episode 4 落ち着き
夜…部屋で小説を読んでいた李羽人は風呂に入るか、と部屋を出た。
風呂場の電気がついていたので出直すか、と踵を返しかけた時、脱衣所と廊下を仕切る扉が開いた。
「あ、ちょうど良かった〜お風呂入っていいよ」
紡がタオルで髪を拭きながら出てきた。
「は、はい」脱衣所から出てくる湯気を浴びながら答えた。
「あ、それとね〜お風呂上がったら私の部屋に来てくれない?話があって…」
「分かりました」
李羽人はそう答えると、軽く会釈して脱衣所に入って行った。
ドアをノックする音が聞こえて、返事を返した。
「失礼します…」
ゆっくりとドアが開いていき李羽人が姿を現す。
「ごめんね、来てくれて。話したいことがあって…」
「話したい、ことですか?」
紡の真剣な表情に緊張感を高める李羽人。
「佐原くん、落ち着いて」
「…はい??」
李羽人はその言葉を認識するまで時間がかかってしまった。
「じゃ、なかった…!佐原くんは家と学校どっちも落ち着けてないでしょう」
当たり前だ。
仮にも他所様の家でゆっくり出来るはずがない。
「ここのモットーは落ち着けるようにすることなの。っていきなり落ち着いてなんて言わないけどね…好きにしていいから」
李羽人の両肩に手を置きながら紡は言った。
もちろん、李羽人だって出来ることならそうしているだろう…。
「失礼になりませんか?」
「…え?え?礼儀の問題?」
「人様の家でくつろぐのは…」
などと言う李羽人に紡は呆れ半分感心半分だった。
意外と、結構意外と礼儀正しいな…。
「ここは貴方の住むところよ!私も李羽人って呼ぶよ。私は貴方とずっと前から一緒に暮らしているそう思い込んでよ」
学校でのストレスを家に帰っても発散できない、なんて状況にはさせたくない。
李羽人にはしっかり休んでもらえるような家庭を提供しないといけないのだ。
「李羽人…家では堅苦しい挨拶とかは必要ないからね」
微笑を浮かべる紡を見て李羽人は少し俯いた。
どうしたのだろうと紡が声をかけようとすると、小さい声で聞こえた。
「紡、ありがとう」
「李羽人、よろしく!」
最初冷たく感じたのは多分…礼儀を重んじてのことだと思う。
その行動の結果がそれだったのだ。
「おはよう〜」
こもった声が室内に響く。
それと、同時にガラスをノックする音もした。
李羽人は寝ぼけ眼でそちらを見ると、庭に繋がるガラス戸から朝から元気そうな笑みを浮かべた紡がのぞいていた。
どうやら、庭の草むしりか何かをしていたようで汗が光っていた。
「ねぇ李羽人!今日、休みだけど遊ばない?」
紡は楽しそうに笑みを浮かべながら言った。
そして突然の遊びの誘いに戸惑う李羽人であった。




