表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解離性アストラルレイド 〜異世界大戦〜  作者: Aki
第1章 覚醒者達
4/104

第4話:大群

(おいおいおい……せっかくここまで戻って来たのに……ッ!)


 周囲を見渡す晃生(こうき)の顔に絶望の色が(にじ)む。

 ゴブリンの集団に囲まれているからだ。


(くそッ、さっきのゴブリンの叫びは威嚇じゃなく、仲間を呼ぶためのものだったんだッ……!)


 ゴブリンは地球の肉食動物のように、群れで狩りをする習性を持っていた。

 ライオンは1~2頭のオス(コアリション)と10頭前後のメスで群れ(プライド)を成して狩りを行うし、Lycaon(アフリカン)pictus(ワイルドドッグ)——リカオンも『パック』と呼ばれる10頭程の群れで暮らし、協力して獲物を仕留める。だがこの場で2人を囲んでいるゴブリンの群れはその程度の規模じゃない。その数、およそ100。


(なんでこんな異常な数で群れているんだ、コイツらッ……!)


 群れをここまで極端に大きくしてしまうと、狩りは成功しても餌が群れ全体に行き渡らない。餌の奪い合いや個体間の摩擦等のデメリットの方が大きいだろう。つまり、このゴブリン達の目的は餌ではなく、狩りそのもの。


 ——ギェェェェァァァァァアアアッ! ギャァウッ! ギャァァァ!


 ゴブリンの集団による威嚇が始まる。

 密集した(せみ)の鳴き声が単体のそれより遥かにうるさくなるように、1匹の威嚇とは段違いの叫び声が全方位から浴びせられる。


 耳を塞ぎたくなる程の騒音の中、晃生は……

「天音さん、ごめん。今度は絶対に戻るなよ」

 トン、と、何か言おうとする木乃香の背中を押した。

 その姿が空間の穴へ吸い込まれて見えなくなった後、ゴブリン達へと振り返る。


「さて、お前らの狩りに付き合ってやるよ。人間狩りじゃなく、ゴブリン狩りだけどな」


(この大群がもしゲートを通って地球まで追ってきたら、住宅街の人達が大勢死ぬ。きっと天音さんも、逃げきれない……)

 そう考えた晃生は、ここで1人、戦う覚悟を決める。


「うぉぉおおおおおおおおおおッ!」

 威嚇のための砲声、というより自身の恐怖を打ち消す覚悟の叫びを上げ、晃生が走り出す。

 一番近いゴブリンにサイドキックを叩き込み、「ギェッ」と鳴いて吹っ飛んだソイツを追いかけ、起き上がる前にゴスッと頭蓋を踏み砕いた。


 その音を合図にしたかのように、周囲を囲んでいたゴブリン達は集団威嚇をピタリと止め、ザザザザザザッと草を掻き分ける音を立てて一斉に晃生に向けて飛びかかってきた——!


 晃生はゲートから遠ざかるため、ゴブリンを殴り、蹴飛ばしながら走る。

 激しい動きでどこかへ飛んでいった眼鏡にも構わず、一心不乱に走る、走る、走る——!


(よしッ、幸いコイツらは目の前の獲物にしか興味がないみたいだ。これなら……!)


 だがその腕に、肩に、脚に、腰に、次々とゴブリン達が噛み付いていく。


(くそッ、止まるなッ、止まるなッ、走り続けろ!)

 強化された脚力で駆け、まずはこの包囲網を突破しようとするが、回復能力も追い付かず、瞬く間に全身の皮膚が引き裂かれる。


 足に飛び付いたゴブリンにアキレス腱を噛みちぎられ、転んでしまう晃生。

痛みを感じる間も無く、すぐさま大量のゴブリンが群がり……腕や脚、首、腹、身体中の全てに鋭い牙が突き立てられていく。


 ——ブチィッ、グッチャグッチャ、ギチッ、ブチブチッ!


 圧倒的な物量に押し潰される晃生は、さらにありとあらゆる筋肉が噛みちぎられ引き裂かれて、もはや身動きすら出来なくなる。

 

 その光景はまるで小昆虫を集団で狩る(あり)や、オオスズメバチを熱殺峰球で殺すニホンミツバチ、もしくは屍肉を食い荒らすゾンビのようだ。


 目を()らしたくなるような光景の中、晃生が喰われていく音が——人知れず響き続けた。


 ——グッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャ——ッ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ