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私の秘密





「約束を守るために、今宵、こちらにやって参りました」



そう伝えた ”アヤセさん” を見上げる前崎さんは、さっきまで満月を見ていたときよりもずっとずっと顔色が良かった。

輝いてると言ってもいいだろう。

でもそれは当たり前だ。

だって、生き別れになっていた我が子に、やっと、やっと会えるのだから。



「それじゃ、息子は……」



私は、上司がここに来る前に終わらると言っていた仕事が、前崎さんの期待していることだと分かっていた。

上司…アヤセさんは、前崎さんの息子さんを迎えに行ってたに違いない。

前崎さんご夫妻との約束を果たすために、時間を往復して。


なのにアヤセさんは一人でこの部屋を訪れた。

それがどういう意味なのか、または特に意味がないのかは分からないが、アヤセさんは前崎さんの両肩に手を置き、そっと静かに、前崎さんを車椅子に導いた。



「夜は長いです。きちんとしたご挨拶までお待ちいただけますでしょうか?ひとまず、さ、お座りください。寒くはありませんか?」


さっき私が用いたのと同じ言葉が、アヤセさんからも前崎さんに向けられる。

カーディガンを掛け直した私と違っているのは、アヤセさんはソファに置いてあったブランケットを前崎さんの膝に乗せたことだろう。

前崎さんの体調を気にかけているところは、私もアヤセさんも同じだ。



「ありがとうございます」


前崎さんは息子さん会いたさにアヤセさんを急かすこともなく、その気遣いを素直に受け入れていた。

けれど、腰をおろしたことで落ち着いたところもあるのか、前崎さんはアヤセさんからは一旦視線を離し、私の方を見てきたのだ。



「ところで、さっき岸里さんはアヤセさんのことを『所長』と呼ばなかった?」


わたしの聞き違いかしら?


疑問を投げかけながらも、「岸里さんとアヤセさんはお知り合いだったの?」と、さらに疑問を重ねてくる。

無理もない。前崎さんにとっては、知らないことだらけなのだから。



だから、私は、前崎さんにきちんと説明しなければいけないのだ。

そう思ったら、ドクドクドクと、派手な鼓動が緊張感を知らせてくる。


けれど、私は、ちゃんと話さなくてはいけない。



私とアヤセさんがよく知った関係だったことを。

私の直属の上司がアヤセさんであることを。

その上司、アヤセさんによって、私はこの病院に赴任させられたことを。


そして、

私も、




アヤセさんと同じく未来からここに来ていることを――――――









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