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帰宅



2回目の温泉へちゃぽん。



湯上がりの廊下をぺたぺた歩いて部屋に戻る。

「もう一回、浸かって寝ろうか」

「賛成。軽めにね」


のれんをくぐって、掛け湯、ちゃぽん。肩まで湯が上がった瞬間——

優子「はぁ〜、ゴクラクニャ〜」

光子「あんた、脱力した猫やん。湯だまりのネコ科やね」

優子「にゃー…動けん…幸せ…」

光子「沈むなって。のぼせるけん3分ルールよ」


湯気の向こう、檜の匂い。

優子「オープンキャンパス、ちょい緊張しとったけど…今はほんと極楽タイムやね」

光子「うん。ソフィーアと小雪にも会えたし、行ってよかった」

優子「明日は朝さんぽして、路面電車で三津浜やろ。フェリーで柳井、徳山まわって博多帰還」

光子「帰りの船、甲板で風録っときたい。今日の“瀬戸の音”の続き」


「そろそろ上がろ」

洗い場で軽く水をかぶって、ふうっと息を整える。


部屋に戻って、浴衣を直しながらドライヤー。

優子「今日いちの名言は“止まり木料金、特上”やね」

光子「鳩さん請求書、どこに出すと?」

二人でくすっと笑って、家族グルに一言。

〈道後二度目の湯、ゴクラクニャ完了。おやすみ〉


「ストレッチして寝よ」

明日の切符とスマホの充電を確認して、布団へ。

湯の余韻がゆっくり体に沈んでいく。

「おやすみ、優ちゃん」

「おやすみ、みっちゃん」





朝風呂へ




朝の湯けむりが、檜の香りといっしょに廊下へこぼれてくる。

湯桶を手に、のれんの前で小さく伸びをひとつ。


美鈴「昨夜はよく眠れたかね?」

光子「うん。ぐっすり。よく寝たよ」

優子「同じく。秒で落ちた」

美鈴「お父さんは? よく寝た?」

優馬「爆睡ったい」

三人「(笑)」


掛け湯をして、肩までちゃぽん。

窓の向こう、朝いちの路面電車がちん、と鳴って通り過ぎる。


優子「朝風呂は反則やね。体が軽くなる」

光子「昨日の階段カーディオ、ここで相殺や」

美鈴「はい三分ルール。のぼせんごとね」

優馬「出たら牛乳いこ。道後はコーヒー牛乳派やけん」


湯面がふわり揺れて、今日の予定が自然と口にのぼる。

「商店街をひと回りして、駅前の足湯でメモ書こ」「路面電車で三津浜まで出て、フェリーの時間に合わせようか」


上がり湯をさっとかぶって、浴衣の帯を結び直す。

朝の光が襖の紙を透けて、四人の影をやわらかく重ねた。

「ほんなら、朝ごはん行こか」

「行こ行こ」




朝食メニュー(道後・湯上がりの和膳)

•釜炊きご飯(愛媛産)/焼き海苔

•麦味噌の味噌汁(じゃこ天・ねぎ)

•焼き魚(鯵の開き) or 鮭の味噌漬け

•だし巻き玉子

•宇和島じゃこ天の炙り

•ひじきの煮物/里芋とがんもどきの炊き合わせ

•しらすおろし/温泉豆腐/温泉卵

•香の物(三種)

•フルーツ&ヨーグルト(伊予柑のコンポート)

•飲み物:伊予柑ジュース/牛乳/緑茶/コーヒー



湯上がりの体にやさしい朝ごはんを平らげて、四人は道後温泉駅へ。

ちん、とベルが鳴って、オレンジの路面電車が到着。揺られながら商店街、堀端、港の匂い——三津浜へ向かう。


桟橋に白い船影。切符を受け取ってデッキへ出ると、風が気持ちいい。

「波、穏やかやね」「空、きれいやね」

船はするすると瀬戸の青を切り、島影が左右に流れていく。潮の香り、遠くでカモメの声。柳井まで、のんびり海の道の旅。


グループライン&グルチャ投稿

•写真①:朝の和膳(鯵・だし巻き・じゃこ天)

〈道後の朝ごはん。優しい塩加減で目が覚めた〉

•写真②:道後温泉駅と路面電車の正面でピース

〈ちん、の合図で出発〉

•写真③:三津浜の桟橋、乗る船をバックに

〈これで柳井へ渡ります〉

•写真④:デッキで浴衣に羽織、潮風セルフィー

〈瀬戸の風、最高〉

•動画(10秒):波の音と島影のパanning

〈BGM素材、確保〉


美香「朝から優勝。伊予柑ジュースずるい」

アキラ「波音、完全にトラック素材。帰ったら聴かせて」

春介「ふね! ちゅー!」

春海「ちゃぷちゃぷ〜! うみ きれい!」

小雪「なまら海、静かでいいなぁ。動画リピするわ」

ソフィーア「Blue horizon…音がやさしいですね」

さおり(吹部)「島影=休符の置き方メモりました」

健斗「路面電車ショット、雑誌の表紙やん」

翼「風、気持ちよさそう。こっちは練習行ってくる」

拓実「柳井の白壁、写真待ってる。気ぃつけてな」


優子「到着したらまた送るばい。連結組曲・海章、書き足すけん」

光子「風のキーはGメジャーってことで」

デッキに笑い声。船は光の道を、ゆっくり西へと滑っていった。





船は静かに柳井港に着いた。潮の匂いがまだ袖に残るうちに桟橋を渡り、こぢんまりした柳井港駅の駅舎をパシャリ。白壁の三角屋根、駅名標、遠くに見える貨物ヤード。

「このサイズ感、好きやね」と光子。

「旅の“終章前の前奏”って感じ」と優子がうなずく。


ホームに入ってきた山陽本線の二両編成をもう一枚。銀の車体が線路の上で深呼吸するみたいに止まる。乗り込むと、座席の青がやさしい。瀬戸の入り江と町の屋根を横目に、電車は徳山へ。


徳山で乗り換え。新幹線口に上がる風の匂いがガラッと変わる。ホームに白と青のこだまが滑り込んでくるのを見て、光子がスマホを差し出した。

「お父さん、これで撮って〜。車両も、うちらも」

「任せんしゃい」と優馬。

まずは鼻先アップ、それから形式プレート、そして**“最終ランナー”の二人**。

「はい、笑って〜。行先表示、博多入りまーす」

カシャ。風が一瞬だけ止まって、シャッター音がくっきり響いた。

美鈴が小声で「よか一枚やね」。


座席に落ち着くと、車内アナウンスが優しく流れる。

「こだま号、博多行きです」

車輪が歌い出す。窓の外で、山の稜線が少しずつ丸くなっていく。


「あとちょっとで“ただいま”やね」

「うん。帰ったら音のメモまとめよ」


途中駅をいくつか拾いながら、約一時間の小さな旅はつやのあるリズムで進んだ。光子は膝の上で指をトントン、連結の「ガチャン」を思い出す拍。優子は車内の静けさに合わせて呼吸を合わせる。


やがてアナウンス。「まもなく、博多です」

ホームに降りると、空気が馴染みの温度に戻る。改札へ向かう前に、もう一度だけ新幹線の横腹をなでるように撮っておく。

「お父さん、最後にもう一枚。“帰ってきました”のやつ」

「お安い御用ばい」


カシャ。

画面の中で四人が並ぶ。背後にはこだまの白、前には博多のひかり。


光子「ただいま」

優子「ただいま戻りました」

美鈴「おかえり」

優馬「おつかれさん」


旅の音が、胸の中でそっとフェードアウトしていく。次に鳴らすのは、家のドアの開く音。




こだま“たまゴジラ号”爆笑アナウンスの旅


ホームに入ってきた新幹線は、まさかのたまゴジラ×美鈴ママラッピング。

先頭には**「たまゴジラが切れた」の吹き出し、側面には美鈴の似顔絵**がどーん。乗客みんな写真タイム、車掌さんも苦笑い。


扉が閉まり、車内チャイム。——そして流れたのは、まさかの美鈴ボイスの“ギャグアナウンス”。



徳山 発車


【車内アナウンス(美鈴)】

「え〜本日も“たまゴジラ号”をご利用いただき、ありがとうございます。たまゴジラは機嫌よかです。扉はやさしくお閉めください。切れさせんごとお願いします」


車内「クスクス…」

優子「母ちゃん、自分で機嫌管理しよるやん」

光子「切れたら“チン”でなだめよ(トライアングルを指差す)」



新山口


「まもなく新山口。慌てても列車は早くなりません。お乗り換えは、深呼吸→一歩前進→ニヤッの順でお願いします」



厚狭


「厚狭に停まります。厚いのは情、浅いのは眠気。目を開けて笑顔でどうぞ」



新下関


「新下関。ふぐとギャグは噛むほど味が出ます。笑いすぎてほっぺが痺れた方、伊右衛門でうがいどうぞ」


優馬「どこの公式や、それ」

光子「母ちゃん公式」

車内、また笑い。



小倉


「小倉です。モノレールに乗り換えの方、上を向いて笑いすぎにご注意。階段は手すり+余裕+うきうきでお願いします」


春介(動画通話で乱入)「うにゃー!」

春海「だらぱ〜!」

周りの席から「だらぱ〜」小声コールが返ってきて、さらにほころぶ。



そして、ラストアナウンス。


「まもなく博多、博多。日本のギャグの首都でございます.ギャグの聖地巡りをされる方は、湿布をご準備の上、腹筋崩壊にご注意下さい。」


——車内、ドッと笑いと拍手。

優子「“ギャグの首都”って誰が決めたと?」

光子「今、母ちゃんが決めた」

美鈴(小声)「異議なし!」

優馬「満場一致やね」


停車。ドアが開くと、ラッピングのたまゴジラがにっこり。

光子「ラスト一枚、母ちゃんの“公式アナウンサー”記念で」

優子「たまゴジラが切れんうちに急ご」

四人でパシャ。

“日本のギャグの首都・博多”に、笑い声ごと帰ってきた。




帰ってきた




改札を抜けた瞬間、手をぶんぶん振る影が二つ。

春介・春海「おねえしゃん、むぎゅー!」とトコトコ突進。

光子「ただいま〜!」

優子「帰ってきたばい!」

二人はしゃがんで抱きとめ、ウィンク→ちゅの必殺セット。


翼「羨ましか〜…俺も抱きつきたい」

拓実「同感です」

美香「はいはい、順番待ち禁止」

アキラ「おかえり、無事で何より」


光子「まずはお土産タイム!」

優子「春介、春海にはこれ—」ちいさな動物キーホルダーを二つ。

春介「きーほるだー!」

春海「かばんにつける〜!」


光子「アキラにいちゃんには、免許取得祈願で」

— 東京タワー刻印のカードケース。

アキラ「おお、実用的! 大切に使う」


優子「美香お姉ちゃんには」

— ガラスの小さなアクセサリー。

美香「かわいい…衣装にも合うね。ありがとう」


光子「拓実は約束どおり」— 東京ばな奈。

拓実「約束守る女、最高」

優子「言い方よ(笑)」


優子「翼には」— 東京まんじゅう。

翼「甘さでシングルス余裕ドヤ

光子「練習も余裕でお願いします」


「すみませ〜ん、シャッターお願いできますか?」

近くにいた人に頼んで、たまゴジラ+美鈴ラッピング車両を背に全員集合。

カメラ「カシャッ」

全員「ただいま!」


そのあと、大きい荷物は美香の車に積み込み。

アキラ「荷台OK、じゃ先回りして家で待っとく」

美香「安全運転で戻るけん」


光子「うちらは地下鉄組で帰るよー」

優子「春介、春海、またあとでね」

春介「うち すぐいく〜!」

春海「おねえしゃん、ばいばい ちゅ!」


エスカレーターの上から手を振る二人に、改札側の家族がいつまでも手を振り返す。

博多の空気に混じって、旅の音がそっとほどけていった。






玄関で「ただいま」を言い終えるより早く、みんなで台所に直行。

お湯を張る音がコトコト鳴って、洗面所があったかい湯気で満ちていく。


光子「温度はぬるめで40度ね。まず足から、ちょっとずつ入るよ」

優子「滑らんごと気をつけて〜。アヒル隊長、配置完了!」

春介「おねえしゃんと おふりょ はいりゅ!」

春海「あわあわ する〜!」


ちゃぽん。肩まで入ると、二人の目がとろ〜ん。

光子「はーい、“ゴクラクニャ”発動」

優子「まずは体あらおっか。せなか、ゴシゴシ〜」

春介「ごしごし〜」

春海「くしゅぐったい〜(くすくす)」


光子「耳のうしろ、はい“駅名アナウンス”入りまーす。次は〜“みぎみみ〜、うしろ〜”」

優子(車掌口調)「お手すりにおつかまりのうえ、シャワー参ります。3、2、1——じゃー!」

春介「め つぶる〜」

春海「じゃー おわった?」

光子「えらい! はい、よくできましたハイタッチ」


髪はたっぷり泡立てて、あわヒゲのサービス。

春介「しぇんしぇい です!」

春海「おひげ おなじ!」

優子「先生ふたり、診察は“うにゃだらぱ〜”ですか?」

二人「うにゃー! だらぱ〜!」


湯船に戻って、アヒル隊をたまゴジラ観光船に見立てて周回。

優子「次は“かたすべり温泉”に停まります〜」

光子「終点は“おふろあがり牛乳前”です。乗り遅れ注意〜」

春介・春海「ちゅーにゅー のむ〜!」


上がったら、タオルむぎゅーでバスタオル巻き巻き。

光子「タオル列車、はっしゃ〜」

優子「ドライヤー、ぶーん。熱かったら言うとってね」

春介「あったか きもちい〜」

春海「かみ ふわふわ〜」


パジャマにお着替え完了。

美鈴「はい、ごほうびの牛乳どうぞ」

優馬「コップは両手でね。いただきます—」

春介・春海「かんぱい!(ごくごく)」


光子「さ、歯みがいて、今日は早めにねんねしよ」

優子「おやすみ前の“うにゃコール”いくよ。せーの——」

全員「うにゃー/だらぱ〜!」


家の中に、湯上がりの匂いと、まるい笑い声がふわっと残った。




台所には湯気とだしの香り。テーブルには水炊き、がめ煮、明太だし巻き、胡麻サバ(今日は炙り風)、小鉢がずらり。


美香「おつかれ。オープンキャンパス、どうやった?」

光子「ウマ。やっぱりお姉ちゃんは料理上手やね〜」

優子「この明太だし巻き、反則級」


美香「これね、拓実くんと翼くんが張り切って手伝ってくれたんよ。切る、和える、盛る、全部」

光子「へぇ。結婚したら、料理一緒に作ってくれたら助かる」

優子「毎週“共同作業日”決定やね」


(拓実と翼、同時に耳まで赤くなる)

拓実「…任務とあらば」

翼「猫の手は完璧にマスターしました」

光子「猫の手より“味見担当”の方が得意やろ?」

翼「バレた?」


アキラが鍋をよそいながら笑う。

アキラ「ほら、温かいうちに。今日は胃にやさしいコースやけん」


そこへ、風呂あがりの二人。

優馬「ふー、生き返った。美香、拓実くんと翼くん、料理ありがとうね。じゃあ、いただきましょうか」

美鈴「いただきます。…うん、出汁がよう出とる」


箸が進みながら、ぽつぽつと旅の話。


光子「防音室の響きが自然でね、低音の“土台”が残る感じがよかった」

優子「ドラム室のクリックも気持ちよかった。先生のフィードバックも短く的確で刺さった」

美香「ソフィーアさんと小雪さんとは?」

光子「すぐ打ち解けた。連結組曲の案、向こうも乗り気」

優子「それと——鳩の“チン”事件は正式にインタールード化(笑)」

拓実「“チン”担当は俺に任せろ」

翼「いや俺が…って、そこ取り合うとこ?」

美鈴「二人とも、まずは**包丁の“トントン”**を極めんしゃい」

全員「はーい」


鍋の〆は雑炊。湯気の向こうで、家族の声が重なる。

優馬「明日は少しゆっくりし。メモまとめて、午後から軽く音出そうや」

光子「うん。サンライズ小景のスケッチ、形にする」

優子「“天守カーディオ”の段差リフも録っとこ」


食後、春介と春海の寝顔をのぞいて、みんなで小さくハイタッチ。

美香「今日のMVPは…全員」

アキラ「異議なし」

光子・優子「ごちそうさまでした。——うにゃ」

家族「だらぱ〜」


笑いがふわっと広がって、家の中がやさしい温度に戻った。




廊下の灯りを細くして、そっと戸を開ける。

布団の山が二つ、すうすうと小さな波を立てている。春介が、夢の中で片目をぎゅっとつぶった。――ウィンク。

続けて、春海が口をすぼめてちゅっと空に投げる。――投げキッス。


光子が肩をすくめる。

「誰にウィンクしよーと?」

優子が小声で笑う。

「小雪ちゃんか、ソフィーアさんやろね。罪作りやねぇ、このモテ双子は」


春介が寝言みたいに「こゆき…おねえしゃん…」

春海も追いかけるように「そふぃーあ…だいしゅき…」

二人は同時にころんと寝返り、またふわっとキスマークを空に放った。


光子が毛布の端を直しながら囁く。

「よか夢見よる。風邪ひかんごとね」

優子もうなずいて、額の髪をそっと払う。

「将来が怖かばい、こりゃ。世界中に“被弾者”増えるっちゃ」


音も立てずに立ち上がり、戸口へ。

「おやすみ、ちびスター」

「おやすみ、ちびラバーズ」


扉を静かに閉める。廊下に戻った二人は顔を見合わせ、ふふっと同時に笑った。

家の中に、やわらかい夜が戻ってくる。明日も、きっといい日になる。




見送り


玄関のたたきに靴が並び、ポーチの外灯が庭の砂利をやわく照らす。

門扉の向こうは静かな夜道。遠くで自転車のブレーキ音。


光子「今日は疲れとるのに、ほんとありがとう。迎えに来てくれて嬉しかったっちゃ」

翼「よかよか。試合形式の練習続きやけど、ここ来たら落ち着く」

優子「無理せんで、今日は早よ寝りー」


拓実「俺もそろそろ帰るね。二人は来年が本番、悔いのないように一緒に走ろ」

優子「うん、最後までやり切るばい」


翼「明日は休んで、明後日また。春休みまでコツコツ行こう」

光子「差し入れ入れとるけん、これ持っていき(おにぎり+明太だし巻きのタッパー)」

拓実「助かる〜。帰り道の勝利メシ」

翼「“たまゴジラが切れた”クッキーで糖質補給もしとく」

優子「切らせんごと、真っ直ぐ帰りんしゃい」


門扉まで並んで歩き、カチンと鍵が鳴る。

ポーチの外灯の下で最後の手振り。


光子「気ぃつけてねー!」

優子「おやすみー!」

翼・拓実「おやすみ! またね!」


二人の背中が角を曲がって見えなくなるまで、門のところで手を振り続けた。

風鈴がからん、と鳴り、庭の砂利がさらりと音を立てる。

家の中からは、春介と春海の寝息がかすかに届いていた。




帰宅&写真公開ラッシュ


1) 家族・仲間LINEグル

•光子〈無事帰宅! サンライズ→高松→道後→三津浜→柳井→徳山→**こだま“たまゴジラ号”**で博多着。みんな、ただいま〉

•優子〈旅ログまとめて写真ドーン。まずは栗林公園・鳩の“チン”事件再現コント+動画+実写:肩乗り(光子)&頭上鎮座(優子)〉


(写真・動画が送信される)


美香「おかえり! 鳩、完全に家族やん」

アキラ「“チン”のタイミング完璧。SE担当にスカウトしたい」

春介「ぽー! ぽー! ちゅ!」

春海「はとさん、あたま すき〜!」

優馬「止まり木料金の請求先は我が家?」

美鈴「頭皮は消毒しときんしゃい」

翼「“博多=ギャグの首都”アナウンス、腹筋もってかれた」

拓実「“たまゴジラが切れた”の車体、写真もっと」



2) 吹奏楽部グルチャ

•優子〈オープンキャンパス報告&旅スナップまとめ。鳩インタールード正式採用、トライアングル“チン”はテンポ104で〉

•光子〈**高松城“天守カーディオ”**の段差リフデモ(E–G–A–B 16分上昇)貼っとく〉


田島 萌々香(Cl)「動画リピ止まらん。“チン”=落ちの合図、覚えました!」

高橋 駿(Tp)「次リハ、鳩→カーディオ→道後の流れで通してみたいっす」

三浦 智也(Perc)「トライアングルの角度研究します。45度当て→ミュート0.2秒案」

平川 玲奈(Sax)「“鳩=4/4着地ブリッジ”って音楽的に天才」

さおり「旅の音、パート譜にメモしとくね」



3) 個人公式SNS(光子/優子)


投稿:


「ただいま博多! 夜行で拾った“音の欠片”と、旅先で出会った笑顔に感謝。

#サンライズ小景 #天守カーディオ #ゴクラクニャ #止まり木ドラマー(鳩)」


添付:

•道後の朝膳/路面電車とツーショ/三津浜の桟橋/こだま“たまゴジラ号”鼻先アップ

•鳩:肩乗り&頭上鎮座の決定的瞬間(2枚)


爆速コメント

•@koyuki_drums「なまら鳩、プロやん」

•@sofia_voice「Your humor is a bridge. Love the “Chin” cue.」

•@hakata_foodie「#湿布の準備 完了。ギャグの首都へようこそ」

•@train_otaku「多度津のガチャン音も最高。WAVでください」

•@pigeon_fanclub「鳩に優しい音楽、推します(ポー)」


通知が鳴り止まない。ストーリーズに「鳩“チン”だけ抜粋(8秒)」を追加すると再生数が一気に伸びる。



4) ファイブピーチ★公式SNS


投稿カルーセル

1.栗林公園での再現コント(サムネ:トライアングルに手を伸ばす優子)

2.実写・肩&頭の鳩ツーショ

3.オープンキャンパスのリハ室スナップ

4.道後温泉駅&路面電車

5.たまゴジラ×美鈴アナウンス車体ショット

6.船デッキからの島影


キャプション:


「旅は連結組曲になりました。

鳩の“チン”=笑いの転調スイッチ。

次回ライブでテスト運用します。#FivePeach」


ファンの爆速レス

•「鳩さんにもクレジット表記お願いします」

•「“ギャグの首都・博多”アナウンスの完全版音源希望」

•「**EP『連結組曲』**待ってる。配信で買う」

•「ライブで**ポー(客レス)**練習しときます」



5) 旅ログまとめ(固定ポスト)

•Googleマップ風スクショに訪問地ピン(太宰府/出雲/東京タワー/栗林/高松城/道後/三津浜/柳井/徳山/博多)

•メモ:「見たものは音に、笑いは合図に。— うにゃ/だらぱ〜」


光子「通知すご…」

優子「鳩さん、トレンド入りしそう」

美鈴「頭皮ケアもトレンド入りさせんと」

優馬「まずは寝る。明日“連結組曲・海章”の初稿や」


博多の夜に笑い声。画面の中でハートが増え続け、家の中では湯上がりの静けさがふわりと広がった。



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