「追放された俺、実は世界で唯一の“無属性魔法”の使い手でした 〜スライムと一緒にのんびり旅してたら、元パーティーが滅びかけて助けを求めてきた件〜」
「追放された俺、実は世界で唯一の“無属性魔法”の使い手でした 〜スライムと一緒にのんびり旅してたら、元パーティーが滅びかけて助けを求めてきた件〜」
「レイン、悪いが、お前はここまでだ」
剣を握ったまま、勇者ジークは冷たく言い放った。
仲間たちの視線も同じだった。
「無属性魔法なんて、ただのハズレスキルだしな」「荷物持ちにもならないんじゃ……」
ずっと一緒に旅をしてきたはずなのに。
レイン・クロウ、17歳。
無属性魔法しか持たない少年は、今日、勇者パーティーから追放された。
「……わかったよ。今までありがとうな」
それだけ言って、レインは笑って背を向けた。心の奥で何かがぷつんと切れる音がした。
⸻
数日後、森の奥――
「はぁ……死ぬかと思った」
腹ペコで倒れていたレインの前に、ぷにゅんっと音を立てて現れたのは、透明なスライムだった。
「お、人間? 生きてる?」
「しゃ、喋った!?」
「いや、スライムだって喋るし。初見で驚かないでほしいんだけど?」
ぷるぷる震えながら、スライムはぴょんとレインの肩に飛び乗った。
「名前は?」
「……レイン。お前は?」
「スルル。見ての通り、超かわいいスライム。で、あんた今ヒマでしょ? 契約しよ」
その瞬間、レインの脳内に声が響いた。
【ユニークスキル:融合魔法】を解放しました。
無属性魔法が進化します。
「おい……なんかすごいスキル手に入ったんだけど!?」
「ふふーん、私を甘く見るなよ、人間! このスルル様は、ただのスライムではないのだ!」
⸻
そしてその夜
焚き火を囲んでレインとスルルは語り合っていた。
「スルル、お前ほんと不思議だよな。普通じゃないっていうか」
「ふふ、まぁね。実は私――進化するんだよ」
「進化?」
「そう。人間の魔力を一定以上取り込むと……ふふっ、今、ちょうどタイミングかもね」
「へ?」
スルルの体がぶわっと光り輝き、突然、熱風が吹き抜けた。
「な、なんだ⁉︎」
レインの目の前で、スライムの身体がぐにゃりと形を変え――
「ふぅ……ちょっと窮屈だったわ」
現れたのは、長い銀髪に透き通るような肌、妖艶な笑みを浮かべる美少女だった。
「改めてよろしく、レイン」
スルルは微笑みながらウインクをした。
その姿は、かつてのスライムの面影をかろうじて残しつつ、まぎれもない“人間の少女”だった。
「お、おまえ……まじかよ……」
レインは口をぽかんと開けたまま、焚き火の向こうで笑う少女を見つめていた――。
⸻
次回予告
レイン「え、待って!? お風呂とかどうするの!?」
スルル「別に? 一緒に入ればいいじゃん」
――次回、「スライムの美少女、風呂を要求す」 お楽しみに!
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