第2話 突然の婚約破棄 2
マーリンの生家ラインハルト侯爵家は、ここ、アンデルソン王国の建国時より存在する長い歴史を持つ家だ。
もっとも当時は、大した取り柄のない数ある男爵家の一つだった。
しかし、祖父様がラインハルト家の当主になった時変化が訪れた。
元々大きな商会の商会長だった祖父様はそれまで稼働していなかった鉱山に目をつけ、鉱山から魔石を掘り出した。
そして持ち前の商才で他国に定期的な魔石の輸出を取り付けたことでラインハルト家は圧倒的なスピードで成長していった。
魔術士として活躍していたお母様が祖父様から当主を引き継ぐと、魔石の輸出の他、魔術学園や冒険者学校を次々立てて領地を発展させていった。今ではラインハルト家が納める土地はこの国でも有数の裕福な土地の一つになっている。
それゆえ、多くの貴族がラインハルト家と繋がりを持とうとした。
そして、お母様に子供が産まれると貴族たちはこぞって縁談を持ちかけた。
1男3女の次女として生まれたマーリンにも大勢の貴族からの縁談を持ちかけられたがお母様は、それらの縁談を一蹴し、恋愛も仕事も自分たちの好きなように生きなさいと言ってくれた。
お母様の言葉通り、子供達は成長するとそれぞれ興味のあることにのめり込んでいった。
マーリンは、書斎にあった本棚に仕舞われていた魔術書に興味を持ち、毎日読み漁った。
いつしか母親と同じ魔術士になるのが夢になっていた。
そしてマーリンは12歳になると魔術士になるため、魔術学園に入学した。
成績優秀、頭脳明晰、何より母親譲りの高い魔力を持つマーリンは将来有望な魔術士になるのを期待されていた。
マーリン自身もそれを信じて疑わなかった。
しかし、1年前。
お母様が原因不明の病で倒れ、お父様が当主代理になると状況が一変した。
お父様は、お母様と結婚するときにラインハルト家に入ったいわゆる婿養子で、結婚する前は、かなり大きな商会を持つやり手の商人だった。
商会を大きくするために精力的に仕事をしていたお父様を祖父様が気に入り、婚約者にしたらしい。
お父様も貴族のコネクションで商会をより大きくできると思い婚約を決めたと後にお母様から聞いた。
そんな野心家のお父様はお母様が倒れると、自分の子供たちが15歳になると次々と婚約者をあてがった。
マーリンが15歳を迎えた日に決められた婚約者が目の前にいるマテオ・アンデルソン。この国の第一王子である。
もちろんこの婚約に恋愛要素は一つもなく、政略的なものであった。
お父様は出世のため、国王はラインハルト家の経済力を手中に収めるため、両者の思惑が合致して二人の婚約は決められた。
すぐに両家は書類にサインを記入し、二人が20歳になったときに結婚することで合意した。




