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サッカーアビスパ観戦

試合開始前の午前中、光子と優子、そして来日した子どもたちは、それぞれ博多南中学と博多南小学校を訪れた。教室や講堂には児童生徒が集まり、普段の授業とは違う、緊張と期待が入り混じった空気が漂っている。


「Good morning, everyone! おはようございます、みんな!」

優子が笑顔で声をかけると、生徒たちも元気よく応える。


まずは中学の講堂で、ソフィーが前に立った。カナダから来た彼女は、紛争地から逃れてきた子どもたちの生活支援をしてきた経験について話す。


「Some children have to run for their lives because of war. 戦争のせいで、命からがら逃げなければならない子どもたちがいるの。」

生徒たちはその言葉に息を飲む。


「I’ve met kids who lost their parents in gunfire. 親を銃撃で失った子どもたちもたくさん見てきました。」

一人の女子生徒が思わず手で口を押さえ、目を大きく見開く。


続いてライアンが前に立つ。ニュージーランドでの自然災害による被害の話だ。


「Some children survived tsunamis and earthquakes, but lost everything they loved. 津波や地震で全てを失った子どもたちもいます。」

その場にいる生徒たちは言葉を失い、静かに耳を傾ける。


光子がそっと、会場を見渡して声をかける。


「Even though their stories are really sad, 人生には大変なこともあるけど、」

「we can learn to be kind and help each other. 私たちは互いに優しく助け合うことを学べるんだよ。」


優子も続ける。


「And even if life is really hard, 人生がどんなに大変でも、」

「we should never forget to smile. 笑うことを忘れちゃいけない。」


小学生のひなたとみずほも、小さな声で「Yes! そうだよね!」と頷く。


児童生徒たちは、初めは驚きや衝撃の表情を見せていたが、光子と優子の言葉に少しずつ心がほぐれ、深く考える時間を持つようになる。


「Even if we are far away from them, 遠くにいる子どもたちでも、」

「we can share happiness together. 幸せを一緒に分け合えるんだよ。」

光子が微笑みながら語ると、生徒たちの顔にも少しずつ笑顔が戻る。


こうして午前中の特別授業は、児童生徒にとって、ただ聞くだけの授業ではなく、世界の現実を知り、笑顔の大切さを学ぶ貴重な時間となった。





午前の特別授業を終え、児童生徒たちはまだ胸に衝撃と感動を抱えながら、昼食をとり、午後の準備を進める。来日した子どもたちも、光子と優子に手を引かれながら、初めてのサッカースタジアムへと向かう。


「Are you excited for the soccer game? サッカーの試合、楽しみ?」

優子が笑顔で聞くと、エマは目を輝かせて答える。

「Yes! I can’t wait! はい!もう待ちきれない!」


光子も笑いながら、ライアンに声をかける。

「Make sure you cheer loud! いっぱい応援してね!」

「Of course! もちろんだよ!」ライアンも拳を握って答えた。


スタジアムに着くと、緑の芝生とスタンドの熱気に圧倒される。観客席にはすでにアビスパ福岡のファンが集まり、応援の準備は万端だ。


「Wow… it’s huge! わぁ…大きい!」

ソフィーがスタジアムを見渡しながら、思わず息を飲む。


光子は、小春と奏太に耳打ちする。

「Let’s show them how we cheer in Japan! 日本式の応援も見せてあげよう!」


優子も笑顔で小声で言う。

「Yeah, we’ll teach them the chants! チャンツを教えてあげよう!」


試合開始までの待ち時間、福岡交響楽団が特別演奏を披露する。ディズニー映画の主題歌、ジブリ作品の名曲、そしてドヴォルザークの新世界交響曲が流れ、来場者たちの心は静かに高揚する。


「This music is amazing! 音楽、すごいね!」

エマが目を輝かせて言うと、ソフィーも頷く。

「It makes me want to dance! 踊りたくなっちゃう!」


演奏が終わると、ついにキックオフ。アビスパ福岡の選手たちがグラウンドに立つ。


「Here we go! さあ、始まるよ!」

光子が拳を突き上げる。


「Let’s cheer together! みんなで応援しよう!」

優子も大声で声を張り上げると、エマもソフィーもライアンも、周りの観客と一緒に手を叩きながら応援を始めた。


「Go, Avispa! 頑張れ、アビスパ!」

「Fight! ファイト!」


笑顔と歓声がスタジアムに満ち、遠く離れた国の子どもたちも、日本の熱気に触れ、笑顔で応援を楽しむ。光子と優子は、手を取り合いながら、こうして小さな世界が笑顔でつながっていく瞬間を実感していた。


試合は白熱し、子どもたちは歓声と拍手を惜しみなく送る。言葉が違っても、笑いと喜びは共通の言語であることを、誰もが感じていた。





スタジアムのスタンドに到着した光子と優子は、ちょうど翼と拓実と合流した。四人は、午後の試合前に特別な役割を与えられていた。


「Okay, let’s get ready for the interviews! インタビューの準備、よし!」

光子が翼に声をかけると、翼は小さくうなずいた。


「Right! We’ll ask the players some fun questions! 選手たちに面白い質問をしてみよう!」

拓実も笑顔で返事をする。


四人はグラウンド脇に立つ選手たちに向かい、試合前の意気込みやお気に入りのプレーについてインタビューを開始した。

光子がマイクを向ける。

「How are you feeling before the match? 今日の試合前の気持ちはどうですか?」


選手は笑顔で答える。

「Excited! ワクワクしてるよ!」


優子もマイクを握りながら、拓実に耳打ちする。

「Let’s make sure we ask about their favorite goals too! どのゴールが好きかも聞こう!」


インタビューが一段落すると、スタジアムのMCがマイクを握った。


「Ladies and gentlemen, 皆さま、本日ご来場いただきありがとうございます。今日は特別に、困難な状況下で毎日を過ごしている海外の子どもたちについても紹介します。」


観客席から静まり返る声が聞こえる。MCが続ける。


「Many children around the world are facing challenges such as conflict and natural disasters, そして一部の地域では感染症の影響も受けています。」


ここでMCは光子と翼、優子と拓実を指さす。


「Our special reporters, Koko and Tsubasa, Yuko and Takumi, will provide more details. 詳しい説明は、光子と翼、優子と拓実が担当します。」


光子がマイクを握り、真剣な表情で観客に向かって話し始めた。

「Hello everyone. みなさん、こんにちは。今日は、遠く離れた国で困難な状況にある子どもたちのことを紹介します。」


翼が続ける。

「Some of these children have lost their homes or families due to conflicts or disasters. 戦争や自然災害で家や家族を失った子どもたちもいます。」


優子も声を重ねる。

「Many of them are also affected by illness or lack of proper healthcare. 健康の問題や十分な医療を受けられない子どもたちもいます。」


拓実が言葉を補う。

「But even in these situations, they show courage and hope. それでも、彼らは勇気と希望を失わずにいます。」


光子は微笑みながら締めくくる。

「Today, we want everyone to remember that laughter and support can reach across the world. 今日、みんなに伝えたいのは、笑顔や支援は世界のどこへでも届くということです。」


観客席は静かに、しかし真剣な表情で聞き入っていた。小さな声援が広がり、希望と共感の波が会場に広がる。


翼と拓実、そして光子と優子は、国境を越えてつながる思いを観客に伝えることができた充実感に包まれていた。




試合開始までまだ30分。スタジアムの雰囲気はワクワクとざわめきが入り混じる中、光子と翼、優子と拓実は観客席で少し余裕を持ちながら、来場者たちと軽い謎かけ問答を始めた。


光子がにっこり笑って言う。

「Okay, let’s start some riddles! じゃあ、謎かけしよっか!」


翼も続ける。

「Yeah! We’ll do soccer riddles! サッカーのお題でね!」


優子が手を挙げて、お題を提示する。

「Here’s the first one! What is a soccer player’s favorite part of a tree? サッカー選手が木で一番好きなところはどこでしょう?」


観客の子どもたちは首をかしげる。

拓実が笑いながらヒントを出す。

「It’s where they can get a good kick! そう、蹴れるところだよ!」


光子が答えを教える。

「It’s the ‘goal’ branch! ゴールの枝!」


観客席から笑い声が上がる。

「Hahaha! Clever! うまい!」


次は優子が挑戦。

「Next riddle! 2036 World Cupにちなんだものよ。 What do you call a soccer match in the clouds? 雲の上でのサッカーの試合は何て言う?」


翼が思わず手を叩く。

「Oh, I know! It must be… a ‘high kick’ game! 高く蹴る試合!」


拓実もにっこり。

「Exactly! 正解!」


光子が笑いながら付け加える。

「Your turn, everyone! みんなも挑戦してみて!」


観客の子どもたちも、手を挙げて答えを叫ぶ。

「A goal in the sky! 空のゴール!」

「Cloud dribble! 雲のドリブル!」


優子は嬉しそうにうなずく。

「Great ideas! みんな、面白いね!」


こうして試合前の短い時間、サッカーやW杯にちなんだ謎かけで会場は笑いと笑顔に包まれ、観客も選手たちも自然とリラックスした雰囲気になる。


翼が最後にまとめる。

「Riddles make us laugh and think! 笑いながら考えるのが楽しいよね!」

拓実も付け加える。

「And it’s a good warm-up before the match! 試合前のウォーミングアップにもなるね!」


スタジアム全体に、軽快な笑いとエネルギーが広がり、午後のキックオフに向けて期待が高まった。




試合開始のアナウンスが近づき、スタンドに戻る光子、優子、翼、拓実の4人。司会を務めたおかげで、少しほっとした笑顔がこぼれる。


光子がにっこりと手を振って言う。

「Thank you everyone! みんな、ありがとう!」


優子も続ける。

「We really enjoyed hosting! 司会、とっても楽しかったよ!」


翼が笑いながら付け加える。

「It was exciting! やっぱりスタジアムはドキドキするね!」


拓実も元気に。

「Let’s go back to our seats! 席に戻ろう!」


その瞬間、はなまるツインズのひなたとさくらも現れ、4人に合流。小学2年生とは思えぬ元気で手を振りながら、スタンドへ駆け上がる。


ひなたが嬉しそうにささやく。

「We’re here to watch too! 私たちも観戦するよ!」


さくらも笑顔でうなずく。

「Yeah! 楽しみ〜!」


こうして光子と優子、翼と拓実、そしてひなたとみずほが揃ってスタンドに座ると、周囲の観客たちも和やかな雰囲気に包まれる。試合開始前の緊張感と、ワクワクした期待感が混ざり合う中、子どもたちの笑顔がひときわ輝いていた。


スタジアム全体に、試合への高揚感と、仲間と一緒に過ごす楽しさが広がっていった。




試合が始まると、スタジアムは瞬く間に熱気に包まれた。アビスパ福岡の選手たちと相手チームの激しい攻防は、一進一退。シュートのたびに大歓声が沸き、惜しいチャンスには観客が息をのむ。


光子は身を乗り出して叫ぶ。

「Come on, let’s go Fukuoka! がんばれ、福岡!」


優子も手を叩きながら応援。

「Shoot the ball! シュートして〜!」


翼と拓実は肩を組んで、祈るようにピッチを見守る。

「Please score! 頼む、決めてくれ〜!」


はなまるツインズのひなたとみずほも、必死に小さな手を振り、声を張り上げる。

「Go, go, Fukuoka! がんばれ、がんばれ!」


時間は刻一刻と過ぎ、試合終了間際、ついにアビスパ福岡がゴールを決める。スタジアム中が大歓声に包まれ、観客は立ち上がって喜びを爆発させた。


光子は両手を大きく振り上げて叫ぶ。

「Yes! We did it! やったー!」


優子も歓喜の声をあげる。

「We won! 勝ったー!」


翼と拓実は顔を見合わせ、興奮で笑いながら叫ぶ。

「Amazing! すごい試合だったね!」


ひなたとみずほも目を輝かせて、声をそろえる。

「Yay! やったー!」


スタジアム全体が喜びに包まれ、勝利の余韻が観客席に広がる。子どもたちはもちろん、大人も笑顔と歓声で溢れ、福岡の春のように温かい時間が流れ




試合終了の笛が鳴り、アビスパ福岡の勝利が確定すると、スタジアムは歓声と拍手の嵐に包まれた。観客席では子どもたちが興奮のあまり跳びはね、光子と優子も手を取り合って喜ぶ。


光子は息を弾ませながら言う。

「That was amazing! 信じられんくらいすごかったね!」


優子も笑顔で頷く。

「Yes! I can’t believe it! ほんとに勝った〜!」


翼と拓実は、スタンドの席に座りながら、隣の子どもたちに向かって声をかける。

「Did you enjoy the game? 試合、楽しかった?」


ひなたとみずほは手を振りながら答える。

「Yes! It was so exciting! めっちゃドキドキした!」


すると、海外から来日していたソフィーとライアン、そしてニュージーランドのエマとオリバーも笑顔で手を振る。ソフィーが英語で言った。

「That was incredible! We’ve never seen such a thrilling match! こんなに白熱した試合は初めて見たわ!」


ライアンも頷きながら続ける。

「Yeah, the energy here is amazing! ここの熱気、すごいね!」


エマは目を輝かせて付け加える。

「And the fans are so passionate! ファンのみんなも熱いわ!」


オリバーは感心しながら言う。

「I’ve never seen kids cheer like this back home! 子どもたちの応援、本当にすごい!」


光子と優子は嬉しそうに肩を寄せ合い、観客席を見渡す。

「We wanted everyone to enjoy and smile, and I think we did it! みんなに笑顔になってもらいたくて…できたね!」


優子も笑いながら言う。

「And maybe, they’ll remember this day forever! みんな、この日をずっと覚えてくれるかもね!」


その瞬間、子どもたちの中から小さな歓声が上がる。試合の勝利だけでなく、笑顔や楽しさを分かち合った経験が、彼らの心に刻まれたのだ。


光子はささやくように言う。

「No matter where we come from, we can all share joy together. どこにいても、笑顔はみんなで分かち合えるんだね。」


優子も同意するように頷く。

「Exactly! And that’s the most important thing. それが一番大事なことだよ。」


その日、スタジアムには国境も言語も関係なく、ただ笑顔と歓声があふれていた。勝利の喜び、友情の輪、そして共に過ごす時間の尊さが、静かにそして確かに、全員の胸に残ったのだった。


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