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体育祭始まる


チキンカレー


光子と優子が作ったチキンカレーと野菜サラダがテーブルに並ぶ。香ばしいカレーの匂いが部屋中に広がり、思わずお腹が鳴る。


「もうすぐお父さん帰ってくるね」光子が窓の外を見ながらつぶやいた。

「出来立てを一緒に食べてもらいたかね」優子も楽しげに話す。


ほどなくして玄関のドアが開き、優馬が帰宅した。

「ただいま〜」疲れた様子ながらも自然と笑顔がこぼれる。


「おかえりー!」光子と優子、そして美鈴が声を合わせる。

「わぁ、すごい!美味しそうやん!」優馬はテーブルに目をやり、思わず感嘆の声を上げた。


「いただきます!」四人で声を揃え、食事が始まる。

チキンカレーはスパイスがほどよく効き、口に入れた瞬間に深い味わいが広がる。サラダは瑞々しく、ナスビやトマトの甘みが引き立っている。


「光子、優子、今日も美味しいね!」優馬が感心するように言うと、二人は顔を見合わせてにっこり。

「お父さんに喜んでもらえてよかった〜」光子が笑顔で言うと、優子も「うん、愛情たっぷりやけんね」と嬉しそうに答えた。


美鈴も、テーブルを見ながら微笑む。「二人とも、料理上手になったね。これからも家族みんなで美味しい時間を楽しんでいこうね」


家族四人で囲む食卓は、笑い声と温かい会話に包まれ、夏の一日を締めくくる幸せな時間となった。




カレーを一口食べて満足そうにしていた優馬に、光子がいたずらっぽく笑って言った。

「ねぇ、お父さん。今日のカレー、隠し味なんが入っとるか当ててみらん?」


「おぉ、なんやクイズやね!」優馬はスプーンを置いて腕を組む。

「うーん……この酸味と甘さ……トマトやろ?」


「ピンポーン!大正解〜!」優子が手を叩いて笑う。

「でもね、お父さん。まだもう一つ隠し味があるっちゃん」


「えっ、まだあると?……なんやろうなぁ」優馬は真剣な顔で味わう。

「う〜ん……後味がちょっとさっぱりしとるけん……まさか……生姜か?」


「大当たり〜!」光子と優子が同時にガッツポーズ。

「さすがお父さん!」

「伊達に毎日、うちらのカレー食べてなかね!」


「ははは、そりゃそうたい!」優馬は照れくさそうに笑った。

美鈴はそんな様子をにこにこ眺めながら、「ほんと、なんか今日のカレー、ますます美味しかごたるねぇ」とつぶやく。


食卓はクイズ大会のように盛り上がり、笑い声が台所いっぱいに広がった。





夕食を終え、片付けも一段落。シンクも拭き上げて、ようやく一息ついた優馬と美鈴は、ダイニングの椅子に並んで腰を下ろした。


「ふぅ……今日もよう笑わせてもろうたねぇ」美鈴が湯呑みを両手で包みながらつぶやく。

「ほんとやなぁ。光子も優子も、料理もギャグも、だいぶ板についてきたばい」優馬も笑みを浮かべる。


美鈴はしばらく考え込むようにしてから、しみじみと言った。

「ねぇ、あの二人、もう料理もすっかり一人前やねぇ。包丁の持ち方も危なげなかし、味付けもちゃんと工夫しよるし……」


「うんうん。俺も思った。二人とも、きっといい奥さん、いいお母さんになるっちゃろうね」優馬の声には誇らしげな響きがあった。


美鈴はふっと目を細め、優馬の横顔を見つめる。

「そうやねぇ……。あの子たちが大人になって、自分の家族を持って、またこうやって食卓を囲む日が来るんやろうね」


「そんときは、俺たちが“おじいちゃんおばあちゃん”っち呼ばれるとよなぁ。なんか、想像したら笑えるばい」

「ははは、そうねぇ。けど、きっと幸せな光景やろうね」


二人は同時に笑い合い、窓の外から聞こえる秋の虫の声に耳を澄ませた。家の中には、どこか未来への温かい期待が静かに満ちていた。





ちょうどその時。廊下の向こうで、ぎし、と床板が小さく鳴った。

――どうやら、光子と優子がコソコソと立ち聞きしていたらしい。


「……ちょ、聞いた?奥さんとかお母さんになるとか、気が早すぎやろ〜!」

「ほんとほんと!まだ中学生やけんね?わたしたち!」

廊下から二人の声が飛び込んでくる。


驚いた優馬と美鈴が顔を見合わせると、光子と優子は顔を真っ赤にしながら部屋に飛び込んできた。


「お父さん、お母さん、勝手に将来の話しとるやろ〜!」

「ほんと、盗み聞きして損したっちゃ!」


慌てる二人を見て、美鈴は優しく微笑んだ。

「ふふふ、でもね、親としては、娘の幸せな姿を想像するのは自然なことやとよ。光子も優子も、きっと素敵な家庭を持つと思うけんね」


その言葉に、光子と優子はますます頬を赤らめ、照れ隠しのように同時に叫んだ。

「も〜、恥ずかしいけんやめてよぉ〜!」


しかしその目は、少しだけうるんでいて。二人の胸には、家族の温かさがじんわりと染み込んでいた。





優馬がぽつりと口を開く。

「光子も優子も、ほんによう育ってくれたなぁ。明るうて、元気で、人を笑わせる力まで持っとる。あの子らの周りは、自然と笑顔が集まるっちゃ」


美鈴は微笑みながらうなずいた。

「そうやね。わたしはね、あの子たちには……まずは自分を大事にしてほしいっちゃ。人に流されんで、自分のやりたいことをしっかり見つけて、胸張って歩んでいける女性になってほしい」


優馬も頷き、少し遠くを見つめるように続ける。

「そやけん言うたら、立派にならんでよか。お金持ちにならんでよか。けど、人の痛みがわかる大人になってほしか。困っとる人を見たら、手ぇ差し伸べられる、そんな人間に」


美鈴は、少し声をやわらげて言った。

「それに……幸せになってほしい。家庭を持つかどうかは、あの子たちの自由。でも、どんな形でもええけん、心から『今が幸せ』って思える人生を歩んでほしか」


優馬は湯呑みを置き、美鈴の言葉に深くうなずいた。

「そうやな……。わしら親ができるのは、ただあの子らの背中押すことくらいや。最後は光子と優子が、自分で選んで、自分で生きていく。けど、その時に心の中で支えになるような親でおらんといかんね」


二人の声は小さかったが、温かい想いがあふれとった。

そして廊下の向こうでは……光子と優子が、こっそり耳を澄ませて、胸をいっぱいにしながら聞いとった。





廊下にしゃがみこんで耳をそばだてとった光子と優子。

美鈴と優馬の声が胸にじんわり染み込んで、二人は目を見合わせた。


光子が小さな声でつぶやく。

「……なんか、泣きそうになった」


優子も鼻をすすりながら、

「うちも……。でも、泣き顔で部屋入ったら、すぐバレるやろ」


二人はしばし黙ったあと、同時に顔を見合わせて、ニヤッと笑う。

「ギャグでごまかそ!」


勢いよく居間に飛び込んできた光子と優子。

光子は両手を広げて、

「はいはーい!ただいま参上!泣きそうになったんは、タマネギのせいです!」


優子も負けじと、鼻をこすりながら、

「いやいや、カレーの隠し味が『涙』やったんよ!カレー涙味!」


突然の乱入に、美鈴は「なんね、あんたたち!」と驚いて笑い出す。

優馬も「お前ら、聞いとったな?」と苦笑しながら湯呑みを置いた。


光子と優子は顔を見合わせて、わざと胸を張る。

「聞いてない聞いてない〜!ただのカレーのスパイス研究〜!」

「そうそう!親子愛スパイス、しっかりしみとったばい!」


美鈴はそんな二人を見て、涙目になりながらも大笑い。

「ほんに……あんたたちには敵わんね。笑いに変える才能は天下一品やわ」


優馬も肩を揺らして笑い、

「よし、今日の勝負はお前らの勝ちやな」


その夜、家の中には笑い声と、ほんのりとした涙のぬくもりが溶け合って広がっとった。





その夜。

二人は布団に入ってもなかなか寝つけんかった。天井を見つめながら、光子がぽつりと口を開いた。


「……お父さんとお母さん、うちらのこと、あんなふうに思ってくれとるんやね」


優子も横でうなずきながら、声を潜める。

「うん……。なんか胸がぎゅーってなった。大人になったら、どんな人生歩むかって……真剣に考えてくれとるんやもん」


しばしの沈黙。二人の胸には、あたたかいものが広がっていた。


光子は両手を布団の上に出して、ぎゅっと握りしめる。

「うちは、ちゃんと人を大事にできる大人になりたい。お父さんとお母さんみたいに、周りの人を笑顔にできる人になりたい」


優子はその言葉を聞いて、にっこり笑った。

「うちも。……あと、絶対にお父さんとお母さんを安心させたい。どんな時でも、『この子たち大丈夫やね』って思ってもらえるようになりたい」


二人はしばらく目を閉じ、静かに胸いっぱいの思いを噛みしめた。


やがて光子が、少し照れくさそうに笑いながらつぶやく。

「でもなぁ……。なんか泣けそうやけん、ギャグに変換せんと寝られんわ」


優子もくすっと笑い、すかさず返す。

「ほんなら、こう言おうや。——今日のカレーの隠し味は、涙と愛情と、未来へのエール!」


「うまい!それ、明日の朝お父さんとお母さんに言っちゃろ!」


二人の笑い声は、夜の闇に吸い込まれるように広がり、やがて心地よい眠気に変わっていった。


胸いっぱいのまま眠りについた光子と優子の夢は、どこまでも明るく、未来に向かって輝いていた。





朝ごはんの食卓で、光子と優子は昨日の夜、布団の中で話した“隠し味”のことを得意げに両親に伝えた。


「ねぇねぇ、お父さん、お母さん。昨日のカレーのほんとの隠し味、うちら見つけたっちゃ!」

「なんや?まだ他にあったと?」と優馬が箸を止める。


光子が胸を張って答えた。

「涙と愛情と未来へのエール!」


優子も負けじと、両手を大きく広げて叫ぶ。

「そうそう!それがほんとの隠し味やったっちゃん!」


優馬と美鈴は思わず顔を見合わせ、声を上げて笑った。

「なるほどねぇ。そりゃ隠し味どころか、料理の本体やね」

「ほんと、二人はうまいこと言うねぇ。お父さんとお母さん、朝から元気もらったばい」


光子と優子は「いってきまーす!」と元気に玄関から飛び出していく。

制服のスカートをひらりとなびかせ、スクールバッグを肩にかけて、家の前の坂道を並んで駆けていく後ろ姿を見送りながら、優馬と美鈴はしばし並んで立ち尽くした。


「……いつかは、あの子たちもこの家を巣立っていくんやねぇ」

「ほんとやね。でも、あの子たちなら大丈夫よ。笑いも元気も、ちゃんと持っていっとるけん」


二人は少し寂しそうに、それでも誇らしげに笑った。


——その頃。


光子と優子は学校の正門をくぐりながら、すでに愚痴をこぼしはじめていた。

「はぁ〜……今日も体育祭の練習やん。絶対タッカマン、あちーのに“走れ走れー!”って叫ぶっちゃろ」

「わかるわかる!タッカマンの熱血で、気温3度は上がるけんね」


二人で顔を見合わせ、「暑さ倍増やん!」と同時に叫ぶと、後ろから歩いてきたクラスメイトたちがクスクス笑い出す。


笑いの渦に包まれながら、光子と優子の一日はまた賑やかに始まった。




朝の校庭。体育祭の練習前に、光子・優子・さおり・拓実の四人は、朝からギャグ祭りで大はしゃぎ。


「もう〜、朝っぱらから元気すぎやろ〜!」と、クラスメイトの隆が苦笑い。

「せやろ?元気が取り柄やけん」と、光子がにっこり。


和也も顔をしかめつつ、「お前ら、やりすぎやろ……こっちまで笑いそうやんか」とツッコミ。


女子の春菜は、「光子ちゃん、優子ちゃん、朝から笑いすぎて目がギラギラしとる〜」と、くすくす笑う。

逸美も負けじと、「ほんと、見とるだけで元気もろうとるわ!」と笑いながら拍手。


さおりが肩をすくめ、「だって、ほんなこつ朝から元気じゃないと、体育祭の練習も乗り越えられんやん?」


拓実は、両手を広げて、「俺はナルシストやけど、ギャグで元気もらっとるっちゃけん!」と叫ぶ。


クラス中が朝の校庭で笑いの渦に包まれ、タッカマン先生がグラウンドを見下ろす。

「……お前ら、ほんっとに朝から元気やなぁ」と、ため息まじりに呟く。


光子と優子は顔を見合わせ、くすくす笑いながら、「せやろ〜、タッカマンも見習わんと!」とささやく。


隆や和也、春菜や逸美も、思わず笑顔になり、今日一日の体育祭練習も、この笑いで元気いっぱいに始まった。





グラウンドの向こうに、タッカマン先生が立っとる。

「おい、みんなー!気合入れて走るぞー!!」


光子と優子は目を見合わせて、くすくす笑いながらもやる気モード発動。

「またタッカマン、あちーのに元気やね〜」

「ほんとやね、熱さ倍増しとるやん」


さおりも巻き込まれて、「せっかくの体育祭やけん、負けんばい!」と気合を入れる。


しかし、練習が始まってすぐ、拓実が卓球部のクセで反射的に大きなくしゃみをかます。

「はぁっくしょーん!」


周りの生徒がびっくりして振り返ると、拓実はニヤリと笑って

「誰か俺の噂しよったと?まぁ、俺はかっこいいナイスガイやけんなぁ!」


光子が「否定せんのかーい!」と叫び、優子も「拓実〜、もう朝から元気すぎ〜」とツッコミ。


隆や和也、春菜、逸美も吹き出し、グラウンドは笑いの渦に。

タッカマン先生は渋い顔で、「……お前ら、笑っとる場合じゃなかろうが!」


だが、光子と優子のギャグパワーは止まらず、走りながら即興ネタを繰り出す。

「タッカマン、松岡さんみたいに暑さも笑い飛ばせる?」

「せやろ〜、汗と笑いは一緒に流すもんやけんね〜」


結局、熱血タッカマンも生徒の笑いにつられ、少しだけ笑顔になった。

その日の練習は、厳しいながらも笑いが絶えず、みんなの体力も笑いでチャージされた感じ。


光子と優子は肩で息をしながらも、満足そうに互いの顔を見合わせる。

「やっぱり、笑いながら練習するのが一番楽しいね〜」

「せやね、今日もギャグで元気いっぱいやったね」


こうして、体育祭の朝の練習は、熱さと笑いと元気でいっぱいになったのであった。





9月末、まだまだ太陽はギラギラ。グラウンドに出ると、光子も優子も思わずブーたれる。

「もう、あちーっちゃけど、なんとかならんと?」

「ほんとやね、汗だくで走るとか、やってらんないばい」


スカートをちょっと捲って風通したい、とぼやく光子に、拓海がすかさずツッコミ。

「それあかんやろ!」


優子がにやりと笑って、「男子の前でやるわけないやん」と返すと、拓海が笑いながら言う。

「そげんこと言うたら、男は想像する生き物やけん、危なかばい…」


光子は顔を赤らめつつも、「しゃーないやん、ほんとにあちーっちゃけん、風通したいだけやもん!」

優子も同意して、「それに、扇風機でもあったらな〜って話やん」


周りのクラスメイトも苦笑いしながら、それぞれの競技に集中。

スタートの合図が鳴ると、光子も優子も汗をかきながら走る。


その姿を見て、さおりが声をかける。

「光子〜優子〜、あちーけど、めっちゃ頑張っとるやん!」


光子は肩で息をしながらも、「せやろ〜、やる気モード発動中やけんね!」

優子も笑顔で、「ほんと、汗も笑いも倍増ばい!」


男子の応援団も笑いながら見守る中、体育祭は熱さと笑いで盛り上がる。

タッカマン先生の熱血指導も加わって、生徒たちは汗まみれになりつつ、全力で競技を楽しむのであった。





ついにリレーが始まる。男子の代表として、拓実がスタートラインに立つ。

「おう、任せとけ、俺がしっかり繋ぐけん!」


女子の代表は、さおり、愛、美咲。光子と優子も応援席で手拍子しながら、「がんばれ〜!」と声を張る。


ピストルの合図と共に、拓実は全力で走り出す。

「おおっ、速いっちゃけど!」

隣の男子も負けじとスプリント。スタンドでは光子が手を振りながら叫ぶ。

「拓実〜!その調子や〜!」


バトンパスの瞬間。拓実が次の男子にバトンを渡すと、思わず観客席から笑い声も混じる。

「おお〜、渡す時の顔、必死すぎやろ〜!」


女子チームも負けじと走る。さおりがバトンを受け取ると、軽くギャグを織り交ぜながら全力疾走。

「まかせときんしゃい!この足、笑いも乗せて行くばい!」


愛や美咲も、バトンを受け取りながら小さなギャグを入れて、観客席を爆笑させる。

「おお、光子ちゃん優子ちゃん、見よる〜?」

「見よる見よる〜!めっちゃウケとる〜!」


光子と優子も声を張り上げながら応援しつつ、「さおり〜ナイスギャグパスばい!」と拍手。


こうして、体育祭のリレーは、真剣勝負と笑いが入り混じった大熱戦となる。







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