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解離性アストラルレイド 〜異世界大戦〜  作者: Aki
第2章 集う才能
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第68話:アクティベーション

「さて、俺はお前らに興味ないし、仁を譲るならさっき吹っ飛ばされたのも許すけど?」


 晃生は()る気満々といったムードの大我・雄理(ふたり)に一応の最終勧告をするが……


「ほざけッ!」

「邪魔……」


 答えるまでもないとばかりに大我と雄理が駆け出し、悪魔の腕とアダマンタイトソードを振るう。


 対し晃生は残像を残すような超スピードでそれらを躱し、大我の背後に回り込んだ。


 『こっちだ』と言おうとした晃生の眼に、自身の速度を捉えて振り返りながら巨大な爪が伸びた悪魔の腕を振るう大我の姿が映る。


(何ッ……!?)


 一瞬焦った晃生だったが、回転する大我のさらに背後へと回り込んで襟首(えりくび)を掴み、力任せにぶん投げる——!


 ——ガシャァァァァァアアアアンッッッと鉄格子を歪ませ、晃生の狙い通り柵に(はりつけ)のような姿勢で()め込まれた大我は衝撃と柵による固定で数秒動けなくなる。


 ピッチャーのリリース後のような姿勢の晃生の背後からは雄理が迫り、振りかぶったアダマンタイトソードを上段から高速で斜めに斬り下ろす。


 振り向きざまに(かが)んで避けた晃生は剣を振り抜いた後の隙を狙い攻撃しようとするが——


 雄理は慣性を無視したようにピタッと止めた刃の返す刀で()ノ太刀、さらに(さん)ノ太刀、()ノ太刀、()ノ太刀と連続、高速で斬り返す斬撃を繰り出した。


 ヒュゴゴゴゴッッッと強烈な風切り音を上げる変幻自在の斬撃に、しかし晃生は脅威的な反応速度によって初見で対応した。


 太刀筋を見切った晃生は最小限の動きで2撃目を(かわ)し、3撃目以降をギギギギギギギギィンッッッと龍鱗の短剣で全て(さば)いていく。


(……ッ!? 世界最硬(アダマンタイト)の剣だぞ……!)


 これまで斬れぬ物など無かった最強の剣と初めて打ち合われて目を見開く雄理。

 

 ——擬似不壊属性付与(ソリッドエンチャント)


 深海に()む魔龍の鱗で作られた短剣がそう簡単に打ち負けるとは思えないが、雄理の操る剣がこの世で最も硬い物質だと聞き、晃生は念の為打ち合う度、瞬間的に短剣に対して超回復を行い短剣が万が一にも破壊されないようにしたのだ。

 晃生の能力なら折れるより早く治す超回復速度によってその辺の枝だろうが真剣とも打ち合えるようになる。

 まあ折れたところでそれも治せるから晃生が短剣を失うことはどのみち無いのだが。


 雄理の斬撃を短剣で捌き続ける晃生は互いの立つ位置を反対に誘導してから——短剣を握り込んだままの拳で()()を思いっきり殴ってやる。


 ドォォォオオオオオオンッッッという轟音と共にブッ飛ばされた雄理は柵を破壊して(はりつけ)から脱出しようとしていた大我に激突し、その鉄格子を破壊して壁へとめり込む。


「さっきやられたお返しだ。そのまま寝てろ」


 そう言い残し、晃生は仁との決着をつけに行こうとする。


 だが——


「——降魔(フォールン)

 ドカァァンッッッと瓦礫を吹き飛ばして立ち上がった大我は——既に人間の姿ではなかった。


「ブチ切れたぜ。このギルドのメンバーじゃなさそうだがもう関係ねぇ。お前から先にぶっ潰してやる」

 

 さっきは右腕だけだった悪魔の肉体が、今は大我の全身に顕現している。


 全身がドス黒く変貌し体格は一回りも二回りも肥大して、これまでよりも圧倒的に濃密な魔力を纏っている。


 さらに背中には(ハエ)に似た大きく透明な(はね)を生やし、ブブブブブブゥンッッと細かく振動させるような羽ばたきで宙に浮き上がった。


「——金剛騎士(ヴァジュラ)

 雄理の呟きが聞こえた直後、大我の翅をぶった斬るようなコースで——世界最硬(アダマンタイト)の刃が鞭のようにしなりながら振るわれる。


 だが晃生の超スピードをも捕捉していた大我の魔眼がその刃を正確に捉え、機動力の高い飛行でひらりと躱した。


 しなる物体とは思えない程の硬度の刃がドガァァァアアアンッッッと地面を砕き、その柄を握る雄理が土煙から姿を現す。


「俺を無視するな。邪魔なのはお前も同じだ」


 雄理は全身にアダマンタイトの鎧を纏い、魔力操作でしならせた刃を戻し長剣にして構える。

 最強の盾と矛による完全武装だ。


 ギルドマスター2人の本領を前にした晃生も、先程のゼロとの闘いで思いついた()()を試す。


「——活性化(アクティベーション)


 それは、超回復の常時発動状態。

 ゼロの高速の攻撃に対し、負傷前から超回復をかけ続ける中で晃生が感じた身体能力の向上。

 限界を超えて進化してきた晃生の肉体のその時点での限界をさらに一時的に突破するこの現象は、肉体の損傷を無視できることで起きる、脳の制御機構(リミッター)の解除。


 これにより負傷(ダメージ)の即時回復に留まらず、肉体の性能を十全に使いこなすことが出来る。

 脳に強いられた過剰な動作で筋肉が断裂し骨が砕けようとも、その損傷速度を上回る回復速度でさらに限界を超えていく。

 超回復力を持つ晃生だけに許された、人を超えた領域へ至る超人化の戦闘方法だ。


「ここからは、どうなっても知らないぞ」

 

 性能を限界以上に引き出した体からビキッ、バキバキッと異音を上げる晃生がそのダメージを瞬間的に回復しながら二振りの短剣を構え、ブゥゥンッと光子(フォトン)の刃を出現させた。


 三つ巴の状態で見合い、三者の間で闘気が満ちていく。


 その3人の魔力に当てられたか、雄理がアダマンタイトを呼び寄せた時に壁と同時に配線を破壊していたのか……照明がフッ、フッフッと点滅し始める。


(俺もできるかな……大我(こいつ)はさっき俺の動きを捉えてたけど、これなら……ッ!)


 晃生は天井照明(シーリングライト)がまた一瞬消えるコンマ数秒のタイミングを狙って——ドンッッッッッッ!!!!


「——え?」


 空を飛ぶ大我に対し天井を蹴って上から奇襲をかけようとした晃生は、強化され過ぎた脚力で地下階の頑丈な天井をブチ破り、さらに止まることなく幾つもの天井にぶち当たっては破壊して上へ跳び続ける。


「あ?」

「は?」


 大我と雄理の2人は晃生の姿が()き消えた直後に出来た天井の大穴を見上げ、ドガガガガガァンッッッッと遠ざかっていく破壊音を聞きながら数秒固まる。


 跳躍の勢いが弱まり、脚を振り上げて体の上下を反転させた晃生は()()1()0()()の天井に着地する。

 壊さないように膝で衝撃を吸収した晃生だが、今度はまたその天井を蹴り砕いて地下へと戻っていく。


 何処(どこ)かへ行った晃生を無視し、2人で決着をつけようとした大我と雄理の耳に、今度は破壊音が上から近付いてくる。


 ドガァァァァアアアアンッッッッと地下牢の天井をまたブチ抜いて舞い戻った晃生は、2人が(ほう)けているうちに改めて大我に狙いを定める。

 

(今度は弱めに……制御(セーブ)しろ……!)


 晃生は空中に滞空飛行する大我に飛びかかり、光子剣(フォトンソード)による高速の突進突き(チャージスラスト)を見舞う。


(くそッ……弱すぎたか……!)

 押し込まれ壁に激突した大我だが、喰らう前に割り込ませた左腕を()えて刺され、そのまま晃生の腕ごと握り込んだ。


「視えてんだよッ!」

「じゃあ何で刺されてんだよ」


 晃生は短剣に()める魔力を増やし、掴まれている腕を放させようとするが、その魔力が大我に吸われるような感覚を覚え、光子(フォトン)の刃を強化できない。


「刺させてやったんだよッ!」

 大我が悪魔の右腕を振りかぶり、左腕で捉えた晃生に鉤爪のような魔爪で斬りつける。


 晃生も左の光子剣(フォトンソード)で受けるが、インパクトと同時に右腕を離された晃生は空中で支点を失い——ドガァァァアアアンッッッとブッ飛ばされる。


 その攻撃後の隙を狙い、死角となる背後から脚部装甲を操作する2段ジャンプの挙動で大我に迫った雄理が悪魔の頭部を掴み、落下と同時に地面へと叩き付けた。


 既にダメージを回復した晃生がそこを狙って雄理に襲い掛かる。


「俺に物理攻撃は無効だ」

「あっそ」


 雄理の忠告を無視した晃生だがアダマンタイトの装甲に斬撃は無駄だと判断し、短剣を握り込んだままの拳で突進打撃を放つ——!


 ——ッドォッッッッッッッッと世界最硬の鎧が晃生の打撃を受け止めるが、構わず晃生はさらに踏み込み、拳に力を乗せる。

 アダマンタイトの鎧に傷はないが、衝撃は別。晃生は力任せに腕を振り抜く——その直前で雄理が鎧から脱出し——ゴォォォオオオオオオンッッッとブッ飛んでいった(から)の鎧が

地下牢の壁を盛大に破壊していった。


「がァァァァァッ!」

 雄理がどいた瞬間に苛立ちが篭もった叫びを上げながら起き上がった大我が魔爪を振るう。それを後ろに跳んで躱した晃生へ、大我は左腕を向けた。

 悪魔の肉体——その禍々しい掌には()があり、牙の生えたそれがガパァァと開いたかと思うと——カッッッッッ!!!


 閃光手榴弾(フラッシュバン)が炸裂したかのような強烈な光が周囲を瞬間的に照らす。


 何らかの攻撃がくると見抜いて体を(ひね)った晃生の胴体、さらにその背後の壁を削ぎ取っていったのは、極小規模の()()()()()()()()


 威力は蒼玉龍(サファイア)のブレスと比較にならず予備動作も分かりやすかったとはいえ、亜光速の一撃。それも跳躍後の着地を狙われたことで流石の晃生も躱しきれず、脇腹を掠めてしまったのだ。


 晃生を(つらぬ)いた大我は即座に鎧を失った雄理に襲い掛かる——が、既にアダマンタイトを魔力操作で引き寄せていた雄理は再度その身に鎧を(まと)い、防御を間に合わせた。


 ガィィイインッッッと雄理の鎧と大我の魔爪が火花を散らし、両者が距離を取る。

 その2人に1歩踏み出した晃生の足音に、大我と雄理がバッと振り向いた。


(コイツ……さっきの攻撃で何故(なぜ)倒れねぇ……)


 眉を寄せて大我が視線を向ける晃生の脇腹は、確かにレーザーが貫いていったはずなのに、血が(にじ)むどころかその制服には傷一つ付いていない。

 活性化状態の晃生はレーザーが脇腹を貫通して背後に抜けたその瞬間に回復を完了させていたからだ。

 まるでレーザーが晃生の体をすり抜けたように錯覚させる程の超高速回復。


「その腕……さっき掴まれた時に光子(フォトン)エネルギーごと俺の魔力を喰ってたのか……めちゃくちゃだな」

「お前に言われたくねぇよ。不死身かテメェは」

「そんな訳ないだろ。あんな攻撃を人に向けるな。あと雄理(おまえ)アダマ()ンタイト()も硬すぎるんだよ」


 攻撃を喰らって吐き出す男と、硬過ぎて攻撃が通らない男と、攻撃してもすぐ回復してさらに強くなる男。


(((こいつら……くそ面倒くせぇ……!)))


 同時に全く同じことを思った3人は顔を(しか)める。


 だが晃生にとっては別にこの2人を倒さなくても構わない。目的は仁を自分の手で倒し、リライフギルドを叩き潰すことだ。


(そろそろご退場願おう……今度こそ、まとめてブッ飛ばしてやるッ!)

 

 晃生は脚に力を込め、ドンッッッと跳躍して壁に着地したかと思うと、さらに天井、地面、側壁に次々と跳び回る。


 戦車砲のスーパーボールが室内を乱反射するかのように——ドドドドドドドドドドドドッッッと内壁を踏み砕きながら暴れ回る晃生が、大我と雄理を攪乱(かくらん)する。


 晃生はその勢いのまま——ドドォォオオオンッッッッッと2人を殴り飛ばした。

 

 攻撃を認識できなかった大我と雄理は殴られたことに気付く間も無く視界が急激に変化し、訳も分からず横方向へ吹っ飛んで複数の壁をブチ破る衝撃を受けた後、この地下施設の外、地中にめり込んでいった。


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