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昔の爆笑写真

日曜日の朝、雨はしとしとと降り続けていた。傘をさして校門をくぐる拓実の足取りは、いつもより少し早い。目的は、もちろん優子に会うためだ。


「今日は…来ると思わんやったけん、びっくりした〜」

優子は窓辺で小さな声を漏らす。窓の外の雨粒に合わせるように、彼の姿を見つけて顔を上げたのだ。


拓実はにこりと笑いながら、濡れた傘を少し振って、廊下を駆ける。

「雨やけど…せっかくの日曜やけん、何か一緒にせん?」


優子は少し考え、そして微笑む。

「んー、映画でも観ようか。Netflixで何か…」


二人が選んだのは、偶然にもアニメ映画『劇場版 銀河鉄道999』だった。雨音が窓を叩く中、リビングに並んで座る二人。画面に映る銀河の星々、流れる光、果てしない宇宙に、優子も拓実も少しずつ引き込まれていく。


「ねぇ、あの列車、ほんとにどこまでも行くんやろうか…」

優子は物語に心を重ね、少し身を乗り出す。


拓実は頷きながらも、優子の隣でじっと画面を見る。

「うん…行けるなら、俺も一緒に乗りたい気分やな」


二人の間に言葉少なでも、確かな空気が流れる。銀河を駆ける列車の旅と、窓外の雨のリズムが、どこか二人の心をシンクロさせていた。物語の世界に引き込まれる二人の瞳は、次第に星の光のように輝きを増していく。


雨の休日が、いつもとは少し違う、二人だけの銀河の旅へと変わっていった。




スクリーンの中で、主人公・星野鉄郎が銀河超特急999号に乗り込み、メーテルという謎めいた美女とともに旅を続ける。未知の星々を巡りながら、少年だった鉄郎が少しずつ大人の覚悟を学んでいく様子に、優子も拓実も息を呑む。


そしてラスト、旅の終わりに訪れる甘く切ない別れ。メーテルの背中が遠ざかる瞬間、鉄郎の胸にこみ上げる想いがスクリーンいっぱいに描かれる。優子は瞳を潤ませ、胸を押さえる。拓実も思わず肩を震わせ、画面に見入ったまま動けない。


「うわぁ…めっちゃ泣けるやん…」

優子が小さく漏らす。


「ほんとや…鉄郎、頑張ったなぁ」

拓実も声を震わせながらつぶやく。二人の手は自然と寄り添い、そっと触れ合う。


窓の外の雨音は、まるで二人の涙をそっと受け止めるかのように優しく降り続けていた。


銀河鉄道の物語に心を揺さぶられ、二人はまだ言葉にできない感情を胸に抱えたまま、しばらく静かに座っていた。





画面が暗くなり、エンドロールが流れる中、優子と拓実は互いに顔を見合わせ、まだ心が少し震えているのを感じた。


「拓実くん…鉄郎、ほんとに頑張ったねぇ」

優子が小さな声でつぶやくと、拓実も同じように肩を震わせながら頷く。


「うん…ほんとに…大人になるって、こういうことなんやろうなぁ」

拓実の声には、少し大人びた響きが混ざっていた。


「でもさ、最後の別れ…あれ、ちょっと笑ってもいいくらい泣けるよね」

優子がクスッと笑いながら言うと、拓実もつられて苦笑い。


「確かに…ちょっと鉄郎、あんたも感情豊かすぎやろ、って感じやな」

拓実が軽く突っ込みを入れると、優子は腕を軽く叩きながら「もう、拓実くんも泣きすぎよ〜」と返す。


二人は笑いながらも、胸の奥には銀河鉄道の物語が残した切なさと希望の余韻が、静かに温かく広がっていた。


「映画って、やっぱり心に響くね」

「うん…こうやって一緒に観られてよかった」


雨音が窓の外でやさしく響く中、二人は肩を寄せ合いながら、しばらくそのまま静かに座っていた。

それぞれの心の中で、少年だった鉄郎と、銀河の旅が重なっていた。




その頃、光子は雨の中、卓球の練習を終えた翼と一緒にデートから帰ってきた。玄関を開けると、優子と拓実が座ったまま、まだ涙をぬぐっている。


「なに?別れ話でもしたと?」

光子が両手を腰に当て、にやりと笑いながら尋ねる。


「違うわ〜。映画見て感動して泣いてたと」

優子が涙を拭いながら答える。拓実も苦笑いでうなずく。


「ふーん、泣き虫コンビやねぇ」

光子は軽く肩を叩き、ついでに翼も見て、にやにやと笑う。


すると拓実が慌てて立ち上がり、手を振りながら「いや、泣いただけで…!」と言いかけるが、優子に「落ち着け、拓実」とたしなめられる。


「んじゃ、泣いた分だけギャグで帳消しやね」

光子が笑顔で言うと、優子も「そ、そやね」と小さく頷く。


そこから、突然ドタバタ劇が始まった。雨で濡れた傘を持ちながら、光子は拓実にちょっかいを出し、翼は優子を追いかける。二組のカップルは笑い転げながら、部屋の中をぐるぐると駆け回る。


「わー、光子、傘で突くな〜!」

「やめんか、翼!優子を置いてかんといて!」

「ちょっと拓実、足元気をつけろ〜!」


笑い声と悲鳴が入り混じり、窓の外の雨音さえも二人の騒ぎを祝福するかのように響いた。


結局、全員びしょ濡れになりながらも、笑い疲れて床に座り込む。涙と笑いで顔はぐしゃぐしゃ。それでも、心の中には、雨の日の小さな冒険が、温かく刻まれたのだった。




家の中に戻ると、光子はさっそく机に肘をつき、にやりと笑った。


「よっしゃ、今日の出来事は落語ネタにせんといかんね」


優子と拓実が顔を見合わせ、ちょっと困ったように肩をすくめる。


「え、落語にするん?まさか私たち、ネタにされると?」

優子が小声で言うと、光子は片手をぱっと挙げて、「そーたい、これも芸の肥やしよ!」


光子は畳に座り込み、マクラ(前口上)から始める。


「昨日は雨降り、四人の若者、家ん中でびっしょ濡れに…。泣いたり笑ったり、傘振り回したり、そげん賑やかなことがあってね、特に拓実くんは、涙もろいのに雨でずぶ濡れ、もう大変!」


拓実が赤面して「やめろ〜、そんなに言わんで!」と抗議するが、光子は止まらない。


「そして優子ちゃんは、涙をぬぐいながら、しっかり突っ込みも入れる。『落ち着け、拓実』ってね。これがまた、笑いと涙のコンビネーション、まるで銀河鉄道999みたいに、少年から大人への冒険の旅やったとさ」


優子も思わず吹き出し、「光子、笑いすぎやろ〜」と突っ込む。


光子はさらに勢いづいて、翼のことも加える。


「翼くんも負けとらんとばい。優子ちゃんを守ろうとするけど、途中で光子のギャグ攻撃に巻き込まれて、もうめちゃくちゃ。最終的には全員びしょ濡れ、笑い死ぬかと思うたとさ!」


拓実は肩を抱えて笑いながら、「…これ、ネタにされるんやね」と苦笑い。


「そーよ、これが落語の醍醐味。笑いと涙、両方味わうのが江戸の粋ってもんばい」

光子が胸を張ると、優子も「じゃ、私たちも次は笑いで返すばい」とにこやかに頷いた。


こうして、今日の“ラッキーすけべ事件”と雨の大騒動は、双子姉妹の落語ネタとして、家の中に笑いの余韻を残すのであった。





映画が終わり、エンドロールの音楽が流れる中。

優子は袖で目頭を押さえ、ぽろぽろと涙を流していた。


「……優子が泣いとる」


拓実は思わず息をのんだ。

これまでどんなときでも明るく、突っ込み役で、笑いの中心にいた優子。

クラスで噂になるほどに、いつも元気で笑顔で、人を笑わせることばかりに全力な彼女が、今は静かに、子どものように泣いている。


拓実の胸の奥が、きゅっと熱くなった。


「泣いてる姿も……きれいやな」

思わず口の中で呟いた。声にならないほど、小さく。


それはただの驚きだけじゃなかった。

笑っているとき以上に、涙を流す優子の姿が愛おしく、守ってやりたいという思いが込み上げてくる。


「優子は、ほんとに人の心に寄り添えるんやな」

映画に感動して泣ける、その真っ直ぐな心が、拓実には眩しくて仕方なかった。


そんな彼の横で、優子はハンカチで涙を拭いながら、

「……なんで、映画ってこんなに泣けるっちゃろね」

と照れ笑いを見せる。


拓実はその笑顔を見て、胸の奥で強く思った。


——俺は、ずっとこの人の涙も笑顔も、大事にしていきたい。




──7月7日、七夕の夜。


小倉家の居間は、風船とガーランドで飾られ、テーブルにはお母さん特製のごちそうが並んでいた。唐揚げに手巻き寿司、ケーキに山盛りのお菓子。

光子と優子の誕生日を祝うため、家族と仲間たちが集まっていた。


「はい!光子、誕生日おめでとう!」

翼が少し照れながら、きれいにラッピングされた小さな箱を差し出した。

中身は、シルバーのブレスレット。小さな星形のチャームがついていて、七夕の日にぴったり。


「わぁ……かわいい!翼、ありがとう!」

光子は感激して、その場で手首につけてみせた。チャームがキラリと揺れる。

「似合っとる、似合っとる」翼が笑うと、光子は「もう、褒めすぎ〜」と顔を赤らめる。


一方で——。


「優子、誕生日おめでとう」

拓実が差し出したのは、スポーツブランドのリュック。

「部活にも普段にも使えると思って」


「え、めっちゃ嬉しい!ちょうど欲しかったんよ!」

優子はすぐに背負って、クルッと回ってみせた。

「どお?似合うやろ?」

「うん、めっちゃ似合っとる」

拓実の顔が照れ笑いで崩れる。


そこに美香が、トロンボーンケースを抱えて登場。

「お待たせ〜!はいはい、双子ちゃん、誕生日おめでとう!」

手作りのキーホルダーをプレゼント。音符の形に小さなビーズが光っていて、双子の名前のイニシャルが刺繍されていた。


「わぁ〜かわいい!」

「ありがとう美香ちゃん!」


そして、パソコンの画面越しに映るアキラ。

「おーい!俺の声、聞こえるー?誕生日おめでとう!こっちはケーキの代わりに、コンビニのプリン用意したけん!」

画面の向こうでプリンを掲げて見せるアキラに、みんな大爆笑。


「アキラ、せめてホールケーキくらい用意しとけよ!」

「いやいや、寮の冷蔵庫にそんなスペースないっちゃ!」

「言い訳すんなー!」と光子と優子が一斉にツッコむ。


こうして賑やかな誕生日パーティーが始まった。

笑い声と拍手、ケーキのろうそくの光が重なって、七夕の夜は特別な思い出となっていく。



「それとね、最近わたし、自動車学校通ってんのよ。そんで、教習車の中で教官に“クラッチは優しく!”って怒られるんやけど……ついついトロンボーンのスライドみたいにガッコンガッコンしちゃうんよ!」

と、美香が身振り手振りでクラッチペダルを踏むマネをすると、場は爆笑。


「ちょっと待って!免許取るまでに車、壊れるんやない?」

優子がツッコむ。


「壊す前に教官が壊れるっちゃろ!」と光子が重ねると、

「ほんと、助手席の教官の顔が毎回“白目”なんよ!」と美香がさらに畳みかける。


「おいおい、交通安全のために落ち着けや〜!」

翼と拓実が同時にツッコミ、みんなで大笑い。


トロンボーン奏者であり、教習生でもある美香。彼女の明るいキャラが、誕生日パーティーにさらに笑いを加えていた。




タイトル:乾杯はスクリーン越しに


パーティーの盛り上がりも最高潮。テーブルには七夕ケーキや唐揚げ、ポテト、枝豆といった定番のつまみがずらり。そこへ、リビングのテレビに繋がれた大きなモニターが光り、アキラの顔が映し出された。


「おーい!聞こえる?映ってる?」

「アキラ兄ちゃんだ!」と双子が駆け寄る。


画面の向こうでは、アキラがちょっと大人びた顔で、シックな照明の寮の一室に座っていた。その手には、透き通ったグラス。琥珀色のカクテルが氷とともにきらめいている。


「俺も、こっちでちょうどハタチになったけんね。今日は特別に、カクテルで乾杯させてもらうばい」

「わぁ〜!大人やん!」と光子と優子が声をそろえる。


「そりゃあ、もう飲める歳やけん。でも、寮の先輩から“飲みすぎたらトロンボーンより音外すぞ”って言われた」

画面の向こうでアキラが苦笑すると、すかさず美香が「それうちやろ!私のネタ横取りすんなや!」とツッコミ。


「よーし!じゃあ、全員そろったし……乾杯!」

モニター越しにグラスを掲げるアキラ。双子はジュース、翼と拓実はコーラ、お母さんはワイングラス、美香はノンアルカクテル。


「かんぱーい!」


グラスが画面を通してカチンと響いたように感じる瞬間。

アキラはにやりと笑って言った。

「なんか変やけど、不思議と一緒におれる気がするな。離れとっても家族やなって思うばい」


しんみりした空気になりかけたところで、光子が立ち上がって一言。

「よーし!ほんなら今からケーキ入刀〜!…って結婚式か!」


ツッコミと笑い声がまたリビングを包み、七夕の夜は最後まで賑やかに更けていった。




ミカ、はじめてのエンジン音


誕生日パーティーもひと段落したころ、みんなで談笑していると、美香がぽつりと切り出した。


「そういえばさ、今日さ…初めてエンジンかけたんよ。車校で」


双子が「えぇっ!?」と同時に身を乗り出す。


「ど、どんな感じやった?」と優子。

「もうね、ブォンッて音がした瞬間に、心臓まで揺れる気がして……思った以上に迫力あってさ。ハンドル握ったら手ぇ汗びっしょり」


美香は肩をすくめて苦笑い。


「で、いざアクセルちょっと踏んだらさ、車が“うぉん”って動くやん? 思った以上のスピード感で、“キャー!”って心の中で叫んどった。隣の教官は“落ち着いて〜”って優しい声やったけど、正直めちゃ怖かったわ」


その話を聞いて、光子が目を丸くして笑う。

「いやいやミカ姉、それ、まだ10キロも出てないっちゃないと?」


「え、うそ!?あれで!?」

「うん、下手したら自転車の方が速かよ」


みんな爆笑。


そこへ翼が真顔で言った。

「でもな、その“怖さ”感じるのは大事やぞ。調子乗るよりよっぽどええ」


拓実もうなずきながら、

「そやそや、ソフトテニスのスピード感も最初は怖かったけど、慣れたら楽しめるようになる。車もきっと同じや」


美香は「そっかぁ…なら頑張ってみよっかな」と少し安心したように笑った。


光子と優子は、顔を見合わせてニヤリ。

「でもさ、もしミカ姉が運転する車に乗ったら、ジェットコースターよりスリルあるかも〜!」

「いや、それ命がけやん!」


笑い声がまた部屋いっぱいに響いた。






ミカ姉、クラッチに挑む


誕生日会の熱気がまだ残っとるリビング。

光子がジュースを片手に、美香の隣にちょこんと座った。


「ねぇミカ姉、免許ってオートマ限定で取れるっちゃろ? そっちの方が絶対ラクやん?」


すぐ横で優子もうんうんと頷き、

「そうそう。クラッチとかギアとか、あんな複雑そうなことせんでいいっちゃろ? 絶対その方がよかやん」

と口を尖らせる。


美香は少し考えてから、にこっと笑った。

「うん、確かにオートマは楽たい。けどね……うちの楽団のワゴン、まだマニュアルなんよ」


「えぇ!? まだマニュアルの車あると!?」

双子は声を揃えて驚いた。


「あるある。機材運ぶ時によう使うっちゃん。で、もし誰もマニュアル運転できんかったら大変やろ? やけん、私も両方乗れるようになっときたいっちゃんね」


光子がぽかんと口を開けて、

「……ミカ姉、めっちゃ大人やん」

とつぶやくと、優子も感心したように首を縦に振る。


「うちらやったら“楽な方がいい〜”って即決めするのに」


美香はちょっと照れくさそうに肩をすくめ、

「いやいや、必要に迫られとるだけたい。クラッチとギア操作、まだぎこちないけど……ギアが“ガコン”って入った時は、ちょっとかっこいい気がするっちゃん」


すると双子の目がキラリと光る。


「おぉ〜、言うねぇ!」

「そのうち“ドライブしながらトロンボーン吹く”って新ネタできるっちゃない?」


「バカ!そげなことしたら事故るわ!」

美香が両手を振って慌てると、翼も拓実も吹き出し、リビングは笑いの渦に包まれた。





双子ちゃんは、13歳の誕生日を迎え、少し大人になった気分でいた。光子は「もう中学二年生もすぐそこやね」と小さな声でつぶやく。優子も「うちら、なんか少し大人になった気がするね」と肩をすくめながら笑った。


美香は、その様子を見ながら、ふと思い出していた。自分が初めて家族に祝ってもらった誕生日――小倉家に迎え入れられ、初めて迎えたあの日のこと。あれからもうすぐ10年。


「懐かしかね……あの時はまだ、あんなにちっちゃかった光子と優子が、今やこんなに元気に、ギャグ満載で毎日を過ごしよるんやもん」


美香の目に、自然と温かい笑みが浮かぶ。双子ちゃんの成長と、家族のにぎやかな日常が、何よりも愛おしく感じられた。


光子と優子は、誕生日ケーキのロウソクを吹き消しながら、未来への希望を胸に、また新たな一年をスタートさせた。


翼と拓実は、そんな双子を見守りながら、「相変わらずやね」と笑い合う。家族みんなが、幸せで満ちた空気の中、静かに、でも確かに時間が流れていった。




優馬がリビングでパソコンを開き、撮り溜めた写真を整理していると、ふと目に留まったのは、光子と優子の小さな“爆笑成長日記”の瞬間たちだった。


「おっ、これ懐かしかね〜。光子と優子、こん時何しよったと?」と優馬。


光子は慌てて、「な、何見よると?!そ、それ消しとってよ!」と必死にスマホを手で押さえる。


優子も「お父さん、やめんね!うちらの黒歴史ばさらす気やろ?」と焦る。


優馬はにやりと笑いながら、「いやいや、これば見んと、皆に教えきらんやろ。成長日記の全貌ば!」とパソコンの画面を家族に向ける。


美香は画面を覗き込み、「あはは、懐かしか〜。こん時、まだ小学校だったとね」と大笑い。


アキラもリモート越しに、「いや〜、これは面白か〜。双子ちゃん、毎日こんなに笑わせてくれよったと?」と笑顔。


光子と優子は顔を真っ赤にしながらも、結局画面の前でみんなと大笑い。「もう、ほんっとお父さん!うちらの恥ずかしか瞬間ば暴露しよる〜!」


しかし、そんな爆笑のひとときが、家族みんなの温かい思い出となり、双子ちゃんの成長が愛おしく、かけがえのない日々であることを改めて感じさせた。




パソコンの画面に次々と映し出される写真に、光子と優子はもう目が点。


「ちょ、ちょっと…これ何しよると?!ま、まずいが〜!」光子が必死に手を伸ばす。


優子も「うそやろ…お父さん、やめんね?これ翼と拓実に見えとるやん!」と焦る。


画面には、夏の海水浴で水着姿の双子が、カメラに向かってちょっと悩ましいポーズを決める写真が並ぶ。次には幼い頃、お風呂に入れてもらっている無邪気な姿、そして美鈴のお化粧道具を拝借して、顔中口紅だらけになっている写真が。どっちがどっちかわからないほどで、二人は爆笑。


さらに、変顔しながらピースを決めている写真も。「あはは、これ誰や?」翼と拓実が大笑いしながら画面を覗き込む。


「いや〜、まさかうちらの小さい頃の恥ずかしか写真まで暴露されるとは…!」光子も優子も両手で顔を覆う。


拓実が、笑いながら「お、お前ら…こん時からギャグ力鍛えよったとね?」と茶化すと、優子は「そ、そんなことないっちゃけど〜!」と照れ笑い。


翼も「でも、見てよ、この変顔…センス抜群やん。将来の漫才師の卵やな」と楽しそう。


二人は恥ずかしさで顔を真っ赤にしているが、同時に笑いが止まらず、画面の写真一枚一枚が、これまでの成長と笑いの軌跡を家族と友達に再確認させる瞬間となった。





光子がニヤリと笑いながら画面を見つめる。

「今度翼の昔の写真見せてもろうっと。」


優子も負けじと、「私も拓実の恥ずかしか写真、見せてもろうからね〜。」と目を輝かせる。


その瞬間、完全に油断していた美香の写真が画面に登場。ちょっと若い頃の無防備な姿や、微妙に変顔したものまで並ぶ。


「うそ〜、やめて〜!お父さん、やめて〜!」美香が思わず叫ぶ。


美鈴は微笑みながら、「あらぁ、美香のこんな写真もあったねー。懐かしか〜。」と穏やかにコメント。


光子と優子は爆笑しつつ、「これもネタにせんといかんね〜!」と盛り上がる。


美香は赤面しながらも、つい笑いが漏れ、家族の爆笑の渦に巻き込まれていくのであった。




結局、光子、優子、美香――三人の娘の昔の写真を見ながら、家族は大笑い。


「ぎゃー、やめんね!」美香の絶叫も飛び交うが、それすら笑いに変わる。

光子と優子は「これ、永久保存版にせんとね〜!」と満面の笑み。

翼と拓実も「こ、これは…面白すぎるやん…」と目を丸くしながらも、画面の前で肩を揺らして笑う。


美鈴は微笑みながら、「ほんと、家族の思い出って、こうして笑えるのが一番ね。」

優馬はカメラを手に、さらに撮り溜めた写真を見せながら、「まだまだネタはあるばい!」とニヤリ。


こうして笑いあり、叫びありの賑やかな時間は、あっという間に過ぎていった。

家族全員の顔には、幸せと愛情が溢れていた。




その日の夜、翼と拓実はそれぞれ優馬の車で家まで送ってもらうことになった。

光子と優子も一緒に乗り込み、車内はまだ笑い声が絶えない。

「今日、ほんと楽しかったね〜!」

「うん、また明日もよろしく〜」

車内の空気は温かく、幸せな余韻でいっぱいだった。


ちなみに、翼の誕生日は9月22日、拓実の誕生日は10月22日。

そして、翼と拓実の昔の写真は…光子と優子の手に渡った瞬間、二人は「うーん、公開はどうする?」と小さく悩む。

結局、二人の秘密の宝物として、家族と親しい友人だけに見せることになり、外には出さないことに。

「これは、私たちの内緒の思い出やけんね」と光子が笑うと、優子も「見せたら絶対恥ずかしいけん、秘密にしよ!」と頷いた。


こうして、双子ちゃんたちの甘酸っぱい思い出は、未来の笑い話として、静かに大切にしまわれたのだった。




夕方、翼と拓実を送って帰った後、美香がにっこり笑って言った。


「今日はこっちに泊まるけん、よろしくね〜。」


光子と優子はにやりと顔を見合わせ、今日も賑やかになりそうな予感を感じる。美香は泊まるときに使う部屋へ向かい、双子ちゃんも後をついていく。


「お姉ちゃん、久しぶりに一緒にお風呂入ろうや〜!」光子が誘うと、優子もすかさず「わーい、わたしも〜!」と声を上げる。


女同士でわちゃわちゃしながら湯船につかると、笑い声が湯気の中に響く。お湯をかけ合ったり、泡で髪をくるくる巻いてみたり、ついついギャグも飛び出す。


「お姉ちゃん、あんたの頭、シャンプー泡まみれやん!」


「なによ、光子も優子も負けとらんやん!ほら、この泡アート見てみ!」


湯船の中で手や泡を使った即席ギャグが飛び交い、三人は笑い転げる。笑いながらも、久しぶりにこうして一緒に過ごせる時間が、なんだか特別で大切な気持ちになる。


「やっぱ、お風呂でも笑いが止まらんね〜」優子が笑顔でつぶやくと、二人もうなずきながら、湯気の中でまた新しいギャグを繰り出すのだった。




お風呂でたっぷり笑い転げた後、三人は湯気の温もりと笑いの余韻を抱えながら、ゆったりと涼み、各自の部屋へと向かった。


夜も更けて、七夕の短冊を書く時間がやってくる。小さな机の前に座り、それぞれの願いを丁寧に書き込む双子と美香。


光子は、赤いペンで慎重に文字を走らせる。

「翼と、これからも楽しく過ごせますように…」


優子は少し照れくさそうに、でもしっかりと願いを綴る。

「拓実と、これからもずっと一緒にいれますように…」


美香は真剣な表情で、自分の短冊に向かう。

「私の演奏技術がもっと上手くなりますように…」と書き込み、続けて

「アキラが、プロデビューできますように…」


願いを書き終えた三人は、短冊をそっと笹に結びつけ、夜の窓から差し込む月明かりに照らされながら、静かに目を閉じる。


「みんな、願い叶うといいね〜」光子が小さくつぶやくと、優子も頷き、二人の間に柔らかな笑みが広がる。


美香も微笑みながら、「叶えるために、がんばらんとね」と呟く。その言葉に、三人はそれぞれの未来に向けて、小さく、でも確かな決意を胸に抱くのだった。





三人は夜空を見上げ、笹に結んだ短冊と同じ願いを、星々にもそっと託す。天の川を挟んで輝く、織姫様と彦星様を思い浮かべながら。


「すごか星やね〜。まるで織姫様と彦星様がおるみたいやん」光子が目を輝かせて言う。


「ほんとやね、優子ちゃん、ほんなこつ、ずっと一緒におれるごと願わんとね」優子もそっと手を合わせる。


美香も、星を見上げながら、「私も願い、叶うようにがんばろう…アキラのことも、私のことも」と心の中でそっと誓った。


三人は静かに夜空を見上げ、星に願いを込める。その光は、遠くの宇宙から、きっと優しく、彼女たちの未来を見守っているように感じられた。


「織姫様と彦星様、私たちの願い、届きますように…」光子が小さく呟くと、優子も美香も同じ気持ちで空を見つめた。


夜風がそっと髪を揺らし、七夕の夜は、笑いと願いと小さな感動で、温かく包まれていった。



夜空を見上げながら、三人は短冊を手にして笑い転げた。


「この願い、なに?笑える〜」光子が吹き出す。


優子の短冊には「拓実のテニスのスパイク、もっと速くなれますように!…あと、アイス食べ放題」なんて書かれていた。


美香の短冊には「トロンボーンで宇宙一うまくなれますように!…あとアキラが宇宙でライブできますように」


光子もつられて笑いながら、自分の短冊を見せる。「翼と毎日爆笑デートできますように!…ついでに宿題ゼロ」


「織姫様と彦星様、うちらの願い、多過ぎて大変やろうね〜」優子が空を見上げながら笑う。


「近頃じゃ、ハイテクな願いも聞かんといけんけん、うちらよりめっちゃ頭いいかもやね」美香も顔を上げて冗談まじりに言う。


三人は笑いながら、七夕の夜空に短冊を結び付けた。星に願いを込めつつも、やっぱり笑いの絶えない小倉家らしい七夕だった。









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