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アカの亜人  作者: オッコー勝森
第1章 Yellow

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23 ニュース


「分からないよ〜。巴ちゃんがどういう子なのか〜、俺には分かんない〜」


 翌日、妖精リーから情報を聞き出すため、巴ちゃんが彼を連れ立って散策に出かけた隙に、桃架ちゃんに泣き言を漏らした。巴ちゃんの人格分析に睡眠時間を投じ、ゆえに寝不足状態なのだ。

 赤ちゃん返りしてももかおねーたんに泣きついても仕方なかろう。

 バブう。


「よしよし。私にも分かんないですよ、お兄さん。でも言ったじゃないですか。あの女は浜世よりもやばいって。今でもその評価は変わってません」


 え? 顔を上げる。

 浜世、俺にナイフを刺したが?


「だとしても、水晴巴の方がイカれてるんです。絶対です。だからあいつは追放すべきなんです。有能な勤勉家であっても、人として根本的な何かが欠けている。このままダラダラと関係を続けていたら、いつか必ず後悔します」

「いや、けどさ……」


 後に続けられる言葉を探す。巴ちゃんの心に問題があるのは認めざるを得ない。でもまだ、中学二年生だぞ? 向き合うことを放棄して追い出すというのは、年上としてはやっちゃいけないんじゃないか。問題があっても、解決するための時間は山ほどある。

 それに。


「俺には好意的だし、話もちゃんと聞いてくれる。俺が根気強く人付き合いのいろはを教えてあげれば、巴ちゃんもいつかは──」

「あいつがお兄さんに好意的なのは、精神的に依存していて、しかも発情してるからですよ」

「はっ、発情っ!?」

「ゴホン。仄かな恋心を抱いているからです。あいつにとって特別なのはお兄さんだけで、それ以外は等しくゴミなんですよ。追放しないで済む安全策は、一つしかないんです。抱きしめて愛を囁き、将来必ず結婚すると約束すること。そうすれば、あいつは喜んで檻に閉じ込もり、周りを攻撃しなくなります」

「重いよ。重い、桃架ちゃん。俺には耐えられない」

「そうですよね。だと思ってました。このまま、爆弾を抱えて進みましょう」

「……情操教育の努力はするから」


 桃架ちゃんの物言いは酷く辛辣だったけど、真に迫るものも感じる。俺の対応は間違っているのかもしれない。でもやっぱり、巴ちゃんを爆弾だと切って捨てるのは不誠実だ。巴ちゃんを信じる。

 直感を信じて進むんだ。

 これから宿題をやると桃架ちゃんが言うので、女子部屋Bから出る。Aは巴ちゃん、白西、富良野母の、Bは桃架ちゃんと室の寝室だ。巴ちゃんと室が同じ部屋に割り当てられていたらと考えると、肝が縮む。

 階段を降りた。コテージのリビングで、ソファに体育座りした室が、ぼんやりとテレビを眺めている。

 斜め右の椅子に座った。声をかけられる。


「あんなのが魔法少女だなんて、世も末だよ。クビにした方がいいでしょ」

「ちょうど桃架ちゃんにもそう言われたばかり。でも」

「あーあーはいはい、分かってます〜。切る気ないんでしょ? 私たちがクズやらかしても、昊刃くんは少しも怒らないしね〜。人を見る目がないな〜もう。あ、仲直りしろとか言わんでよ? あれとは二度と口聞きたくない」

「…………昨日はどうして肝試しを?」

「なんとなくだよ」


 テレビの画面が切り替わる。ニュースが始まった。

 注意を引かれ、二人して画面を眺める。


『昨日夜中、神奈川県箱根町にあるとある山奥にて、人気アイドルグループ「サイスコープス」所属の芸名・ヤナギ紫穂さんが遺体で発見されました。ヤナギさんは八日前から行方不明で、所属事務所から警察に捜索願が出されていましたが、遺体の状況から死後一週間ほど経過していると見られ、行方不明になった直後に死亡したと考えられます。遺体からは心臓及びその他臓器の一部が抜き取られており、極めて残虐な猟奇的殺人事件として、警察は詳しい捜査に乗り出しています』


「えー、悲しー。ヤナシホ死んじまったのかあ。ナンマイダヌ」

「有名人なのか?」

「えー、あ〜、うん? 知らんの? いや、昊刃くんがアイドル方面疎いのは知ってるけどさあ。ヤナシホは生まれつき髪が紫。あんたらの言う色付きだぜ? てっきりアンテナ張ってるかと」

「マジか」


 調べてなかった。自分の至らなさを恥じる。芸能人を眷属として勧誘するのはなしと決めたが、だからと言って、何もしないのは違うというに。


「後で送ったげよーか? 芸能界と動画界の色付きリスト」

「そりゃあ願ったり叶ったりだし、助かるけど」

「いつも課題を手伝ってくれるお礼だと思って」

「この夏はまだ手伝ってない」「やるよ、やりますから。旅行から帰ったら」

「進捗については、鳥矢も心配だなあ。奴はどこに行ったんだ? いつの間にか部屋からいなくなってたんだけど」

「『頭痛がいてえ』っつって気晴らしのウォーキングに出かけたよ」

「二日酔いのおじさんかよ」

「引きこもりのくせに高い所が好きだし、右手側の岬か、後の丘にでも行ったんじゃね?」

「うーん。ホント、気晴らしにウォーキングに行くような奴じゃなかったはずなのに、何があいつを変えたんだろうか。ここの所、変化ばかりで参っちゃうよ」

「おばあちゃんのお見舞いに頻繁に行ってるんだっけ?」

「ああ……部屋にスマホが置きっぱなしで、おばあちゃんからメッセージが来ていた。大して遠くには行ってないだろうし、しゃあねえ、届けてやるか」

「私もー」


 このコテージは、扉を開けると、水平線を一望出来る絶好の位置にある。俺が宿泊してきた場所の中で、最高に眺めが良い。

 扉を開けた瞬間、海に巨大な水飛沫が上がった。


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