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帰国。


帰国をしてから、福岡空港での取材


各国首脳を前に緊張した?


光子

はい。正直に言えば“緊張しました”。でもそれは相手への敬意が形をとったものだと思っています。肩に力が入ったら、心の中でこう言い換えます——「肩書きではなく目の前の一人に話す」。それから4拍吸って4拍吐く(静かに、q=60くらい)。最前列で通訳さんの口角がすっと上がった瞬間、緊張は恐れから集中に変わりました。

(引用可)「緊張は消すものではなく、正しい方向へ整えるもの。」


優子

私も、ゼロではありません。ただ、舞台に立った瞬間に客席の呼吸が一度そろうのを感じて、「大丈夫、今日は“招待状”を渡しに来たんだ」と腹を決めました。最初の小さな笑いが起きるまでの2〜3秒がいちばん長い。でもそこで目まで届く微笑みを返してもらえた時、会場全体が味方になります。

(引用可)「膝の震えは、次の一歩のエンジン。」


補足(2人のルーティン)

•開口前に**「ドアノブを回す」**と心でつぶやく(=心の扉を開く合図)。

•「誰に届けるか」を一人に絞る(最前列の誰か、カメラの向こうの誰か)。

•合図は小さく始めて大きく育てる——笑い→音楽→握手と順に。


結果として、各国首脳を“観客”ではなく隣の席の人たちとして感じられたので、緊張は最後まで良い集中に保てました。




2人にとってお笑いとは?



光子

•お笑い=ドアノブ。 場を一瞬で「入室可」にする装置です。緊張や立場の壁を下げ、人が人として出会える空気をつくる。

•音楽=灯りと温度。 扉が開いたあと、その空間をあたため続けるもの。言語を越えて、合意や記憶を“体感”に変えてくれます。

•(引用可)「笑いが扉を開き、音楽がその部屋を居心地よくする。」


優子

•お笑い=合図。 「いっしょに息を合わせよう」という呼吸の招待状。意味よりリズムが先に届きます。

•音楽=橋。 合図のあとを受け継いで、違う岸(世代・文化)を安全に渡す構造そのもの。

•(引用可)「笑いは合図、音楽は橋。」


私たちが大切にしている原則(3つ)

1.パンチダウンしない。 被害や属性は笑いにしない。笑うのは自分たちの癖(過剰反応・思い込み)。

2.一緒に笑う。 「笑わせる」より「笑い合う」。主語は常に相互に。

3.音で約束する。 テーマ(例:C–E–Gの“スマイル動機”)を繰り返し回帰させ、安心と合意の形を耳で示す。


まとめ(短句)

•光子:「お笑いは起動スイッチ、音楽は持続装置。」

•優子:「笑いで開いて、音で留まる。」




ネタはどのようにして見つける?




1) 種を見つける(違和感ハンティング)

•日常やニュースで**“ん?”と思った瞬間**を即メモ(3列ノート=事実/違和感/比喩の芽)。

•例:過剰な“安全策”→「全部乾かせばこぼれない」=脱水プリンの芽。


2) 見立てに変換(抽象→身近)

•抽象テーマを身近な道具に置き換える:

「過剰安全」→洗濯機・傘、「抑止の穴」→穴あき“傘” など。

•ステータス反転(偉い・弱いの立場入替)やベンign Violation(“無害なズレ”)で笑いの芯を作る。


3) “スイッチ語”を探す(音の気持ちよさ)

•口に出して楽しい音(K/P/NYA系・反復・拍)を試す。

うにゃ〜あじゃぱー/うにゃだらぱ〜/あじゃたらぱ〜は意味よりリズム優先の“合図語”。


4) 10秒プロトタイピング

•ネタを10秒口立て→相方が「さらに?×3」でエスカレート案を出す。

例:プリン→洗濯機→1400回転→カラメル製ヘルメットまで一気に。


5) 小さく試す(3→10→50人)

•稽古場・控室・少人数の前で間(0.3〜0.5秒)と最初の笑いまでの秒数を測る。

•反応ログ:言い回し/小道具/表情のどこで波が立つかを記録。


6) 翻訳と“非言語化”

•国・言語が混ざる現場では言葉遊び<身体・リズム・小道具へ。

英語ダジャレ(dessert/desert)は日本語では比喩(“喜びが干からびた”)に置換。


7) セーフティ&尊厳チェック

•パンチダウン禁止(被害・属性・災禍はネタにしない)。

•外部のセンシティビリティ・リーダーに早めに見てもらい、引っかかりは即修正。



実例:〈洗濯機・脱水プリン〉の作り方(縮約)

1.観察:家事とおやつの同時進行あるある。

2.問い:「安全を極端にしたら?」→“全部乾かす”。

3.見立て:プリン=甘さ/喜び、脱水=過剰対策で甘さ消失。

4.言葉:spin-cience/caramel helmet(英)→日本語では**“レンガ”“ヘルメット”**に置換。

5.検証:20秒版→60秒版へ拡張、ウケた核語だけ残す。



私たちの“台所道具”

•ネタDB(タグ:テーマ/仕掛け=ミスリード・見立て・コールバック/要小道具/温度)。

•指標:初笑いまでの秒数、持続(秒)、コールバック成功率。

•捨てる勇気:10の種→使えるのは1、舞台まで残るのは0.3。



ひと言で

•光子:「笑い=ドアノブ、音楽=灯り。ネタは“空気と発酵”させるもの。」

•優子:「合図→橋の順に作る。子どもに通じるかを最後の判定基準に。」




インタビュー:「ネタは空気を発酵させる?」——光子&優子に聞く


取材者

お二人は「ネタは空気を発酵させる」と表現します。どういう意味ですか?


光子

比喩ですが、実務の指針です。ネタは“材料”を場から借りて、時間×温度×撹拌で“うま味=親近感”を引き出します。扉を開けるのが笑い、部屋を温め続けるのが音楽。


優子

材料(事実+小さな違和感)に、観客の**好奇心(酵母)**を混ぜ、**安心感(温度)**で育て、**間(熟成)**で味を出す。すると、会場が「一緒に息をする」状態になります。



取材者

“発酵”の各要素を、具体的に置き換えると?


光子

•材料=事実+違和感(例:「プリンを洗濯機で脱水!?」)

•酵母=観客の「どうなるの?」

•糖=誰でも分かる道具・数字(洗濯ネット/1400回転)

•塩=制約(持ち時間・安全ライン)

•温度=安心宣言(パンチダウンしない/自分をいじる)

•撹拌=相方・客席とのやり取り

•熟成=0.3〜0.5秒の“間”

•追い発酵=コールバック(前に出した要素の再登場)



取材者

30秒で“発酵”させる型はありますか?


優子

あります。**「30秒レシピ」**です。

•0:00–0:05 仕込み:事実+違和感

 「最速でプリンを乾かす方法、見つけました。」

•0:05–0:10 温度づけ:自分いじり

 「その一言がもう怖い?わかる。」

•0:10–0:15 第一次発酵:数字・道具

 「エコモード、毎分1400回転、追加脱水。」

•0:15–0:20 撹拌:相方のツッコミ

 「それ手順じゃなくて自白やん。」

•0:20–0:25 熟成:0.4秒の“間”

•0:25–0:30 追い発酵(香り)

 「結果:カラメル製ヘルメットが完成。」


光子

目安は初笑いまで8秒以内、山は2回、山間は10秒以内。



取材者

稽古で何を測っていますか?


光子

①初笑いまでの秒数、②笑いの持続、③コールバック成功率。台詞・表情・小道具のどこで波が立つかをログ化します。


優子

“間”は均一にしません。小ネタ後は0.3秒、核心前は0.5秒。空気に呼吸を作るためです。



取材者

失敗しそうなときの立て直しは?


優子

寒くなりかけたら抽象を一段下げて誰でも触れる事実へ戻す。過発酵なら比喩を1個残して他は捨てる。温度不足なら自分オチを一発入れて再開。


光子

そして安全宣言を短く再提示。「被害や属性は笑いません。いじるのは私たちの失敗だけです。」



取材者

国や世代が混ざる場では?


光子

言葉遊びより身体・リズム・小道具に配分。英語ダジャレは日本語では比喩へ置換、といった翻訳も準備します。


優子

“合図語”で温度を上げます。意味よりリズムの気持ちよさ(例:小さく一回だけ「うにゃ〜あじゃぱー」)を先に届ける。



取材者

倫理ラインは?


光子

パンチダウンしない——被害・災禍・属性は笑いにしない。笑うのは自分たちの癖(過剰反応・専門用語・エゴ)。


優子

外部のセンシティビリティ・リーダーに早めに見てもらい、引っかかりは即修正。舞台に上げない勇気もセットです。



取材者

代表作〈洗濯機・脱水プリン〉の“発酵ログ”を一行で?


優子

あるある(家事×おやつ)+違和感(洗濯機)→数値・擬音で撹拌→0.4秒の間→**“カラメル製ヘルメット”**→「甘さを消す安全は安全じゃない」で温度を保ったまま着地。



取材者

明日からできる練習法をください。


光子

“3列メモ”(事実/違和感/比喩の芽)を毎日3本。人前で10秒口立て→相方が「さらに?」を3回だけ重ねる。


優子

視線で空気の対流を作る練習:最前列→中段→後方へ三角に回す。これだけで場が温まります。



取材者

最後に、一言ずつ。


光子

「笑いはドアノブ、音楽は灯り。」 ドアを開け、部屋をあたため続けます。


優子

「合図→橋。」 合図で息を合わせ、橋で向こう岸へ渡る。それが私たちの作り方です。




シーン:福岡空港を後にして(合流〜車内)


場所:到着口の外、一般乗降場。夜の湿った空気。タクシーのベル、キャリーの車輪音。


登場:光子、優子、父、母、美香(家族・スイス同行 → 帰国後は父母がケアして合流)



[自動ドアが開き、二人が外へ。少し先で父と母が手を振る。母の隣に美香。]


母「おかえり!」

父「よう頑張ったな。テレビもネットも、福岡じゅう賑やかやったぞ。」

光子「ただいま。」

優子「ただいま帰りました。」


美香(小声で)「……UNYA~ AJAPA」

[三人、思わず笑う。周りの子どももつられてにっこり。]


母「これ、ちゃんと冷蔵庫で冷やしたプリン。脱水はしてないから安心してね。」

優子「学習の早さがプロ級。」

光子「“甘さを消さない安全”、ありがとう。」


[父がキャリーを受け取り、車へ誘導。]



乗車〜発進


[車内。シートベルトの音。父がミラーを直す。ラジオから“#福岡うにゃ波”の特集が流れる。]


父「握手の動画、すごかったばい。知らん人同士が笑いよった。」

母「うちの商店街、明日“おはよう+微笑み”のポスター貼るって。」

優子「それがいちばんのご褒美。」

光子「拍手より、朝の目まで笑顔だね。」


美香「あの“スマイルの三つの音”、もう一回、教えて。」

光子ハミング「C–E–G……ほら、上にのぼるでしょ。」

優子(3度下で和音を重ね)「上がるたびに、胸のあたりが明るくなるんだよ。」


[母、ダッシュボードを指で軽くタップして拍を取る。父はハンドルに指でコツコツ。]


父「ほら、家族バンドの誕生や。」

母「バンド名は“冷蔵プリン”でどう?」

優子「強固な意思を感じるネーミング。」

光子「(笑いながら)“脱水禁止”のサブタイトルを添えよう。」



交差点〜街の灯り


[窓の外。コンビニ前で中学生が小さく“うにゃだらぱ〜”と囁いて笑い、隣でお辞儀。横断歩道では見知らぬ二人が目を合わせて会釈。]


母「見て。ほんの少し、街が柔らかくなった気がする。」

優子「うん。合図が橋になってる。」

光子「この感じを、明日の朝にも連れていこう。」


美香そっと「AJATARAPA〜。」

[三人が目を合わせ、声は出さずに頷く。]



家の近く


父「今日はゆっくり休め。明日は近所の公園で“朝のスマイル”やろうや。」

母「プリン、四つあるからね。冷蔵。」

優子「復習テストに出ますか?」

母「出ます。」

光子「(笑)満点取る。」


[車が角を曲がる。街灯の下、並木の影が流れ、C–E–Gのハミングが車内に小さく満ちる。]






ミニシーン:ただいまの再会


場所:到着ロビー脇の一般エリア。人波の向こうから二人の小さな影がぱたぱた——。


春介(両手を広げて)

「まんま〜ちゅ〜!」


春海(靴ひもを気にしつつも全力ダッシュ)

「みーちゅ しゅき〜。ゆーちゅ しゅき〜。おねえしゃん しゅき〜!」


光子(しゃがんで目線を合わせ)

「春介〜、春海〜。ただいま〜。帰ってきたよ〜。」


優子(手をひらひら)

「ふたりとも、会いたかったよ。あとでむぎゅーしてあげるね。」


春介(指で小さなハート)

「むぎゅー、あとで? いまは、てて、タッチ!」


優子

「もちろん。はい、ててタッチ。」(ぱちん)


春海(ミカの方を見上げて)

「みーか〜、しゅき〜。」


美香(笑って、そっと髪をなでる)

「春介、春海、いい子にしてた? お父さんとお母さんのお手伝い、できた?」


春介・春海(顔を見合わせて同時に)

「できたー!」


光子

「えらい、えらい。報告、あとでゆっくり聞かせてね。」


優子(内緒話風に)

「今日は“おかえりプリン”があるらしいよ。冷蔵の。」


春海(目を丸くして)

「ぷりん! しゅき〜!」


春介(小声で)

「……うにゃ〜……あじゃぱー……」(にこっ)


美香にやりとウィンク

「それ、覚えてくれたの? 最高だね。」


光子(両手を広げて)

「じゃあ、帰ろっか。おうちで“むぎゅー”の続きと、プリン会議ね。」


優子

「きょうの合言葉は——“おはよう(夜だけど)+目まで笑顔”。」


春介・春海まねっこして

「めまで、えがお〜!」


四人の影が、ゆっくり家の方角へ。手と手の間に、小さな笑い声がぽんと灯る。




帰宅シーン:ただいまの夜


空港前ロータリーで二手に分かれる。

美香+春介+春海はアキラの運転する車へ。

光子+優子はお父さんの運転する車へ。



車内(アキラ組)


アキラ「シートベルトOK? 家まで15分。」

春介「まんま〜ちゅ〜。(小声)」

春海「プリン、ある?」

美香「あるよ。冷蔵ね。」

ラジオから “#福岡うにゃ波” の短い特集。窓の外で、誰かが小さく手を振る。


車内(お父さん組)


お父さん「信号、全部みどりだと気持ちがよか。」

光子「うん……帰ってる感じ。」

優子「あしたの朝、起きて“静かな勝利”から始めよう。」

二人、同時にふっと息を吐く。



自宅 前


ほぼ同時に2台が到着。玄関灯がぱっと点く。


美香「ただいま戻りました!」

春介・春海「ただいまー!」

光子「ただいま〜。」

優子「ただいま帰りました〜。」


お母さん(玄関から顔を出して)「おかえり。手だけ洗って、荷物はあとで。」



玄関〜リビング


コートを掛け、スーツケースは壁際へ。手指消毒、手洗いをちゃちゃっと。


光子(ソファに腰を落としながら)「……やっぱり落ち着くなぁ。」

優子「1週間ぶり。長いようで短い1週間だった〜。」

美香「濃縮1週間。あとで写真選別会しよ。」

春海「むぎゅーの約束は?」

優子「はい、むぎゅー。」(両腕でぎゅっ)

春介「ぼくも!」

光子「よし、ダブルむぎゅー。」(二人まとめてぎゅっ)



小さな“ただいま”儀式

•お父さん:湯を沸かす。湯気が立ち上がる音。

•お母さん:小皿とスプーンを並べて、冷蔵プリンを4つ。

•美香:テーブルにお土産をどさっと(ラベルに「ジュネーブ」と手書き)。

•春介・春海:リモコンで音量を小さく、BGMはオフ。代わりにC–E–Gをハミング。


優子「(プリン一口)……生き返る。」

光子「“甘さを消さない安全”って、こういうこと。」

お父さん「脱水禁止。」

全員「(笑)」



片付けは“明日の自分”へ


美香「スーツケースは開けずにクローズ。今日はお湯+ハミングで終わろ。」

光子「賛成。玄関の花に“ただいま”だけ言ってくる。」

優子「歯磨き→シャワー→3分ストレッチ→就寝、の順で。」


春海あくび「みーちゅ しゅき〜。」

春介「おねえしゃん しゅき〜。」

光子・優子「しゅき〜。おやすみ。」


リビングの灯りが一段落ちる。最後にC–E–Gがそっと鳴って、静けさへ。





1) 帰国翌日のリカバリー計画(無理しない版)

•午前:スマホ通知オフ→白湯→軽いストレッチ5分→日光15分(体内時計リセット)

•午後:30分だけ写真の一次選別(★付け)→昼寝は20分以内

•夜:塩分控えめ+炭水化物少し→ぬるめ入浴→呼吸4拍吸う/4拍吐く×5

•楽器:ロングトーン10分+音階10分まで(“取り戻す”より“整える”)


2) 一週間のざっくりタイムライン(秋田遠征=1週後)

•Day 0(今日):休養/一次選別★/SNS「ただいま」投稿

•Day 1:吹奏楽部リハ(基礎徹底・音程/バランス)/写真二次選別★★

•Day 2:全通し①(録音→自己採点)/SNS「ジュネーブ5枚ストーリー」

•Day 3:セクション練(木管→金管→打)/打楽器運搬の段取り確定

•Day 4:全通し②+弱音pp特訓/SNS「“スマイル動機”小話」

•Day 5:移動直前チェック(譜面・ミュート・替えリード)/遠征荷造り

•Day 6(移動日):秋田へ移動→ホテル軽音出し

•Day 7(本番):ゲネプロ→本番→撤収


3) 写真選別ワークフロー(30分×3セットで終わらせる)

•フォルダ構成:2025-09_Geneva/01_raw /02_select /03_post /04_press

•命名規則:202509_GVA_####_場所_被写体_撮影者

•★基準

•★★★=SNS/プレス即戦力(ピント/表情/物語性)

•★★=ストーリー用(補助カット・情景)

•★=アーカイブ

•3セットの中身

1.粗見で“捨て”を決める(ボケ/重複)

2.★付けと色味そろえ

3.キャプション紐づけ→/03_postへ書き出し


4) 公式SNSテンプレ(日本語・そのまま使える)


A. 帰国報告(写真1枚/テキスト短)


ただいま、福岡。長いようで短い一週間でした。

扉は笑いで開き、音楽であたため続ける——この小さな真実を持ち帰ります。

#ただいま福岡 #福岡うにゃ波 #スマイル動機


B. ジュネーブ5枚ストーリー(カルーセル)

1枚目:空と会場外観

2枚目:登壇直前の手

3枚目:五都市リンクの画面

4枚目:フィナーレの一体感(客席は顔が特定されない引き)

5枚目:帰路の空


写真の裏側:初笑いまで“8秒”。呼吸がそろうまで“2秒”。

#Geneva #笑いはドアノブ音楽は灯り


C. “スマイル動機”小話(動画10–15秒)


C–E–G。上にのぼるだけで、胸が明るくなる三音。

明日の朝、目まで届く笑顔で「おはよう」。

#SmileMotif #朝の静かな勝利


D. 秋田へ向けて(出発前日)


次は秋田へ。やることは同じ——呼吸をそろえ、音を重ね、心を届ける。

#全国大会 #吹奏楽 #行ってきます


ハッシュタグ候補

#福岡うにゃ波 #スマイル動機 #ロサンゼルス組曲 #Geneva #ただいま福岡 #吹奏楽 #全国大会 #秋田へ


5) 吹奏楽部:1週間前の練習メニュー(抜粋)

•基礎(毎回15分):チューニング→ロングトーン→ハーモニー(長三和音と減七の当たり確認)

•重点① Balance/Blend:木管ppの芯→金管mfで包む(“聴こえるpp”)

•重点② Intonation:和声の第三音を各自-5~-14centsで試聴→合意点決定

•重点③ Attack/Release:コラール終止の無音1秒(ホール残響シミュレート)

•毎回の録音チェック:短所を名詞で書く(例:×「もっと」→○「語尾の子音が散る」)


6) 秋田遠征チェックリスト(要点)


個人

•楽器本体/替えリード・リガチャー/ミュート各種/メトロノーム

•譜面(本番用+予備)/鉛筆/譜面台ゴム(会場備品でも滑り止め推奨)

•衣装一式(靴・靴下含む)/防寒レイヤー(朝晩冷える日あり)/常備品

セクション

•打楽器:搬入表・割り当て図/マレットケース/予備ヘッド/チューニングキー

•金管:ミュート共有表/給水動線

•木管:タンポ応急セット/コルクグリス

運営

•行程表/緊急連絡網/同意・体調申告書/保険情報

•宿・会場への搬入時刻確認/集合写真の顔出し可否管理


7) 役割分担ミニ表(例)

•写真選別・書き出し:美香

•SNS投稿(文案→校閲→投稿):優子→光子→美香

•吹奏楽部・遠征連絡:顧問/学生リーダー

•打楽器ロジ:パートリーダー+運営

•応援・差し入れ窓口:保護者会


8) 10秒リール台本(2本)


①「ただいま」

0–2s:玄関を開ける→息を吐く

2–6s:C–E–Gのハミング+「扉は笑いで開き、音楽であたたまる」テロップ

6–10s:湯気とプリン/「#ただいま福岡」


②「秋田へ」

0–3s:ケースに名前タグ→手のアップ

3–7s:メトロノームq=60→深呼吸

7–10s:「呼吸をそろえて、行ってきます」テロップ


9) 注意(毎回の投稿前チェック)

•顔の写り:未成年は同意確認/一般客は後ろ姿orぼかし

•ロゴ・掲示:権利・機密に配慮(会場内の注意書き写り込み注意)

•位置情報:帰宅直後は“ざっくり”に留める(安全優先)




帰国後の1週間後、吹奏楽コンクール全国大会ベノロードマップ



玄関の鍵を回すと、家の空気が胸に落ちてきた。湯気のない匂い。使い慣れた洗剤の残り香。靴を脱いだ足裏が畳を確かめるみたいに沈み、光子は短く息を吐いた。


「やっぱり、落ち着くなあ」


「ね。長いようで短い一週間だった」


優子が笑い、ふたりはソファに並んで腰を下ろす。窓の外は福岡の夜。スーツケースは壁際でおとなしくしている。開けない。今日は開けない、と決める。


翌朝。薄い雲の切れ間から陽が差し、ベランダの多肉に点の光が宿る。白湯を一口ずつ、舌で転がすみたいに飲む。四拍吸って、四拍吐く。音のないメトロノームが身体の中に作られていく。


「背中に太陽、ただいま日本」


「呼吸で時差を溶かす」


言葉にしておけば、身体が後からついてくる。洗濯機を回し、タイマーを三十分にセットして、光子はノートPCを開く。ジュネーブの写真がずらりと並び、画面の中ではまだ人たちが笑って、手を振っている。指先が走るたび、星がつく。三つ星はそのまま使えるやつ、二つはストーリー用、一つは記憶の中にしまっておくやつ。


「これは★★★。表情がすっとしてる」


「これは★。でも私には大事」


優子が隣から首を伸ばし、同じ画面を見てうなずく。重複は捨てる。勇気は保存のフォルダではなく、削除のボタンに宿る。三十分のアラームが鳴ると、ふたりは一旦パタンと蓋を閉じ、ロングトーンを十分だけ吹いた。取り戻すんじゃない、整えるんだと、互いに目で確認するみたいに。


午後、ふたりは短い昼寝を揃って終え、リビングに戻る。SNSに一枚だけ写真を上げる。夕暮れの空に、街の灯りが点き始める瞬間を切り取ったもの。


「ただいま、福岡。扉は笑いで開き、音楽であたため続ける」


文面を声に出して読み、句読点の位置で息を合わせる。送信ボタンを押すと、どこか遠くの見知らぬ誰かが画面の向こうで頷いた気配がした。


二日目、学校の音楽室の空気は少し乾いていて、床のワックスの匂いが新しかった。吹奏楽部の基礎合奏、いつもの音階が始まる。チューニングのAが伸び、耳の奥で線が一本引かれていく。


「三和音のEは、ほんの少しだけ低めに」


光子が木管の列の前で指を小さく動かす。優子は後ろで金管の息の入り方を見守る。ppは小ささじゃない、密度なんだと口を動かさずに伝えると、クラリネットの息がふっと締まる。誰かの眉間の皺がほどけ、音の輪郭がやわらぐ。録音機は無言で点滅し、終われば机の上で再生される。ふたりは机の角に紙を置き、名詞で短評を書く。「語尾」「間合い」「ブレンド」。もっと、や、がんばろう、みたいな抽象は紙に乗せない。


帰り道、公園の脇を通ると、子どもたちが背中にランドセルを揺らして走っていく。ふたりの口から、思わずC–E–Gがこぼれた。上にのぼる三音。息をひとつ合わせるだけで、胸の中の灯りが少し明るくなる。


三日目は、部分に潜った。木管→金管→打楽器と順にセクション練。打楽器のマレット割は紙に図にして可視化する。紙にする、という行為は魔法に近い。音が絵になり、絵が秩序になる。夜は写真のキャプションを十本だけ書く。「見ていた空気」を一行にする作業は、演奏よりも難しい。けれど書いているうちに、場の匂いまで指が思い出す。


四日目、終止の無音一秒を磨いた。誰も鳴らさない一秒を合わせるのは、音を合わせるより難しい。「最後の一拍、『待てる勇気』」優子が口角だけで言うと、数人が微かに笑った。笑いは合図の確認だ。終わってから、ふたりは十秒の動画を撮る。C–E–G。三音だけの短い動画に、簡単な文字を重ねた。


五日目、荷造り。譜面、ミュート、替えリード、鉛筆。衣装、靴下、喉飴。防寒の薄手のレイヤー。打楽器の搬入口の図、集合写真の顔出し可否のチェック表。口に出して指差すと、忘れ物が思考の影から出てくる。


「軽く行って、軽く帰る」


光子が言い、優子がうなずく。家族ラインには集合時刻だけを送る。差し入れはお気持ちだけで、と一行添える。夜は短い家族会議。春介と春海は、眠気と戦いながら「行ってらっしゃいの練習」をしてくれる。両手で小さなハート、そしてにやにや笑う。美香はプリンの在庫を確認し、「冷蔵」とマスキングテープに書く。笑いを混ぜながら、生活は正確に整えられていく。


六日目、秋田へ。車窓に稲穂がたわむ景色が流れ、空は高かった。ホテルに着くと、ケースを開け、軽く音を出す。部屋に戻る廊下で、知らない学校の子たちが譜面を抱えて小走りに過ぎていく。誰もが、自分だけの小さな緊張と小さな祈りを持っている。SNSに「着きました」と一枚だけ上げる。文章は短く、呼吸は長く。


七日目、朝。楽器の前に立つ前に、ふたりは目を合わせた。


「合図は小さく、音は大きく」


「笑いはドアノブ、音楽は灯り」


言葉は道具だ。ふたりはその言葉で心の棚を整え、ステージの袖に入る。袖の空気は、まだどこにも属していない。客席が揃って息を吸うのが見える気がする瞬間が来る。その一拍を待つ。ドアノブが、ちいさく、確かに回る音がする。誰かが笑って、誰かが泣きそうになって、誰かが両方を同時にやっている。音の中で、ふたりは互いの存在を感じ、同時に目の前の一人に語りかけている。


夜、ホテルの部屋に戻る。窓の外、遠い街灯が点々と続く。録音は明日に回す。今日は“ありがとう”だけを胸に置く。机の上に手帳を開き、「良かった一」「直す一」「できる一」を三行だけ書く。「ppの密度」「語尾」「終止の無音一秒」。ペン先が止まるたび、遠くから家の匂いがした。湯気。冷蔵プリン。リビングのソファの沈み。C–E–G。三音の上昇。ふたりは顔を見合わせ、息を合わせてから、同時に目を閉じた。


翌朝また、日常は続いていく。玄関のドアを開ければ外気が入ってきて、ドアを閉めれば室内の温度が戻る。笑いはドアノブ。音楽は灯り。ふたりの手は、何度でも静かに取っ手に触れ、何度でも同じように回す。その繰り返しの中で、遠い都市の夜も、近い町の朝も、見知らぬ人の呼吸も、家族の寝息も、少しずつ同じ部屋に集まってくる。


「ただいま」と「行ってきます」のあいだにある一週間。長いようで短く、短いようで長い。ふたりにとってそれは、舞台でも旅でもなく、生活の形を取り戻す練習だった。扉を開け、灯りをともす。その繰り返しの中で、合図は橋になり、橋はまた次の合図になる。福岡の空は、今日も高い。







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