表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スライム転生冒険記

スライム転生冒険記

作者: 富三弥

俺の名前は田中健一。27歳、職歴なし。いわゆるニートってやつだ。

両親が亡くなってからは遺産で細々と暮らしていたが、ついにその金も尽きた。

コンビニ弁当すら買えなくなって三日目、俺は餓死した。


「あれ...?」


気がつくと、俺は薄暗い洞窟の中にいた。

いや、正確には「いる」という表現も変だ。体がない。


見下ろすと、そこには半透明でぷるぷると震える青いゼリー状の何かがあった。

それが俺だった。


「うわああああああ!」


声にならない叫びを上げようとしたが、口がない。当然だ。俺はスライムになっていた。


生存本能

最初の数日は絶望しかなかった。

人間だった頃は部屋から出るのも億劫だったのに、今度は動かなければ餓死する。


洞窟内を這いずり回り、小さな虫を捕食することから始めた。

気持ち悪いなんて言ってられない。生きるためだ。


虫を食べると、なぜかその虫の記憶の一部が流れ込んできた。

「これは...能力なのか?」


基本スキルの発見

一週間ほど経った頃、体に変化が起きた。


【擬態】スキル習得 小さなトカゲを捕食した後、そのトカゲの模様を体に再現できるようになった。


【分裂】スキル習得

体の一部を切り離して、別々に動かせるようになった。


【硬化】スキル習得 体を石のように硬くできるようになった。


【伸縮】スキル習得 体を自在に伸ばしたり縮めたりできるようになった。


ニート時代の慎重さが功を奏し、危険な相手には近づかず、確実に倒せる相手だけを狙った。


洞窟探索

基本スキルを覚えた俺は、洞窟の奥深くへと進んでいった。

そこで見つけたのは、光る鉱石と不思議な植物だった。


鉱石に触れると、新たな感覚が芽生えた。


【物体浮遊】スキル習得 小さな石を宙に浮かせることができるようになった。


植物を捕食すると、さらに驚くべき能力が身についた。


【錬金術】スキル習得 物質を別の物質に変換する能力だった。最初は小石を別の小石に変える程度だったが。


慎重な成長

ニート時代の慎重さは、この世界でも役に立った。

無謀な戦いは避け、確実に勝てる相手だけを選んで経験を積んだ。


【透明化】スキル習得 光を屈折させて姿を消すことができるようになった。


【武器生成】スキル習得 体の一部を剣や槍の形に変化させることができるようになった。


一か月が経つ頃には、洞窟の主と呼べるほどの実力をつけていた。


魔法石との出会い

洞窟の最奥で、俺は巨大な魔法石を発見した。

それは美しく光り、触れた瞬間に強大な魔力が体内に流れ込んできた。


その時だった。


【人化】スキル習得


体が光に包まれ、気がつくと俺は人間の姿になっていた。

黒髪に平凡な顔。ニート時代とほぼ同じ見た目だが、体は引き締まっていた。


「うおおお!人間に戻れた!」


しかし、それだけではなかった。人化と同時に、隠れていた能力が次々と覚醒した。


【完全擬態】スキル習得 完璧に人間に化けることができる。魔力探知すら欺ける。


【記憶吸収】スキル習得 倒した相手の記憶と技術を取得できる。


【能力コピー】スキル習得 触れた人間の特技や魔法を習得できる。


【魔力無限】スキル習得 人間形態時の魔力回復が異常に早い。


能力の暴走

最初は制御できず、能力が暴走した。

魔力無限のせいで魔法石が次々と砕け、洞窟が崩落しそうになった。


必死に能力を抑え、なんとか外へと脱出した。


外の世界

洞窟を出ると、そこには広大な森が広がっていた。

遠くには人間の街らしきものも見える。


「よし、まずは情報収集だ」


ニート時代の引きこもり生活で培った観察眼を活かし、まずは街の様子を遠くから観察することにした。


街への潜入

街に近づくと、そこは中世ヨーロッパ風の街並みだった。

人間形態で堂々と街に入り、情報収集を開始した。


この世界には魔法があり、冒険者ギルドという組織が存在することがわかった。

魔物を倒したり、依頼をこなすことで報酬を得る仕組みらしい。


「これなら俺でもやっていけるかも」


ギルド登録

冒険者ギルドは大きな建物で、中は活気に満ちていた。

受付の美人お姉さんに声をかけた。


「あの、冒険者登録をしたいんですが」


「はい!初めてですね。まずはFランクからのスタートになります」


ギルドカードというものを作ってもらい、晴れて冒険者となった俺。

名前は「タナカ」にした。


最初の依頼

最初に受けた依頼は「薬草採集」だった。

報酬は銅貨10枚。安いが、まずは実績作りだ。


森で薬草を集めていると、ゴブリンに遭遇した。

人間形態でも戦えることを確認するため、敢えて正面から戦った。


硬化で体を硬くし、武器生成で剣を作る。

ゴブリンを倒すと、記憶吸収が発動した。


ゴブリンの記憶から、この森の地理や他の魔物の情報を得ることができた。


魔法の習得

街で出会った冒険者たちと接触し、能力コピーで魔法を習得していった。


火魔法:料理や暖房に便利 水魔法:清掃や応急手当に使える

風魔法:移動や換気に活用 土魔法:建築や防御に有効


魔力無限のおかげで、練習し放題だった。


錬金術の発展

錬金術スキルも成長し、魔法と組み合わせることで高度な物質変換が可能になった。


安い鉱石を高価な材料に変換し、ギルドで売って資金を稼いだ。

ただし、あまり目立たないよう少しずつ行った。


ランクアップ

着実に依頼をこなし、一か月でEランクに昇格した。

他の冒険者からは「真面目な新人」として好評だった。


物体浮遊と魔法を組み合わせた空中戦法も編み出し、徐々に注目され始めた。


仲間との出会い

Eランクになった頃、パーティーを組まないかと声をかけられた。


エリカ:回復魔法が得意な神官 ガルド:剣と盾の戦士

リン:弓使いの女性


「タナカさんの魔法、とても上手ですね」エリカが褒めてくれた。


内心ドキドキしながらも、能力コピーで彼らの技術を少しずつ習得していった。


バランス調整

チート能力がバレないよう、わざと失敗したり、成長速度を調整したりした。

それでも「天才新人」と呼ばれるようになった。


記憶吸収で得た情報を「勘が良い」と言い訳し、危険を事前に回避する能力として活用した。


大きな依頼

Dランクに昇格した時、大型の依頼が舞い込んだ。


「森の奥に現れたオーガの討伐」


報酬は金貨50枚。今までとは桁違いの依頼だった。


オーガ戦

オーガは巨大で強力な魔物だった。

パーティー戦では限界があると判断し、一人で先行した。


「みんなは後方支援を頼む」


オーガとの戦いで、これまで蓄えた全ての能力を使った。


分裂で複数の攻撃ポイントを作り、武器生成で多方向から攻撃。

物体浮遊で空中戦を展開し、魔法で大ダメージを与えた。


最後は錬金術で毒を生成し、オーガを倒した。


記憶吸収でオーガの記憶を得ると、この森にはまだ強大な魔物がいることがわかった。


新たな目標

オーガ討伐で一躍有名になった俺。

Cランクへの昇格も時間の問題だった。


しかし、記憶吸収で得た情報によると、この世界にはもっと大きな脅威が存在するらしい。


「魔王の復活」


古い記憶の中にあったその情報は、俺に新たな目標を与えた。


成長への決意

ニートだった頃の俺とは違い、今の俺には仲間がいる。

守りたいものがある。


「よし、もっと強くなろう」


スライムの体と人間の心を持つ俺の冒険は、まだ始まったばかりだった。


街の宿屋で仲間たちと乾杯しながら、俺は心に誓った。

この世界で、本当の自分を見つけてみせる、と。

面白かったですか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ