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解離性アストラルレイド 〜異世界大戦〜  作者: Aki
第2章 集う才能
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第57話:階級規格

 生徒達の初顔合わせ兼実戦訓練の翌日。

 座学も含め、魔力に関しての授業が始まった。

 古城のような校舎の中にもちゃんとした教室があり、その第一講義室に特別クラスの生徒達が制服姿で集まっている。

 制服と言っても学生服ではなく戦闘用に特化した実用的なもので、軍人の軍服や機動隊の出動服のような意味合いだが。


「さて、今日は学年も上がって最初の授業。外部入学の方もいますし、基礎のおさらいからやっていきましょうか」

 教鞭(きょうべん)を取るのは魔力の適合によって寄生(パラサイト)スライムとの共生に成功した宮沢茂元生物学教授だ。


「そもそも魔力とは何か。この中には向こう側の世界に迷い込んだ方もいるでしょうが、あの異世界から流れ込んできた未知の粒子は現代科学では説明することが出来ません。この魔法のような力は誰に定義されるでもなく、魔力と呼ばれるようになりました。私達学者の中では、体内に流れるエネルギーを魔力、自然界に漂う粒子を魔素と区別していますが、これら素粒子の構造的要素(ユニット)に明確な違いはありません」


(おお、座学なんて退屈だと思ってたけど、ロマンあるし聞いてて面白いな)

 頬杖をついていた晃生が、宮沢の話を聞いて少し前のめりになる。


 灯真は開始早々顔を伏せてガチ寝の体勢だが。


「魔素粒子は運動エネルギーの他、火、氷、水、土、砂、風、電気等、300種類以上のあらゆるエネルギーや現象に変換可能なことが確認されています。これまで存在しなかった未確認の現象を引き起こすことも珍しくありません。まさに万能の粒子として既に多方面に利用されていて、各国が現在最も研究に資金を投じている分野でもあります。まあその研究の最先端にいるのが、千金楽(ちぎら)学園長なんですけどね」

 

(だろうな……マキナ程のアンドロイドは魔力研究を進めてもそうそう生み出せるとは思えない。この制服だってとんでもない性能だしな……)


「特にエネルギー開発、医療分野への応用を推進している、ということが表向きに発表されていますが、本当はどの国も戦闘、軍事利用の研究に躍起(やっき)になっています。日本も含めてね」

 

「軍事利用……」

 晃生の隣で授業を真剣に聞く木乃香が不安そうに呟いた。 


「まあこれは悪いことばかりではありません。異界から現れた魔物や、魔素を取り込んで凶暴に変異した地球産の危険生物による被害の多くは軍隊では対処が遅れ、警察では対応できないケースが多い為、君達のような魔力覚醒者——とりわけギルドに所属する能力者達に頼らざるを得ませんが、魔導兵器開発が進めばそれを装備した非覚醒者の兵士でも魔物と戦えるようになり、君達が徴兵(ちょうへい)されるような未来もなくなるでしょうから」


 かなり重要な内容の講義だが、寝続ける灯真の寝顔を見ていたずら心が芽生えたか、舞桜がその額に油性のマジックペンで『炎』と書いてけらけらと笑う。


「少し話が逸れましたね。君達はこの学園に強くなりに来た。卒業後は自衛隊の異界方面隊や公安の特殊部隊、大手ギルドからも声がかかることでしょう。既に勧誘された方もいるかもしれませんが、将来魔物を狩って生計を立てるにしろ、大切な人を守るにしろ、強くなければ何も成すことは出来ません」


「勇ちゃんも勧誘されたもんね」

「いや、それはもういいから……」


「強さの指標としては魔力量が手軽ですが、世界的には軍隊の構成単位を元にした階級規格が採用されています。すなわち能力者個人での保有戦力が兵士何人相当であるか、という規格です」


 宮沢はここで初めてペンを取り、ホワイトボードに板書していく。


 ―――――――――――――――――――――――


 分隊(スクアッド)級……兵士10人相当


 小隊(プラトーン)級……兵士50人相当


 中隊(カンパニー)級……兵士200人相当


 大隊(バタリアン)級……兵士500人相当


 連隊(レギメント)級……兵士2000人相当


 旅団(ブリゲイド)級……兵士5000人相当


 師団(ディヴィジョン)級……兵士1万人相当


 軍団(レギオン)級……兵士3万人相当


 総軍(ジェネラル)級……兵士10万人相当


 ―――――――――――――――――――――――



「これはかなり大まかな数字で、同じ階級の中にも当然優劣はあります。また弱点属性等、相性によっては小隊級の能力者でも中隊級の人を倒したりすることもありますし、1対1に特化した能力者や、殲滅力に長けている者等、その特性も様々です。直接戦闘に関わらずとも、支援系の能力ではそれがどれくらいの規模、どれくらいの人数に影響を及ぼすかで階級が決まります」


「へぇ……自衛隊の操華さんとかが言ってたのはこれか」

「私達1人ずつ中隊級はあるって言われてたけど、まだまだだね」

「まあ、今の俺達はあの時より強くなってるだろ」

 晃生と木乃香は自分達の強さの現在地を確認し、改めて気合が入ったようだ。


 まあ、晃生達のような学生が1人で兵士200人分以上の戦力を持っている時点で本来十分過ぎる強さなのだが。


「師団級以上は基本的にギルド等の組織に対して保有する総戦力を表すために使用されます。まあ例外的に個人で師団級以上と言われる怪物も存在しますけどね」


(1万を超える兵士を1人で相手出来るって、どんなバケモンだよ……)

 

「この階級は魔物に対しても同様で、大隊級の魔物が出た場合には兵士300人〜1000人規模の一個大隊もしくは大隊級以上の能力者でないと対処出来ないということになります」


緋彩(ひい)ちゃんが既に大隊級なんだったよね」

 ヒソヒソ声の舞桜が灯真ごしに晃生と木乃香に話しかける。

「ならそれに勝った灯真は連隊級か?」

「ならその俺の全力を止めた晃生(おまえ)もだろ。勇斗も俺の炎を斬りやがったしよぉ」

 強さの話になってから寝るのをやめた灯真も会話に入ってきた。

 全力の熱収束波を止められたことはまだ気にしているようだ。


「勇ちゃんはもうなんでも斬っちゃうもんね?」

「僕は辻斬りじゃないよ……」

 笑う愛奏音に対して勇斗がジト目で突っ込む中、宮沢は話を続ける。


「通常の生物と違い魔物は生命活動の多くを魔力によるエネルギーで(まかな)っており、自然と魔力を使いこなしている為、我々よりも魔力操作の感覚に優れている場合が多いです。中でも魔素生命体——エレメンタルと呼ばれる魔物は保有魔力量、魔力操作感度ともに桁違いのレベルで、突出した強さを誇ることが確認されています」


「魔素生命体……どっかで聞いたな」

麗色(れい)ちゃんがオスプレイの中で言ってたやつじゃん? うちらが倒したゴーレムがそうだったって」

「あー、だからあいつあんな強かったのか」

 

 舞桜(まお)は学園長を麗色ちゃん呼ばわりするが、それを気にも留めていない様子でスルーした灯真。


「そうです。千歳灯真君、氷堂舞桜さん、中川晃生君、天音木乃香さん、藤田勇斗君、玉森愛奏音さん。以上6名が以前討伐した識別個体(ネームドモンスター)、ゴーレムも肉体こそ岩石でしたが、その後の解剖研究で魔素生命体(エレメンタル)と分類されました。まだ詳細は未確認ですが、あの異界ではなんらかの条件を満たすことで魔素そのものが生命を獲得することがあるようです。それは特定の器を必要とせず存在できる高位の生命体で、生命の魔素が岩や風等の自然に宿ったものと、そのまま高濃度の魔素を肉体とするものの2種類の発生起源が確認されています。総称して魔素生命体(エレメンタル)と名付けられましたが、特に強力な後者を精神体や霊体に近い事から精霊と呼ぶこともあります。例外として一部のアンデッド系モンスターも魔素の肉体を持っていることがありますが、これらはその他の魔素生命体と比べて魔素量、脅威度共に精霊には及ばず下位のモンスターとして区別されています。不死(アンデッド)とは言えそれは通常兵器相手の話で、魔力を用いた攻撃なら有効ですし、魔素を削り切れば倒せますしね。そしてこれは魔素生命体相手にも同じことです。まあその魔素を削り切ることが魔素生命体や精霊相手では困難を極めるのですけどね。保有する魔素量、魔力攻撃の規模ともに桁違いですし。2年前の2月1日に初めて異界の存在が明らかになって以来今日まで幾度となくゲートが開かれてきましたが、現れた精霊は天災のようなもので、討伐出来た例はほぼありません」


(高濃度の魔素を肉体とするもの……じゃあ前戦った炎の魔人(イフリート)も誰かが操ってたんじゃなくて、ああいうモンスターだったってことか。精霊か……手も足も出なかった訳だ……あれ……? ならその精霊を簡単に倒してたあの女の人って……)


 晃生が以前助けられた女性のことを思い出している中、お化け苦手組の舞桜と木乃香はアンデッドという単語に顔を青くする。


「え、ゾンビみたいなモンスターもいるってこと……? うちそんな任務絶対行かないからね! とーまを盾にして逃げる自信あるし!」

「マジでやめろよ……」


「私も無理、かな……晃生君は平気?」

「余裕。ホラー映画見たら1週間は暗いとこ怖いけど」

「それ全然余裕じゃないんじゃないかな!?」


愛奏音(あかね)ちゃんはそういうの得意だったよね」

「ん〜、得意って訳じゃないんだけど、勇ちゃんが怖がってるのを見るのが楽しいから」

「え」

「今度また心霊スポット一緒に行こっか」

「いや……そんな暇ないし……」


「ちなみに識別個体(ネームドモンスター)とは、出現時に多大な損害を及ぼしたモンスターの中でもゲートから異界へ去ったり海や空へ消えたりして未討伐となっているような、個別に警戒を要するモンスターのことです。ゴーレムのような魔素生命体や精霊は死後その魔素が自然界へと還元し、輪廻が巡るようにまた何処かで命を生むとされているため、討伐済みでも識別個体(ネームドモンスター)として固有名詞が付けられ、各組織の要警戒リストに載せられます」


(総軍級、精霊、識別個体(ネームドモンスター)……まだまだ強い怪物はいくらでもいるってことか……俺ももっと強くならないとな。その為には、もっと強い奴と闘うことだ)

 晃生は人知れず拳を握りしめる。


「さて、ここまでつまらない話をしましたが、この学園ではモンスター討伐や異常犯罪者の逮捕に繋がることは全て授業で行なっていきます。個々の魔力操作訓練や戦闘訓練は勿論、現場へ急行または追走の際の車輌の運転技術、武器の扱い方、魔物の特性、相性、戦略等、全てです。それぞれ専門分野に長けた教師が指導していきます。そして今日、新たに学園長が雇った戦闘に長けた方が外部講師として学園に来て下さいました。到着されたようなので、みんなで訓練場へ向かいましょう」


 座学中に突然移動となり、戸惑う生徒達はガヤガヤと話しながらも席を立って訓練場へと向かう。


「戦闘に長けた奴って、俺より強いのか?」

「学園長が戦闘分野の専門として雇うくらいだし、僕らよりは数段強い人が来ると思うよ」

「ああ、あの曲者(くせもの)学園長が選ぶような人だし、どんな怪物が来ることか……」

 灯真、勇斗、晃生もどこかわくわくしているような顔で他の生徒達に続く。


 迷路のようで構造を覚えるのが大変だった校舎の廊下を歩き、一同が訓練場へ到着すると、そこで待っていたのはさっき晃生が思い出していた人物——以前晃生と木乃香のピンチをイフリートから救った女性だった。


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