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真夜中すぎの怪談?

九州大会前日 ― ソニック車内にて


朝の博多駅。吹奏楽部員たちは大きなリュックを背負い、ソワソワと集合していた。

前原先生は既に楽器をトラックに積み込み済み。部員たちは軽装で、いざ大分へ。


「よっしゃ〜!九州大会に向けて出発や!」

優子が声を張り上げると、みんなの気持ちも高まる。


そこに滑り込んできたのは――


うにゃシリーズ特別仕様ソニック「うにゃだらぱ〜号」。

車体いっぱいに光子のイラストが描かれ、手にはチューバを抱えながら「うにゃだらぱ〜!」と叫んでいる。


「えっ!?これに乗ると!?恥ずかしかぁ〜!」

光子は顔を真っ赤にして叫ぶが、部員たちは爆笑。

「いや、似合っとるやん!」

「完全に公式マスコットや!」


――出発のベルが鳴り、ソニックは滑るようにホームを離れた。



うにゃ仕様の車内放送


ほどなくして流れてきた車内アナウンス。

なんと声は、光子本人による録音だった。


「え〜、まもなく発車しま〜す。安全のため、立っている方は…うにゃ座りをしてください〜。なお、腹筋崩壊の危険があるけん、笑いすぎ注意!」


部員一同:

「ぶはははははは!!!!」


男子部員は早くも膝から崩れ落ち、女子部員は涙を浮かべてお腹を押さえる。

前原先生まで吹き出して、窓の外を見てごまかす始末。


続いて流れる。

「次は〜別府〜。温泉でひとっ風呂浴びたい人は〜、水着じゃなくてタオル準備してくださ〜い!サスペンスな事件が起きても、うにゃだらぱ〜で解決!」


部員一同:

「ぎゃははははは!!!」


「や、やばい……大会前に腹筋が崩壊するぅぅぅ!!」

男子部員は座席に突っ伏し、女子部員は笑い転げる。



目的地・大分駅へ


大分に着く頃には、部員たちはすでにフラフラ。

「もう…本番前に…笑い死ぬかと思った……」

「大会より、ソニックが本番やったわ……」


光子はけろっとしてチューバケースを抱え、にっこり。

「ふふふ、これがうちらのウォーミングアップやけん!」


優子が即座にツッコミ。

「ウォーミングアップで命削るなーーーっ!!!」


こうして福岡高校吹奏楽部の「笑いすぎ九州大会遠征」は、始まったばかりだった。




九州大会前日リハーサル ― 大分市民会館


大分市民会館の大ホール。

舞台上では福岡高校吹奏楽部のメンバーが所定の位置につき、前原先生がタクトを構える。


「はい、それじゃあペールギュントの『朝』、冒頭から行くよー!」


ホール全体がしんと静まり返り、緊張感が張り詰めた――その瞬間。


ドンッ!


チューバを構えた光子が、バランスを崩して椅子ごとひっくり返った。


「うにゃだらぱ〜っ!!」


ド派手な音と叫びがホールに響き、見事に緊張感が吹っ飛ぶ。



大混乱スタート


優子:「ちょ、なに転んどるんよ!本番前日やけん、真剣にやらんか!」

光子:「いやぁ、床が急にツルッて…トラップしかけられとったんよ!」

部員たち:「そんなトラップあるかーーーっ!!!」


トロンボーンパートは笑いをこらえきれずにスライドをぶんぶん振り回し、フルートパートは肩を震わせながら「ぷっ…」と音を漏らす。


前原先生はタクトを構えたまま固まり、ついに吹き出した。

「……もうっ!光子!君はほんと、全国大会より先にお笑い全国制覇狙っとるやろ!」



ボケ連鎖


すると、なぜか波及効果で他の部員までボケ始める。


・トランペットの樹里:「先生、すみません、マウスピースなくしましたー!」 → 胸ポケットから出てくる。

・クラリネットのさおり:「リード割れました!」 → 実は板チョコをくわえてた。

・打楽器の優子:「先生、私のバチがどっか行ったー!」 → ちゃっかり背中に差してある。


部員全員:「わざとやろーーーっ!!!」



収拾不能


ホールは爆笑とどよめきの渦。

前原先生はタクトを持つ手をぶるぶる震わせながら、ついに座り込んでしまった。


「もう……こんなバンド、指揮できん……!でも、腹筋は鍛えられたわ……」


光子はチューバを抱え直し、にっこり。

「先生、笑いでリハーサル緊張ほぐしたけん、うちらの作戦大成功っちゃ!」


優子がすかさず叫ぶ。

「作戦違うわぁぁぁぁ!!!真剣にやらんかぁぁぁ!!!」



こうして前日のリハーサルは「爆笑健康体操」と化し、会場を貸し切った大分市民会館のスタッフまで笑い転げる羽目になった。





大浴場 ― 爆笑温泉ミステリー


夕食後、疲れを癒やすためにホテルの大浴場へ。

浴衣を脱ぎ捨て、女子部員たちが「ひゃ〜極楽〜!」と湯船に浸かる。


光子:「あ〜〜!お湯気持ちよかぁ!けど、これ……ただのお風呂やなかろう。絶対なんか起こるっちゃ」

優子:「いや、普通に風呂やけん!事件とか言うな!」


と、その時。


「きゃああああっ!!!」


浴場の奥から悲鳴が響いた。

さおりが震える指で指し示す。


「み、みんなっ!あそこに……人影が……!」



温泉怪人(?)現る


湯けむりの向こうに、ぼんやりと人影が立っている。

しかも妙に低い声でつぶやいている。


人影:「……お湯がぬるい……もっと熱くせんか……」


部員一同:「ひいいいいいい!!!」


優子:「いやこれ絶対、ホラー展開やん!!!」

光子:「ついに出たか……温泉怪人“ヌル湯男爵”!」


部員たちはパニックで湯船から飛び出し、バスタオルを巻きながら大混乱。



真相は……


その正体は――

疲れすぎて立ったままうたた寝していた前原先生(!)だった。


先生:「……あ、あれ?みんな何騒いでんの……?」

光子:「先生!?女湯入ったら犯罪っちゃよ!!!」

先生:「いやいや!違う違う!隣の男湯から迷い込んだだけで……!」


優子:「迷子なるかーーーっ!!!」



さらに混乱


そこへ追い打ちをかけるように、温泉の泡風呂から ぷくぷくぷく……ボンッ! と勢いよく泡が弾ける。


樹里:「ぎゃー!怪奇現象やーーー!」

朱里:「もうやめて!全国大会前に心臓止まるっ!」


しかし光子は余裕の表情。

「ふっふっふ、これはきっと……温泉の精霊“あじゃぱー様”のお告げっちゃ!」


優子:「どこの精霊やねん!!!」



大浴場は爆笑の渦


結局、事件の真相は「ジェットバスのタイマーが作動しただけ」。

でも、吹奏楽部員たちは怖さと爆笑でお湯に浸かるどころじゃなく、湯船の縁に座り込んで腹筋を押さえていた。


さおり:「もう……こんなお風呂、落ち着いて入れんわ……!」

優子:「ほんとに!なんで普通の入浴すらネタになるんよ!」

光子:「うちらの周りには、いつでも事件と笑いがわいてくるんや〜。次は“温泉殺人事件”やな!」

優子:「縁起でもないこと言うなぁぁぁ!!!」


こうして「前日お風呂タイム」は、リラックスどころか爆笑で体力を消耗する結果となったのだった。





ホテルの部屋 ― 恋バナタイム


女子部屋に布団を並べて、枕を抱きながらぽかぽか語らいタイム。


さおり:「で、光子と優子って、彼氏とどんな感じなん?」

光子:「そ、そんなたいしたことなかよ!普通普通!」(耳まで真っ赤)

優子:「そうそう、普通普通……って言いながら、デートの帰りに“きゃー”って叫んで抱きついとったやん!」

光子:「うわあああああ!ばらすなぁぁぁ!!!」


女子部員たち:「きゃー!青春やねぇぇぇ!」


恋バナに花が咲き、部屋は甘酸っぱい雰囲気に包まれる。



枕投げギャグ大会


ところが、恋バナの甘いムードは長続きせず。

「キャー!」と叫んだ光子の枕が飛んで、優子の頭にヒット。


優子:「おい!これがラブアタックやと!?」

光子:「違う違う!ただのピローラブや!」

優子:「ピローラブて何やねん!!」


さおりも朱里も参戦して、枕投げはあっという間に 即興コント大会に。

「必殺!うにゃだらぱーピロースマッシュ!」とか言いながら投げ合う女子高生たち。


部屋中は笑い声と羽毛の嵐。隣室から「静かにしてください!」とフロントにクレームが入る寸前。



突如始まる怪談ホラー展開


笑い疲れて落ち着いた頃。

樹里がぽつりと口を開いた。


樹里:「ねぇ……さっきからさ……廊下で、足音聞こえん?」


シーン……。

急に静まり返る部屋。


優子:「やめぇ!さっきまで“うにゃだらぱー”言いよったやろ!」

さおり:「でもマジで……さっきから“ギシ……ギシ……”って……」


と、その時――


コンコンコン……


ドアをノックする音が響く。

女子たちは息を呑む。


光子:「で、出たぁぁぁぁ!温泉怪人ヌル湯男爵の仲間やーー!!」

優子:「まだ引っ張るんかい!!!」


しかし、ドアを開けるとそこには――

風呂上がりの男子部員たちが、タオルを頭に巻いて立っていた。


男子:「うるさすぎて寝れんけん……静かにしてくれん?」


女子全員:「ぎゃはははははは!!!なんやそれーーー!!!」


恐怖と笑いがごちゃ混ぜになり、結局その夜も寝不足で大会前日を過ごすことになったのだった。






ホテル・消灯後


爆笑コントのあと、みんな布団に入り「もう寝よ」と話していた頃。

夜の11時を過ぎ、部屋の電気は消えている。


ふと――


カリ……カリ……


窓の外から、何かが引っかくような音が聞こえてきた。


朱里:「……ねぇ、今の聞いた?」

樹里:「ま、またギャグやろ?」

さおり:「いや……ガチで聞こえたって……」


シーン……。

さっきまでの賑やかさが嘘のように、部屋が静まり返る。



廊下の異変


すると今度は、廊下から ギシッ……ギシッ…… と重い足音が。

しかも、誰かが壁をなぞるような ズズ……ズズ…… という音まで。


優子(小声):「やめぇって……ほんまにやばいやつやん……」

光子(小声):「……“ヌル湯男爵”やなくて……マジもんか……?」


布団をかぶる女子たち。だが、足音はドアの前で止まった。


コン……コン……


ドアをノックする音。

けれど返事をしようにも、声が出ない。



窓に浮かぶ影


その瞬間。

カーテンの隙間に、白い人影がすっと横切った。


「キャアアアアーーーッ!!!」


全員布団から飛び出し、部屋中がパニック。



真相


フロントに駆け込むと、夜勤のスタッフが驚いた顔で言った。


「え?……今夜は、うちのホテル全館貸し切りですよ。

 他にお客さんなんて、入ってませんけど……?」


シーン……。


さっきの足音、ノック、窓の影――。

あれは一体、誰だったのか……。





次の日の朝、光子が言う。

「なぁ……昨日のは、ギャグでごまかされんばい……ガチのやつやったよね……?」


優子:「……うん。あれは、ツッコミもボケも効かんやつやった……」




翌朝の真相


朝食会場でまだ怯え気味の部員たち。

「昨日のは絶対、幽霊やったって……」

「いやいや、ホテルの怪談やろ……」


ざわざわする中、フロントにいたスタッフが説明してくれた。



事の真相


どうやら昨日の夜――

1.窓のカリカリ音

 裏山に住みついた野良猫が、餌を求めて窓を引っかいていた。

 猫の毛がカーテンの隙間から見えたのを、人影と勘違い。

2.廊下のギシッ……音

 実は、夜中にホテルの管理人が給水タンクの点検をしていて、

 古い木の床がきしんでいただけ。

3.ドアのノック音

 これも猫。廊下をうろついて、ドアを前足でカリカリ叩いたらしい。


スタッフ:「あの猫、よくいるんですよ。すぐに逃げちゃうんで、気づかなかったんでしょうね」



安堵と爆笑へ


その説明を聞いた瞬間――


光子:「……ちょっと待って。昨日あんなに怖がったん、猫のカリカリやったと!?」

優子:「うちら、マジで心臓止まるかと思ったのに!犯人、にゃんこかぁーー!」


全員爆笑。

怖さでガチガチに固まってたのが、一気に笑い話になっていった。


朱里:「昨日のあの大騒ぎ……全国ネットで放送せんでよかったわ……」

樹里:「“幽霊にビビる福岡高校吹部”とか見出し付いたら、終わりやん……」



結果、恐怖の夜は「伝説の猫事件」として吹奏楽部の合宿史に刻まれることになった。









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