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福岡の家族

機内で出された機内食を食べ終えたあと、アキラがウトウトしている横で、美香はスマホを取り出した。

ちょうどその時、光子と優子からメッセージ通知が入る。


「ん?……あ、またギャグ動画やん!」

思わず声を漏らし、再生すると――。


画面の中では、双子が変顔をしながら「たまゴジラの逆襲!」と叫び、今度は卵の殻を頭にかぶって登場。さらに二人でタイミングを外しまくった合唱を始め、最後は息ぴったりのオチで締めていた。


美香は座席で肩を震わせながら笑った。

「ぷっ……あははははっ!ほんとにこの子たち、天才やね!」


笑いすぎて隣のアキラが目を覚まし、

「なになに?また双子の仕業?」

と眠そうに聞いてきた。


美香はスマホを見せながら、コメントを打ち込む。

『あんたたち、海外の人たちにもめっちゃ受けてたよ。もう、あんたたち世界的なエンターテイナーじゃん!』


送信ボタンを押すと同時に、心の底からじんわりと誇らしい気持ちがこみ上げてきた。

ニュージーランドで偶然広がった笑いの渦が、国境を越えて多くの人をつないでいる。


窓の外には、果てしなく続く太平洋。

美香はその大空を見つめながら、双子の無邪気な笑顔と、世界中から届いた笑い声を重ね合わせた。


「ほんと……すごいことになってるね。」

彼女の呟きは、エンジン音にかき消されることなく、隣のアキラの胸にも届いていた。




タイトル:ただいま、福岡 — 帰国と笑顔の再会


日本時間の夕方六時過ぎ、福岡空港の国際線ターミナルに飛行機が着陸した。

美香とアキラは長旅の疲れを感じながらも、荷物を受け取り、搭乗ゲートを抜けると――


「ただいま〜!無事に帰ってまいりました〜!」


出口の先には、赤嶺の祖父母、そして小倉家の家族が揃って待っていた。さらに、ファイブピーチ★のメンバー、環奈と塁、由美と詩織の顔も見える。


「美香、おかえり。楽しかったか?」

「お姉ちゃん、おかえり〜!」と光子と優子が元気いっぱいに駆け寄る。


一瞬で笑顔と声に包まれた空港は、まるで小さな祭りのようだった。

みんなに抱擁され、土産話を語りながら空港を後にする二人。

既に宅配で送ってある土産を、迎えに来てくれた人たちに手渡していく。


「これ、赤嶺のおじいちゃんとおばあちゃんに。」

「詩織と由美にはこれ、環奈と塁くんにはこれ。」


受け取ったみんなは笑顔で「ありがとう、またね〜!」と言い、帰路についた。


「疲れてるだろうから、晩御飯作ってあるけん、アキラくんもミカも食べて帰りなさい」と美鈴。


「今日は6人で夕食じゃね〜!」と、双子ちゃんははしゃぎながら席につく。


小倉の家に戻った二人は、ふとスマホを手に取り、海外でどれだけバズっているか確認してみる。

コメント欄には、英語やフランス語、スペイン語など様々な言語で、「あなたたちの動画で笑顔になった」「戦争や困難の中でも笑いを届けてくれてありがとう」といったメッセージが溢れていた。


美香は目を細め、アキラの腕に寄りかかりながら笑う。

「ほんな、あんたたち、世界中に笑顔届けよるとやね……」


アキラも微笑み返し、肩をすくめる。

「まさか、うちの妹たちのギャグがここまで……って感じやな」


夕暮れの光がリビングに差し込み、疲れと安堵と喜びに包まれた家の中。二人は改めて、帰国の喜びと家族との再会の幸せをかみしめた。




晩御飯は、みんなが揃って食卓に着く。美鈴の手作り料理が並び、湯気が立ち上る。美香とアキラは長旅で少し疲れていたが、家族の笑顔にほっとしながら箸を進める。


「これ、うちの妹たち、また動画アップしとるやん!」と光子がスマホを見せる。


「え、ほんと?」美香が画面を覗き込むと、そこにはニュージーランド滞在中に撮影した妹たちのギャグ動画が再生されていた。英語字幕付きで、世界中の人々に受けていることがわかる。


「わぁ、コメントがいっぱい来とる!フランス語にスペイン語、英語……世界中の人が見てるやん!」アキラも目を丸くする。


「ほんな、うちら、世界的エンターテイナーになったとやね〜」光子は満面の笑みで言う。

「お姉ちゃん、海外でもめっちゃ笑わせてる〜!」優子も続く。


祖父母や両親も画面を覗き込み、驚きの声を上げる。

「なんね、こんなに人気になるとは思わんやった…!」祖父が目を細める。

「ほんと、もう孫たちすごかねぇ」と祖母もにっこり。


家族全員で笑い転げながら、コメントのひとつひとつを読んでいく。

「“We laughed so hard! Thank you!”って、海外の人も笑いすぎてるんやね〜」と美香。

「戦争や紛争地の子どもたちからも、“Once the war ends, we want to laugh like you again.”って来とるし…」アキラが真剣な表情で画面を見つめる。


双子ちゃんのギャグが、遠く離れた異国の人々の心に笑いを届けている事実を前に、家族は改めて驚きと感動を味わった。


「うちらが作ったギャグが、世界中の人に届いとるって、なんか不思議やねぇ」美香は小さく呟く。

「でも、やっぱり嬉しかね〜」アキラが肩を抱き寄せる。


食卓は笑い声と驚きの声で満ち、晩御飯はいつも以上に温かく、和やかな時間となった。

そして、美香とアキラは、妹たちの才能と家族の温もりに改めて感謝しながら、これからの未来に思いを馳せるのであった。





美香とアキラは、空港まで見送ってくれた家族やファイブピーチ★のメンバーに手を振り、福岡への帰路についた。


「ほんと、楽しかったねぇ、アキラ」

「うん、あっという間やったね。でも、妹たちが海外でこんなに受けとるなんて、びっくりやった」


一方、光子と優子は家で、公式ホームページやファンクラブの管理画面を開いていた。ページには海外からの注文が次々に入っている。たまゴジラのTシャツ、うにゃだらぱ〜グッズ、うにゃ〜あじゃぱー、あんれまんまぁ……。


「わぁ、すごかね〜、海外からも注文来よる!」光子が画面を指差す。

「ほんとや、なんか意味は分からんやろうけど、キャラとか音の響きで売れよるんやろうねぇ」優子も感心したように頷く。


二人は画面の数字を眺めながら、思わず顔を見合わせて笑う。

「世界の人たちが、うちたちのギャグに笑ってくれとるんやね〜」光子が嬉しそうに言う。

「そうやね、キャラの絵とか、言葉の響きとか、きっと楽しいって感じるんやろうな」優子も笑顔で続ける。


遠く離れた国々の人々が、意味は分からなくても、二人の生み出すユーモアとキャラクターを楽しんでくれている——その事実に、光子と優子は改めて胸を躍らせた。


「よし、次のギャグも考えようか!」光子が意気込むと、優子も「うん、また海外の人たちも笑わせるばい!」と元気に応えた。


こうして、双子の小さな笑いは、言葉の壁を越え、世界中の人々の心に届き始めていた。





光子と優子が管理画面を眺めると、たまゴジラやうにゃだらぱ〜グッズのほかに、あの「モレモレマン」の関連グッズも海外からの注文が増えていた。


「わぁ、モレモレマンも売れよるやん!」光子が画面を指差す。

「ほんとや、なんで海外の人がこんなキャラにハマるとやろ…」優子も笑いながら首をかしげる。


二人は、意味は分からんでも、キャラのユーモアやビジュアル、語感が世界中の人たちに受けていることを実感した。


「うちたち、知らんうちに世界進出しとるやん!」光子が嬉しそうに言う。

「次はどんなギャググッズ作ろうかね〜」優子もワクワクしながら答える。


画面の数字が次々と動く。海外からの注文、メッセージ、コメント——。言葉の壁を越えて、双子の笑いは世界中の人々に届いていた。


「もっともっと笑わせるばい!」光子が拳を握ると、優子も元気よく「うん、海外の人も巻き込むけん!」と応えた。


こうして、たまゴジラに続き、うにゃだらぱ〜も、うにゃ〜あじゃぱーも、そしてモレモレマンも——双子のユーモアは世界に広がり、予想もしなかった大きな反響を呼んでいた。





光子と優子は、モレモレマンやたまゴジラの海外での大反響に大興奮のまま、新たなグッズ展開について話し合いを始めた。


「次は、おおねっち病グッズ作ろうや!」光子が目を輝かせる。

「いいね〜。で、さぼりんちょも作ろうか」と優子が続ける。


二人はキャラクターデザインのアイデアをすぐに描き始めた。


「おおねっち病のキャラは、ミカお姉ちゃんがニュージーランドで撮ってきたペンギンの正面写真をもとにするっちゃ。熱出してヘナヘナ〜って、水枕しながら寝とるイメージね」光子が説明する。

「さぼりんちょは、ダラーッとごろ寝しながらテレビ見とるペンギンにしよう。これなら、シャツや文房具、缶バッジにも展開できるね」と優子。


二人はすぐにスケッチを描き、シャツの配置や文房具のデザイン、事務用品のアイデアまで次々とまとめていった。


「これ、ファンクラブ事務局に提出しよう。みんな喜ぶばい!」光子が言うと、優子も頷き、「うん、海外のフォロワーさんも絶対好きやろうね」と笑顔になる。


こうして、新たなペンギンキャラ——「おおねっち病」と「さぼりんちょ」は、既存のキャラクターたちに続く、次世代の笑いの象徴として生まれる準備が整ったのだった。





次の日の夕方、光子と優子はリビングで宿題をしながら、ふと顔を上げて美香お姉ちゃんに報告した。


「ミカお姉ちゃん! 新キャラのデザインと、グッズのデザイン、ファンクラブ事務局に出しといたよ〜」


美香は目を丸くして、驚いた顔で二人を見つめる。

「あんたたち、もう新キャラとグッズのあん出したと? なんか展開早かね〜!」


光子はニヤリと笑い、優子も思わず「えへへ〜、でも早い方がファンも喜ぶやろうもん」と胸を張った。


美香は笑いながらも感心したように、「もう、さすがうちの双子やね〜。行動力が違うわ」とつぶやいた。


二人は互いに顔を見合わせ、これから始まる新たなペンギンキャラクターの冒険に、胸を躍らせるのだった。





数日後、試作品がファンクラブ事務局から届いた。


リビングのテーブルの上に広げられたグッズを前に、美香と光子、優子は真剣な表情で並ぶ。


「んー、この角度の線、ちょっと丸みが足りんかもね」

「ここ、ヘナヘナ〜って寝てる感じ、もっと伝わるようにせんと」


美香の的確なアドバイスに、双子はメモを取りながら頷く。二人で意見を出し合い、キャラクターの表情やポーズを少しずつ調整していった。


数時間後、3人で詰めの修正を終え、企画書をまとめて提出。


「これで最終デザイン、決まるね!」と優子。

「うん、あとは生産が始まったら、いよいよグッズがファンの手に届く」と美香が笑った。


こうして、新しいペンギンキャラクターのおおねっち病とさぼりんちょのグッズは、ついに生産の段階に入ったのだった。




リビングには、最新作のおおねっち病とさぼりんちょのギャグTシャツがずらりと並ぶ。


「よーし、今日はこの新作でファッションショーばやろう!」

美香の声に、光子と優子は目を輝かせて頷く。


まずは双子がモデル役を務める。おおねっち病のTシャツを着ると、二人はベッドでヘナヘナ〜と寝そべるポーズを決め、家族やファイブピーチ★のメンバーを笑わせる。


「おおー、ヘナヘナ感が完璧やん!」

アキラも感心して拍手。


次にさぼりんちょTシャツを着た光子がダラーっとごろ寝し、優子がテレビを観るポーズをとる。まるでTシャツのキャラクターがそのまま動き出したかのようだ。


「こっちも最高〜!腹筋がつるわ〜」

ファイブピーチ★のメンバー、環奈と塁、由美と詩織も大笑い。


お父さんも参加して、さぼりんちょのTシャツを着て、ソファに横たわるポーズを決めると、光子と優子は「お父さん、いい味出してる〜!」とツッコミ。


お母さんも負けじと、おおねっち病のTシャツを着て、枕を抱えてヘナヘナ〜と寝そべる。家族全員でのコラボレーションは、部屋中に笑い声を響かせた。


美香は笑いながら、「よーし、これでグッズのPR動画も作れるね!」と意気込み、みんなでカメラの前でポーズを決める。


こうして、自宅リビングでの新作ギャグTシャツのファッションショーは、家族とファイブピーチ★の笑いと愛情に包まれながら、盛大に幕を閉じた。




笑顔は国境を越えて — 双子のギャグ、世界に羽ばたく


ショーの動画を公式ホームページとSNSにアップすると、たちまち再生数が伸び始めた。光子と優子の新作ギャグTシャツのポーズ、家族やファイブピーチ★メンバーのユニークなパフォーマンスは、言葉がわからなくても楽しめる映像だった。


翌日には、海外からもコメントが続々と届く。


「This is hilarious! I love the penguin T-shirts!」

(めっちゃ面白い!ペンギンTシャツ大好き!)


「Your family is so funny and cute!」

(あなたたち家族、めっちゃ面白くて可愛い!)


「My kids are laughing so hard watching this video. Thank you!」

(子どもたちがこの動画見て爆笑してるよ。ありがとう!)


美香とアキラは、笑いながら画面を覗き込む。


「すごかね〜、海外の人たちも笑いよるばい!」

美香が嬉しそうに言うと、アキラも頷く。


「しかも、コメントの中には、戦争や紛争地域に住んでる子どもたちからのものもあるばい。笑ってくれとると聞くだけで、なんか胸が温まるなぁ。」


光子と優子は、まだ寝っ転がりながらスマホを覗き込み、コメントを読み上げる。


「Look! Someone from Spain says ‘I can’t stop laughing!’」

(スペインの人が「笑いが止まらない!」って言っとる!)


「And another from Brazil! They love Oonecchi-chan!」

(ブラジルからも!おおねっち病ちゃんが大好きって〜!)


こうして、ニュージーランドで生まれたギャグやキャラクターは、言葉を超えて世界中の人々の笑顔に広がっていった。





美香は微笑みながら、双子に言う。

「すごかね〜、海外の人たちも笑いよるばい。」


アキラも頷く。

「しかも、コメントの中には、戦争や紛争地域に住んどる子どもたちからもあるとばい。笑顔が届いとると思うと、胸が熱くなるなぁ。」


その後、光子と優子は、ファンクラブを通じて海外ファンと直接やり取りを始める。英語やスペイン語、ポルトガル語で返信を書き、グッズやTシャツの発送先、通販の案内なども行う。


「We are so happy you like our characters!」

(私たちのキャラクターを気に入ってくれてうれしいです!)


「The new Oonecchi and Saborincho goods will be shipped to you soon!」

(新しいおおねっち病ちゃんとさぼりんちょグッズ、すぐに発送します!)


ファンたちは、自分たちの送ったコメントやグッズがちゃんと届くことに喜び、動画や写真をSNSでさらにシェアする。その連鎖は、やがて世界中の子どもたちや大人たちの笑顔につながっていった。


美香とアキラは、その様子を見ながら、静かに手を取り合う。

「世界に笑顔が広がるなんて、ほんとに不思議やね。」

「でも、私たちの双子ちゃんパワーやけんね。」


こうして、言葉の壁を超えて、双子のギャグや家族の笑いは、世界の人々をつなぐ架け橋となった。










星降る大地からの贈りもの


楽団の練習場に、扉を開けて入ってきた美香とアキラを見つけると、真っ先に駆け寄ってきたのはクラリネット奏者の 圭介 だった。

「おおっ!帰ってきたね〜!二人とも元気そうで何より!」


その声に誘われるように、ヴァイオリンの 亜里沙 が顔を上げ、笑顔で手を振る。

「おかえり〜!待ってたよ!お土産話、いっぱいあるでしょ?」


打楽器の 翔太 が、スティックをくるくると回しながら冗談めかして言った。

「どうせ、土産話よりギャグ動画の方が盛り上がるんやろ?」


その後ろから、ホルンの 絵美 が小さく吹き出して、

「翔太くん、そういうとこやで」と肩をすくめる。


美香とアキラはそろって深々と頭を下げた。

「1週間のお休みをいただき、ありがとうございました!これ、ニュージーランドのお土産です!」


二人は大きな紙袋から次々と荷物を取り出し、休憩所のテーブルに並べていった。

羊の模様が入ったクッキー缶、カラフルなキャンディ、ティーバッグの詰め合わせ、そしてペンギンやキーウィのキーホルダー。


「わ〜!かわいい!」

「ちょっと見てこれ、羊がめっちゃリアル!」

「キーウィのキーホルダー、俺にちょうだい!」


仲間たちがワイワイ言いながら手を伸ばす姿に、美香は自然と頬がほころんだ。


やがて、休憩時間になると、アキラがノートパソコンを取り出し、スクリーンに写真や動画を映し出す。

最初に映ったのは、南島の夜空に広がる 南十字星。


「うわぁ……」

その場にいた全員が息をのむ。


トロンボーンの 浩二 が低い声で呟いた。

「まるでプラネタリウムよりすごいな……。こんな星空、見たことないわ。」


次に映ったのは、マゼラン星雲と、その奥に広がるタランチュラ星雲。学芸員が英語で説明している映像に、美香が質問している場面が重なる。


「美香、英語で質問してる!かっこいい!」と、フルートの 里奈 が思わず声を上げる。


さらに動画は切り替わり、野生のペンギンがよちよちと草むらから現れるシーンに。

「きゃ〜!かわいい〜!」

絵美が思わず手を叩くと、翔太がすかさず、

「ペンギンって歩き方、俺の朝みたいじゃない?」

「え?翔太くん毎朝あんなヒョコヒョコしてるの?」

と亜里沙が突っ込み、みんな爆笑。


そして双子の妹、光子と優子から送られてきたギャグ動画のシーン。英語字幕をつけて観光客と一緒に爆笑している様子も映されると、楽団員たちは声を出して笑いながら転げ回る。


「これ、外国でも通じるんやね〜!」

「ほんまに海外進出やん!」


一通り笑いと驚きが収まったところで、美香は静かに言った。

「ニュージーランドで見た星空も、人の優しさも、本当に忘れられなくて……。この旅で感じたことを、音楽にしたいと思っています。」


アキラが続けた。

「組曲にします。星空の瞬き、自然の雄大さ、そして人の温かさをテーマにして。」


その言葉に、練習場の空気が変わった。


圭介が手を叩き、

「それ、めっちゃいいやん!俺らも全力で協力するよ!」


浩二も腕を組みながら頷く。

「トロンボーンで、あの雄大な星空を表現できたら最高やな。」


里奈は瞳を輝かせて、

「フルートで、星の瞬きを描ける気がする……!」


亜里沙が微笑んで弓を握りしめる。

「ヴァイオリンで風を奏でたいな。ニュージーランドの大地を渡る風を。」


翔太はスティックを机にコツコツと当てながら、

「パーカッションは任せとけ!大地の鼓動をドーンって響かせるから!」


仲間たちの反応に、美香とアキラは胸が熱くなる。

この旅で得たものは、ただの思い出ではない。音楽を通して、みんなと共有し、新しい世界を創り上げる種になるのだ。


美香はそっと手帳を開き、旅の途中で書き留めたフレーズを指でなぞった。

「このメロディ、夜空の下で浮かんだんよ。ここから始めたい。」


アキラは頷き、トランペットを構えた。

「じゃあ、ここから曲を紡いでいこう。俺らの“星空の組曲”を。」


練習場に音が流れ始める。

それはまだ拙い旋律だったが、確かにニュージーランドの風と星のきらめきを含んでいた。


仲間たちの音が重なり合い、やがてひとつの大きな流れとなっていく。

まるで南の夜空で輝いていた星々が、このら場に降りてきたかのように。





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