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解離性アストラルレイド 〜異世界大戦〜  作者: Aki
第1章 覚醒者達
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第30話:皇蟲

 地球への侵攻から異界に戻ってきたジャックは即座に行動を始めていた。


 失った戦力の補充だ。

 魔力感知で周囲にいる魔物を探し、より強力な個体を取り込んで群れの戦力をどこまでも増強していく。

 

 魔物の声が聴ける、と晃生に説明していたジャックの能力の本質は——

支配。

 ジャック自身も先日理解したばかりだが、魔物との意思疎通は魔物支配(テイム)の副次的な効果に過ぎず、本来の能力は自身の魔力的影響の支配下に置いた魔物の魔力とその特性の共有。


 簡単に言えば倒した魔物の操作に加え、その魔力と能力をジャック自身も使えるようになるのだ。


 ジャックは力と軍勢を際限なく増していく、魔王とでも呼べる存在。


 既にジャックは魔物支配(テイム)で新たに2つの魔物の群れを支配下に置いていた。

 オルガやレクトルに代わる、その上位種であるハイオークとブルーリザードの群れだ。


 ハイオークは単なるオークに比べて体格が平均的に二回り程大きく、分厚い皮膚の下もより筋肉質で、下顎の歯列にさらに凶悪な牙を備えている。


 反対にブルーリザードは普通のリザードマンより一回り小さいが、その分スピードが異常に速い。その脚力は水の上をも走れる程で、先端が青く特徴的な尻尾を通常種よりも器用に操る為、トリッキーな動きも出来る。


 どちらの種も通常種より内包する魔力量は飛躍的に向上しており、より高い知能も有している。


 ジャックはハイオークの群れの長にはウルガ、ブルーリザードの長にはゼクトルと名付けていた。


 現在はスライムの中でも突然変異種であることが判明し戦闘訓練を積んでいる金色(ゴールデン)スライムのラムと共にウルガ、ゼクトルを護衛として連れ、共にダイナの背に乗って大空を高速で飛翔しているところだった。この3体は配下の中でも特に強力な個体だ。


 地球に残してきたゴーレムやオーク、リザードマン達のことを思い浮かべ、ジャックが少しだけ目を細める。


(悪いなお前ら……俺はもう、止まれない……)

 晃生の能力を知っているジャックは、ゴーレム達が全滅しているとほぼ確信していた。

 木乃香を含め晃生と同等レベルの能力者が多数いたあの状況ではいかに強力なゴーレム達といえどやられる公算が大きい。


(もっと戦力がいる……)


 唯一残った特殊(ユニーク)個体である黄金(ゴールデン)スライムのラムを撫でるジャックの脳裏に、地球人に(なぶ)り殺されたスライム達がフラッシュバックする。


(誰にも負けない、最強の仲間を集めてやる……!)


 ジャックの意図を()み取ったダイナがゴゥゥゥゥゥゥウウウッッと翼を大きく羽ばたかせて飛翔し、一気に彼方(かなた)へと飛び去って行く。


(強い魔力反応は……)

 配下にする強い魔物を探すため、ジャックは魔力感知を発動する。

 ——キィィィィィィィィンッと、多くの魔物との魔力共有で膨れ上がっているジャックの魔力が周囲に放たれる。


 ジャックは感知に引っかかる反応に意識を集中して魔力を拡げ……さらに拡げ……密林(ジャングル)中に魔力を行き渡らせていき——そこで異常な魔力の反応を感じ取る。


(なんだこの魔力量……?)

 感知に反応したのは、ジャックよりもさらに膨大な、災害のような魔力の塊。それがこの密林の中に3つ(・・)も存在している。


 魔力感知で確認できる魔力体の精度は距離に反比例し、近い所では感知したものの魔力量や動きを正確に捉えられるが、離れる程その確度は曖昧になっていく。

 ジャックの魔力量であれば最大で半径100kmもの範囲を感知でき、逆に言えば半径100km圏外にある魔力体の存在については通常感知し得ないのだが、北と南にはジャックからしても規格外の魔力を持つ存在が知覚された。

 そしてその南北に感じた怪物級の魔力の持ち主は、ジャックの拡げた魔力感知の波を受けた直後——()()()()()()()()()()し、体外に漏れ出る魔力を消した。


(面白い……!)

「ダイナ。あっちだ」


 感知出来た高魔力反応は3つ。ジャックは南北以外の残りの1つ——(もっと)も距離が近く、(もっと)も異質な魔力を感じた方角を指差し、ダイナに命令する。


 ダイナはゴァァァッッとひと鳴きし、トップスピードを維持したままグンッッと急激に方向転換してさらに加速していった。


 強烈な風圧の中、安全バーも無しにドラゴンの背に乗るジャックは涼しい顔で龍鱗(りゅうりん)の一部を掴んでいる。


 異質な魔力反応の元へ徐々に近付き、ジャックがダイナの背中をコンッとノックするように手の甲で叩いて合図すると——バサァァァァァァアアアアアアッッと空気抵抗を利用して減速、砂や木の葉を吹き飛ばしながらダイナが着地する。


「よし、ダイナ。人型になれ」

 地面に降り立ったジャック、ウルガ、ゼクトル、ラムの後ろでダイナが見る見るうちに縮んでいき、人間のような2足歩行形態へと変化した。


 成長による魔力操作の向上で変化出来るようになったこの人型モードのダイナの体躯は全体的にジャックより2回り大きい程度で、身長は約2m。尻尾を含めた体長はもう少し長いが、翼開長も3m程と元のドラゴンの姿と比べると迫力に欠ける。

 だがこの体には竜の筋力が詰め込まれており、見た目より遥かに高い身体性能を誇る。

 さらに併せ持つのは強固な竜鱗と強靭な竜爪。防御力と攻撃力、翼による機動力までも兼ね備え、ブレスによる広域殲滅攻撃もできる生物兵器だ。


(さて、この辺りから異常な魔力反応を感じたが……)

 反応を追って来たにも関わらず、不自然なことに周囲には魔物の気配は無い。


「どこに行った……?」

 疑問に思ったジャックが呟いた時——ボコォォォォンッッとジャックが立つ足元の地面がクレーターのようにすり(ばち)状に(へこ)んだ。


 直前、真下から巨大な魔力を感知して跳躍していたジャックはバサァッッと人型のまま翼を出して空中に(とど)まるダイナに掴まって難を逃れる。


 ジャックの眼下ではクレーターの中心から1匹のモンスターが這い上がってきた。

 アリジゴクのように現れたそれは——異形の化け物。


 全体的なフォルムは人型の2足歩行生物だが、祖先は昆虫だったのか前脚、中脚の4本が腕のように発達し、その2対の腕の先はカブトムシのようなフック状の鋭い爪になっている。


 目は蜻蛉(トンボ)が持つほぼ360°の視野と1万個以上の対象を別々に捉える複眼(ふくがん)で、口元には(あり)に似た大顎(おおあご)をギラつかせ、さらに背部には(サソリ)のような毒針を持つ尾が(うごめ)いて凶悪な雰囲気を(かも)し出す。


 全身の表面は自重の約4万倍の圧力に耐えるコブゴミムシ(アイアンクラッド)ダマシ(ビートル)のように光沢のない黒(マットブラック)でゴツゴツした質感の外骨格に(おお)われていて、まさに天然の鎧兜(よろいかぶと)といった風情(ふぜい)だ。


 虫が持つ優れた特徴を多数兼ね備えた完全体——蟲の皇帝——皇蟲(こうちゅう)とでも呼ぶべき存在。


(コイツ……今の俺やダイナより魔力量が多い……)


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