光子と優子のチン事件巻き込まれ日記
たばこ買ってきてBBA事件 2035年版
~禁煙車でタバコをふかすBBA~
2035年7月の終わり。
光子と優子は、博多から鈍行列車に揺られての日帰り旅行に出ていた。目的地は大分の佐伯駅。途中で途中下車しながら、のんびりと夏の車窓を楽しむプランだ。
午前11時ごろ、別府駅に到着。ここでは後続の特急に道を譲るため、20分ほどの停車時間がある。
「おなかすいたね~」
「駅弁買って食べよっちゃ!」
と二人で売店へ行き、お弁当とお茶を買ってホームを歩いていると——
「ちょっとちょっと、あんたたち、タバコ吸う?」
突然声をかけてきたのは、見知らぬBBAひとり。
光子と優子は顔を見合わせ、思わず同時に「えっ!?」。
「そうそう、あんたたち。お願いがあるんやけどね、私がたばこ買いに行く間に電車が出てしまったらいけんから、代わりに買ってきてくれん?」
優子が眉をひそめた。
「……え、なんでうちらが?」
光子もすかさず突っ込む。
「いや、自分で買いに行ったらよかろうもん!」
だがBBAは聞く耳を持たず、手にしていた財布から千円札をひらひら出して押しつけてくる。
「いいからいいから、この銘柄ば買ってきてよ。お釣りはちゃんと返してね~」
仕方なく優子が千円札を受け取り、光子が「はぁ~……これ、絶対変な事件の予感するっちゃ」と小声でつぶやきつつ、二人は売店に走った。
銘柄を指定されたタバコは、2035年現在の値段で750円。
二人は商品を受け取り、250円のお釣りを手に戻った。
「はい、タバコとお釣り」
優子が差し出すと、BBAは怪訝な顔をする。
「ちょっと、お釣りは300円やないの?」
「は?」
光子が即座に突っ込む。
「いやいやいや、値札に750円って書いとったやん!千円から引いたら250円やろ!」
だがBBAは首を振る。
「私がいつも買いよる店は700円やもん。お釣りは300円のはず!」
優子が思わず声を張り上げた。
「知らんし!その店のことは関係なかろうが!」
しかしBBAは周囲に向かって大声でわめき始める。
「みなさん聞いてください!この子たちはねぇ、私のお釣り50円をだまし取ろうとしてるんですよ~!」
ホームのあちこちから、視線が二人に突き刺さる。
光子が小声で優子に囁く。
「優子、これ以上関わったらもっとややこしくなるっちゃ……」
「うん……もう50円渡してバイバイしよ」
そう言って、優子は自分の財布から50円玉を取り出し、BBAに差し出した。
「ほら、これで満足でしょ。じゃあね!」
二人は席に戻ろうとしたのだが——
なぜかBBAはニタニタ笑いながら、二人のボックス席の真向かいに座り込んだ。そして禁煙車であるにもかかわらず、平然とタバコに火をつける。
「ちょっ……ここ禁煙車やけん、吸っちゃダメよ!」
光子が声をひそめて注意するが、BBAは涼しい顔。
「あぁ、いいのいいの。私はいつもこうやって吸ってるから」
「どこがよかとね!」
優子が思わず声を荒げる。
さらにBBAは、まるで講義を始めるかのように語り出した。
「あんたたち若いけん教えとくけどね、タバコは思いっきり吸い込んだらダメなんよ。口に軽く含むくらいでね。肺の病気になるけん」
「うちら吸わんけん!教えられても困るし!」
光子と優子は声を揃えて叫ぶ。
列車が発車し、窓の外には別府の温泉街が流れていく。
優子も呆れ顔で続ける。
「てか、このババァ…タバコ吸いよるってことは、ぜったい病院勤務の看護師とかじゃなかろーね?」
その瞬間、ババァが口を開いた。
「私ね、〇〇病院で看護師しよるとよ。夜勤明けで一本吸いたくてたまらんっちゃん」
二人は固まった。
「……」
「……」
やがて光子が真顔で言った。
「うちら今、この病院の未来が見えた気がする」
優子もうなずき、同じく小声でつぶやく。
「患者さんたち、南無……」
──その日、別府旅行の思い出は、温泉よりもババァのインパクトが強烈に刻まれたのであった。
BBAは最後までマイペースでタバコをふかし、やがて大分駅に到着すると、降り際にこう言い残した。
「世の中変な人が多いけん、あんたたちも気をつけて行きんしゃい」
光子と優子は、顔を見合わせて同時に吹き出した。
「いや、あんたが一番変やろーが!」
⸻
こうして光子と優子は、生まれて初めて「タバコを買わされた日」を経験することとなった。
しかも自分たちが吸うためではなく、赤の他人のために……。
そして、なぜか50円ふんだくられるというオマケ付きで。
列車は揺れながら、二人を佐伯へと運んでいった。
あんた彼氏おるんかオッサン事件(2035年版・修正版3)
2035年ゴールデンウィーク。光子と優子は、博多から日帰りで大分方面へ、特急ソニックの撮影に出かけていた。海の見える亀川駅近くの安全な場所に立ち、二人はカメラを構えて列車を待つ。
「わぁ~、見て光子お姉ちゃん! 海がきれいやね!」
「ほんと、空も青いし、絶好の撮影日和やね!」
すると、背後から突然声がした。
「ちょっとちょっと、あんたたち、ここで何しよるんかね?」
振り返ると、赤い帽子をかぶった、明らかに近所に住む変なおっさんが立っていた。
「え…誰?」(優子)
「近所のおっさんみたいやね…」(光子)
オッサンは声を張り上げる。
「そうなんかねぇ。それじゃぁ、あんたたち、彼氏おるんかねぇ?」
光子と優子は目を見合わせ、思わず吹き出しそうになる。
「え…列車撮影に来たのに、なんで彼氏の話になるん?」(光子)
「ほんと、意味わからん…」(優子)
オッサンはさらに畳みかける。
「そうなんかねぇ。それじゃぁ、彼氏とセックスしたことあるんかねぇ?」
光子と優子は思わず顔をしかめるが、必死で笑いをこらえながら答える。
「えーと…列車撮影中やから…」(光子)
「うん、そんな話してる場合じゃないっちゃ…」(優子)
オッサンはどこ吹く風で、列車に向かって奇妙な声を張り上げながら立ち去ろうとする。その姿を見つめる光子と優子。
「もう、ほんとに…信じられんおっさんやな…」(光子)
「ソニックより、このおっさんのインパクトが強すぎる…」(優子)
こうして、2035年ゴールデンウィークの特急ソニック撮影は、海や列車の景色よりも、赤い帽子の変なおっさんによる奇妙な質問攻めで深く刻まれることになった。
光子と優子は、亀川駅での列車撮影を終え、次の移動のため駅構内に向かって歩き出した。ホームにはちょうど日豊本線の普通列車が滑り込んでくる。二人は乗り込み、座席に腰を下ろした。
ところが、先ほどの赤い帽子のおっさんが、ホームで立ち尽くしていたかと思うと、電車の動き出しと同時に全力で追いかけてくる。
「あんた~、彼氏おるんかね~! エッチしたことあるんかね~!」
おっさんの絶叫が、ホームと車両の間にこだまする。光子と優子は思わず顔を見合わせた。
「きゃははは、まじで追いかけよるやん!」(光子)
「うそー、何しよんねんこのおっさん…! 危なかー!」(優子)
列車の速度は徐々に上がるが、おっさんも必死の形相で走り続け、絶叫は止むことを知らない。
「もう、ほんとに、列車撮影よりこっちが怖いっちゃ!」(優子)
「爆笑やけど、絶対に捕まったらアカンやつやな…」(光子)
ホームの向こうに駅員や他の乗客が目を丸くして見守る中、電車はゆっくりと駅を離れていった。おっさんの声が遠ざかり、最後にはホームの柵の向こうに小さくなる。
二人は深く息をつき、思わず笑い転げた。
「いや~、今日は列車だけじゃなく、変なおっさんにも遭遇できたんやねぇ!」(光子)
「もう、ゴールデンウィークの旅、忘れられん日になったっちゃ!」(優子)
列車の車窓から見える海の景色を眺めながら、二人は改めて息を整え、笑いの余韻に浸ったのだった。
列車が海沿いを走り出すと、光子と優子はやっと落ち着きを取り戻した。しかし、さっきのおっさんの絶叫が頭から離れない。
「ねえ、ゆうこ…あのオッサン、もし近所に住んどったら絶対怖いやんね…」(光子)
「ほんとそれよ。毎日『あんた彼氏おるんかね~?』って追いかけてきたら、気が狂いそうっちゃ」(優子)
「怖いっちゃけど、ちょっと笑えるんよなぁ…変な意味で伝説級やし」(光子)
「いやいや、笑えるけど、絶対うちのママやパパに会わせたら大変やん。『あんた彼氏おるんかね~』とか連呼されて、近所中に知れ渡るやんか!」(優子)
二人は大爆笑しながらも、列車の揺れに合わせて息を整える。
「もう、ゴールデンウィークは列車撮影の旅やと思っとったのに、変なおっさん遭遇事件までセットになるとは…」(光子)
「うん、次来るときは、赤い帽子と全力疾走のおっさんを覚悟せんといかんね!」(優子)
列車は潮風を受けながら、二人を穏やかな景色の中へと連れていく。おっさんの絶叫は遠くに消え、海と空だけが爽やかに広がっていた。二人は笑いながらも、列車の旅のスリルを、少し胸の奥に残していた。
博多に帰宅すると、光子と優子は息を整えながらリビングへ向かう。美鈴と優馬がちょうどくつろいでいたところだった。
「ただいまー!」
「おかえり、二人とも。どげんだった?」(美鈴)
「うん、めっちゃおもろかったばい!」(光子)
「いや、笑えるけど、ちょっと怖かったとよ…」(優子)
二人は一気に列車旅の顛末を語り出す。まずは亀川駅で特急ソニックを撮影していたときに現れた、変なおっさんの話。
「ホームの端から絶叫しながら、『彼氏おるんかね?エッチしたことあるんかね?』って…」(光子)
「もう、腹筋がヤバかったっちゃ」(優子)
美鈴は吹き出しながらも、真剣な顔で言う。
「2035年になっても、そんな変なおっさんおるんやねぇ…光子たち、無事でよかったばい」
次に二人が別府駅で遭遇した「タバコ買ってこいババァ事件」の話になる。
「しかも、タバコの値段が750円で千円渡されて、買いに行かされたんよ!」(光子)
「お釣りまで文句言われたとか…もう意味わからんばい」(優子)
優馬は目を丸くして驚き、しかし笑いをこらえながら言う。
「そりゃあ災難やったな。でも、ミツコとユウコが無事でよかった」
光子と優子は二人で顔を見合わせ、ため息と笑いを同時にこぼす。
「うちら、また伝説のミステリーに巻き込まれたっちゃね」
「ほんと、家帰ってこれてよかったと」(優子)
美鈴は肩をすくめてにっこり笑いながら言った。
「でも、こういう珍事件の話って、後から思い出すとめっちゃ面白いっちゃね」
光子と優子は二人で大笑いしながら、今回の旅の奇妙な出来事を家族に共有した。
そしてその夜、二人はこの体験を密かに「また笑い話として語り継ごう」と決めたのであった。
美鈴はソファに腰掛けながら、くすくす笑って言った。
「でも、光子と優子、あんたたち、ファイブピーチ★のメンバーってバレんかったやろ?」
光子が首をかしげる。
「え? なんで?」
美鈴はサングラスを指さして言う。
「ほら、あんたたちサングラスかけとったやん。あの顔隠しのおかげで、駅で会った人たちには絶対バレとらんばい。メンバーってことは、まったく気付かれとらんやろね」
優子もほっと胸をなでおろして、にこっと笑う。
「そっか、よかった~。でも、なんか秘密のスパイみたいやね」
光子もくすくす笑いながら言った。
「うん、ファイブピーチ★の極秘ミッションってとこかいな」
美鈴は笑顔で二人を見守りつつ、
「まぁ、災難もあったけど、こうやって元気で帰ってきたんやけん、それだけでも十分やね」
光子と優子は、サングラス越しにお互いに目を合わせ、にやりと笑った。
「よし、また次の列車旅でも、秘密の任務遂行ばい!」
筑肥線に揺られ、虹の松原を眺めながら唐津へ向かう光子と優子。列車はのどかな海沿いの景色を通り抜ける。二人は、唐津で食べる新鮮なイカのことを考えながらワクワクしていた。
しかし、急に車内に奇妙な気配が。
「ちょっと、あんたたち、あんたたち…」
前の座席から小声で呼びかける声。光子と優子が振り向くと、座席の陰から身を乗り出すおじさんが、不自然な動きでこっちを見ていた。
「え…なにこの人…」
「なんか変やね…」
するとそのおじさん、急に膝をガクガクさせながら、自分の股間を手で覆い、恥ずかしそうにする一方で、意味不明な言葉を叫び始めた。
「いやぁ、やっぱり、チン…チンが…!」
光子と優子は絶句。
「またチン…って何よ…?」
「いやいや、うちら今日イカ食べに行くはずやろ…」
周囲の乗客もざわつき始め、車内には微妙な緊張感が漂う。光子と優子は顔を見合わせ、苦笑い。
「やっぱりうちら、電車に乗ったら、変なチン事件が起きる運命なんやろうか…」
「もう、何が起きても驚かん心の準備はできとるばい」
列車はゆっくりと唐津へ向かい、二人は変な事件を笑い話として心の片隅に留めつつ、旅の目的——イカと虹の松原——に気持ちを切り替えた。
筑肥線ギャグチン事件
ゴールデンウィーク、光子と優子は虹の松原と唐津の新鮮なイカを食べに行くため、筑肥線の普通列車に乗っていた。海沿いの景色が心地よく、二人は窓の外を眺めながらわくわくと話している。
「今日はイカの刺身、いっぱい食べるけんね!」
「私は唐津名物のイカ天も食べたいっちゃ!」
と、二人は楽しそうにおしゃべり。だが、そのとき、前の座席から奇妙な視線を感じた。
「ねえ…あの人、なんか変じゃない?」光子が小声でつぶやくと、優子も同意する。
座席の陰から、膝を微妙に曲げて座る中年男性が、なぜか股間を気にするようなそぶりを見せ、口元には謎の笑みを浮かべていた。
「え…なにこれ…」優子が顔をしかめる。
「またチン事件…?」光子も思わずつぶやく。
男性は突然、大声で独り言を叫び始めた。
「いやぁ、やっぱり…チン…チンが…うぅ…!」
周囲の乗客は一斉に振り向き、ざわざわ。小さな子どもが泣き出す人も。光子と優子は慌てつつも、思わず吹き出す。
「ぎゃはは、これ、ほんとにチン事件って呼んでいいんやろうか…」
「うちら、電車に乗ったら、何か変なことが起きる呪いにかかっとるかもね…」
男性はさらに自分の動きを誇張し、膝を震わせながら
「いやぁ~、チンがぁ~、うぅぅ~!」
と絶叫。光子と優子は互いに顔を見合わせ、笑いをこらえきれず、ついに声を上げて吹き出す。
「くっそー、やっぱり笑ってまう!」光子が肩を震わせる。
「優子ちゃん、うちら、笑いながら旅すると変な事件に遭遇する確率高いっちゃ…」
列車はゆっくりと唐津へ向かい、周囲の乗客も次第に笑いをこらえきれなくなってきた。おじさんの奇妙な動きと叫びは、なんだかコントの一場面のようで、車内全体が不思議な一体感に包まれる。
ついには、男性が立ち上がり、車内を小さく一周して「チン…チン…!」と呟きながら座席に戻った。光子と優子は顔を見合わせ、ため息混じりに笑った。
「はぁ…もう、うちら電車に乗ると変なチン事件に遭遇する運命なんやろうな…」光子が苦笑。
「でも、笑えるからいいっちゃね。今日の旅、忘れられんギャグ思い出ができたばい」
列車が唐津に到着するころには、二人は笑い疲れてうとうとし始めた。しかし、頭の片隅には「次の列車でも何か起きるかも…」という不安と期待が入り混じり、旅はまだまだ続く予感があった。
虹の松原を歩いていると、向こうから見覚えのある顔が近づいてきた。
「あら、光子と優子か?」
振り向くと、小学校の担任だった佐伯先生だった。二人は驚きつつも笑顔で駆け寄る。
「先生!お久しぶりです!」二人は声を揃えて挨拶。
「おぉ、光子と優子か。背もずいぶん伸びたなぁ。中学生になったんやね、元気にしとるか?」
「はい、元気ばい!」光子がはにかみながら答えると、
「わたしも元気よ、先生!」優子も続く。
佐伯先生はにっこり微笑み、松原の木陰を歩きながら話し出す。
「そういえば、光子と優子が卒業した博多南小学校、いまは毎日が漫才みたいに賑やかやけんね。はなまるツインズのひなたとみずほの二人が、ほんっとに学校を盛り上げとるとよ」
「学校、楽しそうばいね!」光子が目を輝かせると、
「うん、うちらも見学してみたいっちゃ!」優子も笑顔で答える。
佐伯先生は懐かしそうに笑いながら、二人に語りかける。
「先生たちも光子と優子が通っとったころは大変やったばってん、今の子どもたちはまた別の笑いの才能ば持っとるけん、毎日が大騒ぎやね。ほんと、教師冥利に尽きるばい」
光子と優子は、佐伯先生の言葉を聞きながら、昔の思い出と今の学校生活の楽しさを重ね合わせ、穏やかに笑顔になる。
佐伯先生は奥さんと小さな子供たちを連れて、虹の松原を楽しそうに散策していた。光子と優子を見ると、先生がにっこり手を振る。
「ほーれ、光子、優子。元気そうやねぇ!」
「先生、奥さんもお久しぶりです!」二人は元気よく挨拶する。
奥さんもにこやかに応える。
「まぁ、光子ちゃん、優子ちゃん、立派に育ったのねぇ。今日は家族でちょっと散歩に来てるの。先生にくっついて歩くのも楽しそうでしょ?」
先生は笑いながら小さな子供たちの手を引き、
「そうやけんねぇ、今日は家族で楽しい時間ば過ごしよるとよ」
光子と優子は、先生夫婦と少しだけ会話を楽しみ、昔話や小学校の思い出もちらりと話す。
「学校、毎日漫才みたいに賑やかやけん、先生たちも大変やろうね」光子が笑うと、先生も奥さんも微笑み返す。
「ほんと、でも子どもたちの笑顔ば見るのは幸せやけんねぇ」奥さんが穏やかに言う。
やがて、家族はまた手をつないで散策を続けることになり、
「今日はありがとうね、光子ちゃん、優子ちゃん。元気でな」
「はい、先生!奥さんも、さようなら!」二人は手を振って別れた。
光子と優子は、松原の潮風を感じながら、先生夫婦の楽しそうな姿を目に焼き付け、ふたりで再び散策を続けた。
帰りの電車に揺られながら、光子と優子は窓の外の景色を眺めていた。だが、ふと視線を上げると、向かいの座席にまたしても、どこか見覚えのある…いや、見覚えのない変なおっさんが座っていた。
「またおっさんや…?」光子が小さく呟くと、優子もびくっと肩をすくめる。
「うちら、電車で出かけたら、変なチン事件に巻き込まれる定めなんやろか…」
二人は苦笑しながらも、今回こそは関わらんように、サングラスを深くかけ、黙って座っていた。しかし、その姿を想像した美鈴と優馬は大爆笑。
「やっぱり、光子と優子って、運命的にチン事件に遭遇するコンビやねぇ!」優馬が肩を揺らして笑う。
「いやー、ほんとにこの二人、電車乗ると災難呼ぶんやけん!」美鈴も涙目で笑いながら言った。
光子と優子は、ため息交じりに窓の外の景色を眺め、二人して「もう、こういう日常も悪くないかもね…」と小さく笑うのであった。
光子と優子が帰宅すると、早速翼と拓実にチン事件の話をした。
「でね、また変なおっさんが電車に…」優子が少し怒り交じりに話すと、翼がすかさずボケる。
「ふーん。じゃあ、光子と優子にはチン事件を呼び寄せる特殊能力があるってことね〜」
「もう、うちらが変な事件に巻き込まれたらどうすんのよ〜」光子がプクーっと頬を膨らませて、不満そうに言う。
翼はまるでリスみたいに小首をかしげて笑い、かわいか〜と心の中で呟く。
「災難としか言いようがないなぁ」と拓実も苦笑い。
「笑っちゃダメっちゃ!」と優子もほっぺたを膨らませて抗議する。
すると、拓実も笑いをこらえきれず、にこにこと目を細める。優子は思わず近くにあったクッションを手に取り、拓実に投げつけながら
「もう、バカー!」
翼もつられて笑い、四人の部屋には笑い声と軽やかな混乱が広がった。
光子と優子はため息交じりに笑いながらも、「ま、こういう日常も悪くないかもね」と顔を見合わせた。
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「じゃあ、俺らが彼氏だって、一緒についていこうか」
翼がふざけた口調で言うと、拓実もにこにこと頷いた。
「そしたら、変な事件も防げるかもしれんね〜」
光子はプクーっと頬を膨らませながら、「あんたたち、何言いよっと?」とツッコミ。
優子もクッションを握りしめながら、「もう、やめんね。そんなことして!」と抗議する。
それでも二人は楽しそうに笑い、まるで守護騎士のように光子と優子の両脇に立った。
「これで、うちらが変なチン事件に巻き込まれても、もう安心やんね?」と翼。
「うん、でも…ほんまに来んかったらええけどね…」と優子が小さく呟くと、光子も同意して頷いた。
四人の間には、笑いとほんの少しの緊張感が混ざった、奇妙に心温まる空気が漂った。




