ん中や近所の小さな会場で、ちょこちょこ演奏して動画撮っとるで!」
郷子は柔らかい山口弁で説明する。
「せやけん、真幸もおるし、無理せんごと、家でミニコンサートして配信ばかりしよるんよ。駅とか公民館はまた、もう少し大きゅうなってからね。」
光子はうんうんと頷きながら、
「なるほど、赤ちゃんおるけん、今は動画配信中心ね。せやね、無理したら大変やもんね。」
優子も小さな声で、「うんうん、そっかぁ、真幸くんがおるけんね」と同意する。
温也がにっこり笑い、
「せやけど、いつもどおり演奏楽しんどるし、画面越しやけど、みんなにも届けられるけぇな!」
郷子もにこやかに、「ほんま、遠くの皆も見てくれよるけぇ、嬉しかと!」
光子と優子は画面を通して、思わず笑顔になる。
「わぁ、楽しそうやね〜!」
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こうして、光子と優子は、まだ小さな赤ちゃんのいる温也夫妻の活動もちゃんと理解して安心する。
光子と優子は、リビングのソファに並んで座り、少し真剣な顔で温也と郷子夫妻に話を始めた。
「温也さん、郷子さん、私たちね、この前ニュージーランドとカナダの子どもたちとビデオ通話で話したとよ。」
「うんうん、それで?」と温也が興味津々で前のめりになる。
光子が言葉を選びながら続ける。
「ライアンのとこでは、自然災害で家族を失った子どもたちの話を聞いたと。すごく胸がぎゅーってなるくらい辛い話やった…」
優子もすぐ横から言葉を重ねる。
「ソフィーの施設では、戦争や紛争で両親を亡くした子どもたちがおると。毎日大変やけど、ちっちゃな喜びを見つけながら生きとるって聞いたと。」
郷子は優しく微笑みながら頷く。
「うん、そうやね…でも、光子ちゃん、優子ちゃんがこうして話してくれることで、私たちも一緒に考えられるし、何かできることを見つけられるかもね。」
光子が少し息をつき、優子と目を合わせる。
「うちら、ほんとに恵まれとるんやなって思ったと。だから、少しでも誰かの助けになれるように、私たちも頑張らんとね。」
温也は柔らかい大阪弁で答える。
「そうやな。光子、優子の気持ち、めっちゃ伝わったで。ほんま、ええ子や。」
双子ちゃんたちは、笑顔を交えながらも、胸の奥に小さな決意を秘めた――。
「うん。うちらも、笑顔を届けられるように頑張るけん!」
「温也さん、郷子さん、聞いて聞いて!」
光子がリビングで身を乗り出して、興奮気味に話し始める。
「この前の3月、福岡市の教育予算から資金が出て、あの災害や戦争で辛い思いをした子たちが、福岡市に来てくれたとよ。」
優子もすぐ隣から補足する。
「うちらと一緒に、いろんなことしたと。ホークスの試合も見に行ったし、アビスパの試合も応援したと。めっちゃ盛り上がったとよ。」
光子が目を輝かせながら続ける。
「美香お姉ちゃんとアキラさんのいる福岡交響楽団の演奏も聴いたと! クラシックの生演奏って、やっぱり心に響くよね〜。」
優子はにっこり笑って付け加える。
「それから、うちらのギャグや漫才、落語も一緒にやったと。あの子たちに、少しでも笑ってほしかったけん。」
光子が少し真剣な表情で言う。
「うちら、人間って、笑っとる時が一番幸せやと思うと。笑ったら、その間だけでも、悲しいこととか辛いこと、忘れられるけんね。」
郷子が柔らかく頷き、温也も大阪弁で笑顔になる。
「そうやな、光子、優子の気持ち、ほんまに伝わったで。笑顔の力って、すごいんやな。」
双子ちゃんたちは、満面の笑みを浮かべながら、胸の奥で小さな誓いを立てる。
「これからも、誰かの笑顔を守れるように、うちら頑張るけん」
「笑顔とお土産の宅急便」
7月の終わり、夏の光がまだ力強く照りつける午後。光子と優子は、温也と郷子夫妻の家の前に立ち、バッグの中を確認した。
「お土産ば、忘れとらんやろね?」光子が優子に小声で聞く。
「うん、博多名物の明太子に、博多通りもんもばっちりやけん」優子がにっこり答える。
二人の手には、両親から預かったお祝いの品と、二人自身から選んだ小さなギフトも入っていた。赤ちゃんとお母さんに喜んでもらおうと、気持ちを込めて準備したものだ。
「さて、行こか」光子が深呼吸して玄関のチャイムを鳴らす。
「ピンポーン!」
すぐに温也がドアを開けて笑顔で迎える。「おお、光子、優子!今日はよう来てくれたな〜」
郷子もリビングから顔を出し、「いらっしゃい、楽しみにしとったよ〜」と柔らかい笑顔。二人はバッグをそっと手渡す。
「これは、博多からのお土産です。温也さん、郷子さん、そして真幸くんへのお祝いです」光子が丁寧に言うと、優子も「それと、私たちからも少しだけ、プレゼントを持ってきたとよ」と加えた。
温也は笑顔で受け取りながら、「おお、これはありがたいな〜、真幸も喜ぶばい」
郷子も嬉しそうに手を伸ばし、「ありがとうね、光子ちゃん、優子ちゃん」
真幸くんの方へ小さなラッピングを差し出すと、赤ちゃんは目をぱちくりさせて手を伸ばした。
「ほらほら、手を伸ばして受け取っとるやん!」光子が笑う。
優子も「かわいかね〜、すぐに開けたくなりそうやね」と目を細める。
そのとき、郷子が微笑みながら言った。「二人のお祝いの気持ちが、赤ちゃんにもちゃんと伝わっとるよ〜」
光子と優子は顔を見合わせてにっこり。ギフトを渡すというほんの小さな行為でも、夏の午後の時間がさらに温かく、笑顔に満ちていくのを感じた。
こうして、博多のお土産と双子ちゃんからのお祝いは、笑顔と一緒に、遠く離れた福岡の心を届ける宅急便のように温也と郷子の家に届いたのだった。
真幸くんの小さな手を優しく包み込みながら、光子はにっこり笑った。
「ほら、うにゃだらぱ〜ってやってみようか?」
優子も同じように手を伸ばし、ちょっと大げさに「モレモレマン!」と声を張ると、赤ちゃんは目をぱちくりさせて、口をもごもごさせた。
「うにゃ〜、もーれ」と、なんともかわいらしい声を返してくる。
光子と優子は顔を見合わせて大笑い。
「かわいか〜、真幸くん、ちゃんと返してくれとるやん!」
「うんうん、まさに弟子入り決定やね」と優子も大きくうなずいた。
郷子は微笑みながら、赤ちゃんの頭をそっと撫でた。「二人がやると、ほんとに楽しそうやね〜」
温也も笑いながら、「うにゃだらぱ〜とかモレモレマンとか、どんな教育方針やねん(笑)」
光子はにこにこしながら、「これから胎教にもええかなーって思って、美香お姉ちゃんにも今度教えてみるとよ」
優子も頷き、「うん、赤ちゃんもきっと笑顔の子になるっちゃろね」
その後、三人は赤ちゃんを交えて、少しずつ博多弁ギャグの練習を始めた。
「うにゃだらぱ〜、もーれもーれ!」
「鼻から桜の花びら〜!」
「鼻からコーヒー牛乳噴射やー!」
赤ちゃんは目をぱちくりさせ、手足をぱたぱた動かして、まるで楽しんでいるかのよう。
郷子は笑いながら、「うちの子、もう笑いのツボ入りそうやね(笑)」
温也も「こりゃ将来が楽しみやな」と目を細めた。
光子と優子は、赤ちゃんの小さな笑顔にさらに熱が入る。
「うん、これで美香お姉ちゃんの赤ちゃんも、将来絶対笑顔の達人になるやろね」
「うちらの弟子やけん、間違いなかよね!」
こうして、夏の午後、真幸くんの笑顔と博多弁ギャグの融合で、温也と郷子の家には笑い声が絶えなかった。
窓の外では蝉の声が響き、室内の笑い声と混ざり合い、夏のひとときは、温かくも幸せな時間として刻まれていった。
光子と優子は、お土産を手渡したあと、箱の中にもうひとつ特別なものを取り出した。
「これ、ミカお姉ちゃんからの赤ちゃん用のCDとギフト券やけんね」と光子が説明する。
箱を開けると、かわいらしいイラストが描かれた童謡唱歌のCDと、小さなギフト券が顔をのぞかせている。
郷子は目を細めて、「まぁ、なんて優しい子たち…!真幸、これで音楽いっぱい聴けるね」と微笑む。
温也も感心した顔で、「こういうのは嬉しいやろうな。小さいうちから音楽に触れられるって、ほんまにええ経験やで」
優子は赤ちゃんを抱き上げながら、「ほら、真幸くん、これで将来、ギャグも童謡もバッチリやけんね〜」
光子も手を合わせて、「うん、うにゃだらぱ〜の歌も歌えるようになるかもやしね!」
真幸くんは小さな手でCDのケースに触れ、にこにこした表情を見せた。
郷子は思わず、「あら、もう興味持っとるやん」と笑い、温也も「こりゃ将来が楽しみやな」と目を細めた。
こうして、夏の午後のひとときは、笑い声と優しさでいっぱいになった。光子と優子は、赤ちゃんと一緒に過ごすこの時間を、大切に胸に刻むのだった。
「笑顔とお土産の宅急便 〜命の重みを抱いて〜」
⸻
「真幸くん、抱っこしてもいい?」光子がそっと尋ねると、郷子は微笑みながら、赤ちゃんを抱き上げた。
「じゃあ、真幸、光子ちゃんと優子ちゃんに抱っこしてもらおうかね。結構重いけんね」
優子はそっと手を伸ばし、そっと真幸を抱き上げる。光子も続いて抱っこする。赤ちゃんの小さな体が、でもどこかしっかりとした重みをもって、自分の腕の中にすっぽり収まる。
「わぁ…これが命の重み、そしてぬくもりかぁ…」光子は思わず息をのむ。優子も同じように、胸がじんわりと温かくなるのを感じた。
真幸は二人の腕の中で安心したように小さく笑い、手足をちょこちょこと動かす。
郷子はそっと見守りながら、「ほんとに…抱くとよくわかるね。小さいけど、ちゃんと生きとるんよ」
温也もにこやかに、「おぉ、双子ちゃんもすぐに慣れるやろな。こうやって赤ちゃんと触れ合う時間って、ほんま貴重やで」
光子はそっと小さな手を握り、優子も柔らかい髪に触れる。命の重みとぬくもりが、初めて自分の心の奥まで染み渡る瞬間だった。
「真幸くん。これからいっぱい遊ぼうね、うにゃだらぱ〜とか教えちゃるけん」優子が笑いながらささやくと、光子も「うん、いっぱい笑わせるよ、モレモレマンも見せちゃる!」
赤ちゃんと初めて向き合う瞬間、双子ちゃんは命の尊さを実感しつつ、未来の小さな弟子との新しい日々に胸を躍らせるのだった。
「私も、いつか郷子さんみたいに、誰かを守れるお母さんになりたいな…」光子が小さくつぶやくと、優子もそっと頷く。赤ちゃんの小さな手足や笑顔を見ているだけで、未来への希望と命の大切さを実感するのだった。
真幸の穏やかな吸い付く様子と、微笑みながら見守る郷子さんの姿。光子と優子は、これまで体験したことのない温もりと責任感を抱きながら、心の中でそっと誓った。
「よ〜し、将来うちらも、郷子さんみたいに誰かを守れるお母さんになれるよう、がんばろう」優子が小さな声で言うと、光子も笑顔でうなずく。
命を感じる時間が、双子ちゃんの心に静かに、でも確実に深く刻まれた瞬間だった。
「また、絶対来るけんね」と優子が小さくつぶやく。光子も、うなずきながら目を細める。夏の夕暮れが、家の外に柔らかく広がって、庭先の木々が影を長く伸ばしている。蝉の声がまだわずかに残り、夏の名残を告げるように耳に届く。
胸の奥にまだ残る、真幸くんの温もり。柔らかい頬に触れたときの、あの小さな命の重み。それは二人にとって、これまでの「かわいい」や「愛しい」という言葉だけでは足りない、もっと深い感覚だった。命を受け継ぐこと、育てること。その重さと尊さを、ほんの少しだけ垣間見た気がした。
「うちらも、いつかああやって、誰かを守れるようになりたいね」光子がぽつりとつぶやく。
「うん。まだ中学生やけど…でも、大人になったら、あの小さな命みたいに、笑顔を守れる存在になりたい」優子も静かに応える。
未来はまだ遠く、受験も控えている。歌の道も、夢も、不安も、たくさん待っている。それでも――夕暮れの空の下、二人の胸の奥には、小さな決意の灯が確かにともっていた。
それはまだかすかな光だったが、夏の夜に浮かぶ星のように、必ず未来を照らす希望へとつながっていくに違いなかった。




