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episode 2 うちとそと

___朝___


「おはようございます…」

紡が遅刻寸前だと急いで家を出ようとしている頃に制服を着た李羽人が眠そうにやって来た。


「な!?遅刻するよ?」

髪の毛を整えつつ紡は李羽人に忠告する。



「…義務教育じゃないから」


「関係ないよ!」


紡は早く急がなければと思いつつ、李羽人にダイニングテーブルの上に乗っていた食パンを渡した。


お母さんに任せると言ってものの全て任せられるわけではない。


なので、こちらの仲はこちらで仲良くしないといけない。


「早く食べて行くよ!」


「……食パン食べながら遅刻…」


言いたいことは分かる。

分かるけど、今はそれどころではない。


「いいからいいから、鍵閉めるから早く!」

手招きをして早く出させる。



「家の鍵なら持ってますけど…?」


昨日、部屋の鍵と一緒に渡しておいたのだった。

「私、お母さんから貴方と一緒に学校に行くようにって頼まれてるので…」


苦虫を噛み潰したかのような顔で紡は言った。



「…なんで?」


「貴方のお母様が電話をくれたらしくて『マイペースな子なので娘さんと時間を合わせてくれると嬉しい』って」



時間を合わせるって…と、最初紡は嫌そうな顔をしていたがお小遣いを増やすからと言われ、渋々受け入れたのだった。



「頼まれたからには!おこづ、もとい貴方のためにも私に合わせてもらおうと思って」



「小遣い目当て…」

呆れ顔で見られるが、こんなにゆっくりしていては紡も遅刻する。

というわけで、出会ってまだ日も浅い男子高校生の背中を押して家を出たのだった。




「帰る時間は流石に強制しないから。ただ補導時間よりも前に帰ってきてね」


なんとか遅刻寸前で滑り込みセーフだった2人はもうあまり人がいない下駄箱で話した。


「じゃあね」



紡はため息をつきながら教室までの道を急いだ。



理由は、彼のお顔に問題があると言わざるを得ない。

学校でイケメン(・・・・)と話した女子の末路は相場が決まっている。



だから、紡は昔からイケメンを泊めたくなかった。

…本当に。

アンニュイな表情を浮かべる紡に隣の席の川田かわた りゅうは眉を寄せたことは誰も知らない。




___休み時間___



「つむ、どうしたんだ?」


「柳くん、いや、それが…」

秘密だから、と前置きしておいて事情を話した。

栁は中学3年の頃に知り合った友人で信頼のおける人だった。



「かわいそーに。つむちゃん、また悩んじゃってるんだね〜」

栁は紡の頭を包むように抱いた。



「かわいそうって、それは他人事じゃ…」


「ない、けど今は関係ないし、かわいそう〜」

よしよしと頭を撫でられる。



「ねぇ、なんか解決策思いつく?」

くいっと顔をあげて栁を下から見る。


「解決策〜はないでしょ。昔みたいに放置放置!」



この適当案しかいつも出さないこの男に聞いたのが間違いだった。

それと、誤解を生みそうなので言っておくが…このゼロ距離男とは付き合っていない。


紡に彼氏がいないこと良いことに女子にしたいスキンシップを全てしてくるだけの奴だ。


いわゆる、変態。


「やっぱし、イケメンって存在自体が神だよー」


一瞬、拳が動きかけたが抑える。


この良い顔を鼻にかけて煽ってくる精神に毎度の如くムカついてしまう。



「けど、つむっちが嫌な顔するようならその男のことは忘れなよ〜」


「家、一緒なんだが?記憶消せる魔法でもあるのかな?」

無表情で返され、少し反応に困る栁。



「あったら、いいけど…まぁ見目麗しく天才の俺様を思い出して忘れたら?」

キザなセリフが似合うことにもちょっと腹が立つのだった。



「さいですか…」




これは本格的に悩みの種になってしまったようだ。



「ただいま」

紡は鍵を開けて家に入り、リビングに行くとメモ用紙が置いてあった。


『今晩は帰りません!』

たまにある母からの置き手紙。

別に怒っているわけではなくて仕事だ。


「自分でまた作るのかぁ…」


料理はあまり好きではない。

不得意というわけじゃないが少々面倒くささが勝ってしまう。


「あっ」

紡は何か思い出したようにスマホを開いたのだった。






「うちでもそとでも落ち着かないな…」


李羽人は小声で呟いた。

家に帰れば知らない人、学校に行っても知らない人ばかり。

陰キャを自覚している自分があの家に泊まっている間は落ち着く場所は出来ないのかもしれない。



学校近くの図書館に立ち寄っていた李羽人は重い腰を上げて図書館を出た。


すると、ズボンのポケットに入れていたスマホから通知音がした。



「誰から…って」

メールを開いた李羽人は渋い顔になった。


その相手が紡だったからだ。

「一応、連絡先教えてと言われ教えてみたが…くだらない要件だったらなぁ」


後悔してきた李羽人は嫌々ながらもメールに目を通すが…。


「っ、好きなご飯?」


を、聞かれたのであった。


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