帰国
飛行機へと向かう子どもたちの背中は、まだ幼さを残しながらも、どこか強く、そして寂しさをこらえているように見えた。
「僕たち、友達だよね。また来てもいい?」
涙をにじませながら振り返る声に、光子と優子は同時にうなずいた。
「絶対また来てね!」
「またギャグやコント、一緒にしよーや!」
二人は駆け寄り、一人ひとりにぎゅっと抱きついた。涙で目元を赤くしながらも、笑顔を崩さずに見送ろうと必死だ。
最後のハグが終わると、互いに手を振りながら約束を交わす。
「またビデオ通話で会おうね!」
「元気でね! ばいばーい!」
出発ゲートの向こうに小さな姿が消えていく。笑い声と涙が入り混じる見送りは、まるで舞台の幕がゆっくり降りていくようだった。
――また必ず会える。その約束を胸に、光子と優子の瞳は、涙でにじみながらも輝いていた。
帰り道、夕暮れのオレンジ色の光に包まれながら、光子と優子は並んで歩いていた。まだ目の端には涙の跡が残っている。
光子:
“Hey Yuko,笑いってすごいね。どんなに泣いとっても、ギャグ言うたらまた笑えるんやけん。”
「ねぇ優子、笑いってすごいよね。どんなに泣いてても、ギャグ言ったらまた笑えるんだから。」
優子:
“Yeah,笑いと涙って友達かもしれんね。涙があるけん、笑いがもっとキラキラするっちゃ。”
「うん、笑いと涙って友達なのかもしれないね。涙があるから、笑いがもっとキラキラするんだよ。」
光子:
“Then maybe our friends will remember our笑い when they feel sad.”
「じゃあ、あの子たちも悲しいとき、うちらの笑いを思い出してくれるかもね。」
優子:
“Of course! We gave themいっぱいギャグのプレゼント!”
「もちろん!たくさんギャグのプレゼントをあげたもん!」
二人は顔を見合わせ、またくすっと笑った。涙と笑いが交じり合うその瞬間、約束は心の中で固く結ばれていた。
飛行機の窓に映る夕焼けを眺めながら、子供たちは福岡で過ごした日々を一つひとつ思い出していた。
――みんなでギャグを言い合って、涙が出るほど笑ったこと。
――即興のコントに混ざって、お腹を抱えて転げ回ったこと。
――スタジアムで見た野球やサッカーの熱気に胸を躍らせたこと。
――そして、福岡の美味しい食べ物を囲んで、みんなで笑顔を分け合ったこと。
普段は辛いことや重たい気持ちを抱えて生きてきた彼らにとって、その日々はまるで魔法のようだった。
「笑うことは、ただ楽しいだけじゃない。心を軽くして、前に進む力をくれるんだ」――そう教えてくれた日本のみんなへの感謝が、胸いっぱいに広がっていた。
やがて飛行機は福岡の街を離れ、彼らは涙と笑顔の思い出を抱きしめながら、それぞれの故郷――カナダとニュージーランドへと帰っていった。
カナダに帰った子
Friend (友達):
“So, how was Japan? Did you like it?”
「で、日本はどうだった? 楽しかった?」
Child (子ども):
“It was amazing! We laughed so much. We did comedy skits with our Japanese friends!”
「最高だったよ!めっちゃ笑ったんだ。日本の友達と一緒にコントしたんだよ!」
Friend:
“Comedy skits? Like on TV?”
「コント? テレビでやるみたいなやつ?」
Child:
“Yes! And we watched baseball and soccer games. The atmosphere was crazy fun!”
「そうそう!それに野球とかサッカーの試合も見たんだ。雰囲気がめっちゃ楽しかった!」
Parent (親):
“Did you eat well? What was the food like?”
「ちゃんと食べたの? 食べ物はどうだった?」
Child:
“Oh, the food! Ramen, takoyaki, and mentaiko! So delicious!”
「食べ物ね!ラーメン、たこ焼き、明太子!どれもめっちゃ美味しかった!」
⸻
ニュージーランドに帰った子
Sibling (きょうだい):
“Did you make friends in Japan?”
「日本で友達できた?」
Child:
“Yes, many! They hugged us when we left, and we cried together.”
「うん、いっぱい!帰るときハグしてくれて、一緒に泣いたんだ。」
Sibling:
“Aww… Do you miss them?”
「そっかぁ…恋しくなっちゃった?」
Child:
“Of course. But we promised to laugh together again on video calls.”
「もちろん。でもね、またビデオ通話で一緒に笑おうって約束したんだ。」
Parent:
“I’m glad you learned something important there.”
「大切なことを学んで帰ってきたんだね。」
Child:
“Yes. I learned that笑い is powerful. Even in hard times,笑い makes life brighter.”
「うん。笑いってすごいんだよ。どんなに辛くても、笑いがあれば人生が明るくなるんだ。」
ビデオ通話画面
光子:
“Hey everyone! We made a video with Five Peach★! Wanna watch it together?”
「みんな〜!ファイブピーチ★と一緒に動画つくったっちゃ!一緒に見よっか?」
優子:
“Yeah! It’s full of笑い and fun memories from Fukuoka!”
「そうそう!福岡での笑いと楽しい思い出がぎっしり詰まっとるよ!」
Canada Child (カナダの子):
“Wow, really? Send it now, please!”
「えっ、ほんと? 早く送って!」
NZ Child (ニュージーランドの子):
“I can’t wait! I miss those笑い so much.”
「待ちきれないよ!あの笑いが恋しいんだ。」
(光子がデータ送信ボタンを押す)
光子:
“Okay, video sent! Did you get it?”
「よし、送ったよ!届いた?」
Canada Child:
“Yes! Got it. Let’s press play together!”
「うん!届いた!せーので再生しよ!」
優子:
“Ready? 3…2…1… Play!”
「準備はいい? 3…2…1… 再生〜!」
(動画には、ギャグ大会、コントの舞台裏、球場での大声援、そしてみんなで食べたラーメンのシーンが映し出される)
NZ Child:
“Hahaha! That part was the best! Remember when we couldn’t stop laughing?”
「ははは!この場面最高やった!笑い止まらんかったの覚えとる?」
Canada Child:
“And the food scene! I can almost taste it again!”
「それと食べ物のシーン!もう一回味がよみがえるみたい!」
光子:
“See?笑い never fades, even across the ocean!”
「ほらね?笑いは海を越えても消えんのよ!」
優子:
“Yeah, and next time, we’ll make more memories together!”
「うん!次はもっといっぱい思い出つくろ!」
動画を見終わって、画面が静かになる
Canada Child:
“That was awesome… Next time, when I come back to Japan, let’s watch baseball together again!”
「最高だった…! 次に日本に行ったとき、また一緒に野球観ようよ!」
NZ Child:
“And I want to try more Japanese food! Maybe okonomiyaki or tonkotsu ramen!”
「それにもっと日本のごはん食べたい!お好み焼きとか、とんこつラーメンとか!」
光子:
“Deal! And we’ll prepare newギャグ for you guys. It’ll be even funnier!”
「よし決まり!それに新しいギャグ準備しとくけん。もっと面白くするよ!」
優子:
“Yeah, next time we won’t just laugh—we’ll make a whole comedy show together!”
「うん!次は笑うだけじゃなくて、一緒にお笑いショー作ろう!」
Canada Child:
“I’ll practice some jokes in English and Japanese, so we can perform together.”
「英語と日本語のジョーク練習しとくね!一緒にやろう!」
NZ Child:
“And I’ll bring souvenirs from New Zealand—sweet treats for everyone!”
「ニュージーランドのお土産持って行くよ!みんなに甘いお菓子!」
光子:
“Then it’s a promise—no matter where we are, we’ll keep笑い alive!”
「じゃあ約束やね!どこにおっても、笑いを絶やさんけん!」
優子:
“And when we meet again, we’ll laugh louder than ever!”
「次に会ったときは、今まで以上に大きな声で笑おう!」
(画面の中でみんなが同時に手を振り、笑顔と涙が入り混じる)
All together:
“See you again, friends! また会おうね!”
「また会おうね、友達!」
福岡の街に、静かな誇りの瞬間が訪れた。
光子と優子、そして仲間たちが取り組んだ「笑いと友情の交流活動」は、国内外で大きな反響を呼び、地域を超えて語り継がれる存在となった。
その功績を讃えて、博多南中学と博多南小学校の校庭には、ひとつの記念碑が建立された。
碑には、こう刻まれている。
――「笑いは国境を越える。涙は心を結ぶ。ここで生まれた友情は未来へ続く。」
除幕式の日、光子と優子は少し照れながらも、胸を張って立っていた。
光子:
“Wow… we really got a monument. Feels strange, doesn’t it?”
「わぁ…ほんとに記念碑が建ったね。なんか不思議やね。」
優子:
“Yeah… but it’s not just for us. It’s for all our friends around the world.”
「うん…でもこれはうちらだけやない。世界中の友達のためのもんやね。」
校庭に集まった子どもたちや保護者、そして先生たちが一斉に拍手を送る。その音は、空高く響き渡った。
碑の前に立った校長先生は、目を潤ませながら語った。
「この記念碑は、ただの石ではありません。ここには、子どもたちの笑顔と涙、そして友情が刻まれています。未来を生きるすべての人に、笑うことの大切さを伝え続けるでしょう。」
光子と優子は、お互いを見てにっこり笑う。
その笑顔は、遠いカナダやニュージーランドにいる友達にもきっと届いている。
記念碑除幕式の日
晴れ渡る青空の下、校庭に大きな布で覆われた記念碑が置かれていた。先生や地域の人々、そして生徒たちが集まる中、ステージには光子と優子、ファイブピーチ★のメンバーも立っている。
大きなスクリーンには、カナダとニュージーランドの友達の顔が映し出されていた。
司会の先生:
“Today, we unveil a monument to celebrate笑い, friendship, and hope.”
「本日、私たちは“笑いと友情、そして希望”を記念する碑を除幕します。」
Canada Child:
“Wow, we can see everyone! It feels like we’re right there with you!”
「わぁ、みんなが見える!まるでそこに一緒にいるみたい!」
NZ Child:
“Yes! We wish we could touch the monument too!”
「ほんとだ!ぼくらも記念碑に触れたいよ!」
光子:
“Don’t worry, this碑 is for all of us. Even if you’re far away, your names are in our笑い.”
「大丈夫!この碑はみんなのためのもんやけん。遠くにおっても、みんなの名前は笑いの中にあるっちゃ!」
優子:
“Ready? Let’s unveil it together—on three!”
「準備はいい? せーので一緒に除幕しよ!」
(先生と子どもたちがロープを引く。布が落ち、石碑の文字が現れる。)
――「笑いは国境を越える。涙は心を結ぶ。ここで生まれた友情は未来へ続く。」
Canada Child & NZ Child (同時に):
“Wow… It’s beautiful! Thank you, everyone!”
「うわぁ…きれい!みんな、本当にありがとう!」
光子:
“This monument will stand forever, just like our笑い.”
「この碑はずっとここに残るんよ。うちらの笑いと同じでね。」
優子:
“And one day, when you come back to Fukuoka, we’ll stand here together!”
「いつかまた福岡に戻ってきたら、ここで一緒に立とうね!」
(拍手と笑顔に包まれながら、記念碑除幕式は未来への約束を胸に刻んで幕を閉じる。)
地元ニュースのテレビ放送
キャスターが画面に映り、背景には除幕式の映像が流れている。
ニュースキャスター:
「本日、福岡市博多区の博多南小学校と博多南中学校で、国際交流と友情を記念する碑の除幕式が行われました。」
映像には、笑顔でロープを引く光子と優子、そしてスクリーン越しに見守るカナダとニュージーランドの子供たちの姿が映し出される。
ナレーション:
「この活動は、海外から来日した困難を抱える子供たちと地域の子供たちが“笑い”を通じて心を通わせたことから始まりました。その取り組みは地域に感動を与え、ついには記念碑建立という形で残されることになりました。」
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翌日の新聞記事
見出しには大きく、
『笑いは国境を越える ― 博多南に友情の碑』
と書かれている。
本文には、
「福岡市博多南小・中学校で1日、国際交流活動を記念する碑の除幕式が行われた。活動の中心となったのは、中学2年生の小倉光子さんと優子さん。海外の子供たちと共にギャグやコントを通じて交流を深め、友情の輪を広げてきた。その功績を讃え、校庭に碑が建立された。」
と記されている。
記事の最後には、光子と優子の言葉も紹介された。
光子:
「笑いは海を越えて届くけん。これからもずっとつなげていきたい。」
優子:
「友達との約束を忘れず、また一緒に笑いたいです。」
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ニュース映像を見た人々や新聞を読んだ地域の住民の間で、
「うちの子も、もっと笑顔を大事にしないとね」
「国境を越えて友達になれるって素晴らしいね」
といった声が広がっていった。
記念碑は、ただの石ではなく、未来へ向けて地域と世界を結ぶ“希望の証”となっていった。
春休みも終わりに近づいたある日。光子と優子は、校庭で少し汗ばむくらいの陽気の中、後輩たちと一緒に遊んでいた。
光子:
“Alright, let’s show them a newギャグ! Ready, Yuko?”
「よーし、後輩たちに新しいギャグ見せちゃろ!準備はいい、優子?」
優子:
“Yeah! Let’s make them laugh until they cry!”
「うん!泣くまで笑わせるばい!」
そこに、小学3年生のはなまるツインズが走ってきた。
はなまるツインズ:
“光子お姉ちゃん!優子お姉ちゃん!私たちも混ぜて〜!”
「お姉ちゃんたちのギャグ、私たちもやりたい!」
光子はにっこり笑い、優子は手を振る。
光子:
“Of course! We’ll teach you everything we know. But you gotta promise to practice!”
「もちろん!全部教えるけんね。でも、ちゃんと練習する約束やけん!」
優子:
“Yeah, laughter is serious business!”
「そうそう、笑いは真剣勝負ばい!」
一方、少し離れた場所では、小春(吉塚中3年生)が本を片手に静かに見守っていた。
小春(心の声):
“These girls… always so full of energy. I wish I could be that carefree, even with exams coming…”
「この二人、ほんと元気やなぁ。受験があっても、私もこんな風に自由に笑えたらな…」
光子と優子は、はなまるツインズにコントの基本ポーズを教えながら、笑い声をあげる。
小春も、遠くからその姿を見て、思わず微笑んだ。
春の光に包まれた校庭には、笑いと憧れが混ざった温かい空気が流れていた。
この光景は、次世代へと“笑いのバトン”が渡される瞬間でもあった。
空港で子どもたちの帰国を見送ったあと、光子と優子は自宅のリビングに戻った。
光子:
“Phew… we really did it, Yuko. We helped them smile again.”
「ふぅ…やり切ったね、優子。あの子たちに笑顔を届けること、できたね。」
優子:
“Yeah… it wasn’t easy, but seeing them laugh made it all worth it.”
「うん…大変やったけど、あの子たちが笑っとるの見たら全部報われたね。」
背後から、美鈴と優馬がにこやかに二人を見つめていた。
美鈴(母親らしい優しさで):
“光子、優子…本当に頑張ったのね。二人のその笑顔、見てるだけで胸がいっぱいになるわ。”
「光子、優子…本当に頑張ったのね。二人のその笑顔、見てるだけで胸がいっぱいになるわ。」
優馬:
“二人とも…おれらの誇りじゃ。心からの誇りじゃ。”
「二人とも、おれらの誇りじゃ。心からの誇りじゃ。」
光子と優子は顔を見合わせ、少し照れながらもにっこり笑った。
光子:
“Thanks… we just did what we could, but… it feels good to hear that.”
「ありがとう…うちら、できることをやっただけやけど…そう言ってもらえると嬉しいね。」
優子:
“Yeah… let’s keep making people笑顔, no matter what.”
「うん…これからも、どんなときでも人を笑顔にしていこうね。」
リビングに柔らかな春の光が差し込み、笑いと誇り、そして次の挑戦への決意が静かに二人を包んでいた。