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アカの亜人  作者: オッコー勝森
第2章 Violet

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25 早口言葉と元素表


「鈍色バブル」「あなたはそう呼んでいるのですか? ふふ」


 お姉さんは口角を上げた。この反応、あの鈍色バブルの、正式名称を知っているのか?

 室に連れられ海に行った時、椎奈ちゃんと彼女の父が、俺たちを襲うのに使った兵器。椎奈ちゃんによると、あれらは植物らしい。邪馬台国のみに生息する特殊な植物の種だそうだ。本来の生息地では正常に育ち、濃い赤の花を咲かせるとのことだが、この世界ではバグる。

 バグった花が、鈍色バブル。

 邪馬台国以外では繁殖不可能、種は残せない。


「あれを使うには、大量の水分が必要じゃあありませんでしたっけ?」

「能力不足ならそうらしいですね」


 お姉さんは続ける。


「天才ならば、その限りではないそうですよ」

「へえ……でも、水無しで出来たとしても、こんな公共の場所で使えば、たくさんの人に目撃されてもおかしくないでしょう。浜世家にとって、いいんですか?」

「ガッツリ見た人間は、殺すか、養殖エギンの餌にします」


 絶句した。隣に首を向ける。


「え?」「チラ見程度なら記憶改竄で済ますと思いますけれど」

「そんなに危ない集団なんですか? 浜世家って」

「そんなに危ない集団なのですよ、浜世家は」


 マジかよ。単なる亜人一派ぶっ潰しマン(「単なる」では済まされない)の集まりだと見做していたけど、リアルヴァイオレントヤクザじゃねえか。しかもスピリチュアルな妄想を具現化しているというのだから、タチが悪い。

 歴史もあり、しかも天皇護衛という輝かしい任務もある。歴史と輝かしい任務があるということは、大きな権威もあるということだ。弱小企業昊刃社が敵う相手じゃないのでは。


「いつもの彼らより、種を撒くまでの時間が早かったですね。浜世の関係者が観客に混ざっていたのでしょうか」

「分析してるところ申し訳ないですが、バブル、スキャンを始めました」

「人間をコピーされたら厄介ですね」


 VIPの控え室に戻る。

 鈍色バブルが、一つだけ開花していた。まずい。俺がスキャンされたら、浜世家に亜人とバレてしまうのではないか? 京之助からすでにバレている可能性は否定出来ない一方で、独断での行動だったと思われること、桃架ちゃんに即殺されたことで、まだ発覚していない可能性も十分にある。

 どうする。亜人の力を振るわないようこのお姉さんから言われてるけど、でも、一瞬で破壊するなら。浜世京之助みたいに。やったの桃架ちゃんだけど。


「パアン」


 彼女は戯けたように、破裂の擬音を口にした。

 ふざけている場合かよ。この人からは、お遊び気分ってヤツも漂っている。一応俺のことも気遣ってくれているみたいだけど。

 俺は、焦っているのかもしれない。イライラしている。真面目にやってくれ、と彼女を睨みつけようとした。

 鈍色バブルはパアンと弾け飛んだ。


「種そのものの術式(コード)に割り込みました」

「あの。お姉さんも、『近衛士』なんですか?」


 お姉さんは曖昧に微笑む。誤魔化された。

 次の一言で。


「私の手を掴んでください。絡みつくように」


 ほお。単に握るだけじゃダメなんですか? 俺には白西という女がいるんですけど? 理性でそう反論しようとした。しかしいつの間にか、誘われるままに、絡みつくように、お姉さんの手を掴んでしまった。

 あれ。思考が真っ白になる。お姉さんに引っ付かれた。

 頭髪を嗅がれる。スベスベと手を撫でられる。

 耳元で囁かれる。


「素直でいい子ですね」

「……っ!? っ!? ッ!? ッ!?」


 やばいって。こういう性格で占い師と見せかけて実は政府機関のエージェントで事情通でしかもミステリアス美女なお姉さん、好きじゃない少年おる?

 おらんやろ。

 でも! しかし! 俺には白西がっ。乱れている。落ち着かなきゃ。

 心頭滅却。東京特許許可局。生麦生米生卵。青巻紙赤巻紙黄巻髪。

 水素ヘリウムリチウムベリリウムホウ素炭素窒素酸素フッ素ネオンナトリウムマグネシウムアルミニウムケイ素リン硫黄塩素アルゴンカリウムカルシウムスカンジウムチタンバナジウムクロムマンガン鉄コバルトニッケル銅亜鉛ガリウムゲルマニウムヒ素セレン臭素クリプトンルビジウムストロンチウムイットリウムジルコニウムニオブモリブデンテクネチウムルテニウムロジウムパラジウム銀カドミウムインジウム錫アンチモンテルルヨウ素キセノンセシウムバリウム(ランタノイド)ハフニウムタンタルタングステンレニウムオスミウムイリジウムプラチナ金水銀タリウム鉛ビスマスポロニウムアスタチンラドンフランシウムラジウム(アクチノイド)ラザホージウムドブニウムシーボーギウムボーリウムハッシウムマイトネリウムダームスタチウムレントゲニウムコペルニシウムニホニウムフレロビウムモスコビウムリバモリウテネシンオガネソン!

 初めて元素を一気に言えたぜ。

 抱き寄せられた。脳がショートする。


「認識阻害を使います。しかし喋らないように」

「ハイ。オスキナヨウニナサッテクダサイ」

「喋らないで答えてください。このホールから出ます」


 頷く。


「知り合いを見かけたとしても反応しないでください」


 頷く。


「そして、あなたのお家に参ります。よろしいですね?」


 頷いた。


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