爆笑コント弟子入り
爆笑の震源地、心の灯火」
(中略:川原翔太と両親が光子・優子と出会い、爆笑の時間を過ごした夜のシーン)
⸻
翌日。
翔太は、どうしても気持ちを抑えきれず、みらいのたねのスタッフに声をかけた。
「……あの、俺、もっと知りたいんです。光子と優子のこと。どうして、あんなに真っ直ぐで、あんなに人を救えるのか……」
スタッフは少し驚いた顔をしたが、やがて穏やかに頷いた。
「翔太さんがそう言うの、分かりますよ。実は……二人はあなた以外にも、多くの人を救ってきたんです」
そう言って取り出された一冊のファイルには、数々の出来事が記録されていた。
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美香のこと
スタッフは語り始めた。
「美香さんのことをご存知ですか?」
翔太は首を横に振った。
「彼女は……光子さんと優子さんにとって、血はつながっていませんが“姉”のような存在なんです。でもね、元々はとても深い傷を負った子でした」
スタッフの声が少し沈む。
「実の両親から激しい虐待を受けて、自分には生きる価値がないとまで思い込まされてしまって……。生きる気力も、笑う力も、全部奪われて、自殺寸前にまで追い詰められていました」
翔太は思わず息を呑んだ。
――あんな明るい二人の“姉”とも呼ばれる人が、そんな地獄を……。
「そんな時に出会ったのが、音楽。そして……偶然にも、光子さんと優子さんだったんです」
スタッフの目が細く笑う。
「二人は、いつもの調子で真っ直ぐな言葉を投げかけて、美香さんを笑わせた。『お姉ちゃん、生きとるだけで丸儲けやけん!』なんてね。その笑いが、美香さんを絶望の底から少しずつ引き上げたんです」
翔太の胸に熱が広がっていく。
「やがて美香さんは、小倉家に迎えられて、“家族”として生き直すことができたんです。音楽を続けて、夢を掴んで……今は、福岡交響楽団のメンバーとしてステージに立っている。結婚して、子どもにも恵まれて、本当に幸せそうですよ」
翔太は拳を握った。
「……あの二人は、美香さんを救ったんですね」
「ええ。暴力でも、脅しでもなく、“笑い”と“言葉”で」
⸻
翔太の胸に芽生えた想い
翔太の頭の中で、昨日の光子と優子の姿が鮮明によみがえる。
爆笑を巻き起こしたコントの最中にも、はっきりと語っていた。
――「人間ね、笑ってる時はね、辛いことも、悲しかったことも、苦しかったことも忘れられるっちゃ」
――「笑うことができるのは、人間だけに与えられた特権ちゃ」
美香という少女を絶望から救い、翔太自身を闇の中から引き上げ、そして数えきれない人を笑顔にしてきた二人。
「……もっと知りたい。あの子達のことを。俺も、あの子達みたいになりたい」
翔太は心の底からそう願っていた。
彼にとって光子と優子は、ただの「恩人」ではなくなっていた。
人間としての指針、そして憧れの光へと変わりつつあったのだ。
「真実の笑顔、未来への架け橋」
翔太の決意
「……美香さんに、会わせてもらえませんか?」
スタッフの話を聞き終えた翔太は、心臓の鼓動が高鳴るのを感じていた。
美香の物語は、あまりに衝撃的で、そして希望に満ちていた。
――自分があの二人に救われたように、かつて美香も救われた。
ならば、直接本人からその声を聞きたい。そうすれば、自分ももっと強くなれるはずだ。
その夜、翔太は光子と優子に連絡を入れた。
「お前らに、頼みがある。美香さんに、会わせてもらえんか」
電話口の向こうで、二人は少し驚いたように声を上げた。
「おっちゃんが、美香お姉ちゃんに会いたいって? へぇ〜。ま、いいけど……なんで?」
翔太は正直に答えた。
「お前らを救ったのが偶然じゃないって分かったんだ。美香さんの話を聞いて……もっと知りたくなった。俺も、前を向いて生きたいから」
数秒の沈黙のあと、優子の声が弾む。
「よかやん! おっちゃんがそこまで言うなら、美香お姉ちゃんも絶対喜ぶはず!」
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福岡交響楽団の楽屋にて
数日後。
光子と優子に案内され、翔太は福岡市内のコンサートホールの楽屋を訪れた。
そこではリハーサルを終えたばかりの美香が、汗を拭きながら楽譜を整えていた。
「お姉ちゃーん!」
光子と優子が元気いっぱいに声をかけると、美香は振り返って微笑んだ。
「おかえり。……って、あら? 見慣れない人がいるわね」
翔太は緊張で背筋を伸ばし、深く頭を下げた。
「川原翔太といいます。……初めまして」
美香は不思議そうに双子を見る。
「光ちゃん、優ちゃん、この人は?」
「うちらの大事なおっちゃんたい!」
「昔ちょっと悪い道に迷いよったけど、いま建設で頑張りよるっちゃん!」
美香は柔らかく目を細め、翔太に手を差し伸べた。
「初めまして。美香です。……二人が“おっちゃん”って呼ぶくらいだから、あなたもきっと素敵な人なんでしょうね」
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美香の告白
楽屋の片隅、四人は椅子を並べて腰を下ろした。
翔太は、意を決して口を開いた。
「……実は俺、二人からあんたの話を聞いたんです。過去にすごく辛いことがあって……それを、この子たちが救ったって」
美香は少し驚いた表情を見せたが、やがて静かに頷いた。
「……そうね。あの子たちがいなかったら、私は今ここにいないと思う」
翔太は固唾を呑む。
美香は遠くを見るように語り始めた。
「私はね、実の両親から愛されなかった。暴力と罵倒ばかりで、“お前なんか生きる価値がない”って毎日のように言われてたの。……本当に、自分なんて消えてしまえばいいと思ってた」
光子と優子がそっと美香の手を握った。
「けど、ある日、音楽に出会ったの。そして、その帰りに偶然、光ちゃんと優ちゃんと出会った。二人は、私の沈んだ顔を見て、いきなり笑わせようと必死になって……バカみたいなギャグばっかりしてた」
美香は微笑む。
「でも、その“バカみたいな”笑いが、私の心を救ったのよ。涙が止まらなくて……それでも、生きてていいんだって思えたの」
翔太の目頭が熱くなる。
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翔太の変化
「……すげぇな。お前ら、本当に……」
翔太は声を震わせながら、光子と優子を見た。
「俺も、お前らに救われた。けど、美香さんの話を聞いて……お前らがやってきたことは、ただの偶然やお節介やなかと分かった。お前らは、本物や」
美香は柔らかく笑った。
「翔太さん。私も同じ気持ちよ。二人に救われた者同士として、これから一緒に笑って生きていきましょう」
翔太は思わず笑った。
「……こんなに泣いて笑ったの、いつぶりやろうな」
光子と優子が同時に両手を挙げる。
「はいはい、また爆笑の震源地がここにできました〜!」
四人の笑い声が楽屋に響き、外にいた団員たちまでもがつられて笑顔になっていった。
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エピローグ
帰り道。
翔太は心の中で静かに誓っていた。
――俺も、二人みたいに、誰かを救える人間になりたい。
もう闇には戻らない。これからは、笑いと真っ直ぐさで生きていく。
そして、その背中には、美香、光子、優子――三人の笑顔が、確かに光を放っていた。
「福岡高校一年生の二人と、弟子・翔太の訪問」
春の夕方、福岡市博多区。桜の花びらがまだちらほらと舞う中、小倉家の玄関チャイムが鳴った。
ピンポーン。
母・美鈴が応対すると、そこには少し緊張した面持ちの川原翔太が立っていた。以前よりも顔つきは引き締まり、真面目に働いている男の風格がにじむ。
美鈴:「あら、翔太さん!久しぶりねぇ。今日はどうしたと?」
翔太:「こんばんは。光子ちゃんと優子ちゃんに、ちょっと相談があって……」
奥から制服姿の双子が駆けてきた。
光子は髪をポニーテールにまとめ、優子はツインテールを揺らしながら。二人ともすっかり高校生の顔になっていた。
光子:「おっちゃーん!来たっちゃね!」
優子:「また悪さしたんやないやろね?」
翔太は頭をかきながら苦笑いした。
翔太:「いやいや、もう建設の仕事まっすぐやってるって。今日はな……弟子として、師匠に会いに来たんや」
光子と優子は目を見合わせ、にやりと笑う。
光子:「おっちゃん、まだうちらに弟子入り志願する気持ち、続いとるっちゃね?」
翔太:「あったり前やろ!高校生になっても、いや大人になっても、2人は俺の師匠やけん!」
優子は腕を組んでうなずいた。
優子:「よか覚悟ばい。でも言っとくけど、うちらは“お笑いに関しては”マジで厳しかけんね?」
翔太:「わかっとる。今日は、ちょっとネタの相談をしたかって……」
光子はぱっと顔を輝かせた。
光子:「おー!そういうことなら、リビングで“弟子の稽古タイム”ばい!」
優子:「美香姉ちゃんも呼んできたらよかっちゃない?絶対ウケるけん」
三人は家のリビングに集まり、テーブルを挟んで座った。翔太は大きく息を吸い込み、真剣な眼差しを二人に向ける。
翔太:「実は、この前現場でな、先輩がペットボトルのお茶を鼻から噴き出して……それを見て笑いが止まらんやった。でもどうネタにしたらいいか分からんくて……」
光子:「おっちゃん、それはもう“チン事件”やん!」
優子:「鼻からお茶噴射は“建設現場版うにゃだらぱ〜”やね!」
三人は声を合わせて大爆笑。
翔太:「……やっぱりすげぇな、2人は。日常の中にすぐ笑いを見つけられる」
光子:「それがうちらの生き方やけん!」
優子:「よっしゃ、今日は“お笑い弟子稽古”特別編しよ!」
こうして、川原翔太は高校生になった光子と優子の元を訪ね、再び笑いの弟子として鍛え直されることになった。
「軽トラとクラウン」
リビングでの“お笑い弟子稽古”。光子と優子は、翔太にまず例題を出すことにした。
光子:「じゃあ、おっちゃん。あそこ見てみぃ。窓ん外の月極駐車場」
優子:「軽トラとトヨタのクラウンが、仲良く並んで停まっとるやろ?」
翔太は窓の外をのぞきこむ。確かに、年季の入った軽トラックと、黒光りした高級セダン・クラウンが肩を並べている。
翔太:「……あぁ、ホントや。なんか雰囲気ちがうけど……」
光子:「これをギャグコントにしてみて」
優子:「そう、“即興”で」
翔太は思わず顔を引きつらせた。
翔太:「お、おい……いきなりハードル高すぎん?」
光子:「お笑いは“即興力”が命やけん」
優子:「逃げたら即・弟子失格やけんね」
二人の真剣な眼差しに押され、翔太はごくりとつばを飲み込む。
そして、軽トラとクラウンを見比べながら、しばらく頭をひねった。
翔太:「……えー……あの二台は夫婦ってことにするわ」
光子・優子:「おっ!」
翔太は立ち上がり、声を張る。
翔太(軽トラ役):「なぁクラウンよ、毎日毎日“社長”ばっかり乗せやがって……たまには俺も都会走らせてくれや!」
翔太(クラウン役、偉そうに):「フン、田舎道専門が何を言う。お前の役目は“畑とホームセンター”までやろうが!」
翔太(軽トラ、負けじと):「ばってん!お前こそ、ちょっとでも荷物積んだら腰抜けるやろが!」
光子と優子は、口元を押さえながら爆笑した。
光子:「よっしゃー!その“夫婦ケンカ設定”おもしろいやん!」
優子:「しかも軽トラとクラウンの声の切り替え、意外とうまいし!」
翔太はほっと胸をなでおろした。
翔太:「ふぅ……なんとか形になったか……」
光子:「まだまだ“爆笑の震度7”には遠いばい」
優子:「次は“そのネタに必殺ボケとツッコミ”を仕込んでみて」
翔太:「ひぃぃ……厳しかなぁ……」
だが、その表情はどこか楽しげだった。
かつて暗闇に沈んでいた男が、今は光子と優子に導かれ、笑いの道を歩み始めていた。
「笑いの弟子、初舞台」
光子と優子は、翔太の“軽トラとクラウン夫婦コント”に大満足していた。
とはいえ、二人の中ではすでに次の企画が動き始めている。
光子:「ねぇ優子。これ、文化祭で披露したらどうなるやろか?」
優子:「会場どよめくね。『え、元・おっちゃんまで舞台に!?』って」
二人は顔を見合わせ、にやりと笑った。
翔太:「お、おい……ちょっと待て。まさか俺を人前に出す気か?」
光子:「あったり前たい!」
優子:「“笑いは人を救う”って、さっきおっちゃん自分で言ったやろ?」
翔太:「言ったけど……俺、人前で芸なんてやったことねぇぞ」
光子:「だから稽古するっちゃ!」
優子:「大丈夫、舞台度胸はうちらが保証するけん!」
そう言うや否や、光子は翔太の前にノートを広げ、鉛筆を走らせ始めた。
「軽トラ=田舎担当」「クラウン=都会担当」「夫婦ケンカ」──ネタの骨組みをどんどん書き込み、さらにそこに“天然ボケ”と“鋭いツッコミ”を仕込んでいく。
光子:「ほら、このセリフの後に“そげん言うけど、クラウンさんは縁石に乗り上げただけで入院やろ?”って突っ込んだら爆笑間違いなしやん!」
優子:「あと、軽トラが“俺は荷台に夢を積んどるんや!”って熱弁したら、もうウケるよ」
翔太:「……お前ら、やっぱり天才やな」
翔太は思わず感嘆した。光子と優子の頭の中は、笑いの設計図でびっしり埋まっている。
しかも、相手に合わせて柔軟にネタを広げていくその技術。プロの芸人顔負けだった。
やがて文化祭の当日。
体育館の舞台に立つ翔太は、信じられないほどの緊張に包まれていた。
客席には在校生、保護者、教師たち。ざわざわとした熱気が、心臓を早鐘のように打たせる。
光子(耳打ちで):「大丈夫。おっちゃんは今日から“お笑いデビュー”ばい!」
優子:「笑わせて、救って、未来変える。舞台はその第一歩!」
翔太:「……よし、腹ぁくくった!」
そして始まる「軽トラとクラウン夫婦コント」。
翔太は軽トラ役を熱演し、光子がクラウン役でキザにふんぞり返る。
優子は“近所のオバチャン役”として二人のケンカを仲裁する立ち回りを入れ、次々とツッコミを決める。
「軽トラは荷物だけやなく、夢も積んどるんやー!」
「縁石乗り上げて車検行きって、どこのセレブやねん!」
「夫婦げんかは荷台でしなさい!」
爆笑の渦が体育館を覆う。
最初は遠慮がちだった観客の笑い声も、次第に止まらなくなり、体育館の窓ガラスが揺れるほどだった。
翔太(心の声):(……なんやこれ。こんなに人が笑ってる……! 俺の声で、俺の演技で!)
舞台袖で見ていた先生たちも口を押さえながら笑い転げ、保護者たちは涙を流しながら肩を震わせていた。
コントの締めで、光子が言い放つ。
光子:「爆笑の震源地はここやー!」
優子:「爆笑の震度は7行ったばーい!」
体育館は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
舞台を降りた翔太は、額の汗を拭いながらも、心の底から笑っていた。
翔太:「……俺、今、本当に“生きとる”って感じがする」
光子:「やろ?それが“笑いの力”ばい」
優子:「おっちゃんはもう弟子やない。“相方候補”やね!」
翔太は顔を真っ赤にしながらも、深くうなずいた。
翔太:「これからも……俺に、笑いを教えてくれ」
光子と優子は、にっこりと同時に笑った。
その笑顔は、舞台のライトに負けないほど、明るくまぶしかった。
「笑いの連鎖、はなまるツインズ参戦」
文化祭の興奮が冷めやらぬ翌週。
光子と優子のもとに、翔太が再びやってきた。
翔太:「師匠……いや、先輩! 次はもっとレベル上げたいっす!」
光子:「よかよか。ほんなら、今日もお笑い特訓ばい!」
優子:「でも今日はちょっとスペシャルやけん」
玄関先で待っていたのは、翼と拓実、そして小学3年生のはなまるツインズ、ひなたとみずほだった。
ひなた:「わー! 今日もお笑い練習するの?」
みずほ:「うん! ボケもツッコミも任せて!」
光子と優子は小さな二人を見て、微笑んだ。
光子:「うちらのボケツッコミの流儀、ちゃんと覚えとる?」
優子:「小さいからって手加減はせんばい。ここは“実戦修行場”やけん」
翔太は心の中で戦々恐々。
翔太:(小学3年生にまで負けたら、俺……マジで恥ずかしいぞ)
最初の練習は、例題として“学校帰りの風景”を即興コントにすること。
光子:「ほら、あそこに自転車が二台停まっとるやろ? あれをネタにしてみ!」
優子:「二人とも順番にやってみんしゃい」
翔太は戸惑いながらも、軽トラとクラウンのギャグを応用しつつ、なんとかボケを出す。
ひなたとみずほはすぐさま反応。
ひなた(ツッコミ):「なにそれー! 軽トラがクラウンにラブレター書くって!? どこのラブコメやねん!」
みずほ(ボケ):「ラブレター? 書き間違えて、車検証送ってるやん!」
光子と優子はその即応性に目を見開く。
優子:「おおー! 小学3年生やのに、ツッコミの速度も正確! すごいっちゃ」
光子:「舞台度胸もあるし、プロ級のボケツッコミスキル発揮しよる!」
翔太は完全に圧倒されながらも、必死で食らいつく。
翔太:「くっ……俺も負けん!」
次の課題は、実生活で遭遇する“トラブル”を即興ネタにすること。
光子:「うちの小倉家の『お父さんチン事件』でもええし、雨の日の滑り濡れスパッツ事件でもOK」
優子:「小さなことでも、面白く変換する力が大事やけん」
ひなたとみずほは即座に反応。
みずほ:「お父さん、鼻からコーヒー牛乳噴射したって!? えー!」
ひなた:「それ、吹いたら床が滑るってネタにできるね!」
翔太:「……俺もそんなネタ作れるかな」
光子:「大丈夫! うちらが手取り足取り教えるけん」
こうして、光子と優子、翔太、翼、拓実、そしてはなまるツインズの小さな“笑い合宿”が始まった。
笑いながらネタを練り、ボケとツッコミを磨く日々。
翔太は気づく。
翔太:(……人は笑いで救える。本当に、笑いって力があるんだ)
夕方、特訓を終えた一行は、汗まみれになりながらも充実感で満たされていた。
光子:「さぁ、次はこのネタ、文化祭本番で試すばい!」
優子:「おっちゃんも、翼も、拓実も、ひなたも、みずほも! 全員ステージに上がるけん」
翔太:「わ、分かった! 今日から、うちらチーム全員、笑いの仲間やな!」
はなまるツインズは目を輝かせ、拳を合わせる。
ひなた・みずほ:「おー!」
笑いの連鎖は、さらに広がっていく――。
「彼氏あるある炸裂!光子と優子の笑撃ステージ」
文化祭前夜、福岡高校の視聴覚室。
光子と優子、翔太、翼、拓実、はなまるツインズ、そして文化祭ステージに出る全員が集まっていた。
光子:「よーし、今日の目玉はこればい。彼氏あるあるネタ!」
優子:「翼は光子の彼氏、拓実は優子の彼氏として、ボケツッコミの練習してみる?」
翼:「え、俺が……光子さんの彼氏として、ボケるんですか?」
拓実:「俺も優子さんの彼氏として!? ボケなのかツッコミなのか……」
光子:「どっちでもええっちゃ。リアルな彼氏あるあるを爆笑ネタにしてくれたら」
優子:「そうそう、笑いに変換するのがコツやけん」
ステージに立った翼と拓実。
翼:「光子が買い物行くと、財布の中身チェックしてくるんだよね」
拓実:「いやいや、俺も同じやけど、優子さん、俺のスマホの画面覗くのやめて!」
光子:「あんたら、男でも女でも共通の悩みばい」
優子:「そうそう、彼氏あるあるやけんね!」
翼:「俺、光子さんが料理作るとき、味見をしすぎて怒られる」
拓実:「俺、優子さんの作るスイーツ、一口で全部食べたら、怒られた」
光子:「翼、分かるー。彼氏って絶対味見しちゃうとよね」
優子:「拓実、甘いもん好きすぎやろ!」
ひなたとみずほ(小声で):「彼氏って、大変そう……」
光子:「でもそこが笑いになるっちゃ」
優子:「そう、リアルな生活の中で笑える瞬間を見つけるんが、プロのネタのコツやけん」
観客の翔太も、光子と優子の彼氏役コンビの即興ボケツッコミに大爆笑。
翔太:「くっ……俺も早くああいう瞬発力欲しい!」
ステージ終了後、光子:「翼も拓実も、ええ感じやったね」
優子:「二人とも、リアルな彼氏あるあるを笑いに変換できよる!」
翼:「光子さんに笑われると、恥ずかしいけど嬉しい……」
拓実:「優子さんに突っ込まれると、悔しいけど楽しい……」
光子と優子の笑いに包まれた視聴覚室。
その場にいた全員の心が、笑いで温かく満たされた。
光子:「さあ、次ははなまるツインズのネタばい!」
優子:「小学生でも、プロ並みにツッコミ炸裂させるけんね」
翔太は胸の中で誓う。
翔太:(俺もあの二人みたいに、笑いで人を救いたい……!)
笑いの連鎖は、ますます広がり、文化祭ステージは“爆笑の渦”と化す――。
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「爆笑の伝導師たち――光子と優子、翔太弟子入り編」
午後の福岡高校。放課後の校舎は、どこかワクワクする熱気に包まれていた。光子と優子は教室で、翔太を前に立たせる。
翔太:「えっと……俺、本当にできるんやろか……」
光子:「大丈夫よ。まずは目ぇと口だけ動かせばええっちゃ」
優子:「そしたら次に体も使う。ボケは全身で表現するばい!」
翔太は緊張で肩をすくめるが、光子の天然ボケと優子の的確ツッコミを目の前に、次第に笑顔を取り戻す。
光子:「じゃあ例題やるけん。向かいの月極駐車場、軽トラとクラウン。あれでギャグコントしてみ」
翔太:「ええっ!? どうやってネタにするんや……」
優子:「まず見るばい。軽トラは働き者、クラウンは社長気取り。性格付けから入ると面白なる」
翔太は深呼吸して、軽トラのタイヤを指差す。
翔太:「軽トラ、毎日ガタゴト運ばされて、疲れて眠そう……」
光子:「おお、それで?」
翔太:「クラウンは窓開けて、俺は偉いんやぞーって風に風通してる……」
優子:「ほうほう、じゃあ軽トラが『またあんた、調子こいて』って言うてみ」
翔太は一度噛みそうになったが、光子の「自然体でええけん」との言葉に、少しずつ感覚を掴む。
光子:「その調子、言葉だけで笑わすんじゃなく、体も入れる。手ぇ振って、タイヤ揺れてる感じ!」
翔太は照れながらも、両手でタイヤを揺らす仕草を加え、ついに光子と優子を笑わせることに成功した。
その時、廊下からはなまるツインズ、ひなたとみずほが駆け込んできた。小学3年生とは思えない速射ボケとキレのあるツッコミで、翔太の練習をさらに刺激する。
ひなた:「軽トラ、もう腰痛いんだって!」
みずほ:「クラウン、俺を見ろーって自慢してるし!」
翔太:「えっ……! うわ、二人とも上手すぎる……」
光子:「ほらな。日常のちょっとしたことでも、視点を変えればネタになるっちゃ」
優子:「笑いの神様は、ほんと些細なところにおるけんね」
次は、リアル彼氏あるあるネタ。翼と拓実もステージに上がる。二人は付き合っているため、実体験を笑いに変換しやすい。
翼:「光子がさ、俺のスマホ見て、全部のゲーム進捗確認すんの……」
拓実:「優子も、俺の数学のノート全部チェックしてる……」
光子:「うわー、リアルすぎやろ(笑)」
優子:「これ、ボケやなくて事実やし(笑)」
光子と優子は鋭いツッコミを入れつつ、二人の動きや声色も褒め、瞬時にコントとして成立させる。翔太も隣で、真剣に観察する。
翔太:(なるほど……笑いは技術やけど、瞬発力と心も大事なんやな……)
やがて全員が一つのステージに立ち、即興ギャグコントが始まる。
スズメ夫婦ネタ、チン事件、うにゃだらぱー事件、車ネタ、彼氏あるある、はなまるツインズの小学生ボケツッコミ。教室の空気は爆笑の渦となった。
光子:「爆笑の震源地はここ! この震度、7行くよ〜!」
優子:「腹筋崩壊覚悟しとき〜!」
翔太もついにボケを披露。軽トラとクラウンのギャグを体全体で表現し、光子と優子に「オッケー」と手を叩かれる。
翔太:(やっと、笑わせられた……!)
教室中、腹抱えて笑う歓声が響き渡る。はなまるツインズも、翼と拓実も、みんなが笑顔になる。
光子:「ほらな、笑いは力。苦しんでる人を救うんは、暴力でも力でもなく、言葉と笑いやけん」
優子:「翔太も今日から、弟子として修行せんばね」
翔太:「はい……! 俺も、人を笑いで救える人になりたいです!」
光子と優子はうなずき、教室には、笑いの力で一体感が生まれた。翔太の目には、決意と希望が輝いていた――。
「猛スピード追い越し車、笑撃コント編」
夏の午後、光子と優子は家族と一緒にドライブ中。助手席には母・美鈴、後部座席には双子の妹・優子、弟・春介、春海が座っている。車内は窓を開け、風が心地よく吹き抜ける。
光子:「今日は天気もええし、ドライブ日和やね〜」
優子:「ほんとほんと。うちはお菓子食べながら景色見よーっと」
その時、後ろから猛スピードで黒いセダンが追い抜いていった。タイヤが路面を蹴る音、風圧で窓が少し震える。
光子:「うわー! 後ろの車、めっちゃ速い〜!」
優子:「わ、怖っ! 追い越されとるし!」
光子はすぐにギャグモードに切り替える。
光子:「ほらほら、あの車、絶対に『俺が王者や!』って言いよるよ!」
優子:「ほんで軽トラとかあったら、『あ、俺も戦隊やけど…』って必死に逃げよるやろうな〜」
母・美鈴:「あんたたち、そんな状況でも笑いに変えるとは……さすがやね」
光子:「せっかくやけん、即興ギャグコントやろうや」
優子:「はい、スタート!」
光子は運転席のハンドルを握るふりをしながら、声色を変えて…
光子:「あー! この車、追い越すのはええけど、ウインカー点けんやん! 警察に捕まるばい!」
優子は後部座席からツッコミ。
優子:「そげん怒らんでよ! そもそも、ウインカーもハンドルもちゃんと見えてないっちゃ! 鼻息で前が見えんのかも!」
春介と春海も便乗し、真似を始める。
春介:「ブーブー、前の車、爆走! でもタイヤはチキンラーメンみたいにプルプル!」
春海:「ぶひー! 運転手、ゴーグル忘れたんかー!」
光子:「もうええ、即興大会やけん、最後は落ち着かせるばい。車が止まった瞬間、運転手が『はぁ〜、家族とドライブ楽しそうやんか…俺も乗りたい』ってなるの想像して」
優子:「おお、それで家族全員大爆笑。追い越し車も笑いの渦に巻き込まれる〜!」
後ろの猛スピード車はもちろん現実では笑わないが、光子と優子はこの瞬間を家族みんなで笑い飛ばした。
光子:「ほらね、危険も笑いに変えるのがうちらの流儀!」
優子:「そうそう、笑えば安全にも見えるっちゃ(笑)」
母・美鈴も思わず笑い、運転しながら「もう、あんたたちは本当に……」とつぶやく。
車内は笑い声で溢れ、猛スピード車の恐怖感は、瞬時にギャグと笑いの思い出に塗り替えられたのであった。
「猛スピード追い越し車ギャグコント:即興五人組編」
向かいの月極駐車場で、軽トラとクラウンが並んで停まっている。光子と優子が師匠として見守る中、はなまるツインズのひなた・みずほ、翼と拓実のツバタクコンビ、そして翔太が集まる。台本なし、即興で「猛スピードで追い越す車」をネタにギャグコント開始だ。
⸻
光子:「よし、みんな! 想像して! 家族でドライブ中に後ろから猛スピードの車が来た場面や!」
優子:「安全とか考えんでええ! 笑わせろ〜!」
ひなた:「わかったー! 車が追い越すとき、運転手がフラフラして、目が回ってるんよ!」
みずほ:「ほんで助手席の人が、『あんた、前見てー!』って叫ぶ!」
翼:「そしたら後ろのクラウン、急ブレーキで止まって…え、タイヤがスライムでできてる!」
拓実:「ぶひー! スライムで止まれんやん! ゴムバンドみたいに跳ね返る〜!」
翔太:「おいおい、運転手の頭にヘルメットがない! あれ、ドラえもんの四次元ポケットから出た帽子で代用しとる!」
ひなた:「助手席の人が『お父さん、何やってんの〜!?』って怒ると、運転手がコーヒー牛乳吹き出す!」
みずほ:「鼻から噴射〜! 鼻血と勘違いしてパニック!」
翼:「後ろの車に追い越された軽トラが、『うにゃだらぱー!』って叫びながら走る!」
拓実:「その軽トラ、積んどる荷物が全部バナナやん! 道にバナナ落ちて滑る〜!」
翔太:「あ、こっちも負けてられん。俺はクラウン運転手役な! うぉー! エンジン全開でドリフトだー!」
光子(師匠役、爆笑しながら):「おおー、完璧! 全員ギャグ繋がっとるやん!」
優子:「笑いの連鎖や! 爆笑の津波じゃ〜!」
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五人の即興コントは、笑い声とジェスチャーが入り混じり、止めどなく膨らむ。バナナ滑り、鼻から吹き出すコーヒー牛乳、スライムタイヤ、ドラえもん帽子…どれもリアルにありえない状況だが、演じる本人たちは全力でボケとツッコミを交互に繰り出す。
光子:「これぞ即興の極意! 誰も止めんで、どんどん膨らませる!」
優子:「笑いを生むために、リアルは関係ないっちゃ!」
五人は息を切らしながらも、声を揃えて締めのボケ。
翔太:「あー! 家族全員無事でよかったー! 俺らも笑って無事に帰ろうっと!」
はなまるツインズ:「爆笑で心の渦に吸い込まれる〜!」
翼&拓実:「うにゃだらぱー!」
光子&優子:「爆笑の震源地はここや! 爆笑の震度7〜!」
事務所は大爆笑の渦。スタッフも腹を抱え、涙が出るほど笑う。即興五人組のコントは、完全に成功。




