表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/13

第13話 お気に入りの店

 マーリンは服飾店で購入した格好に着替えて、服飾店を出た。広場の時計台を確認すると時刻は12時すぎ。

 ちょうど、お昼時であるため。

 二人は、ランチに向かった。

 

 マーリンは大通りから外れた、細い路地を進んでいく。

 建物が入り組んでいて中々、陽の光が入って来ない。

 薄暗いので少し怖い雰囲気だ。

 

 


「ねえ。マーリン?本当にこんなところで美味しいランチが食べられるの?」

「安心して!確かに、飲食店なんてなさそうだけど、今から向かう店は、私が今まで食べた店で一番美味しかったんだから。」

「そ……そうなの。」


 サランの心配をよそにマーリンはさらに路地を進んでいく。


「ついたわ。この建物に美味しいビストロがあるの。」


 建物は地上三階、地下一階の全四階建てである。

 一階は商店、二階と三階は居住地になっていて、お目当てのビストロは地下一階にある。

 二人は建物の地下に続く階段を降りていく。

 足音が小さくこだましていた。

 地下一階に着くと一つだけあるドアを開け、二人は中に入る。

 開けた反動で、ドアについていたベルがチリンと微かになった。

 

 店内には、カウンター席が七席と、四人が座れるテーブル席が二つある。

 薄暗く灯るランプの明かりがいい感じの雰囲気を醸し出している。

 カップルの記念日にも、ぴったりな隠れ家的な店である。


「よぉ!お嬢ちゃん久しぶりじゃねえか!!」



 カウンターで食事をとっていた常連の男たちがマーリンに声をかけてきた。

 マーリンは軽く挨拶を交わし、奥にあるテーブル席に座る。

 続いて、サランはマーリンの正面に座った。

 席に着くと、店員が水と、メニューを持ってきた。



「嬢ちゃんに連れがいるのは珍しいじゃねえか。」

「マスター。今日はお母様を連れてきたの。」

「おお、そうか。これはどうも。娘さんにはいつも当店をご贔屓にして頂いてまして……。」


 マスターがニカっと笑う。


「私の一番好きな店だから。お母様を一度、この店に連れてきたかったの。」

「嬉しいこと言ってくれるね。こりゃあサービスしないとな。」

「楽しみです。」

「それじゃあ、マスター。いつもの二つお願いします。」

「あいよ。」


 マーリンはメニューを見ずに注文をする。

 注文を受け取ると、マスターは、席を後にする。



「元気になったみたいでよかったわ。今朝からずっと、難しい顔をしていたから。」

「そ、そう?」

「そうよ。こんな風に眉間に皺を寄せていたんだから。」 


 確かに、最近は色々なことがあったから難しい顔をしていたかもしれない。

 なんとことを考えていると、サランの指が、マーリンの頬に触れる。


「ごめんね。私がしっかりしていなかったから。あなたたちには迷惑いっぱいかけたと思うわ。……辛いことも苦しいこともいっぱいあったと思う。」



サランの声がか細くそして、微かに震えている。


「だからこそこれからは(あなた)たちには幸せになって欲しい。今度は、何があっても私が守るから。」

「お母様!」


 サランは暖かく柔和な眼差しで、マーリンを見つめる。

 その視線がなんだか照れ臭さく、マーリンは思わず目を背けてしまう。


「ありがとう、お母様。もう大丈夫。確かに辛いこともあったけど私には叶えたい夢があるから。」

「夢?」

「魔術士になって、魔法で世界中の人を幸せにするのが私の夢なんだ。だから、くよくよなんてしていられない。」


 サランは小さく笑う。  


「ふふ……昔からあなたは、魔法が大好きだったわね。私もあなたの夢応援するわ。それじゃあ、編入手続きしないといけないわね?」

「え?」

「魔術学園にいくんでしょう。」


「うん!……ありがとう。お母様!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ