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アカの亜人  作者: オッコー勝森
第1章 Yellow

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40 強敵


 ラノベや漫画、アニメなどのせいで、一対一の近接戦闘では力よりも技術が重要だというイメージがつい強くなりがちである。俺だって、ついそういう風に思ってしまうことがあるくらいだ。

 だけど、殊、ルール無用・殺害OKのバトルでは、力だってはっきり物を言う。当然の話だ。体を痛めず戦い続ける(・・・)には技術もめちゃくちゃ大事だが、一回きりの勝負では、技術に無知な筋肉ダルマがスマートな達人をノしてしまうことも珍しくない。

 自己認識が「亜人」と成り果ててはや二ヶ月弱。俺の力は、一般人では及びもつかない領域に達している。そうであっても、この人型エギンの方が大きなパワーを持っていると、先ほど防御を取られた時に分かった。

 本来、接近戦を挑んではならない相手だ。

 にもかかわらず、他のエギンと同様に、厄介な面制圧手段も持ってやがる。人に矢を打ち込み、アイテールを奪うのだ。只人は矢にもエギンにも触れられない。よって成す術がない。


 ここで少し、現状に至るまでの経緯説明と、あとついでに専門用語及び問題のおさらいもしておこうか。前提として、すべての生物には、肉体と精神とを結びつけるパイプが備わっていて、アイテールと呼ばれる潤滑油がその中を流れている。で、エギンなる化け物は、異世界から地球にやってきて、人間のアイテールを収穫し、食べる。

 アイテールを奪われた人間は、人を「人」たらしめる理性を失う。

 エギンは人間の敵だ。やっつける必要がある。しかし、奴らは目の前にいるようで、こことは位相の少しズレた場所に存在している。この世界の人間では触れられず、従って太刀打ちも出来ない。唯一、僅かにズレた二つの世界を行き来可能な亜人とその眷属だけが、エギンたちに対抗し得る人類側の戦力だ。

 リー曰く、俺と巴ちゃん、あと桃架ちゃんだけが、エギンに対抗出来る唯一の戦力であるはずだった。が、そのスペシャリティが、室に連れて行ってもらった海旅行の折に綻んだ。

 浜世親子が使役した巨人、厳密に言えば物体コピー型の兵器が、亜人と似たような能力を披露したのだ。彼らは亜人を知っていて、なおかつ敵視もしているようだった。

 出自が関わっているらしい。奴らはいったい、何者だ?

 人型エギン降臨の引き金は、「不発」だった花火と考えるのが妥当だ。道具が使われたのなら、使った奴が必ずいる。容疑者はもちろん浜世親子。彼らが再び仕掛けてきた。決めつけはいけないが、多分この推理が正しい。

 まあ、花火の「不発」を予言した占い師も、第二の容疑者として一応挙げられはする。とはいえ、それを教えて注意喚起するメリットがない。人型エギンで亜人を排除したいなら、テントに立ち寄った時点で、「左手だけに手袋をはめた厨二病はお断り」「青髪の問題児は入店禁止」などと言ってすぐ追い返すべきだった。

 彼女はシロだと思う。無関係じゃないかもしれないけど。また会いたい。

 他にも、浜世父が匂わせた「本家」とやらが動いたとか。情報がほとんどないため、この可能性については検分しようがないが。

 丘の方をチラリと眺める。巴ちゃんが援護に来ない。サボっているわけじゃないだろう。あの子、脳の悪性腫瘍を疑うレベルで腹黒だけど(悪性=「悪い性格」の略)、同じくらい勤勉だから。裏で糸を引く者たちの存在に勘付き、探しに行ったのだと推測される。

 ありがたいバックアップだ。これで俺も、人型エギンに集中出来る。


 人型エギンの連続突きを、すり抜けずに回避する。あるいは払って逸らす。

 決して掴んではいけない。こっちが骨折する。

 方針は、月並みだけどヒットアンドアウェイ。

 第一のチャンス。懐に潜り込む。殺すつもりで殴った。かってえ。

 反動はないにもかかわらず、痛いと錯覚する。急いで離れた。ダメージ、入ったか? 自信がない。HP残存量を示すゲージがあればいいのに。まったく効いてなかったら、それはそれで鬱になりそう。逆にこっちのHPが、疲労で減ってたり。

 回復アイテム、プリーズ。

 余計なことを考えていたら、折れ曲がったテントの骨格に足を取られた。夜目が利くからと油断していた。言い訳をさせてもらうと、波動エネルギーには欠乏の概念があって、常時展開しているわけじゃない。そういうわけで、実を言うと、すり抜けられるかどうかで混乱することが偶にある。

 ダーツぐらいの短い矢が差し向けられる。地面に潜った。人型エギンも追いかけてくる。奴らにとって、物質的な障害など問題にならない。禍々しい矢が続々と放たれる。

 位相をズラしている状態で受けてもアイテールが奪われることはないが、刺さったら傷つき、血を流す。当たり所が悪ければちゃんと死ぬ。

 一本なら叩き落とせる。が、叩き落とすためには止まる必要がある。量で来られたら躱すしかないのだ。躱して、そして体勢が崩れる。

 致命的な隙だ。

 十メートルは離れていたが、そんなのは俺にとっても、況してあいつにとっても大した距離じゃない。一瞬で近づかれる。下からの殴打。つまりアッパー。ミスを突かれ、一気に攻め込まれた俺に、精神的余裕など無くなっていた。


 喰らう。

 吹っ飛ぶ。

 地中から夜空へ。


 位置座標を固定し、止まった。血を吐く。痛い。脳が揺れる。それに高い。

 正面に現れた人型エギンに踵落とし。受け止められた。

 足首を掴まれ、今度は地面に投げられる。強制的に止まり、地上で構えた。横目に、焼きとうもろこしの看板が映る。まだ壊れてない区画。人はいない。

 敵は早い。一瞬で来る。リズムは分かってきた。攻撃されたと思ったら回避する。奴の肉体がある場所に拳を置く。綺麗に入った。

 やはり効いてる気がしない。

 蹴られた。刹那の間に気絶して、波動エネルギーが切れた。祭りの場を無茶苦茶にして、水切り石が如く地面を跳ねる。

 意識が朦朧とし始めた。強い。

 巴巨人と比べても格が違う。

 額の血を拭った。どうする? どうやって勝てばいい。

 住民の避難は完了したのか。してるわけないか。十キロ離れても安全とは言えない。グラウンドだけで事を収めるのは不可能である。多少の被害なら、相応の代償と言えるか?

 命を賭けよう。出し惜しみはなしだ。と格好付けたところで、勝てるビジョンが浮かばない。通常モードじゃ無理だ。このまま続けてもジリ貧だ。かと言って、必殺技を使うにしても、あれは溜め技だから、誰かが人型エギンの気を逸らす必要がある。

 巴ちゃんと連絡を取る暇はない。じゃあ…………、


 ……街の人を、囮に利用する? 最悪そうするしかない。ダメだけど。

 想像するだけで自殺したくなる選択肢だけど。

 なんだか、白西を助ける資格が無くなってしまいそうで。


 義務感だけでフラフラ立ち上がると、桃架ちゃんがいた。腕組みに圧を感じる。覚悟を決めた目だ。

 救いの神に見えた。

 いける。変身させた。保育士モチーフの衣装に変わる。

 ベビーピンクの半袖ワンピースに、長い羽フリル。

 花の模様がふんだんにあしらわれた、クリーミーピンクのエプロン。

 どうやら成功したらしい。正統派魔法少女だ。かわいいね。

 粉塵から現れた人型エギンに、彼女と二人で対峙する。


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