残照
送り火が紅く ゆるく燃える
夕暮れの空と 同じ紅の色
ゆっくりとのぼってゆく 白い煙に
懐かしいあなたの 声を聞いた
もっと話をすれば よかったのか
もっと話を聴けば よかったのか
もっと笑い合えば よかったのか
もっと手をつなげば よかったのか
もっと抱き締めれば よかったのか
もっと声に出して 伝えていれば
届かなくなってから
気がつくことばかり
夢のなかでは
元気に笑っている
そこにいるのが
当たり前のように
目が覚めると 思い出す
ああ
あなたは もう いないのだと
遠くの山の端に
残る紅
わたしは元気でやっています
これからも元気でやっていきます
思い出すと
懐かしく
哀しく
温かく
悔しい
思い出すことは
忘れないこと
また わがままを言います
少しで いいのです
道に 迷わないように
これからを 照らしてください
あの 残り火のように
あの 残照のように
あなたの ぬくもりのように
月日が経つのは早いです。