表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/13

第6話 再会

 マーリンは寮を出て通りを歩き出す。

 上空には太陽が燦然と輝き暖かい風が吹き抜ける中、王都の煉瓦造りの街並みは、行き交う人々で賑わっていた。

 アンデルソン王国は、周辺諸国に比べ治安が良く、夜中に女性が一人歩いて行ける程に安心安全だ。

 マーリンは父親に会うため、乗合馬車に乗って貴族街へと向かった。

 馬車はゆっくりとしたスピードで進んでいく。

 道には壁と同じような煉瓦が敷き詰められているため馬車の揺れが少ない。


「お父様が王都に来ていたのは良かった。」 

 


 お父様は今、仕事で王都の屋敷に滞在している。

 普段は、ラインハルト侯爵家の納める北部の領地で仕事をしているため本当はお父様から離縁届に家紋の印をもらいに領地まで帰らなければいけなかった。

 そうなったら、北部の領地まで、馬車で1週間もかかってしまいとても明日までに離縁届を提出できない。

 お父が様王都に来ていたのは不幸中の幸いだ。

 けど、少し心配だ。

 この婚約にかなりご執心だったお父様がそう簡単に離縁届にサインをしてくれるだろうか?

  


 「大丈夫だよね。」


 ーーマーリンは一抹の不安を感じながら、貴族街へと向かった。


 貴族街の門の前に到着するとマーリンは馬車を降りた。乗り合い馬車は貴族街には入れないため、ここからは歩いて屋敷まで向かう。

 貴族街に入るため、門を通ろうとした瞬間、警備をしている門番に呼び止められた。


「お嬢様、ここから先は貴族の方以外立ち入り禁止です。」

「私は、ラインハルト侯爵家のマーリンと申します。通してくださいますか。」


 胸元から家紋の入った懐中時計を門番に見せる。


「これは失礼しました。どうぞ、お進みください。」


 門が開くとマーリンは慣れた足取りで貴族街に入っていく。

 貴族街は他の地区と違い、土地の面積が広いため、屋敷が乱立しておらずどこか落ち着いた雰囲気を漂わせている。

 ラインハルト家の屋敷は貴族街の中心部にあるため、大通りをしばらく道なりに歩く。


「誰かいる……?」

 

 

 マーリンは足を早め、視認できる距離まで近づいていく。

 するとそこにいたのは自分と同じ紫色の瞳をもち空色の髪と真紅色の髪を靡かせた二人の女性だった。


「アクア姉さんと、アンジー!二人ともどうしてここに⁉︎」

「姉さんこそ、どうしてここに?」

「この時間は貴族学校に行っているはずでは?」


 アクア姉さんの質問にマーリンは、思わず顔を背けた。

 

「気まずい。」


 

 アクア姉さんは、5年前にレイモンド・ニードレッド辺境伯と恋に落ち、結婚し幸せに暮らしていた。

 アンジーは双子の妹でマーリンの婚約とほぼ同じ頃、隣国の男爵家と婚約した。

 最初はどんな相手と婚約させられているのか心配していたが手紙での近況を見るとなんだかんだうまくやっているみたいだ。

 納得しているし今はもう後悔はないが二人に比べて自分は婚約破棄なので、二人に会うのはなんとなくバツが悪かったためできれば会いたくなかったのだ。

 けど、二人に会えて逆に良かったと思う。

 どんなに上手く隠していても離縁届を提出したらいずれ二人にもバレてしまう。

 そうなる前に自分の口から話そう。

 マーリンは意を決して、これまでのことを全て話した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ