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アカの亜人  作者: オッコー勝森
第3章 White

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9 鋼色の弾丸


「どういうことですか!?」


 ゾンビ巨人がターンして、こちらに殴りかかってくる。精確に狙いをつけているとは思えない一撃だったけど、デカいというだけで十分に危険だ。

 轟音が響く中、佐渡さんに聞こえるよう、精一杯の大声を出す。

 エギンはアイテールを吸えば強くなる、それはそうだけど、三人程度は誤差の範囲内のはず。個体そのものの等級の方が重要だ。


「そう言えば三川さんはゾンビ化してませんでしたねえ! 何か関係あるんですかっ!?」

「〜〜……〜〜……!」「聞こえません! 全然っ! ああっ!?」


 ゾンビ巨人が、佐渡さんを追いかけた。当然ながら彼女は逃げる。跡掛を抱っこしているにもかかわらず、フィクションの忍者もかくやという速度で。あっという間に位置が離れてしまった。


「こっちに来い! こっちだ! おーい! このっ」


 状況を変えるため、とりあえずゾンビ巨人を挑発してみたが、奴は興味を示さない。佐渡さんにご執心だ。もしかすると、狙いは跡掛さんの方かもしれないけど、角木さんと吉井さんを真っ先に潰しに行ったこと、また佐渡さんの気になる発言から察するに、やはり彼女らのアイテールはエギンにとって特別であり、垂涎の的であると推察すべきか。


「三色娘! 突撃でエギンの気を引け!」


 焦りから、ついついモノローグでの呼び方で眷属たちに指示を出してしまう。他の二人と同列に扱われた不満を抱いたのだろう。三人から抗議のブーイングが上がったようだが、どうでもよくて聞こえない。

 早く命令に従ってください。


「はいどーん」


 一番手は、バトルマニアピンクだった。奴は人の飯を奪うが、波動エネルギーの扱いは上手い。センスなら俺以上だ。重力を無視して飛び上がり、ゾンビ巨人の頭頂に拳を叩きつける。

 ゾンビ巨人は大きく撓み、跳ねた。ゴムっぽい性質は変わっていないらしい。

 桃架ちゃんパンチの威力は凄まじく、クレーターまで発生させたにもかかわらず、ゾンビ巨人に効いた様子はない。無傷だ。

 そうであっても、少しはこちらに注意を割くだろうと楽観したのも束の間、着地したゾンビ巨人は、再び佐渡さんたちに向かって疾駆する。


「ピンクは役立たずね!」

「無視してもらっちゃ困るねゾンビ氏」


 サイコパスブルーと元政治犯イエローが追撃を放つ。ブルーの電気ショックがゾンビ巨人を麻痺させ、そこにイエローが剣を振り下ろした。連携しているように見えるが、間違いなく偶然だ。俺の命令がない限り、こいつらは協力などしない。

 ゾンビ巨人の胴体が、真っ二つに切れた。融合前と同じく、斬撃自体は通るらしい。

 通るだけ。無数の繊維が両断面から伸びて、上半身の落下を止めた。ニュルリとピッタリ元通り。ゾンビ系の怪物に再生能力は付き物だし、巴巨人も同じような能力を持っていたから驚きは少ないとはいえ、ゲンナリしてしまう。

 厄介な相手だ。普通に相手すれば泥試合になると確信する。

 巴巨人と相対した時にはなかったカード、「火」なら倒せる。再生能力そのものを燃やしてしまえるからだ。時間遡行みたいなチートにより、燃やされる前に戻ってしまうというのでもない限り、亜人の火の優勢は絶対だ。

 しかし、初期よりはマシになったとはいえ、あれは体力の消費が激しいのだ……敵がこのゾンビエギンだけだったなら躊躇なく火を使えたが、その背後には、富良野一派とガイドさんを殺しゾンビエギンに変えた悪しき浜世家の者が控えている。

 ゾンビエギンよりも格上である可能性がある以上、ここで切り札を出すのは愚かだ。でも、力を温存して、ここでゾンビエギンに釘付けにされるのはどうなのだろう。特にそれが、浜世家の狙いだとしたら。

 どうすればいい?


「二手に分かれるべきだわ!」


 巴ちゃんが寄ってきた。ゾンビエギンは、桃架ちゃんと椎奈ちゃんが抑えている。足止めそれ自体のは難しくない。足場の悪いこの場所で、空を飛べるかどうかの差は大きい。

 佐渡さんを背負った桃架ちゃんにより、ゾンビエギンは分かりやすく翻弄されている。


「昊刃と桃架で浜世家の下郎どもを探して! なぜかゾンビは佐渡にご執心のようだし! あいつがいれば、私と椎奈でも抑えられる!」


 悔しげに、桃架ほどは無理だけど、とも付け加えた。広大な山地からスナイパーを探し出すには、最も飛行可能時間が長く、かつ最も速い桃架ちゃんとペアを組むのがベストだろう。

 巴ちゃんの顔には、自分がついて行きたいという気持ちがありありと浮かんでいる。その一方で、ゾンビエギンを抑えるのに椎奈ちゃん一人では心許ないし、捜索班として巴ちゃんは桃架ちゃんに劣るのは自覚しているようだ。

 我慢出来るんなら、普段からして欲しい。

 桃架ちゃんと巴ちゃんが役割を交代した。桃架ちゃんに背中を預けつつ、狙いを定められぬよう、ジグザグと動き回りながらスナイパーを探す。

 三川さんが光ったと言った場所は、この辺りだったはず。

 見つからない。もちろんこっちも、簡単に見つかるとは思っていない。光がブラフだった可能性もある。それに浜世家は異能を扱う術師ファミリーで、弾道を曲げられないと誰が言い切れるだろうか。突然の凶弾が辿った軌跡を読み取れる神がかり的な能力は、残念ながら俺にはないのだ。

 一部にいわゆる常緑樹に属するものがあるとはいえ、ほとんどの木は葉を落としている。鬱蒼としたアマゾンのジャングルならともかく、地上を移動する人影があれば視認出来るはず。

 左手に怪しい赤玉がついているだけの一般人だった頃よりも、動体視力は格段に上がっている。それは桃架ちゃんも同じだ。いるなら分かる。

 ゾンビエギンを作ったのち、スナイパー本人は即座に逃げたのではないかという楽観が鎌首をもたげ始めたその時、


「危ないっ!?」


 と桃架ちゃんが警告を発する。前に出しゃばり、腕を振り上げ、何かを弾き飛ばした。

 格段に良くなった動体視力は、しっかりと把捉する。

 鋼色の弾丸だ。


色々としんどみが深いので来週は休みます。

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