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第3話 突然の婚約破棄3


 婚約が決まったその日にマーリンは、魔術学校を辞めさせられた。

 なんでも王族や領地を継ぐ貴族は、貴族学校に入ることが義務付けられているらしい。

 マーリンは将来王族に嫁ぐことが決定したため、幸か不幸か貴族学校への入学が決まった。

 大好きな魔術を学べなくなるのは残念だけど、領民のためになるのならとマーリンはその思いをなんとか飲み込んだ。  


 次の日、初顔合わせのためにマーリンは王城へ馬車で向かっていた。

 これから、貴族学校に合格するまで王城で勉強会をすることが決まっているためこれから、毎週通わなければならないみたいだ。


 

 お母様は好きに生きていいと言ってくれていたけど、貴族の娘に生まれたからには政略結婚をする時が来るかもしれないことをどこかで覚悟していたつもりだった。

 だけど……。

 マーリンの心の中には不安と緊張が渦巻いていた。

 

 この国の王族は力を高めるため、国内の有力貴族や他国の王族などと幼い頃より婚約しているものが多い。

 過去の歴史を見ても多くの者は10歳までには婚約者がいる。

 しかし、婚約者の年齢は自分と同い年の15歳。

 なのに今日まで婚約者がいなかったということはもしかしたら相手はとんでもなく傍若無人な人かもしれないと考えていた。

 しかし王城に着くと、自分の考えは杞憂であったとマーリンはすぐに実感した。


「遠いところから、よく来てくれたね。どうぞゆっくりしていってくれ。」


 そう言って暖かく出迎えてくれた金髪真紅目の見目麗しい少年がマーリンの婚約者のマテオであった。

 マテオは、マーリンが想像していたような傍若無人なところは一切なく、気遣いのできる物腰の柔らかな少年だった。

 親によって勝手に決められた婚約にもかかわらず、マテオは文句の一つも言わずとても柔和な笑顔で、優しく接してくれた。

 だから、不思議だった。容姿も美しく、気遣いもできて優しい。

 それなのにどうして今まで婚約者がいなかったのか。

 マーリンからの質問にマテオはなんとも言い難い曖昧な表情をしていた。

 

「実は生まれた時からずっと病気で寝込んでて、去年やっと治ったんだ。だから家族と身の回りの世話してくれる人たち以外の人に会ったのは君が初めてなんだ。だから、正直ドキドキだったよ。」


 マテオは人差し指で額をかきながら照れくさそうに笑った。


「結婚相手が私で本当にいいの?」


 マーリンがそう尋ねるとマテオは真剣な面持ちをした直後、ふっと笑みをこぼし答えてくれた。


「女性の君が文句ひとつ言わず、この婚約に合意してくれたんだ。君の決意に対して、僕も答えないと。」



 

 その言葉の通りマテオがマーリンを蔑ろにすることはなく、壊れ物を扱うようにそれは大層優しく接してくれた。

 二人は机を並べて貴族学校に入るための勉強を行った。

 国のあり方について学び、一緒に食事を摂り、国の未来について語った。

 そうした交流を繰り返すうちに二人の距離は少しずつ近づいていき、軽口を言い合えるほど打ち解けていた。

 それから1年経ち、試験の日。

 勉強会の成果もあり、マテオが首席、マーリンが次席の好成績で受験合格。

 晴れて貴族学校への入学が決まった。

 合格を祝して、マーリンはマテオの瞳に似たルビーの宝石をあしらった指輪をマテオはマーリンの瞳に似たアメジストの宝石をあしらった指輪をそれぞれ送り合った。

 

 マテオに対しての愛情はなかったがこの人とならきっといい夫婦になれるマーリンは心の底からそう思っていた。

 けど……。

 

 

「そう思っていたのは私だけだったみたいね。」

 

 マーリンは消えいりそうな声で呟いた。

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