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第77話:蒼天ギルド

 ババババババッと4発のプロペラのローター音を響かせ、マキナに遠隔操作された無人操縦のオスプレイが【蒼天】ギルドビルの屋上ヘリポートに着陸する。


「晃生君早く早くっ、早く探検しよっ」

「あ、ああ。にしてもデカいビルだな……リライフのと同じくらいじゃないか?」

 木乃香に背中を押されて後部ハッチから出てきた晃生は東京の街並みを一望できるその高さに目を丸くする。


「いくらかかってるんだろうね、これ……」

「あの天才金持ち学園長にとってはこの程度どうってことないってことかしら?」


 勇斗と愛奏音もまるでミニチュアのように眼下に広がる東京の壮大な都市景観に足取りを軽くさせながら屋内に続くエレベーターに乗り込んでいく。


 規模の大きなギルドの拠点は戦闘員を多く待機させることができ、セキュリティや装備を充実させやすいことからビルが使われることがままある。


 一般的にはギルドメンバーの居住区や一階の受付以外の階層はテナントとして貸し出して利用者は安全を手に入れ、ギルド側はその収益を活動資金にする場合が多い。


 晃生達が麗色にギルドとしてもらったこのビルも、最上階はギルドメンバー用のスイートルームとし、その下から2階まではホテルやオフィス、百貨店として貸し出されている複合商業施設をまるまる買い取ったものだった。


「凄すぎだろ……これが全部俺達のものなのか……」

 かなりの時間をかけて1階のロビーまで降りてきたところで、呟いた晃生は改めて麗色の資金力に驚愕する。


「うん……いくらかかってるんだろうね」

「麗色ちゃんにとってはこの程度、大した出費じゃないってことかしら」


 勇斗と愛奏音もキョロキョロとロビーのオシャレな内装を見渡していると……


 プルルルルルっと晃生の携帯が鳴った。

 画面に表示されているのは、非常時に備え生徒は番号を登録している学園の番号だ。


「もしもし?」

『晃生か。そろそろビルの中は見終わったか?』

 晃生が電話に出ると、相手は千金楽麗色だった。


「タイミング良すぎだろ……ちょうど上から1階まで来たところだけど」

『受付の奥の部屋に行って、扉に付いているダイアルロックの電子錠を押してみろ。最初に決めた4桁の数字が暗証番号(パスコード)として登録されるように設定してある。マキナのセキュリティがあるからコードは単純な数列でも問題ないぞ』

「……?」


 晃生は内側から鍵をかけてどうするんだと疑問に思いながらもみんなを連れて隠し扉のようになっていたその部屋に入る。


 モニター付きの机が幾つも並んでいる作戦司令室のようなその部屋の扉に付いていた電子錠を見つけ、1111と晃生の好きな1番の数字を連打すると……


 ガコォンッと重たい音と共に、部屋自体(・・・・)がエレベーターのように下に降り始めた。


「うお!? なんだこれッ……!」

「動いた……!?」

『驚くのはまだ早いぞ。お前達に用意した報酬のメインはその先だ』


 声を上げた灯真と勇斗の腕にそれぞれ舞桜と愛奏音が掴まり、反射的に木乃香と晃生が手を繋ぐ中、麗色の自慢げな台詞に続いてガコォンッと部屋の下移動が止まる。


 扉を開けてみると……


「うわぁぁ……」

「凄ぇ……」


 感嘆の声を漏らした木乃香と晃生の視界に飛び込んできたのは、見たこともない車やバイク。

 モーターショーに出展されてそうなスーパーカーに、砲弾さえ防ぎそうな装甲車、サーキット走行も出来そうなスーパースポーツ系のバイク等、おそらく麗色オリジナルの車体がズラリと部屋の左側を奥まで埋め尽くしている。


「見ろよおい! こっちは武器がいっぱいあんぞ!」

 

 右側には近未来的な形の銃や魔力を纏って光る刀、謎の素材で出来た頑丈そうな手錠、他にも槍やナイフ、盾等が棚に収納されており、灯真がテンションを上げている。

 勇斗は光る刀で素振りを始めた。


『晃生。お前は魔導銃を使ってみろ。その部屋の右奥に射撃レーンがある』

「何でもありだな……分かった」


 晃生は麗色に言われ、棚から大型拳銃をややスマートにしたようなデザインの魔導銃を手に取った。

 短剣と同じ光沢の無い黒(マットブラック)だが、銃身(バレル)のサイドに施された青く光る装飾のラインがどこか近未来感をイメージさせる。


 射撃レーンでは25m先の距離に全身型のマンターゲットが用意されており、晃生はその右肩に狙いを付けて引き金(トリガー)を引いた。


 ドンッッと予想より重い音が響くが、火薬の爆発力で鉛弾を飛ばす通常のハンドガンとは違い、圧縮した魔力に指向性を持たせてエネルギー球として放つ為、反動による銃口のブレが無く、魔力の弾丸は晃生の狙い通り右肩を撃ち抜いた。


 続いて左肩、右脚、左脚、そしてまた右肩と繰り返し魔弾を連射する。

 4ヵ所に4発ずつ、計16発撃ったところで晃生が銃撃を止め、ターゲットを見ると——空いている穴は、4つ。

 

 晃生は1巡目で空けた穴に、2巡目以降の弾丸を精密に通してみせたのだ。


「すっご! 晃生君銃撃ったことあるの?」

「ある訳ないだろ……あ、いや、リライフの地下で(れい)から()った銃を撃ったんだった」

「えっ……」

「おい引くなっ。魔物や異常犯罪者の出現以降、状況によってはある程度の違法行為も認められてるだろっ」

「そうだけど……」

「状況的に仕方なかったんだよっ……ったく……それにしてもこの銃、まるで愛奏音ちゃんの魔力弾みたいだな」


 当然、周囲の空間に同時に(いく)つもの弾丸を生成・射出できる愛奏音と比べると瞬間火力は劣るし、魔力砲(キャノン)狙撃弾(スナイプ)等の応用も()かないが、それでも晃生にはこれまで無かった貴重な遠距離攻撃手段となる。


『実際、入学時の試験で見た玉森愛奏音の能力を参考に作ったものだ。さっき学園長室で見せた魔導砲の小型版だな。強い魔物には効かんだろうが、ある程度は()める魔力量によって威力を調整出来る。お前なら弾切れも無いだろうし、有効に使えるだろう』

「ああ、ありがとう麗色ちゃん」

『その呼び方はやめろ。次に学園に来た時は改良版の魔導砲を撃つ』

「すみませんでした……」

 

 などとやっていたその時、プルルルルルッ、プルルルルルッと、地下に移動してきた司令室にあった固定電話から着信音が鳴り響いた。


「ん?」

 不審に思いながらも、晃生は携帯で麗色との通話を繋いだまま固定電話の受話器を取った。


『繋がった!? 失礼っ、こちらはギルド管理局の者です! そちらは【蒼天】ギルドで間違い無いですか!?』

 挨拶する間も無く慌てた様子の声が聞こえてきて、晃生は目を細めながらもスピーカーボタンを押して受話器を置いた。

 

「そうですけど……」


『現在、そのっ、日本中が危機に陥っておりっ……!』

『落ち着け。俺が代わろう』

『しかしっ……!』

『良いからどけ。失礼、私はギルド管理局局長、天前(てんぜん)峰史郎(ほうしろう)という者だ。現在日本各地でこれまでにない数のゲートと魔物が出現している。自衛隊や警察に加え、各ギルドにも協力を(あお)いでいる状況だ。ついては、そちらにも緊急任務(クエスト)を依頼したい。登録されたばかりで悪いが、その付近で対処できそうなギルドが他に無いのだ』


「了解です。どこに向かえば良いですか?」


『……頼んでおいて何だが、良いのか? 今各地で暴れている魔物の中には識別(ネームド)や精霊クラスの化け物もウヨウヨいる。君達が自衛隊や警察と連携して鴻上仁を倒したのは知っているが、登録しているメンバーも6人と少数だろう』


「他が無理ならやるしかないでしょう。良いから場所を教えて下さい」


『助かる。取り敢えず築地(つきじ)に向かってくれ。そこに——ザザッ——リンが——ザザザァァ——』

 

 電波塔でもやられたのか、それとも管理局の本部で何かがあったのか、天前の声が雑音(ノイズ)で掻き消され、情報が伝達される前に連絡が取れなくなってしまった。


「もしもし? くそッ、何が起きてるんだ……?」


『晃生、お前たちはそのまま任務にあたれ。学園(こっち)にも救援要請がきている。忙しくなるから切るぞ。以降はマキナがサポートする』


「えっ、ちょっ」


 ——ブツッ。


 スピーカーで今の話を聞いていた麗色の方にも直接連絡がいったようで、すぐに切られてしまった。


「来て早々に任務かよ。面白くなってきやがった」

「天前って人が言ってたし、まずは築地に向かおう」

 灯真と勇斗は緊急事態にも関わらず慌てることなく車の方へ歩いていく。


 晃生はジャケットの下に腋窩(えきか)ホルスターを装着し、魔導銃を挿した。

 片方だけでは重心の微妙な偏りに違和感を感じた為、左右に1丁ずつ装備し、上から制服のジャケットを着直す。


「全員乗るならこのゴツい装甲車か?」

 灯真がバンバンとその強靭なボディフレームを叩きながら言うが、晃生は1人で奥にあるバイクの方に向かった。


「俺はこっちで行く。二手に分かれた方が良いだろ」

 晃生が跨ったのは、闇に溶けるような漆黒のカラーリングと、空力特性に優れた流線型の防風外装(フロントカウル)を持つスーパースポーツ(モデル)のバイク。

 魔導銃とお揃いで車体の左右に蛍光色の青いラインが光っている。


「晃生がそんなカッケェやつに乗るなら、俺らもこんな装甲車(モン)でイモってる訳にはいかねぇなぁ」

 そう言った灯真は乗ろうとしていた装甲車を離れ、晃生のバイクとは対照的な純白のオープンカーの運転席に乗り込んだ。


 こちらも最低地上高(クリアランス)が低く、空気抵抗を受けづらい高性能車(スーパーカー)だ。


 勇斗や舞桜、愛奏音もその車に乗り込むが……


「晃生君だけ1人なんてダメだよっ、私も一緒に行く!」

 車に乗らずにガルウィングのドアを閉めた木乃香は返答も聞かずに二人乗り(タンデム)し、晃生の体に抱き付くように腕を回す。


「ちょっ、木乃香っ、こっちは体が剥き出しで危ないぞ!」

「ほらまた晃生君ばっかり危ないことするつもりなんじゃん! 絶対降りないから! ほら早く行こ!」


準備(all)完了(set)、確認。3番及び11番、出撃(go away)


 木乃香の声を聞き取ったマキナが晃生の携帯から機械的な音声を発すると——


 それぞれ番号が割り振られているらしい灯真達が乗るオープンカーと晃生達が跨るバイクの上、天井がガコォォンッと円形に開き、ウィーーーンッと地面ごと地下から地上に迫り上がっていく。


『ギルド管理局のサーバーに侵入、ダウンロード完了。続いてGPSを測位しました。端末に表示します』


 その垂直移動時、ホルダーにセットした晃生の携帯と灯真達が乗るオープンカーの車載モニターにリアルタイムの交通状況を踏まえた目的地までの最短経路と、そこで暴れているモンスター、さらにはその他付近のゲートから出現している魔物の情報まで詳細にアップロードされた。


「マキナ有能すぎるだろ……」

 晃生が呟いた直後、ガクンッと地上の高さまで登りきった地面が止まる。


「よし、まずは築地場外市場だ。行くぞッ!」

「ああッ!」

「うん!」


 ギルドマスターとして晃生が合図し、灯真と勇斗が威勢よく返答する。


 ——ブゥンッッ、ウォンッッ!!


 晃生が()るバイクの直列4気筒エンジンが唸るような重低音を上げ、まるで競うように灯真達のオープンカーも甲高いエンジン音を響かせてロケットスタートした。


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