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1-3 サチの場合 3

 GWに入った。


 何故か自分でも分からないけれど、今年のGWはお兄ちゃんと一緒に過ごすと心に決めていた。だから友達や彼氏の誘いは全部断って、今こうしてお兄ちゃんと2人でリビングで過ごしている。



「どう?お兄ちゃん、この『コイカナ』って漫画大人気なんだよ?面白いでしょう?ネットでも今話題になってるんだから!」


 ソファにより掛かりながら私の大好きな少女漫画を読んでいるお兄ちゃんに声を掛けた。


「うん、確かに面白いけど……それにしても、このエディットというヒロインの婚約者の……アドルフだっけ?本当に酷い男だよ」


 お兄ちゃんは漫画の頁をめくりながらため息を付いた。


「お兄ちゃんは誰にでも優しいからね〜」


 床の上でゴロンと寝転がりながら、私も同じ漫画を読んでいる。


「でも、このアドルフって性格は最悪だけど顔だけはいいと思わない?王子も格好いいけど彼も外見だけなら主役級だよ」


「そうかなぁ……いくら外見が良くても、やっぱり性格が第一だと思うけどな。僕だったらこんなに素敵な婚約者にあんな態度は絶対取らないよ」


 う〜ん。どうもお兄ちゃんは漫画に感情移入しすぎているようだ。


「まぁまぁ、それに所詮は漫画の世界だし……最後にこの悪役令息は『ざまぁ』されるんだからいいじゃない」


「うん、確かにそうなんだけどなぁ……」


 まだ納得しきれていないようなお兄ちゃん。


「それより、何処か気に入った話は無かったの?」


「え?色々あったよ。例えばこのランタンフェスティバルの話なんかいいよね。ヒロインのエディットとセドリック王子の出会いのシーン、ドラマチックだよ。だけど、何と言っても1番気に入ってるのエディットとセドリック王子がパーティーで夜の庭園で踊るシーンかな?」


「あ、そのシーンなら私も大好きだよ。素敵だよね〜私もあんな体験してみたいな〜」


 するとお兄ちゃんが笑った。


「うん、サチは可愛いからどんなドレスでもきっとよく似合うよ」


「ま、またお兄ちゃんは冗談ばっかり!」


 思わず顔が赤くなるのをごまかして、そっぽを向いた。


「でも……もし、誰かと結婚が決まって、ウェディングドレスを選ぶ時は……お兄ちゃんも一緒がいいかな」


 その言葉にお兄ちゃんが驚いて私を見た。


「え?サ、サチ……もしかして、もう結婚したい相手がいたの?!」


「何言ってるの!そんな人いないってば!もしもの話だから、もしも!仮に結婚するとしても、ちゃんと社会人として働いてからだよ!」


「ああ、そうか〜。安心したよ。ならまだ最低でも後3年位は一緒に暮らせるんだね?」


「そんなの、当然でしょう?大体私がお嫁にいったら、寂しいでしょう?」


「うん、そうだね」


 お兄ちゃんは私を見て笑った。



 

 けれど、私とお兄ちゃんの2人の生活はあっさり終わってしまった。

 半月後……お兄ちゃんは仕事の外回りの最中に死んでしまったからだ。

 

 死因はお母さんと同じ……過労死だった――。

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