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第三話 「continue?」

「レオゼ、お前がルラリアを殺したの?」


その声が聞こえた途端、後ろから首が締められ、少し体が宙に浮いた。


「ぐっ、 なんだよ、はな、離してくれ!」


全力でもがいても、びくともしない、クソ、やっぱり力が強かった。足がつま先しかつかない。


「無駄だから、やめといたら? 君はもうデバフもかかってるもん」


デバフ?状態異常か。そんなもの、いつかけられた? 確かに、頭痛もひどくなってる、力が入らない。もしや、あのサングラスか


「質問に答えるのなら、離すよ。答えて、君がルラリアを殺したんでしょ?」


ルラリア?・・・そうだ、思い出した。なんで忘れてたんだ俺は!ルラリアだ、ルラリア!


「俺は殺してねえよ!ルラリアは死んだのか!?」


そう言い放った途端、血でも通ってないみたいに冷たい腕が、より一層拘束を強くし、

銃口が頭の側面に丁寧に当てられた。


「質問に答えて、殺したんでしょ」


冷や汗がブワッと一気にでた。思わず目を見開く、心臓が早鐘を打っている。

違う、本当に殺してないんだ、ルラリアの帰りがいつもより遅かったから探しに行っただけなんだ。

そう思うと、涙が出始めた。俺はなんてやつなんだろう。


「何泣いてんだよ、早く答えろよ!」


その通りだ、全くその通りだ、


いや、違う。俺はなにか見落としてないか?


その時、点と点が線で繋がった。思わず息を飲んだ。ルラリアは死んでいない。


俺はあの時あの部屋の床に、ルラリアが使っていた黄色の通信機、それが部屋に落ちていたのを見ただけだ。そして、ルラリアの死体なんてなかった。つまり、


ルラリアは死んだと断定できないんじゃないか?

そう思ったらすぐ、俺は涙と鼻水でぐちゃぐちゃの声でパブロネに訴えかけた。


「パブロネ!聞いてくれ!ルラリアは死んでない!」


そう叫んだ後、少しの間辺りは静寂に包まれた。

そしてその静寂は、俺のうなじに落ちてくる、温かい雫の音で破られた。泣いてるのか?


「パブロネ?」


「もういいよ、さようなら、レオゼ。」


そう彼女が呟き、引き金を引いた。そして発射された銃弾で

俺は即死した。


そして俺の意識がどこかに飛んでいった。


しかし、幸か不幸か、


俺の旅はそこでは終わらなかったんだ。


飛んでいった俺の意識は”なにか大きな力”で、時の源流に流され始めた。その流れは止まっては進んで、また止まっては、進んだ。一体俺はどこに向かっているのだろう。

夢を見ている時と似た感じだ。なんだか映像がランダムに意識の中に流れ込んでくる。

その映像は、あんまり覚えてはいないが、


俺が生まれたときから、死ぬまでの映像だった。


あの時のことだった。俺は誰かから生まれて、なぜ俺が造られたのか、なぜ俺は創られたのか。


あの時のことだった。ルラリアが花冠を始めて作ってくれた。とてもいい香りがした。


あの時のことだった。ルラリアは頭から血を流していた。彼女の小麦色の肌に滴り落ちる血を、

俺は何もできず、じっと見ていた。


あの時のことだった。イノという少年とかけっこをした。でも勝敗は決まらなかった。


あの時のことだった。パブロネは嬉しそうにしていた。彼女に恩返しができた。


あの時のことだった。その船乗りは、海図を描いた。


あの時のことだった。パブロネは死んでしまった。あいつを許さない。


あの時のことだった。俺は取り返しのつかないことをしてしまった。この力はセーブしないといけない。


あの時のことだった。泣き笑いしているルラリアを、どうすればいいか分からず、ただ抱きしめてた。

彼女の涙はその日の夕日でオレンジ色に輝いていた。


あの時のことだった。あの時のことだった。あの時のことだった・・・・・・・・・・


いつまで続くんだろうか・・そんなことを薄れゆく意識で考えていたら。時の源流の動きが止まった。

俺の意識の行先が決定したそうだ。潮の満ち引きで海岸に打ち上げられたように、俺の意識が体へと

引き戻されていく。


細胞は分裂して、絶え間なく増え続けている。毛細血管まで俺の心臓が血液を送り始めた。俺の脳のシナプスが繋がりはじめた。より意識が戻って来る、この体に。

俺の意識が完全に体に戻ってきた。その時聞いた音を今でも覚えてる。ジジジジジ、といったカセットテープを焼き増ししているような音だった。


そうして変な夢から覚めた俺は、歩いていた。雨が降っている。なぜ濡れてないんだろう。そうか

相合い傘の中に入れてもらっているからか。でも雨なのに、すごく心地がいい。まるで日光浴でもしているようだ。晴天の日に。


五感がハッキリしてきた。たまにある水たまりを避けながら、用心深く歩いている。水たまりに反射した顔は顔色が良かった。なんだか体調がいい。隣で相合い傘を持っている人は、他愛のない話をしていた。カマキリの話だ。あぁ、あのでかいカマキリか。


ウルフカットを撫でつけながら、彼女は話していた。彼女は黄金の瞳だった。


待てよ、なんで俺は彼女と歩いてるんだ?そうだアバンにルラリアが、行ってしまったきり帰ってこなくなったからだ。ルラリアが。あれ?ルラリアって死んだのか。


「だからあのカマキリは、突然変異で生まれた個体が生き延びたものなんだよね。」


そう言いながら、彼女は目を合わせてきた。好奇心旺盛なその瞳で。その途端、俺の体は硬直し、戦慄が走った。俺はこいつに殺された。そうだ確かに殺されたんだ。


前世の俺と記憶がリンクした。やばい、殺される。


「あれ、レオゼwどうしたのw おーい。」


そう言って彼女は自分の顔の前で手をひらひらさせた。まだ出来上がったばかりの頭がフル回転して、なんとかここから逃げ出す方法がないか導き出そうとしている。理由をつけて、逃げ出すか?

だめだ、こいつが何を考えているかわからない。何が地雷なんだ。大体いつから、目をつけられていたんだ。ルラリアを知ってるてことは、だめだ分からない。情報が少なすぎる。


「え・・・レオゼどうしたの?」


彼女は急に真顔になった。まずい。


「いや、ちょっと頭が痛いから、ボーっとしただけ。」


頭が痛いのは嘘だ。なぜかあの時から体調がいい


「歩けそう?」


「あぁー、うんちょっと、トイレ行きたいしさ。ちょっと待ってて。」


「大丈夫?休む?」


言ってることがさっきと違うじゃねえか。


「いや、大丈夫だって」


「いや、休んだほうが良いと思うよ。ほら、あそこで休もう?レオゼ。」


そういって彼女は、向こうの建物を指さした。街頭に照らされている建物の玄関は、風化したのかだいぶ色褪せたドアがついている。俺をまた誘い込んでいるのか。とてつもない悪寒がした。こいつの今までの行動は全部計算づくだったんだ。


「レオゼ、どうしたのw本当に疲れてるんだ。」


もうその笑顔は引きつっているようにしか見えない。一体誰を信じれば良いんだ。

絶対あそこに入れない。こいつは確実に殺しに来る。クソ、ほんとにどうすれば。

その時、まるで獲物を見つけた虎のように、彼女の瞳は構造を変え、模様が動き始めた。今更気づいたが、こいつ人間じゃない。でも綺麗だと思った。万華鏡のように移り変わる瞳は。


「ねぇーーレオゼ、そんな顔しないでよ。」


そんなことを言いながら、俺のほっぺたをむにっとつまんできた。


「やめろ!」


そう言って咄嗟にパブロネの手を払った。がしかし、意外と力が強くうまく払えなくて、体勢を崩した。俺は踏まないようにしていた水たまりに尻もちをついてしまった。ビシャッととんだ泥水は、彼女の茶色のレインコートに飛び跳ね、汚した。


「レオゼ、大丈夫?」


そうして彼女は気にしていないかのように、笑顔のまま手を差し伸べてきた。


もうその手は二度と握れない。いや握らない。

次の話の投稿は2月15日 20:00~22:00 です

2話くらい一気に投稿できそうです


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