プロローグ
ゲームの使用時間が一時間を過ぎました。
強制シャットダウンを行います
そんな文字が現れた瞬間、急に目の前が真っ暗になった。
気が付くと、さっき居たはずの剣と魔法のファンタジーの世界から現実へと放り出された。
一体、どういう事だ?…
現実世界には戻れないんじゃなかったのか?
追いつかない脳の中で、たった一つだけ分かったことがあった。
「俺は助かった…」
◇◇◇
西暦20xx年――
現在日本は世界での中でもトップクラスの技術を誇っていて、中でもゲームの世界に直接入ることが出来るVRMMOゲーム「プロジェクトClariS」に注目が集まっていた。
何せ、従来のVRゲームとは違ってフルダイブ技術が導入されていて誰もが一度は憧れたであろうRPGの世界に入ることが出来るので、世界中が発売を今か今かと待っているのである。
◇◇◇
香川県 夜桜市――
「よし!これは勝てるぞ」
そう思った瞬間、回線が切れて画面には「一時間経過しました」という文字が出る。
「もう一時間経ったのかよクソがッ!」
コントローラーをいつもの場所にしまい、日課のトレーニングをはじめる。体を鍛えるのは大事だからな。
俺の名前は北原 来未。香川県に住んでいる普通のゲーム好きの高校生だ。まあ、香川県に住んでるって時点で普通では無いかもしれないが…
香川県は過疎化が進んだ結果、現在の人口は約3000人だ。3000人だぞ!少なすぎるだろ!
ここまで人口が減った理由は大体わかる。ゲーム規制とか市長の不祥事が続き、どんどん人が離れていった。
ゲーム規制に関しては20歳未満は一日一時間という古臭い制度が未だに残っている。
さて、そんな俺がどうしてここに住んでるかというと
簡単に言えば親父の仕事の事情である。左遷されたとかではなく、ここでしか出来ない仕事をやっているらしい。(正直、俺もよくわからん)
まぁ、俺はここがそこまで嫌いな訳では無い。
ゲームの時間制限に関してはムカつくが、学校も別の県のとこに通っていてそこそこ楽しいし、ここならではの景色もなかなかいいものだ。
「そろそろ来るかな?…」
今日の俺はすこぶる機嫌が良い。
なぜなら、今日は待ちに待った「プロジェクトClariS」の発売日だからだ。早くやりたくてうずうずしている。
ピンポーン―――
チャイムの音が家に響き、俺の鼓膜に届いた瞬間俺は玄関に向かって走り出した。
玄関にはすでに配達員のお兄さんが荷物を重たそうに持っている。
「サインお願いしまーーす。銀天堂からのお荷物です!!」
相変わらず声がデカい。
「わざわざご苦労さまです。」
「ホントですよ!まさか、この県に銀天堂の商品を届ける日が来るなんて思ってもみなかったですよ。
まだ、こんな若い方がいたとは…」
余計なお世話だ馬鹿野郎
配達員の言葉を適当に流して、ブツを俺の部屋と運び込んだ。
この商品は本当に高かった。特に送料が…
配達員の言う通り香川県民がとても払えるお金ではないだろう。
だが、うちの親父は意外に羽振りがいいので集めた小遣いで何とか買うことが出来た。
ホントに何の仕事をしているのだろうか。
だが、そんなことはどうでもいい。そんなことよりも先に確認すべきことがあった。
確認すべき事とは、ClariSに香川県のゲーム規制が 効くかどうかだ。香川県は、これまでどんなゲーム機器でも強制的に規制を施している。どんな最新のゲームでも難なく規制をしてしまう恐ろしさがある県。
それが香川だ。
香川県がハッカーを雇ってまで規制をしているという噂まである。正直、恐ろしすぎる。
香川県のゲーマーなんて俺ぐらいしか居ないだろうに…
そして、規制されてるかどうかを確認する方法は一つ!
一時間、遊ぶだけだ!!!
俺は直ぐに箱を開封し、ClariSを装着した。
あんなことになるとは知らずに…