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婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい〜another story  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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3 ブラッドリー・モーガン 14

『ブラッドリー・モーガン、面会が来てるぞ』


狭い部屋で本を読んでいると、突然扉の外から声を掛けられた。


「え? 面会?」


振り返ると、ガチャガチャと鍵の開く音が聞こえて扉が乱暴に開かれた。


「ああ、面会だ。お前の両親だ、早く出て来い」


いつもの横柄な指導員の男がじろりと俺を睨みつけて来る。


「……分かったよ」


ため息をつきながら、椅子から立ち上がると指導員はニヤリと笑った。


「いいか? 妙な真似はするなよ?」


「……分かってるさ」


目の前の男を恨めし気に見た。俺はこの学院……いや、正確に言えば学院の名を被った収容所に収監されてから、幾度となく脱走を試みた。

けれど、その度に掴まり……反省室と呼ばれる監獄に放り込まれて最低限の水と食料の身の生活を何度も味わされたのだ。

暑さも寒さもしのげない、あんな扱いはもう二度とごめんだ。


前後に指導員に挟まれた形で、狭い通路を歩かされる。すると前を歩く指導員が声をかけて来た。


「それにしてもお前の両親は随分子供思いだな。毎月面会に来る親なんて、滅多にいないぞ」


「……」


俺は無言で指導員の話を聞いている。別に会いに来てくれなんて頼んだ覚えはない。向こうが勝手に来ているだけなのだから。


「早いものだな。お前がこの学院にやってきて、そろそろ1年になるとは。あの頃は手が付けられなかったが、ようやく最近真面目になってきたじゃないか?」


背後の指導員が話しかけて来る。


「……当然じゃないですか」


早くここを出るには、真面目な態度をとるしかない。名門伯爵家として生きてきた俺には、もう今の生活は限界に来ていたのだから――




****


「ブラッドリー、元気そうだな」


ガラス窓で仕切られた部屋の向こう側で父が尋ねて来た。


「元気そうに見えるか? こんな生活を1年も続けさせられているのに?」


「ブラッドリー……またそんなことを言って……」


母が涙ぐみながら俺を見る。


「それで? 今日は一体何の用があって来たんだよ? またセドリック王子に俺の様子を報告する様に言われてきたのか?」


腕組みしながらふたりを見た。すると俺の言葉に両親は顔を見合わせ……父が頷いた。


「それも確かにあるが、お前は私たちの大切な息子だ。様子を見に来るのは当然だろう? それに…‥少し報告があってな」


「報告? 一体何の?」


「あのね……実はアドルフとエディットの間に赤ちゃんが生まれたのよ。可愛い女の子よ」


「子供…‥? もう生まれたのか?」


俺がこの学院という名ばかりの収容所に収監されて、すぐに2人が結婚したという話は聞いた。


「……そうか。あの2人……ついに親になったのか」


「アドルフは……ずっとお前のことを気にかけているぞ? 今も時々手紙が届くんだ」


「フン。相変わらずお人よしだな、あいつは」


そう、本当にアドルフはバカがつくほどお人よしだ。記憶喪失になってからのアドルフは急にエディットと接近したかと思えば、突然距離を置こうともした。


俺とエディットをくっつけようとしていたのは、ありありと分かった。

だから俺も今度こそエディットの気を引く為に……俺しか知らないアドルフの話をして、彼女を喜ばせて来たのに。


結局全て……無駄になってしまった。


「何か、アドルフとエディットに伝言は無いかしら?」


母が尋ねてきた。


「そうだな。だったら2人に伝えておいてくれ。おめでとうって」


もう子供が生まれたとなると、今度こそエディットを諦めなくちゃならないだろう。


「分かった、伝えておくよ」


父が安堵のため息をつく。そこで俺は改めて両親の顔をじっと見つめた。

この1年で両親はすっかりやつれて年を取ってしまった。

まぁ、それらの原因は全て俺にあるのは分かりきっていた。


アドルフもエディットも親になったのだから……俺も大人にならなければな。


「父さん……母さん。ごめん」


ポツリと口にした。


「え?」

「どうしたの? ブラッドリー?」


「今まで本当に俺は親不孝だった。……反省してる。真面目に生活して……必ず更生して、ここを出るよ。もう二度と迷惑は掛けない」


「ブラッドリー……」

「……ええ。そうね」


両親の目には涙が浮かんでいた。




****


両親との面会が終わり、俺は部屋に戻っていた。机の引き出しにはアドルフからの手紙が束になって入っている。


「全く……俺に気を使って子供が生まれたこと、知らせなかったんだな」


苦笑すると、ペンを手にした。

今迄一度もアドルフに手紙を出したことは無かったけれど……


早速、便箋にペンを走らせはじめた。



『親愛なるアドルフへ』と――




<終>




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