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男が助けを求めて手を伸ばしてきた
「走れ!走れ!追いつかれるぞ」
「は、はい!」
俺と聖職者は村を飛び出し、狭い森道を必死に駆けた。聖職者によればこの森道を抜ければ、大きな砦があるという。
背後からは「アアアアア……」という呻き声が重なり、枝を折りながら追ってくる音が響く。
「助けてくれ‥」
途中、行き倒れた冒険者を名乗る男が助けを求めて手を伸ばしてきた。腕に歯形が残っている。俺は一目で理解した。
噛まれてる。
ゾンビ映画で散々見た“仲間を助けるか見捨てるか”のシーンだ。
「だめ! 近寄らないで!」
聖職者が泣きそうな声で叫び、俺の腕を引いた。男は呻き声を残し、すぐに背後の群れに合流した。
「ああ、なんてこと…」
その後も、群れから抜け出した俊敏なゾンビが飛びかかってくる。俺はとっさに棍棒を振り下ろし、頭を粉砕する。
脳漿の匂いと血の温度が、いやにリアルだった。
「異世界だからって、グロ表現がカットされるわけじゃないのかよ!」
ようやく森を抜けた時、遠くに高い石壁が見えた。急足で近づき、砦に入場したのだ。
だがそれが後に地獄と化す砦だった。