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解離性アストラルレイド 〜異世界大戦〜  作者: Aki
第2章 集う才能
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第54話:刀剣乱舞

 隼矢の射った矢は躱そうとする灯真を軽く追尾(ホーミング)するが、排熱噴射機動(ジェットエンジン)の機動力を持つ灯真には当たらない。


 2射、3射、4射、5射と矢を射っても無駄だと悟った隼矢は5本の矢を一気に(つが)え、同時に灯真へと放つ。

 多角的に迫り来る矢だが、それでも灯真が余裕を持って躱し、様子見に飽きた灯真が距離を詰めようとした時、背後から最初に放たれた5本の矢が飛来する。


 魔力で形成した矢のため、魔力操作で隼矢の意のままにコントロール可能なのだ。

 

 その矢に灯真が気付いた時——ガガガガガッッと魔力の弾丸(・・・・・)が矢を精密に撃ち落とした。


「不要な援護だったかしら」

 後ろ髪を手櫛(てぐし)()きながらの愛奏音(あかね)が灯真に声を掛ける。


「ああ、気付いてたっての」

「それはごめんなさいね。あまりにも前しか見えてなさそうだったから」

「ぐっ……まあ、一応礼だけ言っとく。見えてたけどな」

「そう。それよりその人、私に譲ってくれないかしら。私も仲間を悪く言われて久しぶりに腹が立ってるの」

 愛奏音の台詞の前半ではピクッと眉を動かした灯真だったが、後半を聞いてからニヤァーっと悪い笑顔になり、

「あァ、スカッとブッ飛ばしてくれるってんなら良いぜ。こんな雑魚じゃ物足りないと思ってたところだしな。それよりも俺は……」

 と、さっき火炎弾を放ったライオン男——玲旺(れお)の方をチラッと見る。


 だがそれを見た晃生が灯真の肩を掴んで止め、

「待てよ灯真。ソイツ見るからに殴り合いがお望みの近接タイプだろ。俺に火を吐いてきたんだし、俺にやらせてくれ」

 そう言って玲旺の2mを優に超える巨体の前に立った。


「アンナ先生すみません。特訓の続きはまた今度お願いします」

「ああ良いぜ。お前らのバトル見てんのも面白そうだからな」

 ドカッとその場に胡座(あぐら)で座ったアンナはどこからか取り出したスキットルの蓋を開け、ウイスキーを煽る。


 だが灯真は納得いかなかったようで晃生に突っかかった。

「オイオイそれァねぇだろ。どいつもこいつも俺の獲物横取りしやがって……」

「まあそう言うなって。さっき健太君に聞いたんだけど、あのライオンの肩に乗ってる魔女っぽい子がこの学園で1番強いらしいぞ」

「へぇ……」

「見た感じ魔法系だろうし、灯真はそっちと()りたいんじゃないか? 俺も肉弾戦の方が実戦経験になるし」

「ハッ、良いぜ。アイツをぶっ潰せば俺がこの学園最強ってことだよなァ。面白そうだ」

 納得した灯真が魔女を見据え、玲旺の肩から降ろす為に火球を放つ。

 さっき玲旺がやったのを真似て、口から。


 ——ボゥッッッと飛び出した火球は高速で魔女へと向かうが、しかし直撃寸前で軌道を変え、まるで火球自体が魔女を避けたようにカーブを描いて背後の壁へと衝突し霧散した。


「何だ……? 俺の火球が曲がった……?」


「ふんっ、その程度の攻撃、私には通用しないわ! 火遊びがしたいなら付き合ってあげなくもないけど」


 そう言った魔女——柚木園(ゆきぞの)緋彩(ひいろ)が人差し指を立てると、その頭上にポッと小さな火の玉が生まれた。

 火の勢いとともにその大きさがソフトボールサイズ、バスケットボールサイズと徐々に増していき……直径3mを超えた所で玲旺が上を向いて——ゴォォォアアアアアアアッッッと口から火炎放射を火の玉に向かって放つ。

 2つの炎が混ざり合い、さらに大きさを増す火の玉は直径5mにまで達した。


 燃焼による焔光(えんこう)が眩しいまでに晃生達を照らし、まるで小さな太陽のような輝きを放っている。


「これに耐えれたらあんた達と遊んであげる」

 緋彩がくいっと指を前に向けると、巨大な炎弾が2人に迫る。


 ——ッゴォォォォォォオオオオオオオオオオッッッと猛烈な火炎が直撃し、訓練場にいた周囲の人間も輻射熱(ふくしゃねつ)(あぶ)られて飛び退いていく。


 流石の勇斗も熱気を斬ることは出来ないため、バックステップで軽く退いていると——ヒュッッッと魔力の刀が切先を向けて飛来した。

 キィィンッッと即座に振るった魔剣で弾き飛ばした勇斗が刀が飛んできた方を見ると、ガタイの良い男が魔力の大剣を持って立ち、今の攻撃を防いだ勇斗を見て(わら)っていた。


「お前、良い反応するなぁ」

 その男は晃生の引き締まって密度を増した筋肉とは違い、プロレスラーやボディビルダーのように筋肥大(パンプアップ)を目指して筋トレしてきたタイプの肉体を持っている。

 短めだが意外にオシャレなソフトモヒカンの髪が広い肩幅によく似合っている。


「大剣使いか……君らは何が気に入らないんだ?」

 制服を内側から圧迫する太い腕で握られた幅広、長身の剣を見て勇斗が呟く。


「おっと勘違いしないでくれよ? インチキだとかはどうでもいい。ただ俺とどっちが強いかに興味があるだけだ」

「ああ、それなら僕も手合わせ願おうかな。実戦が1番って教わったところだし」

「そりゃ良い心掛けだ。お前、名前は?」

「藤田勇斗」

「そうか勇斗。俺は(やまと)武琉(たける)だ。俺に勝てたら武琉って呼んで良いぜ」


(やまと)……この人がランキング2位の……)


 チャキっと魔剣を下段に引いて構えた勇斗と、大剣を肩に担ぎ上げてニヤッと笑う武琉(たける)対峙(たいじ)する。


 剣士同士、互いが気を張り巡らせて集中し、それらがピッタリ重なったタイミングで——バッッと両者同時に動き出す。


 大上段から振り下ろす武琉と下段から迎え撃つ勇斗の刃が衝突し——ギィィィィィィィンッッッという剣戟(けんげき)の音と共に火花のような魔力の閃光をスパークさせ、周囲の地面に広がっていた緋彩の炎をブワッッと押し退ける。



 その炎が揺らめく先ではまた別の激突音が——ガガガガガガガガガッッッと鳴り響いていた。


 隼矢と愛奏音が走りながら魔力矢と魔力弾を激しく撃ち合い、ぶつかり合う弾と矢が散らす魔力が火花となって周囲を彩る。


「あっはははははァ! 貴女(あなた)が出せる弾の数はだいたい分かって来ましたよォ! せいぜい20発か30発といったところですねェ。僕が出せる矢は——」


 本来魔力操作によって弓無しで矢を発射出来る隼矢が魔力で生成した弓を捨て、雨を確認する時のように両手の平を上に向ける。

 隼矢の周囲に魔力矢(マジックアロー)が40、50、60と浮かび上がり、その数をさらに増やしていく。


「——100本です」


 得意げに笑う隼矢が力の差を見せつけようと最大数の矢を生成し嘲笑(あざわら)う。

 

 だがそれを見た愛奏音(あかね)もふふっと笑い、

「それが限界?」

 キュゥゥンッと魔力を収束して魔力弾を生み出していく。


 これまで隼矢は無闇に矢を放っていただけで、矢と弾が空中でぶつかっていたのは愛奏音の精密な射撃の賜物(たまもの)に他ならない。

 その神経を使う魔力操作のため抑えていた弾数を解放した今、100、150、200、300……(おびただ)しいまでの魔力弾が訓練場の空間に浮かび上がっていく。


「ぁ……ぁあ……嘘だ……」

 圧倒的な魔力の差に絶望した隼矢が魔力矢を放つ気力も失って立ち尽くし、

「貴方がインチキ呼ばわりした晃生君はこれを喰らっても大丈夫だと思うけど、貴方はどうかしら?」

 500発を超える魔力の弾丸が()け、隼矢の視界を埋め尽くした。


 ——ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォンッッッ!!!



 着弾が連なる轟音が耳に届く中、キィンッ、ギィィンッと剣戟音を響かせる勇斗と武琉は何度目かの(つば)()り合いになる。


「ハッハッ! 楽しいなぁオイ! こんなに俺と斬り合える奴は初めてだ!」

「そっちこそ、そんな大ぶりな剣でよく防ぐね」

 刃と共に言葉を交わす2人は、緊張の中にありながらも笑顔だ。


「お前こそ、その細い腕のどこにそんな力があんだ、よッ!」

 言葉の最後で(りき)んで大剣を無理矢理押し込んだ武琉(たける)はそのまま腕を振り抜き、勇斗を弾き飛ばす。


 勢いに逆らわない後方宙返りを見せた勇斗が着地後、ザザザザザッと後方に滑りながら体勢を整えて停止した。


(らち)()かねぇなぁ。このまま斬り合ってるのも楽しいんだが、ちょっと本気出させてもらうぜ」

 そう言った武琉が魔力操作で右手に持っていた大剣を太刀(たち)へと変形させ、左手にももう1本生み出した太刀を握り込む。

 さらには全身を魔力で形成した鎧で包み、完全武装の状態となった。


「俺の能力は魔力武装。剣でも鎧でも好き放題に魔力で生み出せる。剣1本しかないお前では俺に届かないぜ」

「……どうかな。その1本を極めた剣士が相手なら、全部を斬り裂かれるかも」

「面白ぇッ!」

 ドッッと地面を蹴った武琉が右手の太刀(たち)を大上段から振り下ろし、左手で脇構えに引いていた太刀を横一文字に()ぐように振り抜く。

 上と左から挟まれるように迫る斬撃に対し勇斗も魔剣を振るう——ヒュガガッッッ!!!


 抵抗感なく二振(ふたふ)りの太刀を振り抜いた武琉(たける)だったが、その太刀の刃が半分程無くなっていることに気付く。


「なッ……!?」

 

 武琉が眼で追えない程の剣速で、勇斗はほぼ同時に2つの太刀を斬り飛ばしたのだ。

 なんでも斬れてしまうが故、今まで武琉と打ち合う為に抑えていた魔力出力を解放して。


「くッ……野郎ッ!」

 武器を捨てた武琉は敢えて次の武器を生成せずに勇斗の魔剣による戦闘領域(バトルエリア)の内側——肉弾戦(インファイト)の距離まで肉薄する。

 もし退()きながら斬られても鎧で受け切ってさらに踏み込むつもりで。

 

 だが武琉の予想に反し勇斗までも踏み込んできて、咄嗟(とっさ)に繰り出した右拳を紙一重で(かわ)しながらすれ違うように通り過ぎた。

 

 次の瞬間、バガァァンッッと武琉の鎧が崩壊する。

 だが武琉自身の体には傷一つない。 

 勇斗は鎧だけを狙って精密かつ高速で剣を振るったのだ。


(剣筋が……見えねぇ……ッ!)

 まさに達人のような剣技を受けた武琉は慌てて距離を取り、もう1度魔力で(さや)と共に形成した太刀を握り直す。

 そして鞘の部分を持った左手の親指で鯉口(こいくち)を切り、右手を()に掛けた。

 抜刀術……居合い斬りの構えだ。


(俺の最強の技をくれてやる……ッ!)

 

 対する勇斗は剣を下ろしてただ立っている。

 脱力の姿勢——構えない構えだ。


「喰らえッッ!!」

 叫んだ武琉が鞘から高速で刀を抜き放つ——ザキィィィィィィイイインッッッ!!!


 本来居合い等の刀を後ろに引く構えは相手に刀身の長さを隠し、間合いを悟らせないためのもの。

 さらに武琉は抜刀の瞬間に魔力操作で刀身を延伸させ、踏み込み無しで相手を斬り裂く間合い潰しの斬撃を繰り出した……のだが、振り抜いた刃はまたしてもぶった斬られ、宙を舞った剣先がドスッと地面に突き刺さった。


「お前……今まで手加減してやがったな?」

「そうじゃない。打ち合えば君のことが分かると思ったんだ。君は嫌な奴じゃない。戦いを、いや、強くなることを楽しんでるって感じだね」

「……ああ。だが負けたままじゃ楽しくねぇなぁ。悪いがもうちょい付き合ってくれよ」


 再度両手に太刀を生成した武琉の脳裏には、さっきの隼矢と愛奏音が撃ち合う光景が浮かんでいた。


二振(ふたふ)りで駄目なら、もっと増やすまでだッ……!)


 武琉は周囲の空間に魔力を収束させ——ロングソード、ショートソード、グレートソード、バスタードソード、ブロードソード、ボアスピアソード、タルワール、グラディウス、シャムシール、エストック、レイピア、ファルシオン、フランベルジュ、クレイモア、スクラマサクス——ありとあらゆる刀剣を形成し、その全ての切先(きっさき)を勇斗に向ける。


「これならッ……どうだァッ!」


 ——刀剣乱舞。


 武琉が生成した全刀剣が勇斗に向けて殺到する——!


 ——ギギギギギギギギギギギギギギギギギィィンッッッ!!!


 その全てを、勇斗はたった1本の剣で弾き飛ばした。


 宙を舞う刃の刀身が鏡となって残心の姿勢をとる勇斗を映しながら落下し——次々と地面に刺さり、あるいは金属音を立てて落ちていく。


 現時点での最高の技、全身全霊の剣技を真っ向から打ち破られた武琉は目を疑うが、弾かれて落ちた自身の刀剣が大気中の魔力へと還元されて消えていったところで現実を受け止め、

「……(まい)った。俺の負けだ」

 潔く負けを認めた。両手を上げ、降参のポーズで(おど)けて見せながら。


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