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解離性アストラルレイド 〜異世界大戦〜  作者: Aki
第2章 集う才能
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第69話:vs.リライフギルド

「しばらく埋まってろ」


 大我と雄理の2人を地下施設外の地中にまでブッ飛ばした晃生がそう呟いて仁の所へ戻ろうと歩き出した時——ドカァァァアアアアアンッッッと壁をブチ破って現れたのは、()()()()


 娘に手を取られていた仁が晃生達がもたついている間に追いついてきたのだ。


「誰一人()がさないよ」


 仁の声と共に、部屋を埋め尽くす程に巨大化した手が迫り来る。

 晃生は跳躍して天井を突き破り、地下階から地上階へと(のが)れた。


 そこでは勇斗達が倒したであろうリライフのギルドメンバー達が倒れており、正面玄関があった場所は扉ごと破壊されて大穴が空いている。穴の(ふち)が少し溶けていることから、これは多分灯真の仕業だろう。


 下から突き上げてくる仁の巨大な拳から避難する晃生はその大穴からビルの外へ出た。


 するとそこでは、分隊規模の自衛隊員と数名の特殊部隊員のような者達に包囲されており、今まさに突入しようと銃を構えているところだった。


 自衛隊の方にはこういう覚醒者絡みの難事を毎度押し付けられている近衛(このえ)操華(そうか)が10人程度の異界方面隊の隊員を率いている。

 昇級したらしく、肩に光る徽章(きしょう)は下線無しに横並びの三つ星——陸将のものに変わっていた。

 陸将と言えば陸自内でそれより上は陸上幕僚長しかいないナンバー2の地位で、陸上総隊司令官や方面総監、師団長などを務める軍団将軍だ。


(操華さん……? なんでここに……ってか佐官をすっ飛ばして将官まで昇級してるし……まああの能力なら当然か。にしてもこっちの奴らは何だ?)


 自衛官以外の包囲を担う者達は左腰に警棒を、右腰のホルスターに吊り紐(ランヤード)で接続したS&W M360J(サクラ)を装備していることから警察関係者と思われるが、活動服や機動隊の出動服等の既存の制服を着ておらず、漆黒のコートを纏う者や半袖に薄型の防弾チョッキを身につけるだけでゴツい腕を丸出しにしている者、カッチリした三つ揃えスリーピースのスーツを着ている者等、統一感がない。


 包囲の仕方や銃の構え方をみても自衛隊員より練度は低そうだが、魔力量から嗅ぎ取れる気配だけで言えば全員から大隊級レベルの強さを感じる。


「中川晃生君? どうしてここに……ああ、そういうことですか。あのお子様学園長もやってくれますね」


 操華にとっても晃生がこの場にいたことは想定外だったようだが、なにやら得心(とくしん)がいった様子で麗色(れい)に毒を吐いている。


「操華さんこそなんで……」


 晃生が困惑していると、そこへさっき吹っ飛ばして地面に埋めてきた大我と雄理の2人が早くも脱出して駆け付けてきた。


「待てやコラ。まだ決着は付いてねぇぞッ!」


 怒り心頭といった様子の大我はまだ悪魔状態を維持している。

 雄理も無言だがアダマンタイトを全身に纏ったままであることから、晃生との闘いを続けに来たのだろう。


(コイツら、標的が仁から俺に変わってないか……?)


 大我と雄理に嫌そうな顔を向ける晃生をよそに、特殊部隊のリーダーらしき女が一歩前に出る。


「待て大我。ここは我々に任せてもらう。自衛隊と、そっちは【護り刀(イージス)】の不破雄理だな。お前達も退がっていろ。で……お前はなんだ?」


 その男喋りの女はスーツの上に羽織った漆黒のロングコートに両手を突っ込み、銃を体の近くに浮かせて保持しながら晃生に問いかけてきた。


(この人……ゴーレム戦から圧倒的に強くなってる操華さんと一緒で軍団級はあるな。銃浮いてるし、同じような念動力使いなのか……?)


「何って……拉致(らち)られたついでにこのギルド潰そうとしてるのに、大我・雄理(こいつら)が邪魔するから……」


 名前で呼んだことから大我とはもともと面識があるらしいその女に、晃生はありのままを説明する。


「潰す……? ああ、その制服、学園の生徒か。いいから民間は引っ込んでいろ」

「ざけんな一凜(かりん)。お前らこそ引っ込んでろ。お前ら公安の出る幕じゃねぇ」


(公安……こいつらがリライフの内情を得てるなら、あの研究内容からしてNBCテロに対応する公安機動捜査隊とかか?)


 晃生がそう予想している間も一凜(かりん)と呼ばれた女と大我が(いが)み合っている。


 2つのギルドに加え、自衛隊や公安までもが鴻上仁を狙って集結した。つまり、みんなリライフの暗部には勘付いていたということ。

 そして勘付かれたことに勘付いた仁は焦り、研究を一気に飛躍させる為に晃生を学園から拉致するという強引な手法を取らざるを得なかったのだ。

 晃生の他にも、非合法の研究に使おうとリライフが目をつけていた被検体は多くいただろう。当然口封じや証拠隠滅はしているだろうが、疑いを持った被害者の家族等から依頼があった民間ギルドと、通報を受けた国家機関が現場でバッティングした。


 睨み合いが続く中、ドガァァァァアアアアアンッッッと轟音が響いたビルの方を見ると——鴻上仁が巨人(・・)となって現れた。

 大穴が空いていた玄関さえ狭そうに破壊しながら現れた仁はさらにボコボコと体中を膨らませながら巨大化していく。


 その体長は目測45m——ビルの15階ほどの高さにまで達した。


(おいおい……あのゴーレムよりデカいぞ。コイツに依頼がいってたってのはこういうことか……!)


 確かにあの巨大なゴーレムと同等以上のサイズで戦えるならそれ以上の適任はいないだろう。


 横浜市内に突如現れた怪獣のようなサイズの巨人にパニックになった市民達が悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。


「この状況になった以上、なんとしても君だけは手に入れるよ、晃生君」


 巨体から空気の震えすら感じさせるような声を発する仁の背後から、パリィィンッッと5階の窓ガラスをブチ割りながらリライフのギルドメンバー——おそらく主力の能力者達が飛び出してきた。


 20人……30人……まだ増えていく。

 全員が受け身を取ることもなく普通に着地し、仁の足元に並ぶ。

 その中には克心の姿もあった。


「はぁ〜〜あ、下の雑魚どもで対応できると思って侵入者も警備部からのコールも無視してたのに、余計面倒な事になるとはなぁ。マジ使えねぇ」

「それな。ま、久しぶりに楽しめそうな奴らが揃ってやがるし、ちょっと暴れてやるか」


 先頭の2人——リライフの主力の中でも特に身体能力の高い超克者である班目(まだらめ)恭夜(きょうや)十河(そごう)(かおる)がガラの悪い会話をしながら拳をバキバキッと鳴らす。

 

 今の着地の様子から、他の者達も全員が超克者——身体強化系の能力者だろう。

 

「うちの精鋭達だ。通常の自衛隊や特殊部隊など相手にもならないよ。さあ行け、私は中川晃生を捕える。周りの邪魔者を近付かせるな」

「はいはい、報酬期待してますよ、マスター」


 リライフメンバーが自衛官達に襲い掛かると同時——仁の巨大な手がズァアアアアッッと晃生に迫る。

 だが晃生は光子剣(フォトンソード)で皮膚を斬り裂き、指の間をすり抜けて仁の腕を駆け上がっていく。


 その晃生へ、悪魔の(はね)で高速飛行する大我が奇襲をかけた。


「抜け駆けさせるかよッ!」


 魔爪による斬撃を晃生は短剣で受け止めるが、大我はそのまま突進(チャージ)して晃生を押し込み、地面まで突っ込ませる。


 そこへアダマンタイトの両手剣を二振りの片手剣に分裂させた雄理が2人同時に斬りかかる——!


 ——ガギィィィンッッッ!!!


 舞い上がる土煙を吹き飛ばす雄理の斬撃は、しかし晃生の光子(フォトン)の刃が受け止めた。

 大我も晃生の短剣と斬り結びながら反対の魔爪で雄理の刃を押し留めている。


「邪魔……すんなッ!!」

 叫んだ晃生は力任せに腕を振り抜き、大我と雄理を突き飛ばした。


「邪魔はお前らだよ。何回言えば分かる」

 アダマンタイトを操作して空中でブレーキをかけた雄理がそう言いながらもう一度斬りかかる。それをギィィンッッッ受け止めたのは——()()()()()だった。


「遅いと思ったら、戻ってきて正解だったね」

「勇斗!」


(またアダマンタイトの刃(これ)を止められた……何だこいつら……?)


 1日の内に2人も自分の最強の剣を止める人間が現れ、雄理の中で何かのスイッチが入った。


 突き飛ばされた直後、はねを拡げて雄理と同様に空中で切り返し晃生へ向かう大我は、より上空から放たれた火炎放射によって阻まれた。


「まったくだ。なんでまだお前らで()ってんだよ」

「灯真!」


 さらに、自衛隊員や公安のエージェント達に銃を撃たせないよう接近戦で暴れるリライフのギルドメンバーを数人取り押さえながら、木乃香、舞桜、愛奏音も戻ってきた。


「もう、どうせずっと闘ってるんだろうと思ってたよ。なんで頼ってくれないのかな……」

「ま、男子のさがってやつじゃない?」

「そうね。けどそれなら私達も勝手にやるだけよ」


 それだけじゃない。待機していたらしい他のクラスメイト達——緋彩、玲旺、武琉、唯花までやってきて乱戦に混ざり、エージェント達と協力してリライフの超克者と戦っている。


「安心しなさい。救護者の2人はオスプレイに乗せたから。今頃マキナの遠隔操縦で学園島に向かっているわ」

 緋彩が超克者の1人を土操作で拘束しながら晃生にそう報告してくれた。


「ありがとう。みんなも来てくれたのか」

「当たり前だろ。お前俺と手合わせした後に黙っていなくなるんじゃねぇよ」

 武琉もリライフメンバーの1人、筋肉自慢(パワータイプ)の大剣使いと斬り合いながら晃生に文句を言う。


「こいつらは俺達が相手してやるから、お前はさっさとそのデカブツをぶっ飛ばせ!」

 今回ばかりは露払いをやってやるよと言外で伝えてきた灯真にも晃生は改めて感謝の視線を向けた。


「フッ、頼もしい仲間達が来たようだが、私を倒さない限り意味はないぞ。さあ、かかってくるがいい」

「言われるまでもない」


 グッと地を踏みしめた晃生に、仁が巨大な拳を振り下ろす。


(2年前はゴーレム相手に6人がかりだったけど……ッ!)


「お前は俺1人でぶっ潰すッ!」


 跳躍した晃生は見上げる程の巨人との殴り合いに応じ、迫り来る巨大な拳に渾身(こんしん)の一撃をぶつける——ドッッッゴォォォオオオオオオンッッッッ!!!!


 強烈な拳同士がぶつかり合って駆け巡る衝撃波が周囲で戦う者達の衣服や髪をバサバサと暴れさせる。


 晃生はその反動で吹っ飛ばされるが、信じられないことに腕を弾かれた仁も巨体をよろつかせ、リライフビルの外壁を破壊しながらもたれかかった。


(馬鹿なッ……どれだけの体格差があると思っているッ……!?)


 自身のギルドビルを必要以上に破壊しないよう慌てて体勢を立て直しつつも、仁は驚愕の表情を浮かべる。


 競り負けたとはいえ、質量という点で自分より圧倒的に勝る仁の拳を弾き返して見せた晃生。


 その晃生の姿を遠くから見つめ続けるゼロが、まだ感情に乏しいながらも不思議そうな表情で手に持ったミスリルナイフをギュッと握り締める。


 肉体性能では明らかに不利。階級的にも格上の相手にあれだけ吹っ飛ばされてなお、何故1人で挑み続けられるのか。


 ——お前がどうしたいかだ。


 理解出来ない……理解出来ないながらも晃生に言われたその言葉が脳裏をよぎり、ゼロは自分の感情に目を向け始める。


 そんなゼロの肩を、木乃香がぽんっと叩いた。


「ね、妹ちゃん。晃生君を見ててあげてね。妹ちゃんに何があったのか私は知らないけど、今、晃生君は妹ちゃんの為に戦ってると思うから」


(……私の……ため……?)


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