第12話 母とのショッピング
婚約破棄を済ませ、教会を後にしたマーリンは、母親のサランに誘われてショッピングをすることになった。
二人は最初に服飾店に入った。
庶民向けの店だが服は貴族向けの店にも負けない上質な服だ。
店の前のガラス張りのショーウィンドウには、その上質な服を着たマネキンが並んでいる。
「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました。」
「この子に合いそうな服を持ってきてくださるかしら。」
「かしこまりました。お嬢様こちらへどうぞ。」
店員に促されて、試着室に入ると、「失礼します。」の言葉と同時にマーリンは着ている服を一瞬で脱がされた。
昔からメイドに着替えさせてもらっていたから別になんとも思わないと思っていたけれど……。
学校では自分で着替えるから久しぶりに人に着替えさせられるのはなんだか照れる。
「すごく、スタイルがいいですね!」
「あ、ありがとうございます。」
店員は下着姿で立つマーリンの採寸をあっという間に終えると、様々な色の布をマーリンの顔付近に当て始めた。
なんでも、その人に合った服の色を見ているらしい。
「どのような服がお好きですか?」
「え?」
貴族の娘としての理想の格好や婚約者の好みの格好しかしてこなかったから、自分がどんな服が好きなのかがわからない。
「すみません。よくわかりません。」
店員は、「なるほど……少々、お待ちください。」と言い残し、試着室を出て行った。
マーリンがしばらく待っていると、店員がいっぱいの服を持って入ってきた。
「すべて、ご試着なさってください。それで気に入ったのがあれば、教えてください。」
マーリンは店員に言われた通り、たくさんの服を片っ端から着替え始めた。
すると、一つの服がマーリンの目に留まった。
「この服……かわいい……。」
白を基調として淡いピンクの花のデザインが施されているフリルワンピース。
いつも、無地のドレスばかりだったから、刺繍の入った服なんて初めて……。
「あのっ……!これ、気に入りました。」
気に入ったワンピースを着て店員に見せる。
「マーリン、よく似合ってるよ。」
「ええ。本当によく似合ってます!」
「そうですか?」
着慣れていない服で、似合っているか不安だったけど、人に褒められるのは自信がでる。
「では、このワンピースを軸に、コーディネートしていきましょう。」
店員がワンピースに合わせて、持ってきた様々なアイテムを持ってきた。マーリンは店員が持ってきたアイテムを色々と試した。
そして、マーリンは気に入った白いパールをあしらったピアスと、ストローハットを購入。
その組み合わせに合うように、靴も購入することにした。店員が持ってきた靴をすべて試し履きする。マーリンはそのうち、靴の店員おすすめのボルドー色のパンプスを購入した。
「もしよかったら、着て行かれますか?」
「いいんですか?」
「はい。今サイズを調整いたしますね。」
ワンピースの調整は店員さんがすぐに行ってくれた。
この店の店員は、全員服飾学校を卒業しているため、サイズの調整くらいだったら、店内で済ませてしまうらしい。
サイズの調整をしている間に、会計を済ませようと思っていたら、お母様がすでに払ってしまっていた。
「自分の服だから、自分で払うよ。」
「娘との久しぶりの買い物ですもの。これくらいプレゼントさせて頂戴。」
「でも……。」
「だったら、この後の食事を奢ってくれる?王都に来るのって久しぶりだから。美味しいお店がわからないのよね。」
「任せて。とびっきり美味しいお店あるの!お母様もきっと気に入るわ。」
「ふふ……楽しみね。」




