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解離性アストラルレイド 〜異世界大戦〜  作者: Aki
第1章 覚醒者達
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第40話:死守

「なに……これ……」

 その絶望の光景に、ひなのがすとんと地面に座り込む。


 獣のような声を連ねるゾンビ達の大合唱はその音だけで恐怖を掻き立てる。

 辺り一面を埋め尽くす死者の大群はまるで冥界にでも迷い込んだような錯覚を起こさせ、生きる希望が真っ黒に塗り潰されていった。


「こんなのもう……どうしようもないじゃないですか……」

 ひなのが、恐怖から雄理の腕にしがみついた。


「お兄ちゃん……」

 愛理は信じる兄が一緒だからかまだ絶望した様子は無いが、不安そうに雄理の服を掴む手に力が入る。


 雄理がどれだけ強い能力を手に入れたとは言え、この数相手に自分達を守り切れるかは分からない。

 その不安の(あらわ)れとして、ひなのが雄理の腕を抱く手に力が(こも)る。


 その様子を見たゾンビ達は食欲をそそられたか一斉に動き出し、クレーターの斜面を駆け降りてくる。


「…………」

 雄理は無言で2人の手を引いて並び立たせた。


「お兄、ちゃん……?」

「せん……ぱい……?」


 ——ガシャァンッッと、雄理は自分が(まと)う鎧を()き、(おり)に変形させて愛理とひなのを閉じ込める。


「えっ……?」

「ちょっとお兄ちゃん!?」

 愛理とひなのは格子(こうし)を掴み、大量のゾンビを前に鎧を失った雄理に近付くが、どれだけ力を入れようとその檻はびくともしない。


 雄理は自身の絶対防御を捨て、2人を守ることを選択したのだ。


「大丈夫。それは絶対壊れないから」

「そんな……そんなのダメだよお兄ちゃん!」

「先輩! こんな……こんなのって……!」


 2人を閉じ込めた檻に背を向け、もう一度「大丈夫」と言うように魔力操作で操るアダマンタイトの長剣を構えた雄理は、ゆっくりと大群で迫るゾンビ達の方へと歩き出す。


 ——ドドドドドドドドドドドドッッ!!!


 ゾンビ達が踏み鳴らす足音が轟音となって迫り、雄理も徐々に歩行速度を上げ、そしてダッと走り出した。


 ヒュガガガガガァッッと一振りに見える程の速度で5つの斬撃を繰り出した雄理は、ゾンビ5体の首や胴を真っ二つに両断する。

 それを見ても(ひる)む心を持たないゾンビ達は次々に雄理へと殺到してくるが、刃渡り100cmの流星剣(アダマンタイトソード)の殺傷圏内に入った瞬間に次々と斬り飛ばされていく。


 ——ゴァァァッッ!!


 声帯が潰れて上手く発声出来ないのか、(おぞ)ましい声を上げて掴み掛かろうとするゾンビの首元を掻っ捌き、雄理はそのまま360°ターンするような回転斬りで囲んできた6体を同時に斬り伏せた。


 即座に死体を踏み越えて迫り来た次のゾンビに後ろから肩を掴まれるが、振り返らずに背面で剣を振るってその腕を掬い上げるように切断。そのまま上段からの振り降ろし、下段からの斬り上げ、横への薙ぎ払い——さらに返す刀で()ノ太刀、(さん)ノ太刀、()()(ろく)(しち)(はち)()と慣性を無視した高速の刃をヒュゴゴゴゴゴゴゴゴゴォッッッと振るい、正面のゾンビ達を斬撃の嵐で斬り飛ばしながら前進する。


 快進撃を繰り広げる雄理だが、突然ガクンっと何かに引っ掛かったように足が止まった。足元を見ると、上半身しかないゾンビが地に伏せながら雄理の右足首を掴んでいる。


 左からも地を()ってゾンビが迫るが——雄理はすぐに剣で串刺しにしてそのゾンビを地面に縫いつけた。さらに突き立てた剣とその柄頭(つかがしら)を握る左手を支点にして地面と平行に跳び上がり、右足首にゾンビをしがみ付かせたままゴオォッッッとトリッキングのハイパースクートのような横蹴りを放つ。脚で振り回されたゾンビがゴゴゴゴンッッッと他のゾンビに激突し、雄理が脚を蹴り抜いたところで握力が遠心力に耐えられなくなって吹っ飛んでいった。


 雄理はすぐさま地面に突き立てていた剣を抜いて斬撃での殲滅に戻る。


 アダマンタイトの桁外れの硬度、変形させた鋭利な刃、魔力操作による高速斬撃。

 この3つが揃った攻撃はゾンビ達を容易く斬り裂くが、迫り来るゾンビ達は無限にも思える程襲い掛かってきてキリがない。

 対する雄理は1度でも攻撃を喰らえば終わり。傷口からゾンビ化の魔力が流れ込み、動く死体に成り果ててしまうだろう。


 刃渡りに応じた確殺範囲——ゾンビ達を近付けさせない領域が刻一刻と狭くなり、極めて高い集中力を維持し続ける雄理の神経が徐々にすり減っていく。


(さば)ききれない……!)


 雄理は咄嗟(とっさ)のインスピレーションで剣の握り手の部分を延伸させ、その(つか)側にも刃を作る。

 薙刀(なぎなた)を2つ繋げたような武器——双刃刀(ダブルセイバー)となったそれをビュビュビュビュンッッと回転させながら振り回し、ゾンビ達を滅多(めった)()りにする。

 さらに状況に応じて双刃刀を2つに分解してそれぞれ刀にし、二刀流の双刀(デュアルソード)で次々と斬り倒していく。


(もう少し……!)


 だが(つい)に斬り損なったゾンビに腕を掴まれてしまい、頬が裂けて奥歯まで見えているグロテスクな大口が雄理の腕に噛みつこうと迫る——


 ——ガキィィンッ!


 ゾンビの歯とアダマンタイトの装甲が甲高(かんだか)い音をたてた。

 雄理は噛まれる直前に剣を変形させ、拳から前腕までを覆う手甲(てっこう)で防いだのだ。


 そのままアダマンタイト装甲の拳でドガガガガガガガッッとゾンビ達を殴りまくり、

アダマンタイト(こいつ)ならどんだけ薄くても壊れないだろ)

 さらには両足をも装甲で覆い、それらを魔力操作で操る超人的な挙動でゾンビ達を撲殺していく。


 そして遂に、アダマンタイトの脚部装甲を操る2段蹴りで雄理に群がっていた最後のゾンビを倒した。


 極限の集中状態を維持していた雄理は「フゥーー」と息を吐き、今度は愛理とひなのを閉じ込めていた檻の方へと向かう。

 そこでも檻が見えなくなる程のゾンビが群がっているが、双剣にしたアダマンタイトを操って飛ばし、遠距離から斬りまくって殲滅する。


 ゾンビ達の壁が消え、歩いて近付いていく雄理の眼に檻が(うつ)った時、あり得ない光景が飛び込んできた。


 絶対安全だったはずの檻の中で、ひなのが血を(・・・・・・)流して倒れて(・・・・・・)いたのだ(・・・・)


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